就職か起業か? リクルートOB「けんすう」が本音を語る(nanapi起業編)

sP1100573生活の知恵があつまる情報サイトnanapi(ナナピ)。率いるのは同社代表でもあるけんすうこと古川健介さんだ。リクルートへの就職を経て起業した古川さんは、いま人を雇う立場になった。就職をどんな風に見ているのだろうか? 今回はnanapiを起業するまでを話してもらった。(リクルート入社まで編、日本型ベンチャー編)

――リクルートに居たときから再び起業しようと考えていましたか?

古川:実はそんなに考えてなかったんですよね。「3年くらいは(リクルートに)いようと思います」と話していたら、逆にビックリされましたね。リクルートってもともと何年もいる会社じゃないっていう文化はあるので。

何となく新卒で会社入ったら3年くらいいるのかなあと思って、そのまま3年いました。何か面白いWebサービスでも作る箱でも作ろうかと、2年目の冬に会社は作ったんですけどね。でもリクルートに勤めながらだとやはり十分なリソースが割けないし、プロジェクトも一段落ついたんで「じゃ辞めようか」と。

――そのときには現在のnanapiのようなサービスを始める構想はあったんですか?

古川:ぜんぜんなくて、辞めて「じゃ何しようかねぇ」というところから始まりました。nanapiをはじめたきっかけとしては、エンジェル(投資家)で、現在はヤフーでEC担当役員をしている小澤さん(小澤隆生ショッピングカンパニー長)とたまたま知り合ったんですが「ハウツーサイトを作りたい」と言っていたのです。最初は受託で受けるというノリで、企画書とかを作ってたら、なんかおもしろそうなので、一緒にやりましょうということになりました。小澤さんがお金をくれたので、そのお金でnanapiを立ち上げて現在に至ります。

――先ほど1つも成功しなかったというお話しでしたが、起業に際してリクルートで得られた能力というのはありませんか?

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古川:3つあります。1つは「何でも自分でできる」という考え方。新人の時は誰でも「こういう風にした方がいいと思います」というじゃないですか。そうすると「じゃあ、君やって」と言われるんですよ。

偉い人が若手の意見をくみ取ってやってくれるんじゃなくて「必要だと思うなら、お前がやれ」と。予算や人手が必要ならつけてやるから、と。そういう考え方なんですね。

何かを改善したいと思ったときに、全部自分の責任でできるし、やる義務があるという考え方はそこで身につきました。これは起業家らしい考え方だし、スキルだと思います。

2つめは「組織の作り方」です。リクルートって「社長とか上司がこういう方針を示している」というのあんまりないんです。逆に「お前がどうしたいんだ」というのを、しつこいくらい聞かれます。若手が他人事ではなく「自分事」として、組織を考え改善していく、そういう「仕組み」を暗黙知として組み込んでいる。そこがすごいと思います。

GMOの熊谷さん(熊谷正寿CEO)も仰っていますが、宗教ってリーダーが率いなくても自律的に永続します。組織作りとして優れた方法だと思いますね。実際リクルートも江副さんがいなくなった後に過去最高益を出していますからね。(京セラの創業者・稲盛和夫さんが提唱した)アメーバ経営なども含めて、もしかするとオープンソース的な考え方に近いのかも知れませんね。nanapiの組織作りでも参考になっています。

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3つめは「ロジックを立てて物事を整理する」ということですね。リクルートは議論が好きな会社だと思うんです。とにかく会議が多いんです。でも実はアレ、会議じゃなくて「演説」なんですよ。1回の会議で1人が40分くらい熱く語るという(笑)。議事録もまずなくて「あー! 思いのたけを語った」「よし納得したし、お前のやる気は受け取った」みたいな。

重要なのは、そこで「これを達成しよう」という目標にコミットさせられるんですね。で、会議が終わったら全員がそれに向かってわーっと一斉に走り出す。この目的を達成するためにまず必要な5000件の成約を1カ月で取るぞってなれば、1人1日何軒取らなきゃってなってブレークダウンして、ホントにそうなる。議論してコミュニケーションして、さらに「想い」の部分と「ロジック」の部分両方が備わってないと人が動かないということなんですね。

失敗体験は勉強にはなるけれど、ビジネスに役立つかと言うと実はそうでもありません。でもリクルートで学んだこれらのことは、nanapiでも役に立ってますね。そのままの形ではないかも知れませんが(笑)。

日本型ベンチャー編へ続く。