オープンソース「ハードウエア」を牽引する女性エンジニア、レディ・エイダとは?

hrnavi_matsuoka140704_580

Creative commons: Some Rights Reserved. Photo by TechCrunch

1991年に初めてリリースされ、今もなお、世界のユーザーによって改良されているオープンソース型OSの「Linux」をはじめ、Webブラウザ「Mozilla Firefox」、プログラミング言語Python、Webアプリケーション開発フレームワーク「Ruby on Rails」など、誰でも無償で入手でき、自由に改良したり、再頒布できる“オープンソース”は、1990年代頃からソフトウエアを中心に進化してきました。そして近年、この概念が、ハードウエアの領域にも広がっています。

女性エンジニアとして初の『WIRED』表紙に

オープンソースハードウエアの発展を語るうえで欠かせない人物が、リモア・フリード(Limor Fried)さんです。19世紀に活躍した初の女性プログラマー、エイダ・ラブレス(Ada Lovelace)にちなみ、「レディ・エイダ(Lady Ada)」の愛称でも知られるフリードさんは、オープンハードウエアムーブメントの先駆け的存在。2011年、女性エンジニアとして初めて米誌WIREDの表紙を飾り、2012年には起業家向け経営誌『Entrepreneur』で“優れた起業家”に選ばれたことでも話題となりました。

子どもの頃から、電子デバイスを改良したり、ガジェットを自作することが趣味だったフリードさんは、マサチューセッツ工科大学(MIT)に進学し、電子工学とコンピューターサイエンスを専攻。講義で学んだ知識やスキルを用い、MP3プレーヤーやシンセサイザーなどのガジェットをゼロベースから自作するという、学生とエンジニアとの“二足のわらじ”を履きこなしていました。さらに2003年。大学院1年生だったフリードさんは、ウェブサイト「ladyada.net」を開設。自身の実験の成果やそのプロセスをチュートリアルとしてまとめ、インターネット上で公開をはじめると、技術者やガジェットフリーク、DIY愛好家など、さまざまなユーザーが続々と集まり、情報や知恵を共有し合うオンラインコミュニティーへと成長していきました。

このオンラインコミュニティーから発展したのが、2005年にフリードさんが創設した「Adafruit Industiries」です。米ニューヨーク市マンハッタン区を拠点とし、USB充電器「MintyBoost」やツイッターを活用した電力使用量測定機器「Tweet-a-Watt」などのDIYキットを製造・販売しています。

『ギフトショップ』が付属する教育企業。その心とは?

これらDIYキットの最大の特徴は、オープンソースライセンスが付与されていること。企業秘密としてブラックボックス化したり、知的財産権として独占することなく、プロダクトの中身をオープンにし、ユーザーがこれを自由に改変することを認めています。また、ユーザーのものづくりや電子工学などの学習に役立てるべく、コードやチュートリアルも、数多く公開されています。

このような徹底したオープンソース志向には、「エイダフルーツ・インダストリーズは、ギフトショップが付属する教育企業」と言い切るフリードさんの強い信条が反映されています。競争優位の源泉として最も重要とされる知的財産をすべて開放することで、多くの人々のものづくりや学びに寄与し、オープンソースハードウエアという新しいムーブメントをさらに進化させようとしているのです。

インターネットによって、世界中の人々がつながり、多くのアイデア・知識・ノウハウ・スキルが共有され、時間や場所を超えたコラボレーションが可能になりました。

このような環境のもと、フリードさんは、エイダフルーツ・インダストリーズが提供するプロダクトや有形・無形のリソースのみならず、この会社自体をオープンソース型企業として存立させることによって、世界中のものづくりに刺激をもたらし、次世代の科学者や技術者たちにポジティブな影響を与えて続けています。

(松岡由希子)