JINS MEMEはGoogle GlassよりFuelbandに近い!? 開発秘話を聞いた

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手軽でおしゃれ、かつ実用的なメガネを提供している大手アイウエアブランド「JINS」。そのJINSから、メガネ型のウェアラブルデバイス「JINS MEME(ジンズミーム)」が発表された。見た目はメガネそのものだが、自分の体調などを知ることができるのが特徴。そこで、開発に携わったR&D室リーダーの一戸晋さんに、開発秘話やいったいどんなことができるのか、JINS MEMEの可能性についてお話を伺った。

JINSは、「アイウエアを通じて人々の生活を豊かにする」という理念の元、バラエティに富んだメガネフレームの開発・販売をはじめ、液晶ディスプレイから発生するブルーライトをカットして、眼の疲労を軽減する「JINS PC」を発売するなど、常にメガネを通じて革新的な展開をしているメーカーだ。

そのJINSから、ウェアラブルデバイス「JINS MEME」が発表された。見た目は、シンプルなメガネそのものだが、実はかなり先進的な技術を搭載。JINS MEMEには、画期的な新技術が搭載され、視線を通じてその人の状態を可視化することができるというのだ。

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眼の動きから疲れや眠気を可視化する

-まず、JINS MEMEについて簡単にご説明していただけますか?

「眼球の動きやまばたきといった情報を元に、JINS MEMEを掛けている人の疲れの状態や眠気などを可視化するというものです。JINS MEMEではまばたきや視線移動などの情報を読み取り、スマートフォンなどのアプリを使って今の自分の状態を知ることができます」

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これがJINS MEME。見た目は普通のメガネそのもの。現段階ではデザインの違う3種類が発売予定となっている。

−−Google Glassなどのウェアラブルデバイスとは異なるということですね。

「Google Glassは、メガネのなかにスマートフォンが入っているというイメージです。一方JINS MEMEは、NIKEの「Fuelband」のようなイメージです。メガネは計測するためのデバイスで、アウトプットはスマートフォンのアプリなどで行うというものです」

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右側のテンプルに電源ボタンがある。スマートフォンとBluetoothで通信。計測時はLEDが点灯する。

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左テンプル下側に充電用のUSB端子がある。これ以外はほぼ普通のメガネと同じデザインだ。

-どうしてJINS MEMEを開発しようと思ったのですか?

「東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授のところに、何かメガネを使ってできないだろうかと相談に伺ったのが始まりですね。そこで、眼電位を三点で読み取ることができるという話が持ち上がりました。眼電位とは、眼球が動くときに発する電位差のことなのですが、これを計測すると、眼の動きから人間の視線をトラッキングすることで、個人のより深いところから得られる深度および精度の高いデータ、いわゆる『ビッグデータ』ならぬ『ディープ・データ』が得られます」

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眉間部分と両方の鼻パッド部分がセンサーとなっている。この「三点式眼電位センサー」の開発が、JINS MEMEのポイント。

「これまでは、眼電位センシング技術は4点式が主流で、計測には大掛かりな機材と環境が必要でした。川島教授から眼の周囲の三点で計測する方法をご提案いただき、それならメガネのような形状のものでも眼電位が計測できるのでは、ということで開発を開始しました。その結果『三点式眼電位センサー』の開発に成功しました。

もうひとつのきっかけが、関越自動車道で長距離バスの事故です。これは運転手の居眠り運転が原因だったのですが、もし事前に眠気を察知できていたら、事故を未然に防止できたかもしれない。それができれば、JINSとして、社会に意味のある商品になるのではという思いがありました」

-眼電位は、眼の動きやまばたきといった情報を読み取るということですが、そこから人間のどういう情報が読み取れるのでしょうか。

「現段階では、我々が眼電位を使って分析している情報は、眠気や精神的な疲れなどです。これからの研究課題としては、人間の興味関心ですね。何に興味を持ったのか、何に注目しているのかということもわかるのではないかということで、研究を進めています。今まで数値化、可視化が難しかった人間の心理状態や、自分が意識する前に起こっている現象を、実際に眼に見える形でユーザーにアウトプットするということを目指しています」

疲れがたまる前に、疲労の指数お知らせすることで快適な労働環境に

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-今回、一戸さんがご自身でJINS MEMEを掛けていらっしゃいますが、とてもウェアラブルデバイスには見えません。すごいですよね。

「実際に掛けてみていただいた方から、そういったお言葉をいただいていて、とても嬉しいです。元々、JINSは軽くて掛け心地のよいメガネを追求してきたブランドですので、そこに関しては特にこだわりを持って開発してきました」

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現在開発中のアプリ。疲れ、眠気、体軸の測定ができる。

-アプリケーションの話もお伺いしたいのですが、JINS MEMEと連動するアプリケーションは、現状どんなものがあるのでしょうか。

「メインになるアプリケーションは3つです。ひとつが精神的な疲れを独自の単位『me』で表すもの。言い換えれば、心の元気度を示してくれるものとも言えます」

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疲れを計測するアプリ。「me」という独自単位で疲れを表す。時間経過とともに疲れ度をグラフ化することもできる。

「次が、眠気を可視化してくれるもの。最後が、自分が歩いているときに、自分の身体の軸や活動量を表示してくれるものとなっています。最後のアプリは、JINS MEMEに搭載されている加速度・角速度センサーを利用してデータを取得しています」

-「me」という単位はどのように算出しているのですか?

