新卒2年目のcameranアプリ開発者に聞いたMTLの開発環境(前編)

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ITエンジニアが活躍する場はひと昔前に比べて大きく広がり、また質的にも変化してきている。質的変化と言っても、単にスマートフォンアプリやウェブサービスといった新しいプラットフォームに合わせて新しい開発言語が必要になると言うだけではない。これまでエンジニアの仕事ではないと思われていた領域まで、エンジニアが携わることが可能になってきた——ということだ。

そんな新しい時代のエンジニアにとって大きな課題が新しいスキルや知識をどのようにして学ぶのか、という点だ。単にプログラミングの問題なら、上司や先輩に質問したり、Googleで検索してサンプルコードを探したりすればいい。しかし、単なるコーディングに止まらない問題をどのようにクリアしていけばいいのか。新しい時代のエンジニアは、そういった従来とは異なるレイヤーにおける課題解決能力が必要になってきている。

リクルートの実証研究機関であるメディアテクノロジーラボ(MTL)の笠島靖夫(かさじま・やすお)さんは、新卒で同社に入り、斬新なカメラアプリ「cameran」の開発を皮切りに多くの経験を積んできた。今ではリーン・スタートアップやグロース・ハックに長けた人物として、社内で高く評価されている。そして入社から数年で、そうした学習機会を得ることができたのは、MTLだからこそと言える。

笠島さんはMTLという場で、どのように経験を積んできたのだろうか。今回は前編(後編は明日公開)。

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わからないことでも周りに解決の糸口があふれている

笠島さんは新卒でリクルートに入社し、新入社員研修の後、すぐにメディアテクノロジーラボに配属。「学生の時から個人でアプリを作ったり、会社を立ち上げたりしていました。リクルートに入った時点では、アプリもWebもやるという、いわゆるフルスタックエンジニアでした」

「学校では、最初に心理学、脳科学とかから始まって、生物学に行ってそれで物理もやって、最後は数学でした。実はプログラミングは全くやっていなくて、インターンで行った会社でプログラミングの面白さを知り、そこから独学で勉強しました」

リクルートというと「営業の会社」というイメージが強いかもしれない。過去には新卒入社した場合、ほとんどの社員が志望職種にかかわらず一度は営業の現場に配属されることも多かった。しかし、現在ではエンジニアとそれ以外の職種と採用の時点で分かれており、エンジニアなら新卒でも最初から開発に専念できる。笠島さんは、こうした採用方針をリクルートが取り入れてから2期目の入社にあたる。

「入ってすぐに『cameran』というカメラマンの蜷川実花(にながわ・みか)さんが監修したカメラアプリのiOS版のエンジニアを担当しました。その後はcameranシリーズの『cameranアルバム』の技術責任者として全体を見ていました」

『cameran』は蜷川さんの知名度に加えて、彼女の独特の世界観を手軽に体験できるというユニークさが評価を集め、MTLがリリースしたアプリの中でも最大のヒットとなった。笠島さんは配属直後から『cameran』の開発を担当。アプリ開発の経験があるとは言え、画像処理やサーバー構築についてはあまり経験がなかった。

「カメラアプリはまったく作ったことがなくて、自分で勉強が必要なことが多かったですね。開発に集中できる時間はあったので、画像処理の本を読んだり、わからないところは英語の論文を引っ張ってきたりもしました」

「実は、フィルターのロジックを自分で全部書いたんですよ。蜷川実花さんの極彩色の世界を再現できるフィルターは、これまで存在しなかったんです。仕方がないのでごりごりとコードを書きました。あれはめっちゃ時間がかかりました(笑)。僕は、画像処理のノウハウがなかったので、同期の画像処理に詳しい人に必要な情報をどうやって調べたらいいのか教えてもらいました」

「サーバーの事も全くわからなかったのですけど、専門的な人がいて聞くとすぐに教えてくれました。例えばリクルートではじめてAWSを導入した人がMTLにいたので、AWSのセキュリティ周りのことはとても勉強になりました」

「あと、この場所(MTLカフェ)があるので、社内でわからないことがあったら、外から人を呼んで来て講演してもらうこともできました。iOSの大きな勉強会も、ここで何度か開いています」

「MTLカフェ」とは、オフィスに設置された「カフェ風」のレイアウトや内装が施されたスペースのこと。本当のカフェではないが、打合せや作業に集中したい場合に利用できる。また、社内外から講師を招いて勉強会も頻繁に開いているという。

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「MTLはリクルートの中で、新規事業を開発するための組織。だから『ユーザーが集まるなら何をやってもいい』みたいな雰囲気があるんですよ。『cameran』も、正直、リクルートの他の事業とは関係がないけど『やろうぜ』という感じで始まった。そんな風にできる組織というのに、びっくりしました」

「例えば『LINE』や『Pinterest』みたいなサービスって、リクルートの既存事業からは生まれて来ないんですよね。もちろん、会社としては買収するという方法もあります。けれども、ああいったIT分野における新しい時代を築くようなものが、社内で作れないと、これからは駄目なんだと思います。『cameran』も既存の事業とは関係がないけれど、こういうものを作れるマインドを持っている人がいて、実際に作れるということを見せるのも目的のひとつなんです」

単に新規事業を生み出すだけでなく、業界や社会に大きなインパクトを与えるほどのものを生み出す。実際にリクルートの過去の事業を振り返ると、出版や情報産業において新しいビジネスを生み出してきた歴史の積み重ねだ。ITが社会の中心となった今、IT分野における新しい何かを生み出す。そのためには既存のビジネスや方法論に捕らわれないことが必要というわけだ。

後編はこちら