「けんすう」が語る、コミュニティサイトをコントロールするための5つのポイント

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スタートアップ業界のリーダーたちが、どのように失敗や苦労に直面し、それを乗り越えてきたかを聞くイベント「FailCon」。世界12都市で開かれている同イベントが、6月18日に日本に「FailCon Japan」として初上陸した。国内外の多数の著名な起業家がスピーカーとして登壇したが、中でも聴衆からの注目を集めたのが、生活の知恵が集まる情報サイト「nanapi」を運営する「けんすう」こと、株式会社nanapiの古川健介氏。今回は、けんすうさんのスピーチを紹介しよう。

「CGMサービスを作る上での失敗」と題された古川氏のスピーチでは、インターネットの興隆とともにさまざまなCGMサービスを生み出してきた、経験に基づく豊富な知見が披露された。

ユーザーをコントロールしながら収益化を実現する難しさ

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まず、学生時代の19歳のときに古川氏が作ったのが、「ミルクカフェ」という匿名型のコミュニティサイト。ユーザーが投稿しやすいよう、古川氏が全責任を負う形でサービス運営をしていたために、度々警察から呼び出され、訴訟での損害賠償額は6800万円にものぼったという。「超ウケると思って。ぼくも学生だったので、払えるわけないんですけど。公的機関だったらまだしも、宗教団体の人が右翼を使って『街宣車呼ぶぞ』とかね。そういうこともあって、めんどくさいなぁと思うようになりました」(古川氏)

そして古川氏が次に携わったのが、レンタル掲示板「JBBS@したらば」(現「したらば掲示板」)。レンタル掲示板なので、管理責任は運営の手から離れるし、ユーザー自身が自分の掲示板をどんどん宣伝してくれ、アクセス数は2003年に3億PVをたたき出すまでになった。「これはかなりいいんじゃないかと思った」と語る古川氏。しかし、収益化は思うようにいかず、最終的にはライブドアに事業譲渡せざるを得なくなった。「レンタル掲示板はユーザーにとって自分のものだという意識が強いので、広告が貼りづらいんですよ。流行っているからサーバ費用がかかるのに、お金が入らない。成長すればするほど、お金がなくなっていくような感じでした」(古川氏)

そんな古川氏は、「意見を交換するものは人が傷つくから、主語がない方がいい。これからやるならポエムだなと考えた。けれども、来なかったんですね。結構ぼくビックリしたんですけど」と語り、会場は爆笑の渦に包まれた。

検索で解決できることとできないこと

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こうしてたどり着いたのが「nanapi」である。「いろいろ考えて、人の意見がぶつかり合うようなものはトラブルが多いし、かといってポエムほど振り切るとニーズがない。そこで、生活に便利な情報を投稿するサービスを立ち上げました」(古川氏)

古川氏が当初「nanapi」で目指したのは、「Wikipedia」のハウツー版。しかし、ハウツーはコンテンツの粒感がバラバラで、主観か客観かという問題もつきまとう。投稿するユーザーによって、コンテンツがあらゆるレイヤーにわたるので、難しいことがわかったという。

「最近気付いたのが、そもそも“検索で解決できるもの”と“検索で解決できないもの”が、結構あるなぁという風に思いました」と語る古川氏。例えば、「nanapi」で検索キーワードを見てみると、「さみしい」がベスト3くらいに入っているというのだ。「さみしいときに人は『さみしい』って検索するんだって思って。でも『さみしい』って検索してもいい情報は得られないんですよね。あまり問題が解決されないので、即レス型の『アンサー』を作りました」と語る。「アンサー」は悩みや疑問をおしゃべりしながら解決するためのチャットアプリだ。

「仕事に行きたくないって結構な悩みなんだけど、検索してもしょうがないんですね。『仕事行きたくないー』って言ったときに、『俺も』みたいな、『俺も』の2文字さえあればいい。解決はしてないけど、楽になるっていうことが起こっています」と話し、アンサーで生まれるコミュニケーションから、解決の糸口が見つかるのだという。「お遊び的なものから真面目なものまで全部解決していけるよう、緩い関係性とかつながりとか、その場の雰囲気を作るというのをやっています」(古川氏)

コミュニケーションサイト運営における5つのポイント

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古川氏は、「人と人のコミュニケーションは思い通りにいかないというのが、15年くらいやっていて思っていることです。会社は給料をもらえるから基本的にみんな働いてくれるんですけど、コミュニティサイトの場合、かなりモチベーション設計をしなければいけない。行き過ぎると誹謗中傷が増えるし、緩くし過ぎると情報価値がないということになるので、かなり難しい」と語り、これまでに気付いたコミュニティサイト運営におけるポイントを次の5つにまとめた。

1.ロジカルに考えない

意味ないことをやらないとコミュニティはうまくいかない。「2ちゃんねる」のおみくじ機能とか、「Facebook」のPoke機能とか、そういうものが必要。

2.数字で考えない

コミュニティには数字で考えてロジカルにやるのは向かない。ここの数字が伸びているから、この機能を強化しましょうとかやると、なぜか壊れる。

3.意味不明にする

意味とか価値が説明できる機能って、なんかイケてない。わかりやすいものがいいとか、UIはシンプルで使いやすい方がいいと思いがちだけど、決してそうじゃない。わかりにくいからこそスティッキネスになったり、知りたくなるという人間の心理がある。

4.ゴールを明確にしない

ゴールを明確にするとつまんない。ゴールとかどうでもいい。

5.手段を目的化する

目的に向かって手段をあてるというアメリカな考え方じゃなく、手段自体を目的化することが大事。人間が生み出すものは目的のために作り出すよりも、それ自体がめちゃくちゃ楽しくて盛り上がって行く方が強いと思っている。

「コミュニティサイトとビジネスの失敗はかなり違うと思うんですね。コミュニティの話は非言語な部分がほんと多くて説明しづらいんですが、あえてゴールを明確にしないで、この機能をつけてみたら、ユーザーさんはどういう反応をするかなというのを見てみるというのが大事だったりします」と語り、ユーザーに寄り添ったサービス設計の重要性を説き、講演をしめくくった。

(野本纏花)