10年後、日本人のエンジニアが持っておくべき必須スキル

 

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「この先10年間に起こることを正確に洞察するとは、この10年間の流れを正確に把握、総括した上でその延長線上としてこれから先10年を見通すことである」

吉野彰:リチウムイオン電池の発明者。『リチウムイオン電池物語』(シーエムシー出版)より

「今まさに時代の変化のまっただ中に我々は生きている」。数年前から意識していたけれども、その変化はここ最近加速の一途をたどっています。それは、IoTしかりで、世界中でイノベーションの嵐がまきおこっています。その変化の波についていけない企業も増加の一途をたどっている反面、ことIT業界においては新興企業がばんばん登場しています。こと、エンタープライズ系に関しては、これからも需要が期待されます。しかしながら、イノベーションの影には雇用喪失の存在があり、こちらはなかなかスポットの当たらない部分ではあります。

これは、エンジニアにも言えることで、その原因は、社会のグローバル化にあります。ここ数年、エンジニアの価値はデフレ傾向にあるといわれています。エンタープライズ系はリスクが高いからといって、小規模開発に特化すればするほどこのデフレは止まりません。「早い、安い、うまい」を実現するには物価の安い海外にアウトソースしなければなりません。逆に言うと海外の企業やエンジニアをしっかり活用できている企業は利益を伸ばせるわけです。そうなると、ただ提示されたものを無難に設計し、組むだけのエンジニアは必要なくなってくるわけです。

英語を話せるだけではもうNG。一歩先ゆくエンジニアはコミュ力が違う

「グローバルな場では、英語力をつければよいというものではありません。TOEICの点が高くても、それだけでは意味がないのです。要は、「個」として人脈を作る力があるのか、コミュニケーション力の重要性です」

内永ゆか子:日本の経営者。英語スクールのベルリッツ・インターナショナルインク会長。香川県出身。東京大学理学部物理学科卒業後、日本IBMに入社。同社で専務まで勤め上げる。その後退社し、NPO法人J-win理事長などを経てベルリッツ・インターナショナルインク社長・会長の言葉

海外にコーディングをアウトソースしようとすれば品質管理がネックになります。私の知人はインドに静的ページのコーディングを依頼したら全ページ、フレームでコーディングされて納品されたと嘆いている方がいらっしゃいました。こういった事態を防ぐためにも、海外とのブリッジとなるエンジニアが必要になります。ちゃんとした細かい指示を英語で行えて、進捗も管理できるようなエンジニアは今後ますます重宝されると思います。契約書などの公的文書の作成レベルの英語力とは言わずとも(細かくいえば、文化や宗教的な知識も必要になるのでしょうが)、せめて仕事において円滑にコミュニケーションがとれるくらいの英語力は必要になるでしょう。

部署を横断した提案能力があれば、社内のやり取りも円滑に

「エンジニアと一般の人のコミュニケーションは違う」

森川亮:日本の経営者。「NHN Japan(のちのLINE)」社長の言葉

よく海外のエンジニアと日本のエンジニアのコミュニケーション能力を比較されますが、海外のエンジニアにとって、コミュニケーション能力は「あってあたりまえ」。その上で、エンジニアとしての能力が問われます。日本のエンジニアの方で高いコミュニケーション能力を持っている人は非常に貴重です。そもそも仕事柄、ロジカルな思考を持っているはず。それをうまくアウトプットでき、ロジカルではない部分(感覚や直感的な)を共有できるエンジニアは生き残っていきます。例えば、開発案件を企画段階から参加できるような、むしろ企画書がかけるようなエンジニアを、喉から手が出るほど欲しがる企業はどんどん増えてきます。言われたものを作るのではなく、何を作るべきかを言えるエンジニアは強いです。

エンジニアのスキル+他業種の知識=本人の可能性

「今までは、専門家が主導してきたと思いますが、これからは、分野を問わずプロとして仕事に携わっている人、自分の夢やビジョンを持っている人、こうした人たちすべてがインターネットの未来を構築する人になるのです」

