起業家鼎談に学ぶ、「起業してからわかる会社員時代の失敗の意味」

 

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起業家のさまざまな失敗談から学ぶカンファレンス「FailCon Japan」の中で、「一般企業に就職してからの起業:会社員時代の失敗をどう起業に生かしてきたか」と題し、クラウドワークス吉田氏・Cyta.jp有安氏・グッドパッチ土屋氏によるパネルディスカッションが行われた。会社員時代を経て起業家となった共通点を持つ3名。彼らの口から語られるドラマの中には、失敗から立ち上がって前を向き続ける強靱さと、起業を純粋に楽しむ無邪気さがあった。

<登壇者>
吉田浩一郎氏(写真中央)
Founder & CEO, CrowdWorks
crowdworks.jp – @yoshidaCW
1974年生、東京学芸大学卒業後、パイオニア、リードエグジビションなどを経て、株式会社ドリコム執行役員として東証マザーズへの上場を果たす。2011年
に日本初の本格的クラウドソーシングサービスである株式会社クラウドワークスを創業。デジタルガレージをはじめとしたVCから10億円以上の資金調達を行い、日本で最も注目されるベンチャー企業の一つとして事業を展開している。日経ビジネス「日本を救う次世代ベンチャー100」に選出。

有安伸宏氏(写真右)
Founder & CEO, コーチ・ユナイテッド
Cyta.jp – @ariyasu
慶應義塾大学環境情報学部卒。大学在学中に株式会社アップステアーズを創業。大学卒業後は、外資系消費材メーカーのユニリーバ・ジャパン株式会社へ
入社。東アジア市場をターゲットとしたブランド開発・市場調査等のマーケティング業務に従事。同社退職後、2007年1月にコーチ・ユナイテッド株式会
社を設立、代表取締役に就任。語学・楽器・スポーツなどの個人レッスンのマーケットプレイス「プライベートコーチのCyta.jp(咲いた.jp)http://cyta.jp/」を運営。2013年10月に同社をクックパッド社へ事業売却。

土屋尚史氏(写真左)
Founder & CEO, Goodpatch
goodpatch.com – @tsuchinao83
東京をベースとしたUIデザインカンパニー株式会社グッドパッチの創業者。Webディレクターとしてキャリアを重ねた後、2011年にサンフランシスコに渡
りWebデザイン、マーケティング、リサーチ・ブランディングを提供するコンサルティング会社btrax Inc.にて日本企業の海外進出サポート、SFNewTech JapanNightなどのイベント企画に従事。2011年、帰国後UI設計・デザインに特化した株式会社グッドパッチを設立。サービス開始直後の「Gunosy」にUIデザインを提供しサービス成長に貢献。その後も大企業の新規事業開発やスタートアップのサービスにUIだけではなく、サービスデザインから関わりサポートしている。

会社員時代の鬱憤は起業へのエネルギー?!

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土屋:会社員時代の失敗を起業に生かすっていうのはどうもピンと来なくて。経験が全然違いますよね。そもそも会社員時代の記憶って、あんまりないんですよね。

吉田:分かります。何だかぼんやりしますよね。有安さん、会社でケンカした話とかないんですか?

有安:納得行かないことはいっぱいありましたけどね。でも、ぼくあんまりケンカで勝てなくて。ユニリーバ時代は上司が台湾人の女性で、周りも全員外国人だったんで、言い合いになってもすぐ丸め込まれちゃうんですよ。それで、英語で闘っても無理だなと思って、日本語で闘うようになってから、やっとちょっと伝わるようになりましたね。

吉田:あ、FailConなのに成功話だ! 土屋さんはそんなにケンカしないですよね?

土屋:ぼくがいた会社っていうのがですね、新しい技術やサービスをまったく採用しない会社だったんです。Webの制作会社ですよ? 当時「jQuery」が出始めたときで、すぐに「これはすごいぞ!」とお客さんのサイトに実装したら、お客さんがすごく喜んでくれたんですよ。なのに、上司に見せたら「何だこれ! 消せ!」って言われて。

吉田:なんで!?

