「5年かけても追いかける」 DeNA南場智子が語る、イケてる人材の集め方

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英語でアジア圏のスタートアップ情報を発信するメディア「Tech in Asia」が3日と4日、東京・渋谷で「Startup Asia Tokyo 2014」を開催している。同イベントは2012年以来、シンガポールやジャカルタで開催。日本は初上陸となる。イベント初日には、ディー・エヌ・エー(DeNA)創業者の南場智子が登壇し、スタートアップが成功するために欠かせない人材の集め方を語った。

同イベントではこのほか、「高校中退から、ミリオネアになるまで」というタイトルで、アドウェイズ創業者の岡村陽久がインタビュー形式のセッションに登場している(関連記事:中卒からミリオネア! アドウェイズ社長が語ったジェットコースター半生)。

最初のアイデアで成功する起業家はごくわずか

私はDeNAを1999年に立ち上げました。最初にオンラインオークションを立ち上げようとしていると、その準備中に大きい競合が先に行っちゃって、どちらかというと最後尾でのスタートでした。Yahoo!オークションの背中を追うこと丸2年間。ナンバー2にはなったんだけども、規模はなんと1位の30分の1。まったくお話にならないということで、ショッピングに広げたり、モバイルオークションでようやく日本でナンバー1になることができました。

それから私を含まない3人のチームが始めたモバゲーが大ヒットしてたくさんのユーザーを得ると、若者が出会いの事故に巻き込まれて社会問題になり、それに対処していくうちに、アバターのビジネスモデルが時代遅れに。そのあと、ソーシャルゲームが大ヒットしたんですけど、「ティーンエイジャーがソーシャルゲームにお金を遣うのはけしからん」という風潮になり、若者を守るために450人の部隊を作り、徹底的にお金を使い過ぎない仕組みも作って、ようやく軌道に乗ってがんばるぞという時に、家庭の事情で2011年に突然社長を退任してしまい、少し事情が落ち着いて去年4月から現場に戻ってやっています。

この話でわかるように、アイデアを持って立ち上がってから成功まではシンプルではなく、こういう状態(写真参照)。

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最初に思いついたビジネスモデルのまま、まっしぐらに成功を収める人はほとんどいないと思います。優秀な起業家ほど、ビジネスモデルが紆余曲折し、想像もしなかったような壁に対処して、なんとか乗り越えて、大成功した時には最初のビジョンは跡形もないなんてことは多いのではないでしょうか?

自分たちよりもすごいメンバーしか採用しない

アントレプレナーが成功を収めるためには、目標とお金と人が必要です。目標はアントレプレナーであれば間違いなく持っていると思います。そして今はお金が集まりやすい。この会場でもたくさんのVCが、大きな財布を持って練り歩いているとも聞きますが、やはり一番大変なのは人ではないでしょうか?

私も人集めにはすごく苦労しました。今でこそ、新卒採用では3万人くらいが受けてくれて、その中から50人から100人を選ぼうという贅沢なことも言える状態ですけども、DeNAを立ち上げた時は本当に大変でした。

まず、私はマッキンゼーの2人の同僚と立ち上げたのですが、人手不足で仕事が回らない。それでも歯を食いしばり、「自分たちよりもすごいやつしか入れない」という約束をして、10人の夢のチームを作り上げて、そこから拡大していきました。

創業当初は親御さんの反対も

人集めにどれだけの時間を使ったか。昔はだいたい、週に10時間は普通に使っていました。

今は、球団を持っているといい会社だと思う親御さんもいたりします。(創業当初は)1人をなんとか説得して、その人もようやく私達と同じ熱病にかかって入ろうというと、その次には親御さんが出てくることになりまして。事実、お母さんがやってきて玄関に座り込んで、「内定を取り下げてくれるまで帰りません」と言われたこともあり大変でした。

でも実際、そのお母さんの話しを聞くと、お父さんが早く亡くなって女手ひとつで子どもを育て、すごくいい学校に入れて、一流の大企業に就職させて、ダンナさんのお墓で「母親としての役割を終えました」と報告したら、その3年後に息子が熱病にかかって「転職する」と。

お母さんからしてみると、事業内容を何度聞いてもわからない、会社の名前も何度聞いても発音できない。おまけに社長も女? みたいな感じで、「これは社長とやらに直談判するしかない」と会社にやってきたこともありました。

人を起点に事業を作るからこそ、人材の質に妥協しない

DeNAを振り返ると、いろんな間違いを犯してきましたが、唯一、間違わなかったのは人材の質に妥協しなかったことです。

最初はインターネットネットオークションというビジネスモデルの周りに人を集めますが、思ったよりうまくいかない。そうなると、人の周りに事業を作っていかなくてはいけない。だから結局、人材が一番重要であるということ。これが、私が一番伝えたいことです。

そしてその仲間は、スーパーグレートなだけでなく、お互いが透明になれる相手であること。お互いが信頼でき、情報を包み隠さずにシェアできる間柄であることが絶対条件ではないかと思いました。