「詳しくはまだお伝えできないのですが、疲れてきたり眠くなってきたりすると、眼球が通常とは違う、特徴的な動きをするという実験結果があります。それを実際に検出したときに、ちょっと休んだほうがいいですよというお知らせをします。

慢性疲労という言葉がありますが、疲れはあるしきい値を超えてしまうと、ちょっと休んだくらいでは治らないんです。逆に、その手前であれば15分ほどの休憩で劇的に回復します。ここで目指しているのが、しきい値を超える前のタイミングで、ちょっと休みましょうというアラートを出すことなんです。眠気に関しても同じことが言えます」

現段階ではスマートフォンのアプリケーションという形ですが、将来的にはそのほかのツールが教えてくれる可能性もあります」

-エンジニアだったらば、上司へ疲れ度を数値化してプレゼンできますね。

「働いている人の健康管理などの面で活用されるようになってくれると非常に嬉しいと思います。先生方との研究でのエビデンスやアプリケーションの精度が信頼を生んで世の中に認知されるようになってくると、これらがオフィスのなかで実際に使われることが当たり前になって、みなさんの労働環境が変わってくるのではと思っています」

医療、スポーツから合コンまで活用範囲は広い

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視線を計測することも可能(写真は体験用のアプリ)。眼球の動きを測定することで、どこを見ているのかを判別できる。

-現在は疲れや眠気といった測定ができるわけですが、それ以外の可能性の例はありますか?

「合コンでの活用とか(笑)。男性女性が5人ずついたら、全員にJINS MEMEを掛けてもらって、誰がどの人をどのくらい見たのかということがわかれば、お互いに誰を意識しているのかが可視化されて、マッチングできたりといったことができるのではと思っています。そういうアプリケーションが出てくればおもしろいですね」

-どこをどれくらい見ているかということがわかるのならば、マーケティングへの活用という可能性もありますね。

「通常のマーケティングの効果測定では、機材を使うことから、自然な行動をとるというのが難しくなります。しかしJINS MEMEならば、普通のメガネを掛けている状態と変わりませんから、より自然な計測ができるはずです」

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まばたきの回数も計測可能(写真は体験用アプリ)。まばたきにより人間の感情を読み取る実験が進めば、活用方法が広がるだろう。

-医療分野でも活用できると思いますが。

「川島教授によると、認知症の患者さんは歩き方が変わるそうなんです。高齢者の方に掛けていただき、普段の歩行状態をモニターすることで、調子が悪くなる前に変化に気づくことができると思います」

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体軸は、JINS MEMEに内蔵されている加速度・角速度センサーを利用して計測。身体がどの角度に傾いているかを計測できる。

-体軸のブレを計測できるアプリケーションがありますが、その使い方のひとつということですね。

「体軸の計測に関しては、慶應義塾大学でスポーツ医学を研究されている橋本先生といろいろな実験をさせていただいています。健康のために歩いている方が、歩きすぎて膝や足首を悪くするということがあるそうなのですが、その際にJINS MEMEを使うと、歩き方のおかしな点を指摘でき、どこに負担がかかっているのかがわかります。そのデータを見ながら、運動量を制限するといったことも可能になります」

-スポーツ選手の体調管理などにも使えそうです。

「歩く、走るというのはいろいろなスポーツの基本です。その歩いている状態、走っている状態を手軽に毎日計測できるようになれば、体調管理に有効です。」

いつものメガネに「プラスα」がJINSの目指すところ。

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-エンジニアの方のなかには、JINS MEMEのアプリを作ってみたいと考えている人もいると思います。取得できるデータや、APIがどういう形で提供されるのか、気になるところです。

「取得できるデータは、眼がどこを向いているのかということと、まばたき。あとは体軸のデータです。APIに関しては、どこまでご提供できるかというところは検討中です。眼の動きを使ってさまざまなアプリケーションやインプットデバイスとして活用できるような開発環境は用意したいと思っています」

-どういうエンジニアの方に興味を持ってほしい、協業したいと思っていらっしゃいますか?

「個人的には、JINS MEMEを使えば今まで自分が温めていたアイデアを実現できると思っている方。あとは、一般のユーザーが受け入れやすい、楽しいと思えるようなものを作ってくださる方ですかね。この2軸で参加していただければいいなと。メガネはみんなのものなので、幅広い層がフラットに楽しめるアイデアを持っている方に、どんどんアイデアを教えていただきたいと思います。

秋くらいには、開発者向けにJINS MEME本体と開発環境の両方を提供できるように進めています。2015年春のJINS MEME一般発売の際には、いろいろなアプリケーションをJINS MEMEを使って楽しめる状況を作っていきたいですね」

-今後、JINS MEMEというメガネ自体を、どのようのアップデートしていきたいと思っていますか?

「ハードウェアの面では、デバイス部分をどれだけ小さくできるかだと思っています。メガネとして、どこまで自然にできるかというのが、ひとつのチャレンジです。我々はアイウエアブランドだからこそ、メガネ作りのノウハウを活かし、今回のようなメガネを開発できたのだと思います。メガネに新たな付加価値を与えるということこそ、JINSがウェアラブルデバイスをやる意義なのだと思います」