SNSよりも夢中になれるものを作れ!ライフハッカー編集長が語る「デジタルデトックスの極意」

 

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米田智彦(よねだともひこ)ライフハッカー[日本版]編集長。1973年生まれ。研究機関、出版社、ITベンチャー勤務を経て独立。編集者・ディレクターとして出版からウェブ、ソーシャルメディアを使ったキャンペーン、プロダクト開発、イベント企画まで多岐にわたる企画・編集・執筆・プロデュースに携わる。著書に『僕らの時代のライフデザイン』(ダイヤモンド社)等がある。

デジタルデトックスとは?

デジタルデトックスという言葉を聞いたことがあるだろうか? SNS依存から脱却するための試みとして、最近注目されている生活スタイルのことである。端的に言うと、「ネットやスマホ、パソコンといったデジタル環境の負の側面(依存的な面)から離れ、オフラインの時間を取り戻す」こと。日本でも「SNS疲れ」という言葉が聞かれるようになって久しいが、アメリカではその状況を脱却すべく、より積極的にデジタルデトックスを行おうとする動きが起きているという。『クーリエ・ジャポン』のこの記事では、カリフォルニア州のナバロで開催されているデジタル・デトックス・キャンプの取り組みを紹介している。強制的にオフラインの環境を作ることでSNS依存から抜け出し、「本来の自分」を取り戻すことが目的だ。

国内でもデジタルデトックスについて実践し始めている人たちがいる。ライフハッカー[日本版]編集長の米田智彦氏もその一人だ。米田氏はスーツケース1つで東京を旅するように仕事をしながら回る「ノマドトーキョー」の実践者で、『デジタルデトックスのすすめ「つながり疲れ」を感じたら読む本』(PHP研究所)を出版している。そんなデジタルデトックスの先駆者でもある米田氏に、この新しい試みについて聞いてみた。

Googleやジョブズも導入するオフラインの時間

――デジタルデトックスはアメリカではどのように導入されているのでしょうか? 例えばデジタルデトックスの一環として「禅」を取り入れる企業もあるようですね。

米田:Googleには社内スペースに”歩行瞑想”専用の迷路があるのが有名ですね。もともと欧米ではヒッピーの流れから東洋思想に触れようと思った人もたくさんいたと聞いています。その血がシリコンバレーにも流れているんですね。仏教とか禅の知識は、日本人よりカリフォルニアにいる人のほうが詳しいこともありますから。Facebookも社内に瞑想ルームを作っています。

――スティーブ・ジョブズも禅を追究していた、というのは有名な話ですね。

米田:彼が永平寺で修行しようと本気で考えていたというエピソードもありますし、外部情報に頼らず、自己を深く見つめる、デジタルデトックス的なことをしないと、イノベーションが起きないということを直観的に気づいていたのではないでしょうか。

米田さんがデジタルデトックスを始めたきっかけ

――米田さん自身は、どのようにデジタルデトックスに至ったのでしょうか。そのきっかけを教えてください。

米田:2013年の夏に感染症の病気を患ってしまって、スマホを見られないくらいうなされる毎日が続きました。ここでネットに触れないという状況を久しぶりに味わったんです。考えてみれば、本当に私のことを心配していたら電話してくるのが普通だし、別にオンラインに常につながっている必要がないということに気づいたんですね。そこで、デジタル環境から身を離す「1カ月デジタルデトックス月間」というものを始めました。Facebookのカバー写真やTwitterの背景に「ネット断食しています」という文字を貼り、ほかの人との連絡は電話かメールに変えました。ここから、SNSの整理やネットでの情報収集の仕方を根本的に見直すことにしたのです。

