使えるオープンソースライブラリ -CMS編-

 

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Creative commons: Some Rights Reserved. Photo by kevin

WEBサイトを構築する上で、今や欠かせない存在となったコンテンツ管理システム=CMS (content management system)。「オウンドメディアやコンテンツ配信を、うちも導入したい」という案件が来るのはうれしいけれど、管理ツールは数も多い。選択肢の多さは、かえってエンジニアにとって頭痛のタネではないでしょうか。

そこで今回は、数あるCMSのなかでも代表的な10のツールを比較し、それぞれの特徴からどのようなサイト向けなのかを検討してみました。

■小~中規模サイト制作に適したCMS

WordPress(ワードプレス)

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2014年7月現在、利用されている世界のCMSツールのうち60.4%のシェアを誇るのがWordPressです。ブログ構築用に開発されたツールですが、今ではコーポレートサイトに適したCMSとしても重宝されています。

使用するユーザーが多いこともあって、テーマやプラグインの充実度は群を抜いていると言えるでしょう。それだけではなく、プラグインを利用すれば本格的なECサイトやコミュニティサイトも構築可能という優れものなのです。また、ブログに慣れているユーザーであれば、技術者の手を煩わせなくても自分で更新できることは大きな強みと言えます。開発者としては、そうした手離れの良さもセレクトする理由になっているのでしょう。

機能の追加は至って簡単。基本的にはパッケージ化されたプラグインを選んで、インストールするだけでできてしまうため、拡張性を持たせたい小・中規模サイトに向いています。一般的なコーポレートサイトなら、これを選んでまず間違いはないツールと言えます。

ただし、あくまでもブログ用に開発されたCMSのため、サイトの目的がはっきり決まっているのなら、それに適したCMSを探したほうが機能性を高められると言えそうです。

baser CMS(ベーサー・シーエムエス)

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数多あるCMSツールのなかでも珍しい日本発のツール。コアシステムにCakePHPを使用しているのが大きな特徴です。コンセプトは「コーポレートサイトにちょうどいいCMS」。

あまり使わない機能を省き、シンプルな構成が人気の秘密です。メールフォーム、スマホ・携帯対応、地図表示など、多くのユーザーにとっての「必須機能」を網羅しています。マニュアルやソースのコメントも日本語なので分かりやすいのはうれしい限りですね。「Wordが扱えれば更新可能」と謳われているように、簡単に更新ができるため、発注者側で更新したいというリクエストがあった案件で重宝しそうです。

また、1システムで複数サイトの管理が可能なため、シンプルなコーポレートサイトを複数構築するのに適しているCMSです。導入事例一覧はこちらから。

SOY CMS(ソイ・シーエムエス)

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baser CMS同様、純国産のCMSがこちら。シンプルで軽快、柔軟な構造が特徴で、テンプレートの記法は、HTMLの読み書きレベルで理解可能な点も使い勝手のいいところ。各種プラグインやSOY Appなどによる拡張性も備えています。

また、既存サイトからの移行のしやすさもSOY CMSの特徴のひとつ。静的ページを主体としたサイトに、新たにCMSを導入したい場合には最適な選択肢と言えます。ただ、このCMSは大規模サイトの構築を苦手としています。大量のページを想定しているのなら他のCMSを選ぶべきでしょう。制作事例の一覧はこちらより。

concrete5(コンクリート・ファイブ)

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次いで、アメリカからのセレクトがconcrete5。日本語公式サイトもあります。機能の一部でZend Frameworkのライブラリを使用しているのが特徴のひとつです。公式サイトもconcrete5で構築されていますので、デモサイト代わりにチェックできます。

採用されているシステムは独特の多層的な構成で、各領域のオーバーライド構造により高い拡張性を確保しています。構造を理解するための手間は掛かりますが、慣れてしまえば追加機能の開発やカスタマイズは他のCMSよりやりやすいと言えそうです。

何よりうれしい機能が、直感的な編集機能。インラインエディタを使ってコンテンツをダイレクトに編集できるため、管理画面の操作に慣れていない担当者でも運用が可能です。ただし、IE6には非対応。そのため運用を決める前に、クライアント側の動作確認環境や、制作要件となているブラウザのバージョン確認は忘れないようにしておきたいですね。

Geeklog(ギークログ)

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セキュアなシステムがコンセプトで、Geek=技術オタクの名の通り、熱心な開発者たちが「穴」をいち早く見つけ、アップデートし続けるCMSです。日本のユーザーコミュニティも活発なので、困ったときでもスムーズに解決できることが多いと人気が出ています。こちらのCMSでの制作事例一覧はこちらのページにて。

コアにブログ機能を実装しており、ブログを備えたコーポレートサイトには最適でしょう。それだけではなくユーザー権限も細かく設定でき、グループウェアとしても使えます。こうなると、大手サイトでの導入実績が待たれるところですね。

