【IT美人図鑑Vol.2】「一度しかない人生。コントロールできるリスクを取りたい」ココナラ谷口明依さん

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谷口明依さん
東京生まれ東京育ち。薬科大大学院で分子細胞生物学を修了後、製薬業界でMRや臨床開発に従事し、グローバルスタディなどを経験した。キャリアの区切りと東日本大震災をきっかけに起業。現在は知識スキルの販売マーケット「ココナラ」を運営している。

美人は正義!…ということで第2回が始まりましたよ!  美人が大好きな私・杉本綾弓がIT業界のなかでさんぜんと輝く、美しい女性をひたすらインタビューする「IT美人図鑑」。2回目となる今回は、1回500円で自分の「知識・スキル・経験」を売り買いできるオンライン販売サイト「ココナラ」のファウンダー、谷口明依さんにお話を伺いました。

「私のやっている仕事は、誰が喜ぶんだろう?」と疑問に感じた

杉本:早速ですが、谷口さんの経歴と起業までのプロセスを教えてください。

谷口:もともと薬科大学で分子細胞生物学を専攻し、大学院を卒業しました。その後、製薬会社の営業を経て、臨床開発職に転職をし、薬品開発やグローバルスタディ(国際共同治験)をしていました。家族も医療系で、友人も薬剤師か生物系。そんな、ITにも起業にも全く関係がない世界で、生きていました。

2010年の冬に、MBAに挑戦するという大学の友人に業種も経歴も異なる人達を、20人くらい紹介される機会があったんです。その中には現在ココナラのCEOをしている南もいました。そこで初めて、『どうやら私の知らないビジネスの世界があるらしい』ということを知ったんです(笑)。

杉本:いわゆるエリートコースだったんですね…!

谷口:いえいえ、そんなことはないんですけども。

ちょうどそのメンバーらと出会った頃に、当時自分がやっていた仕事に限界を感じて転職しようと考えていました。と言いますのも、当時仕事をしながら「自分が製薬会社で製品を開発することで、世の中にどれくらい価値を出せるのだろうか?」と、どこかで引っかかる部分を感じていたんです。

開発には通常、数百億円の金額がかかります。開発期間も短くて5年、長いと10年単位になるので、世の中に価値を提供しているというのが実感しづらいんですよ。しかも、製薬会社といっても営利企業なので売れやすい薬を開発していかなくてはなりません。売れやすいものを作るということは、胃薬や抗生剤など利用する患者が多い病気に向けた薬を作ることなのです。

例えば、少し前に話題になったALS(筋萎縮性側索硬化症)などの病気は希少疾病と言われ、対象となる患者が少ない病気です。そのためコストに合わないので、薬が開発されないといった問題があります。私は専門職で働く人間ではありましたが、こうした業界の構造を変えられないことにもどかしさを感じていました。

また、私の従事していた「専門性は高いが、創造性の低い」類の仕事は、現在は人力でもゆくゆくはIT化され、縮小されると考えていました。実際に、海外では、ITを使用してより効率的に薬を開発することに成功しています。だからこそ転職は、たとえ規模が小さくても新しいことに挑戦する会社にしようと決めていました。

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今あるものはいつ壊れるかわからない。やりたいことは今やらないと

杉本:なぜ、転職をしようとしていたのに、起業に至るのでしょうか?

谷口:転職活動中に、3.11が起きたことで自宅勤務になって、大学の友人に紹介されたメンバーとツイッターで話す機会が増えたんですよね。ただ当時は、オープンなSNSは震災のことばかりだったので、「もう少しラフな話をする場が欲しいね」という話になって、クローズドなチャットを開始しました。

実はそこで私が現CEOの南から健康診断の数値について、『医者は病気のときは教えてくれるけれど、そうじゃないときは誰に聞けばいいのか』と相談を受けていたことが、ココナラの起業のきっかけなのです。私自身としては健康診断をしたら、その値で未病のものでも、今の生活を続けた場合の自分の体の健康リスクが大体わかります。でも、みんなはそうじゃないんだ…! と驚いたんです。

そのときにもう1人の創業メンバーもいて、「健康でいるための知識が、世の中に共有されてないことはなんてもったいないことなんだろう」とか、「そういった知識をもっとみんなに知ってもらえるビジネスをしたいよね…!」と盛り上がりました。

杉本:『ココナラ』3人が揃っていたわけですね。それですぐに起業なさったんですか?

谷口:実は、医療系ベンチャーの新規事業マネージャーに内定していたため、転職と起業とを迷いましたが、でも、6月には全員前職をやめて、8月にはフルタイムコミットで起業準備を開始しました。

杉本:全員ですか? 約2カ月間で、思いきりましたね!

