実店舗で店員がタブレットで説明、米百貨店に見る「オムニチャネル」の実践例

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オムニチャネルに先進的に取り組むメイシーズ(筆者撮影)

インターネットで事前に商品や価格に関する情報を入手し、店舗で実際に商品を見てから購入の是非を判断したり、店舗に陳列されている商品の情報をその場でスマートフォンから調べるなど、現代の消費者は、商品の認知・検討・購買実行という一連の購買行動プロセスにおいて、オンラインと実店舗を自由に行き来し、より高い利便性を享受するようになってきました。Googleとマーケティングの専門家で構成される「Google Shopper Marketing Agency」の調査結果によると、スマートフォンユーザーの84%が、実店舗で商品購入の判断にスマートフォンを利用していることが明らかにされています。

このように、実店舗・オンラインを問わず、消費者それぞれのニーズや好み、シチュエーションに合わせ、より利便性が高く、快適で、豊かな顧客体験を提供する手段として、コミュニケーションチャネルや流通チャネルのすべてを、シームレスに統合・連携させる「オムニチャネル(Omnichannel)」が、昨今、小売業界を中心に注目されています。

とりわけ、オムニチャネルに先進的に取り組む企業として知られているのが、米百貨店メイシーズ(Macy’s)です。2008年から実店舗と自社のECサイト、モバイルサイトとの連携・統合を進め、2012年7月以降は、オムニチャネルを専任する担当役員のもと、商品在庫データや顧客データの一元化に向けた社内システムの大幅な改修や、物流機能の抜本的改革にも取り組んでいます。

メイシーズの実店舗では、販売スタッフにタブレット端末を配布。来訪客に代わり、この端末を使って商品情報を調べたり、在庫の有無を確認し、店舗にない商品は、自社ECサイトや他店舗から調達して、直接、顧客の自宅などに配送するサービスも行っています。また、メイシーズの公式スマートフォンアプリでは、限定クーポンが配信されているほか、店内の商品についているバーコードを読み取ると、その商品の詳細情報や価格、カスタマーレビューなどがスマホ画面に表示されるスキャン機能を搭載。スマートフォンを介して、実際の商品とオンライン上の情報を連携させ、これまでにない、より便利で豊かな顧客体験を提供しています。

オムニチャネルのコンセプトをプロモーションに活用している事例もあります。例えば、米アイスクリームブランドのベン&ジェリーズ(Ben & Jerry’s)は、2014年7月、ニューヨーク市とオレゴン州ポートンランド市で、Twitterを使ったオムニチャネル型プロモーション活動「ベン&ジェリーズ・スクープ・トラック(Ben & Jerry’s Scoop Truck)」を展開。定期的にトラックの現在地をツイートする特設アカウント(@BenJerryTruck)をフォローし、プロモーション用トラックと実際に出会えれば、その場で新商品のアイスクリームが無料でもらえる、というものです。ツイッターというオンライン上のコミュニケーションチャネルと、試食品を配布するリアルな場とを、効果的に連動させている取り組みといえるでしょう。

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ポートランド市内を巡回する「ベン&ジェリーズ・スクープ・トラック」(筆者撮影)

消費者におけるオムニチャネルへのニーズは高まりつつあるものの、企業がこれを実現するためには、テクノロジーの積極的な活用はもとより、物流プロセスから実店舗での接客サービスに至るまで、社内のあらゆる組織・機能・業務での大幅な変革が求められます。2008年からオムニチャネルに着手しているメイシーズがまだ道半ばであることからも、それが決して容易でないことがうかがえます。

それゆえ、その導入に際しては、「オムニチャネルによって、何を実現したいのか?」を明確にした上で、オムニチャネルをプロモーション施策に取り入れた「ベン&ジェリーズ・スクープ・トラック」の例のように、個々の施策から取り組みはじめるのが、現実的かもしれません。

(松岡由希子)