VASILYの梶谷氏に聞く「RECRUIT Growth Hacker Month」開催の意義とは?(前編)

最近、ウェブサービスやスマフォアプリ開発者の間で「グロースハック」と言葉が良く使われるようになった。ヒトコトで言えば、UX(ユーザーエクスペリエンス)の改善を通してプロダクトを成長させるための方法論や実践的知識の体系のこと。ただ、シリコンバレーを中心に数年前から徐々に成功例とともに浸透してきたグローハックという言葉も、まだまだ日本では一部の先進的な開発者やWeb系企業が試行錯誤で実践したり、その概念の普及に努めているというところ。

そんな中、今年2月にリクルートがシリコンバレーからグロースの専門化を招き「RECRUIT Growth Hacker Month」を開いた。通常こうしたイベントは、せいぜい2日間程度で終わるものだが「Month」とあるように1カ月間マルっと多数・多地点で講演やグローサソン(グロースハックのハッカソン)を立て続けに行うという興味深いイベントとなった。

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米著名アクセラレーターの500 Startupsで投資先企業のグロースに関するアドバイスをハンズオンで行っているアンドレイ・マリネスク氏や、GoogleでGoogle Analyticsに関わった後にデータ分析のためのプラットフォーム、Keen.ioを創業したカイル・ワイルド氏、A/Bテストプラットフォームで世界一と言っていいサービスの1つ、Optimizelyの創業者兼プレジデントであるPete Koomen氏まで登壇。そして、日本ではまだほとんど知られていないもののグロースハック界隈で話題となっている書籍「Hooked」の著者で、消費社行動心理学の専門家、シリアルアントレプレナーでもあニール・イヤール氏も来日するなど、豪華な顔ぶれだった。

当日のレポートは、

など、リクルートのサイト上にもコンパクトにまとまっているので是非参考にしてみてほしい。

リクルート主催のこのグロース関連イベントは当然広く関心を呼んだ。そして、期間中毎週開かれたエキスパートとのミートアップに参加して、その内容を丁寧にレポートしたブログが注目を浴びた。スマホ向けファッションアプリ「iQON」を開発するスタートアップ「VASILY」の梶谷健人さんのブログだ。梶谷さんは、VASILYでグロースハッカーを務めながら、ブログでグロースハックに関する情報発信を行っている。

梶谷さんによるRECRUIT Growth Hacker Monthのレポートは、参加者だけでなくグロースハックに興味を持つ多くの人の間で話題となり、以下のように、いくつかの記事はソーシャルネットワーク上でのシェアが1000を越えた。

これ以外にも熱心にグロースハッカーに関する情報発信を続ける梶谷さんに、『Growth Hacker Month』とグロースハッカーへの思いをうかがった。

本当の意味でグロースハックの話が聴けたイベント

そもそも梶谷健人さんは、VASILYで「グロースハッカー」として働いており、名刺の肩書きもグロースハッカーとなっている。そんな梶谷さんが、日本では前例がないほど大規模なグロースハッカーイベントに興味を持つのは、当然のことだった。

vasily01「日本にはグロースハックの情報が全然ないので、自分で海外の情報を調べたり、自分で試行錯誤したりしながら、同時にブログで発信していた。だから『これは行くしかない』と思ったんです」「日本だと本当の意味でグロースハックの話しが聴けるイベントがない。だから、Growth Hacker Monthのミートアップは本当に面白かったです」

梶谷さん自身の思いとイベントの質とがあいまって、一連のエントリーに結びついたという。結果、ブログの反響は非常に大きなものとなり、関連する5つのエントリーのどれもが、数百単位でシェアされ、中には1000を越えてシェアされるものもあった。

「ヤフーをはじめとする多くのIT企業の中でもシェアされたと聞いて、すごくうれしかったです。でも、これほど反響があるということは、それだけグロースハッカーに関する本質的な記事があまりないということだと思います」

そもそも梶谷さんが考えるグロースハックの定義は「ユーザーの動きを分析し、ユーザーの数や質を成長させる仕組みをプロダクトの中にユーザーエクスペリエンス(UX)レベルで組み込むこと」だという。

つまり、現時点でのプロダクトがユーザーからどのように評価されているかを分析し、それに基づいてキャンペーンや広告などの周辺施策だけでなく、プロダクト自身も改良していくことが必須なのだ。この「プロダクトの改良」という点が、一般的なマーケティングの考え方とそもそも異なっている。

「マーケティングと一番違うのは、製品ありきではなくて、製品を作る段階からユーザーに受け入れられ、ユーザーがもっとシェアしたくなるようなプロダクトとは何かを考えるところ。製品開発の段階から成長のことを考えるのがグロースハックかなと思っています」

つまり、製品自体がそもそも魅力的でユーザーに受け入れられるものであることが前提であり、そのような製品を作り出すために、開発段階からグロースハッカーが係わっていく必要があるというわけだ。この「ユーザーから見たプロダクトの評価」が、プロダクトの初期段階で非常に重要だ。

この要素はグロースハックにおいて、「プロダクトマーケットフィット=PMF」と定義されており、これが一定の数値を超えないプロダクトは、そもそも失敗だと見なされ、ピボット、つまり方向転換する必要がある。

そもそもグロースハックとは、シリコンバレーで生まれたリーンスタートアップと呼ばれる方法論に関係が深い。新しいプロダクトやサービスを立ち上げ、かつイノベーションを持続させる。そのために当たるかどうかわからない博打ではなく、当たりそうなアイデアを効率的、体系的に製品化する手法なのだ。

「このあたりが誤解されているんですよね」と梶谷さんも強調する。グロースハックという言葉を作り出したショーン・エリス氏も「始めからグロースハックに取り組んでも絶対に上手く行かない、と言っています。土台となるPMF、つまり『このサービスが今日なくなるとしたら、あなた困りますか?』という質問をターゲットにして、それが40%を上回らないと、どんなにグロースハックをしても意味がないんです」と語っているという。

後編に続く