プラスチックハンガー日本一の老舗メーカーが、モノづくりプラットフォーム「Geeks」を始めた理由とは?

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福岡のマルソー産業株式会社は、クリーニング事業者向けのプラスチック製クリップ・ハンガーを自社ブランドにて企画・製造・販売を行っている日本トップシェア企業である。1975年の老舗製造業社である同社が、モノづくりプラットフォーム「Geeks(ギークス)」を2014年5月にスタートさせたのはご存知だろうか。

3Dプリンタの普及とともに広がりを見せるMAKERSの波に、日本の老舗製造企業がどのように立ち向かうのか。その取り組みについて代表取締役 三浦政景氏にくわしく話を聞いた。

新しいモノづくりを「将来の脅威」として捉えたくなかった

—— まずは「Geeks」について教えてください。

「Geeks」は、モノづくりに関するアイデアを投稿して交流できるサイトです。誰かが投稿したアイデアに対し、デザイナーやエンジニア、モノづくりのプロである製造業者の方々などが交流することで、オリジナル製品をつくっていきます。

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そうして形になったアイデアは、「Geeks」と同時にリリースしたクラウドファンディングサイト「Geeky Factory」で商品化を目指すこともできます。「Geeky Factory」はモノづくりに特化したクラウドファンディングサイト「zenmono」が提供するASPサービスを利用しており、金銭だけでなくマーケッターやセラーなどの人的なリソースも同時に募り、量産・販売まで包括的に支援していきます。

—— 「Geeks」を始めるきっかけは何だったのでしょうか。

弊社では米国に製造販売子会社を有しており、その米国展開の中で「メーカーズムーブメント」を目の当たりにしてきました。でも、それを「将来の脅威」として捉えたくはなかった。

従来、プラスチックハンガーに特化して、独自性のある商品の開発と大量・高効率生産を追求してきた我が社ですが、デジタルファブリケーションやオープンソースの流れを、「活用して楽しむもの」として捉えたかったんです。

そこで、社内の有志メンバーを募って勉強会を重ねる中で、「Geeks」を事業として始めるに至りました。

—— 「Geeks」と「Geeky Factory」を分けて構築されたのはなぜですか。

当初はアイデア(発想・ニーズ)から商品化・事業化につながるようなサイトを構想していましたが、すでにモノづくりに特化したクラウドファンディングとして、株式会社enmonoが運営する「zenmono」があったので、そのクラウドサービスを利用することにしました。

あえて切り離すことで、商品化の制約にとらわれることなく、自由に交流を楽しむサイトとして「Geeks」を活用してもらいたいと思いました。日々リアルな製造を行っている中小製造業者の弊社が運営することで、プラットフォームとして固有のテイストが生まれて来ること参加者の間口や発想の自由度が広がることを期待しています。

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技術力に誇りを持ちながらも進化し続ける老舗メーカー

—— プラスチックハンガー製造と「Geeks」のシナジーはどのようなものを想定されていますか?

直接的には期待していませんが、「Geeks」の運営から得られる体験や出会いを通じて、商品開発・製造・販促などの発想や方法をより良いものに変えていけるといいですね。それによって、会社全体が柔軟性や幅広い視野を持っていけると考えています。

—— 貴社のプラスチックハンガー製造過程でも3Dプリンタは使われているのですか?

10年ほど前から、新商品の開発過程で、形状確認などに使用しています。3DプリンタよりもCNC(コンピュータ数値制御)の方が精度と強度が高いので、形状によっては今でもCNCでの切削を採用しています。

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—— 貴社ではこれまでにもECなどオンラインのマーケティングには積極的に取り組まれてきたのでしょうか。

いえ、6年前にホームページを作成しただけです。

—— 福岡には気軽にモノづくりが楽しめる場所がありますか? リアルではなくオンラインの場を提供されることにした理由を教えてください。

いくつかすでに存在していますが、「気軽にモノづくりが楽しめる場所」とまではいっていないのが現状です。リアルな場とうまく連携して、コミュニティ作りの一助となれるように意識して活動を行っています。また、「Geeks」がそこに集う人々の情報交換のツールとして機能するようになると、うれしいですね。

新たなモノづくりネットワークがもたらす新しい風

—— 「Geeks」の運用体制はどのようになっていますか?

まだローンチしたばかりなので「Geeks」の専任担当者は1名ですが、各部署にメインメンバーを定めて協力してもらうことで、全員参加型の活動となるように工夫しています。Webサイトの構築や運用はenmono社との業務提携をベースに行っています。

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—— 今後、モノづくりはどのように変化していくと思われますか?

デジタルファブリケーションやオープンソースに関する現状は、ラピッドプロトタイピングが容易になったことを実感する程度ですが、小ロットでも採算のとれる商品の幅が広がるといった技術革新の流れは、緩やかながらも着実に進んでいくのではないでしょうか。

—— 貴社の今後の展望についてお聞かせください。

弊社のリソースである、デザイン・設計などのスキルや、モノづくりのリアルなノウハウ、日米の販売・物流拠点を活かしながら、「Geeks」でニッチでも個性のある商品が生まれやすくなる環境を実現していきたいです。そのためには、日本の魅力ある「町工場」やコワーキングスペースとのつながりや、米国の「Makerspace」での交流など、弊社を取り巻くネットワークも活用できるのではないかと考えています。

また、「Geeks」を通じて生まれる「リアルな体験・出会い・学び」を現業にフィードバックして活かすという好循環を生むことで、現業の競争力維持や、リソースの他分野への展開機会の獲得などをしていけたらと、期待しています。

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(野本纏花)