土屋:「お前が勝手なことをすると他のディレクターが対応できなくなる」って言われて。「いやいやいや…勉強せぇ!」って感じですよね。ある程度の給料をもらっていたし、子どもも生まれるときだったんで、2年半くらい、在籍していたんですけど。その間は学校に通って仲間を集めたりしながら、起業の準備をしていました。

有安:吉田さんは大きいケンカありますよね。

吉田:私、パイオニアにいたときにイス投げました。「お前ふざけんなー!」って。営業部だったんですけど、営業目標に行かないのに、家庭の事情のせいにして逃げてる人がいて。転職前に上司から「今は分からないと思うけど、これだけは覚えておいてくれ」って言われたのが、「お前は個人としたら優秀かもしれないけど、仕事っていうのは、他の人もいるからできていることも、あるんだぞ」って。後になればなるほど痛いですね…。あれ、みんなイスは投げたことない?

有安:ないです(笑)。だって社会人ですよね? 吉田さんベンチャーに行ってから逆に真人間になった感じがしますよね。

企業をやめるタイミングは的確に見極めよ

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吉田:逆に、企業にいて良かったことはある?

土屋:さっきの会社があまりにもマインドが合わなくて、やることなすこと「絶対、俺だったらこうするのに」とか「こうした方がいいのに」と思うことばっかりだったんですよ。仮に、前の会社がすごく社員を大切にする会社で、いろんなステージが用意されている状態だったら、もしかしたら起業しなかったんじゃないかなと思っていて。恵まれた環境だったら、ハングリーさが出て来ないんですよね。そういう意味で、会社にいるときは「すぐやめてやる!」とか思っていましたけど、今はその会社にいて良かったのかなと思っていますね。

吉田:なるほどね。私は社会人のしっかりとしたマナーを身につけられたことが良かったですね。これって、結構でかくて。最近のインターネット業界って、もうインターネットだけじゃ完結しなくなってるんですよ。例えば、訪問したときに下座で立って待ってるとか、どうぞと言われるまでお茶に手を付けないみたいな、社会の符号のようなものをちゃんと教えてもらえたことは、すごく良かったですね。

土屋:それはありますね。「学生から起業する」のと「社会人を一回挟んで起業する」のと大きく分けて2つあって、早く学生のうちに起業した方が、突き抜けた発想ができるとか言われるんですけど、やっぱり自分が社会人として働いた経験は起業してから少なからず生きていて。マネジメントの基礎も分かるし、ビジネス的な勘所が分かってるっていうのは重要かなと思いますね。

有安:ぼくの場合は、たった2年しかいなかったんですけど、もうちょっと早めにやめれば良かったなと。学んだことはあったけど、2年もいなくて良かったなと思いますね。意思決定が半年遅れたなと。

土屋:確かに長くいすぎたらダメですよね。居心地良くなっちゃうから。年齢が上になればなるほど年収も上がりますし、自分の思うようにいろんなことができてしまうから、起業はしにくくなると思いますよね。

誰も教えてくれないお金のこと

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有安:通帳って見ますか?

土屋:見ます、見ます。昔、自転車操業で社員の給料を払った後に銀行の預金残高が4万円になったことがあるんで。でもこれって、ほとんどの起業家の人が経験しているんですよね。数千円の人とかもいましたよ。

吉田:ぼくは結構早めに銀行融資を受けたんですよ。数千万円ですけど。自己破産するんだろうなというのはあったけど、それ以降は残高が怖いっていうのはなくなりましたね。

土屋:銀行融資は起業した直後の方が借りやすいですよね。ぼくは起業してから10カ月後くらいに、これはちょっとやばいかもしれないから借り入れしなきゃと思ったんですけど、そこから準備すると確実に一期目の決算を迎えないと融資が受けられないんですよね。でも一期目って全然売上が立ってないときなんで、起業した直後だったら1000万円借りられたのが、100万円とか200万円のレベルになっちゃうんですよ。これは起業して初めて知りましたね。