村井純:慶應義塾大学環境情報学部長・教授。『インターネット新世代』(岩波新書)より

IT化の波はほとんどの業界に浸透しつつあります。そもそもIT化により、企業の課題を解決するわけですから、その企業の属している業界知識も、エンジニアにとって必要になってきます。これは、無駄のない開発にもつながります。IT業界は歴史が浅い分、他業界からの転職組がかなり多いです。そうなると、得意分野の業界なんかもできてくるわけです。しかしながら、これから大学を卒業して、システム会社に就職する方はずっと同じ業界なわけです。とは言え、他業界に就職しろというわけではなく他業界の知識は持っていて損はないでしょう。

Webのトレンドにアンテナを張り、優れたUI/UXを体現させるデザイン力

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Creative Commons: Some Rights Reserved. Photo by Michael Himbeault

「Keep it simple.」

ジェームズ・ゴスリン:Javaの開発者。第1回「JavaOne」の基調講演(1996年)より

モバイルファーストが加速し、フロントエンドのデザインもフラットデザインが主流になってきました。これは、今まで定義されてきたGUIとは枝を分かつ流れだと考えています。タッチパネルが主流になり、今までPC主体だったころの小手先のデザインアレンジは邪魔になり、よりシンプルで、より直感的で、より軽量なUIが必要とされています。このUIに対する概念は、トップエンジニアと呼ばれる方は皆、インターネット黎明期から、バックエンドでコードや言語で具現化してきました。

私の経験上、学校でデザインを専攻していたからといって必ずしもトップデザイナーになれるわけではありません。もちろん、デザインの基本となる、陰影や色彩、レイアウト等は勉強する必要がありますが、どれも独学で十分勉強できます。デザインセンスに関しては、勉強して身に付くものではないと私は考えます。UIやUXのデザインセンスは自分の経験の上に身に付くもので、どれだけ多くのものを見て体験しているかが大きなポイントだと思います。メインのデザインはデザイナーがやるとしても、「すべての画面がそろってないと、組み込めない」といってしっかりと線引きをするエンジニアと、デザインの系統を把握して、ちょっとした画面のデザインも引き継げるエンジニアであれば、絶対に後者の需要が高いです。真っ黒な画面ばかり見ているとなかなか難しいことではありますが、付加価値としてはかなり高いです。

常に自分の未来に期待して、行動すること

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Creative Commons: Some Rights Reserved. Photo by Traci Lawson

「Stay hungry, stay foolish(ハングリーであれ、愚かであれ)」

スティーブ・ジョブズ:スタンフォード大学卒業式での演説(2005年)より

ジョブズが『Whole Earth Catalog』最終号の裏表紙より引用した、あまりにも有名な格言です。この言葉にはさまざまな捉え方があると思います。毎日同じ言語で同じシステムを構築していますと、どうしても目の前のことに一生懸命になりがちで、周りが見えにくくなるものです。しかし、ハッカーといえるほどのエンジニアはたとえ表に出なくとも、インターネットの中の世界(GitHubなどのオープンコミュニティー)で技術の進歩に大きく貢献しています。

先日AppleからSwiftが発表されましたが、IT化の急激な成長にあわせ、常に新しい言語やフレームワークが登場します。そういった新しいものに興味を抱き、実際に作ってみる。ハッカーと呼べるほどの方は往々にしてこの行動が早い。今、一線で活躍しているエンジニアの方なんてコンピューター言語のマルチリンガルなわけです(もちろん、廃れていく言語もあるでしょうが…)。私は企業に属してプランナーをやっていた時期がありましたが、システムエンジニアの方と話をするのが大好きでした。

優れた提案をするためには、テクノロジーを知る必要があるからです。当時から情報収集が趣味だった私としては、新しい技術についてエンジニアと議論することが、とても楽しく、同時に尊敬の念を抱かざるを得ない日々でした。もちろん、会社からやれといわれればみなさん勉強するでしょうが、私の当時の同僚は休日を使ってプロトタイプを作ったりする方でした。まさにギークです。

今ですら、そういった人材は引く手あまたです。言い換えれば今後もっと加速するであろう進化のスピードに適応する能力ともいえるでしょう。

まとめ

これからエンジニアにさらに必要になる能力を挙げてみましたが、結局のところ、エンジニアという言葉のくくりが曖昧になり、もっとマルチな能力が必要とされるようになるわけです。上に挙げたような能力に1つでも自信のある方は、それをもっと磨いて、特化することをオススメします。あとは、グローバル化に適応しつつも、早い、安いが重宝されていたとしても、ジャパンクオリティーはIT業界でも変わりなく維持したいところですね。

(永井良太)