いつでもどこでも一流大学の講義を受けられる! MOOCの広がりとその進化

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MOOCプラットフォームの代表格「コーセラ(Coursera)」のトップページ

MOOC(Massive Open Online Course)とは、インターネット上で無料で受講できる大規模な公開オンライン講座のこと。近年、欧米の一流大学を中心に、MOOCを通じて、高等教育をオープンアクセス化しようという取り組みが広がっています。

700万人以上の受講者を対象に無料授業を開校。スマホ端末を使っての受講も

とりわけ、2012年4月、米スタンフォード大学のAndrew Ng教授とDaphne Koller教授が創設した「コーセラ(Coursera)」は、MOOCをサポートする代表的な教育オンラインプラットフォームとして知られています。このプラットフォームでは、米イェール大学スタンフォード大学英ロンドン大学東京大学など、110の提携校が、700万人以上の受講生を対象に、700を超える講座を実施。2014年以降は、iOSアプリやAndroidアプリでも展開し、受講生それぞれの生活スタイルや習熟ペースに合わせて、いつでもどこでも、大学の正規プログラムの授業と同等の講義を学べるよう工夫されています。

また、コーセラでは、2014年4月、クラウドソーシング型の翻訳コミュニティ「グローバル・トランスレーター・コミュニティ」を創設。コーセラで実施されている講義は英語によるものが多く、グローバル規模で学びの門戸をひらくうえで“言葉の壁”が課題になっていました。そこで、このコミュニティでは翻訳ボランティアを募り、教育コンテンツの翻訳に着手しています。

コーセラは、このように高等教育のグローバル化を推進する一方、ローカルの視点から学びの場を形成する取り組みとして、2013年から「Learning Hubs(ラーニング・ハブ)」というイニシアチブを実施しています。これは、公共図書館や大学のキャンパスなど、インターネットの接続環境が整備された場所を“校舎”として、受講生たちがともにコーセラの講座を学ぶというもの。自宅でインターネットが利用できなかったり、独学でオンライン講座を修了することが難しい受講生を地域レベルでサポートするのが狙いです。2014年4月、ニューヨーク公立図書館(New York Public Library)が米国で初めてこのイニシアチブに参加したほか、メキシコ・中国・インド・ケニアなどでも、この取り組みが進められています。

アラブ圏、欧州、そして日本でも。英語圏以外にも浸透するMOOCの波

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英語圏以外の国でも、MOOCのためのオンラインプラットフォームが続々と開設されています。例えば、2013年10月に独ベルリンで創設された「iversity.org」には、独ハンブルグ大学、欧州大学院(European University Institute)、スペインのマドリッド・オートノマ大学など、欧州の一流校が参加し、ドイツ語やロシア語の講座を数多く実施。また、2014年5月には、アラブ諸国でも「Edraak」という教育オンラインプラットフォームが開設され、アラブ諸国におけるオンライン教育システムの発展に向けた第一歩として話題となりました。国内においても、2014年4月より一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会(Japan Massive Open Online Courses:JMOOC)による講義が始まり、NTTナレッジ・スクウェア社が提供している「gacco」を通じて、日本の有数大学の講義が既に行われています。

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米ハーバード大学の1年間の学費は、およそ400万円。世界の一流大学で学ぶには、高い学力はもちろん、高額な学費が必要であり、それゆえ、経済格差が教育格差をもたらすという深刻な課題が存在します。また、教育者や研究者にも、自らの知見やノウハウをより多くの人材に届けたいというニーズはあるでしょう。

場所や時間という物理的な制約を越え、いつでもどこでも必要な教育を受けられるMOOCは、これらの課題の解決策のひとつとして大いに期待されています。今後、より多くの人々にMOOCを届けるためには、インターネットをはじめとするインフラの整備はもとより、パソコン・スマートフォン・タブレット端末へのマルチデバイス対応、教育コンテンツの多言語化、コーセラの「Learning Hubs」のようなオンラインとオフラインを融合させた、ハイブリッド型の学びの場の創設など、ハード・ソフト両面から、さらなる進化が求められそうです。

(松岡由希子)