谷口:はい、全員です(笑)。震災を経験して「今あるものはいつ壊れるかわからない。やりたいことは今やらないと」と感じていて勢いがあったこと。それから価値観に共鳴したメンバーと出会えたことが大きいです。恐らく1年後には、それぞれの仕事やプライベートの状況も変わっているし、このメンバーで起業できるタイミングは今だな、と思ったんです。

杉本:それでもいわゆる、エリートコースを外れて、リスクを取って起業するという選択はなかなかできない人が多いですよね。

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創業メンバーの南さん(写真左)と新明さん(写真右)を囲んでの1枚

コントロールできるリスクとできないリスクがある

谷口:自分自身ではリスクを取ったという意識は、そんなにないんですよ。

というのも、先ほどの話とは逆説的ですが、私の仕事は専門職でしたし、規制産業なだけに業界的にも需要は安定しているので。最悪、2年位別のことをやっていたとしても、企業に戻れると考えていました。あと、起業は失敗する可能性の方が高いですが、それで食べられなくなることはないと思っていたんですね。

また、「転職」と「起業」を天秤に掛けたときに、失敗をするとしても、普通に転職するよりもはるかに得るものがあると思っていました。世の中には、「コントロールできるリスク」と「できないリスク」とがあって。起業は「コントロールできるリスク」、震災は「できないリスク」だと思っていました。ある日死んじゃうかもしれないのに、やりたいことをできないうちに死にたくないなって。

杉本:すごい決意ですね。「起業のきっかけはヘルスケアのアイデアから始まったのですよね。そこから「自分の得意を売り買いできるサービス」という形に間口を広げていったのにはどういう理由があるのですか?

谷口:健康に気を使う人向けのレシピサイトなど、いくつかのヘルスケアビジネスのアイデアを考えて、医療の専門家や患者さんにヒアリングをするなかで、ヘルスケアが持ってる構造的な難しさに直面したことが1つの理由ですね。また次第に「医療をテーマにすると、限られた人のみが対象になるな」とも思いました。

そのため、「必要だけど届いてない人のところに、必要なものを届ける」という最初の思いに立ち返って、「得意」が誰かの役に立ち、「得意な何かをやってもらえる人に出会えるサービス」に変化させていきました。

ユーザーの人生をも変えるサービス、『ココナラ』

杉本: 『ココナラ』の運用開始前に抱いていたイメージと、いざ開始して感じたギャップは何ですか?

谷口:ギャップというのは、そんなになかったですね。ただ、サービス開始前には利用者はフリーランスの方や起業家で、副業としてお金を稼ぎたいという人が中心になるかと想定していたのが、実際に蓋を開けてみたら大企業の方にもとても多く利用されていたのは意外でしたね。

杉本:みなさん、お金ではなく「誰かの力になりたい」のでしょうか? 谷口さんは、ユーザーさんともリアルで会っていらっしゃいますよね。

谷口:そうですね、毎月50人ぐらいのユーザーさんにお会いしています。『ココナラ』のユーザーさんにはそれぞれのストーリーがあります。

例えば、体が弱くて企業では働けないけれど、ココナラで占い師デビューをして『ココナラ』内で売上TOPを記録する方。一度は諦めていたイラストレーターになるという夢を、『ココナラ』を使ったことを機に叶えた方。かつて「引きこもり」だった経験から、引きこもりの子どもを持つ親御さんの相談に乗っている方……など、本当にさまざまな方がいらっしゃいます。

ユーザーさんの交流会を開催すると、とても愛されているなと感じます。みなさん自分の得意を活かして『ココナラ』のメンバーの似顔絵を描いてくれたり、曲を作ってくれたり、プレゼントを持ってきてくれたりします。ユーザーさんの結婚式にも呼ばれたりします!

杉本:ほんとに人生を変えていますね。そしてネットサービスから本当のつながりが生まれているんですね。

谷口:はい! うれしいですね。時間や場所にとらわれずに「誰かのために何かをしたい人」と「自分に足りなくて困っている人」をつないでいけるのが『ココナラ』なんです。

杉本:谷口さんが「人の役に立ちたい。誰かの課題を解消したい」という考えを持ち始めたのは、ご家族の影響もあるんですか?

谷口:「人のために生きること」が当然だと教えられてきましたので、医師であり教育者であった祖父をはじめ家族の影響ですね。それから、私は母子家庭で育ったので、『私は社会のなかで王道ではない』と『足りない』という意識と、そして『生きづらさ』をどこかで感じていました。だからこそ、どんな人でも、少しの工夫でその人らしく生きられる世の中になると良いなと。

杉本:素晴らしいですね! これからの目標はありますか?

谷口:個人としては、やはりヘルスケアの力になりたくて、日本初のStartup Weekend Tokyo Healthcareを開催しましたし、今後もこうした活動を続けていきたいです。

『ココナラ』としての目標は、電車に乗ったら、みんながココナラを使ってくださっていることですね・・・! 自分にとって当たり前だと思っている「知識・スキル・経験」が、別の誰かにとっては当たり前ではなく、むしろどんなに欲しくても手に入らないということがありますよね。あるいは自分ではコンプレックスやマイナス要素だと思っていたことが、誰かのために役に立つということがあるんです。『ココナラ』を通してそんな人たちの交流がもっと増えていったらいいなと思います。

杉本:ありがとうございました!

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(杉本綾弓)