■大規模サイトに適したCMS

Joomla!(ジュームラ)

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世界市場でWordPressに次ぐ人気を誇るCMSです(Aboutページはこちら)。豊富な機能と拡張性が特徴で、テンプレート内でのコンテンツ配置を簡単に入れ替えられるなど、デザインを容易に変更可能なのがその人気の秘密。ただし、最初の機能理解が導入のハードルとなっているようで、多機能すぎる点がユーザーに「使いにくい」という認識を持たれやすいようです。

また国内ユーザーが少ないため、日本語での情報が少なく、マルチカテゴリを適用できない点がネックとなってか、日本ではまだまだ普及していないのが現状です。とはいえ、歴史も実績もある実力派CMS。ニュースサイトなど情報発信を目的とする中・大規模サイトでなら最有力候補でしょう。

Drupal(ドルーパル)

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第三位グループに位置する対抗馬的CMSがこのDrupal。高機能を謳うだけあって、初期状態でも複雑な情報サイトを比較的簡単に構築できるのが人気の理由です。さらに高度なカスタマイズも可能で、デザインの自由度も高いのは大きな特徴でしょう。

本来は会員制サイト用のCMSで、ユーザー権限を細かく管理でき、拡張モジュールを利用すれば登録ユーザー別のブログまで実装できるのです。ただ、まだ日本での導入は少なく、カスタマイズに必要なスキルも相当高いものが要求されるのですが、将来性が期待されるCMSには間違いありません。

口コミなどのCGMサイトやマッチングサイトなど、多数のユーザーを前提としたWEBサービスで、その真価を発揮しそうです。

eZ Publish(イージー・パブリッシュ)

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個人ブログから大規模な多言語ウェブアプリケーションまで実装できる、ノルウェー発の高機能CMSがこちら。

多段階のワークフローや権限管理、OpenOffice文書のインポート・エクスポート、多言語対応のサイト運営など、公的機関や大企業向けの機能が充実しているためか、世界の名だたる企業、官公庁、教育機関がこのCMSを採用していることで知られています。もちろん日本国内の導入実績も多数あるのですが、開発者向けの日本語の情報が少ない点は気になるところでもあります。

OpenCms(オープン・シーエムエス)

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Javaを使用したドイツ生まれのCMSがこちら。ページエディタでのレイアウト変更やインラインエディタでのコンテンツ編集など、直感的な操作が最大の売りのCMSです。もちろん、他のCMSに劣らない各種機能も実装しているため、より実用的とも言えそうです。ガイドツアーページはこちらから。

ただ、カスタマイズや機能追加にはJava・JSPの知識とスキルが必要なため、導入の難易度は高くなっています。コンテンツ作成に集中できる直感的UIが運用の負担を軽減してくれることが大きなポイントですね。

高度なキャッシュ機能でレスポンスも良好なため、サーバーへの負荷を軽減できることはうれしい限り。そのため、大量アクセスも予想される大手サイト構築に向いていると言えるでしょう。

■その他、機能を特化したCMSについて

EC-CUBEosCommerceZen Cartなど、かつて一世を風靡したECサイト用CMSは、WordPressをはじめとするCMSの高機能化でそのシェアを奪われつつあります。連携プラグインでCMSを併用可能な場合もあるのですが、WordPressのWelcartなど、カート系プラグインの高機能化が進んでいるため、あえて選択するケースは限定されるでしょう。

XOOPS cubeOpenPNEなどのコミュニティサイト向けCMSも似たような状況にあるようです。FacebookやTwitterなど新タイプのSNSの登場で時代遅れになった感は否めないですね。

Elgg(エルグ)

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今流行のソーシャルネットワーキングフレームワークがこれ。Facebookのような公開型からMicrosoft Sharepointのような内部向けまで、SNSを独自に構築可能です(主な機能等の紹介はこちら)。海外では多数導入されていますが、日本での導入実績は少なく日本語の情報も限られているのは残念な限り。ただ、機能拡張プラグインやデザインテンプレートが豊富に準備されているのは大きな魅力です。英語での開発に抵抗がなければ有望な選択肢になりうるでしょう。

まとめ:エンジニアならではの選び方

CMSを選ぶ場合、現在のシェアの多寡や実装している機能も重要ですが、エンジニアなら将来性にも着目したいですね。まだ使い勝手は悪くても活気のあるユーザーが多い、あるいは対応に好感を抱けるベンダーなら大いに期待できるでしょう。

今回取り上げた以外にもまだまだCMSは多数存在します。そして、そのひとつひとつに、ダイヤの原石である可能性があるもの。それらを見つけて磨き上げ、輝かせるのはエンジニアの腕次第なのです。そうした原石を発見していくことこそが、これからのCMSの発展に役立つのではないでしょうか。

(塩崎省吾)