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数時間から始められるデジタルデトックスの方法

――IT関係、特にエンジニアは四六時中オンラインにつながっていることが多いですが、エンジニアでも実践できるデジタルデトックスを教えてください。

米田:実は数時間バージョンと1日バージョンがあります。数時間バージョンは「プール」に行くことですね。「プールなう」はつぶやけないですから(笑)。都内ならどこにでもプールがありますし、ジムでも1日体験コースがあります。泳げない人は歩けばいいんですよ。情報機器から離れてずっと水の中で歩いてみてください。するとすごくネットがしたくなると思います(笑)。そこで禁断症状と戦ってみましょう。そうすれば、思考がどんどん変わっていきます。いつもは明日とか明後日のことで頭がいっぱいじゃないですか。でも泳いでいるうちに、思考が「俺は人生で何をしたいんだ?」とか「そもそもこういう生き方をしたい」といった、解像度の大きい(視野の広い)物事を考えるようになるんですね。ある種、根本的な、哲学的なことを考えるようになります。プールで2時間歩くことって、結構苦痛ですよ。でも元気になるんです。深い呼吸をしながら身体感覚を研ぎ澄まして考えることで、結構良いアイデアが浮かんできます。

――1日バージョンはどのような感じですか?

米田:ずばり、「スマホを置いてどこか田舎に行く」のがいいですね(笑)。本当にスマホの圏外に行ってしまうと危険なので、人がたくさん登る山が良いです。加えて、靴だけは山用のものを買ってください。用意ができたら、まずは高尾山とか神奈川県の大山に行ってみる。高尾山とか大山なら、迷ったら人に聞けば教えてくれますし。案内所もあるので、「どうやって登るんですか?」と聞いてみればOK。下山したら、すごく元気になっていますよ。

初めは独りで登ってみて、次に登るときは「デトックスが必要そうな人」を誘ってみる。例えばスマホが圏外になっただけでイライラするような人。私自身、「山社交」というサークルを作って山登りをしています。メンバーはウェブマーケティングとか起業家とか、山に登る機会の少ない人を誘ってやっています。全然お金も掛かりませんし、めちゃくちゃ楽しいですね。

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オフラインの時間なくして良質なアウトプットはない

米田:私はノマド・トーキョーをはじめ、3年ほどSNSを使った生活実験を続けていました。24時間365日ずっとオンラインでつながっていたんですね。すると、すぐ結論を求めようとする自分がいたのです。長編小説も読めなくなってしまうくらい。映画も一本全部見られないようになってしまいました。どんどん思考が浅くなっているのがわかったんです。ものを作る人間って、ある程度長時間頭で考えてアウトプットしないとダメで、流れてくるフィードを追っかけるだけでは、オリジナルのものを生み出せないんです。誰かの言葉でしかものを言えない人間になってしまう。仕事としてものを作っている人間として、これはすぐにネタが切れてしまうという危機感がありました。時間経過に耐えうるもの、明日とか明後日とか来年というわけではなく、5年・10年と色あせずにコンテンツを作るにはどうすればいいかなと思ったときに、やはり「情報環境」から身を離さないとできないだろうと思いました。SNSなどに流れてくるものって、コンテンツとしては寿命が短いと思うんですよね。ある程度深い、時間を掛けたものは時間経過に耐えられるのではないか、ということも直観的に感じていました。

エンジニアやネット記事の編集者などもそうですが、ネットを見ないわけにはいかない業種の人たちは、意図的にデジタルデトックスという概念を作って、自分の中で距離感を保つ時間を用意しないといけないと思います。ずっと「情報のスカッシュ(Facebookメッセージを使ったやりとりなど)」みたいなことを繰り返して、気づいたら人生終わっているということになりかねないですし。

ネット以外で夢中になれるものを見つけよ

――オンライン漬けになりがちなエンジニアの皆さまに一言アドバイスをお願いします。

米田:月~金はオンライン漬けになるのはしょうがないと思いますが、週に1回くらいはオフラインにして携帯を家に置いて家を出てみる、ということをやってもらいたいですね。まずは携帯無しで何時間くらい持つのかやってみてください。圏外になるのが不安なのは、「夢中になることがない」から不安なんですよ。だから、まずは夢中になることを見つけてください。夢中になってしまって、気が付いたら数時間オフラインだった、という状況を作るのが理想ですね。

(安斎慎平)