就職か起業か? リクルートOB「けんすう」が本音を語る(日本型ベンチャー編)

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生活の知恵があつまる情報サイトnanapi(ナナピ)。これを率いるのが、同社代表でもあるけんすうこと古川健介さんだ。リクルートへの就職を経て起業した古川さんは、いま人を雇う立場にも。就職をどんな風に見ているのだろうか? 今回は日本型のベンチャーについて話してもらった。(リクルート入社まで編、nanapi起業編)

――リクルートでの経験がnanapiでは具体的にどのように活きていますか?

古川:僕は19歳のころからコミュニティサイトを作り運営してきました。ユーザーが自由に投稿して、ユーザーがその情報を見るという、格好良く言えば「プラットフォーム」、平たく言うと「公園」みたいな感じですね。

公園の管理人は子供がそこで遊んでいても「これをしろ」みたいな指示はしません。楽しく快適に遊べるように管理をしているだけなんです。リクルートに入って想ったのは、会社組織もそうなんだなってこと。「これをやれ」ということはあんまりなくて、優秀な人間がたくさんいて、プロジェクトを立ち上げることができて、成果が上がれば結果として会社が成長する。そんな場を用意するという感じで、これは(コミュニティサイトと)近い物があるなと。そんな場を目指してnanapiも動いていますね。

――公園と違って、会社では個人の失敗が会社の損失になることもあります。そのあたりはいかがですか?

古川:しょうがないんじゃないですかね。実は僕「結果はどうでも良い派」なんですよ。プロセスのほうが大事なのかなあ。「手段を目的化しないといけない」というのが最近のモットーなんです。

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――おもしろい。最近の流れとは逆ですね。

古川:これ(手段を目的化すること)って「日本っぽい」と思っているんです。 初音ミクを使う人も「曲を作りたいから初音ミクを使う」より「初音ミクを使ってどんな曲ができるのか」という使い方をしている人も多いと思います。

伝統的なアメリカの企業文化って、目的のためなら手段を選ばないというところがあって、それは「ハッカー文化」だと思うんですね。一方で日本的なやり方だと、その行為自体がおもしろいからやり続けて、その結果として変わったものが生まれるというもので「オタク文化」的だと思っています。そっちの方が日本に合っていていいなあと。

リクルートにもそんなところがあります。目的や目標は確かにあるんですが、そこに至るプロセス――例えば100軒営業して20件成約を取るにはどんなフローやツールが必要か――に対してものすごく執着するんですね。「オペレーションエクセレント」と社内で言ってたりしましたが。

だから別にそれがホットペッパーじゃなくて、じゃらんになってもそのチームやノウハウは通用する。製品が何か、上長が誰かということは関係なくなるわけです。結果として、それが組織として、もっと広く言うと日本の会社の世界での競争力にもつながる。そんな風に考えています。

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――リクルートでは2年前からIT重視を宣言して、採用にも力を入れています。

古川:正直リクルートの文化ってネットやITそのものとはちょっと相性悪いかも知れないですね。クライアント重視だったり、営業重視だったりという面はどうしてもあるので。例えば検索結果のコンバージョンが悪いので変えようと思った時も、全国各地の営業さんに説明をしないといけません。だからそう簡単にコロコロ変えることはできないんです。これはどちらが悪いというわけじゃなくて、文化的な背景が違うだけです。

なのでそれこそ(リクルートがITを重視するなら)キャッシュがあるうちに若いIT企業を買収してしまった方が早いかもしれません。違う文化を取り入れたほうがいいんじゃないかと。例えばリクルートは2年で100億売り上げて30億利益を出すという基準で物事を進めたりしますけど、ネットの世界はそういう時間軸じゃないですしね。FacebookやTwitterのようにユーザー拡大期はとにかく投資してシェアを獲得してから、利益を取りに行く。そんなネット文化的な会社をDNAに組み込んでいったほうがいいのかなと。

目標についての考え方も違うのかなと。グーグル、アマゾンも上場しているにも関わらず、売上を目標にするのではなくて、シェアや技術革新を重視しているんです。長い目で見て、イノベーションを起きやすくすることに注力している気がします。

ちょっと否定的なコメントになってしまいましたが(笑)、でもリクルートの規模で自律的にいろいろなことができる環境はなかなかありません。そもそも、あれだけの失敗を重ねるのは当時のベンチャーだと難しかったですから。

ただ、いまは起業環境が整ってきていますから、以前に比べれば資金調達も柔軟にできます。アイディアとスキルが優れていれば、始めから独立したほうが成功の可能性が高いかもしれません。だから、自信があるのであれば特定の会社に就職せず、はじめからそういう世界にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

リクルートが優秀な人を取るためのこのブログ(HRナビ)でこんなことを言ってしまっていいのか? と思いつつ……ですが、リクルートは心が広いので、きっと載せてくれるのかなあと思っています。

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