絶対仲間にしたい人は5年かけてでも追いかける

とにかくアントレプレナーは忙しいでしょうが、時間を惜しまずに人を追いかけてください。私は社長時代も、社長を退任後の2年間も、現場に戻ってからの1年半も、人を追いかけることだけはずっと最優先でやっています。

あと、長く追いかけてください。その瞬間に来なくても、事業は長丁場です。人の心が揺れるタイミングは、人生の状況に応じて転職の気持ちが起こることがあります。5年のスパンで追いかける覚悟で、「この人は絶対に仲間に入れたい」と思ったら数年かけてじっくり追いかける。最初にダメでも諦めずに追いかけてください。

内定を蹴られた新卒を半年に1回は飲みに誘う

私はこれを新卒採用でもやっているんです。「この人欲しいなあ」と思って内定を出した人が来なくて他の会社に行ったケースでも、心に残っている学生は就職した後も、四半期に1回とか、半年に1回のペースで「飲みに行こうよ」と誘っています。

そこですぐに「こっちにおいでよ」と言うと気持ち悪くなって会ってもらえなくなるので、単に仕事の状況や苦労していることを聞いて、どんなふうに成長しているかを見ています。

「ああ、エスタブリッシュメントな会社に行って変わっちゃったなあ」と思ったら、ちょっと距離を置いて追いかけない。でも、いい感じに成長していたら、ずっと追いかけます。

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我が社の前田くん。固有名詞を出しちゃいましたが、5年くらい前に就活の時に会い、「こんなに心に残る若者はいない」というくらい喜んでしまったんですが、彼は外資系の投資銀行を選びました。

このあいだ、「なんで銀行を選んだの?」と聞いたら、その銀行に彼が一番尊敬する人が見つかったんだそうです。人間力として私は負けちゃったわけですけど、彼は投資銀行に行って一番尊敬する先輩と仕事をして、英語ができないので必死に勉強してニューヨークに行かせてもらい、ウォールストリートでも1番になった。

彼がニューヨークから一時帰国して飲んでみると、「頼もしいなあ」と思うほどに成長していました。「インターネットでサービスを考えて起業したいと思っている」と聞いた時、私は仮面を剥ぎましたね。「DeNAに来てくれ。助けてくれ。世界のてっぺん一緒に目指そうよ」と。

内情を正直に伝えた上で腕まくりしてくれる人材

それから、人を口説くときに大切なのは、正直に伝えること。「僕の船は安泰だよ。だからこっちに来たほうがいいよ」というのではなく、本当のことを言ってください。沈むかもしれない、泥舟かもしれない、漕ぐ人が必要、助けてくれということです。

大きな人生の意思決定をしてくれるわけなので、ぜひ誠実に対応して欲しいし、その上で腕まくりをしてくれる人だけが、ベンチャーの楽しみを味わう権利がある。そこが1つのポイントです。あとは、チームに入れたら信じること。それが成功の確率を高めることだと思います。

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スタートアップがお金で心配すべきたった1つのこと

さて、お金に関して心配いらないと言いましたが、大事なことが1つだけあります。将来の選択肢を狭めるお金を入れないようにしてください。逆に言うと、縛りのある契約を結ばないこと。

起業した時の私もそうでしたが、オンラインオークションで日本でナンバーワンになって上場しようと思っても、状況は変わります。想定していなかった家庭の状況に見舞われたり、一緒にやりたいと思うパートナーに巡りあえたり、いろんなことが起きます。今想像していることは確実に変わる。

上場しないとしょうがなくなるような契約ですとか、自分の株を自分の選んだ相手に自由に売れない契約とか、自分の納得する値段で自分の納得している相手に自由に売れない契約で苦しんでいるベンチャーはたくさんあります。そこだけは気を付けてください。

最初の金融パートナーは起業経験者のエンジェルにすべき

金融系のファンドのお金を入れる前に、どうか注意深くなってください。最初の金融パートナーは、起業経験者のエンジェルがいいと思います。そしてその人が、本当に心から起業を応援したいという気持ちなのか、1%でもリターンを大きくしようとしているのか(を見極めてください)。大人は「あなたのことを思っている」という演技が上手です。

お金は集まりやすい時代ですから、歯を食いしばって、まずは起業経験者のお金を入れて、そして仲間になって、この次に入れるファンドに関する契約書は、弁護士だけではなく、企業を心から応援してくれる起業経験者と一緒にレビューしてください。そこだけはなんとかお願いします。

さて、困ったと言う人は、100%信頼できる人はこの人です。誰でしょうか? 川田尚吾です。彼は私が心から全人格で信頼する人。DeNAを一緒に立ち上げた人です。すべての苦しい時代を一緒に乗り越えてきて、彼の気持ちの持ち方すべてで私は助けられました。

彼は本当に起業家の味方になってくれます。誠実で勇気のあるエンジェル投資家です。お金が出るかはわかりませんが、間違いなく、こすいことはしない。アドバイスはものすごく価値のあるものだと思います。どこの国籍の人でも、困ったらコンタクトしてみてほしいなと思います。

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