有安:あぁー。今は起業する人も多いから情報もあふれてるけど、昔はそんなことなかったですしね。

土屋:実は去年、社員が20人くらいいる中でキャッシュアウトしたんですよ。2期目の決算で2000万円とか利益が出そうになったんで、いきなり税金で1000万円持っていかれると厳しいなと思って、社員にボーナス出したり、社員旅行に連れて行ったりしたんですよ。それでも入金があったら回る計算をしてたんですけど、保険料がすごくて。想定してた倍したんですよ。ボーナスに保険料がかかるって知らなくって。知っていました?

吉田:てか、そんなにボーナスたくさん上げたんですね。

有安:ほんっと、税金は半端ないですよね!

会場からの質疑応答

Q.起業したときに事業計画は作りましたか? 計画通りに行っていますか?

有安:ぼくの場合は「今月の目標は食って行く!」っていうところから始まりました。いついつまでに何億達成とか、意味がないと思っていて。野心は大事ですけど、まずはいろんな仮説検証の方が大事なんで。

吉田:ZOOEE」のときは、2社からコンサル契約をもらって半年で150万円ってところからスタートしてるんで、まずはそれでサバイブしてみようと。事業計画もへったくれもなかったですね。何をやる会社かすら決めてなかったんで。クラウドワークスのときは計画はなかったですけど、決めてたことはいくつかありました。プロダクトがしっかりしていない間に営業を始めるとプロダクトがどんどんぶっ壊れちゃうんで、創業から2年は営業禁止にしたんですよね。まずはユーザーエクスペリエンスを最優先にして、SEOもSEMも含めて営業は一切しない。半年くらいかけて基本的なサービス設計ができたら、次はSEOだけをやったんです。するとオーガニックでどれくらいの流入があるか分かるようになるので、その次はSEM。リスティングを増減させてPDCAを回して、Webでどれだけのトラフィックを集められるか見えてから営業を始めました。ベンチャーあるあるで、不安だから全部やっちゃうんですけど、そうすると何がキードライバーでKPIなのか分からなくなる。2年経って事業が回り始めたときに、初めて目標を立てました。

土屋:うちも当然、計画は何もなくて。ただ、最初に借り入れとかをするのであれば出さないといけないですけどね。Excel遊びで何の根拠もないんですけど(笑)。ぼくは事業が回り始めないと全然イメージがわかなかったので、作ってないです。

Q.最適な資金調達の方法と金額の決め方は?

有安:資本構成とかってすごく難しくて、分からなさすぎてぼくが全部株を持つことにしました。その代わり、うまくいったら給料を上げると。でも大きい勝負をして勝ちきるためには、必要な資本構成があって然るべきだと思っていて。ケース・バイ・ケースだと思うんですけど、大きいビジネスをやるなら、リスクマネーをしっかりと準備する。つまり、融資じゃなくて投資で用意するのが大事だと思います。

土屋:ぼくも株は100%持つというのだけは決めていました。最初の資本金は祖母の遺産だったので。去年、デジタルガレージから1億円の出資を受けたんですけど、そこにはそんなに計画性はなくって、「それ以下なら借り入れで調達するわ」と思ったので。どういうビジネスをやるかですよね。新たな市場とか大きなところを狙うんじゃなければ、借り入れの方が資本コストが安いんで、借り入れでちゃんと返す方がしがらみもなくて楽っていうのは、あると思います。

吉田:クラウドワークスでは、創業時の仲間に対して「結構もらった」と思ってほしかったので、給与はほとんど言い値で上げています。その方がマネジメントコストがかからないんですよ。お金はコモディティなんで、給与を抑えながらマネジメントするというよりは、ある程度が納得行くものを払いながら、その分を資金調達してくるという考え方をしています。相手を信用できるなら言い値で上げて、その代わりコミットしてねっていうやり方がいいと思いますね。

(野本纏花)