10代がハマるMixChannelに見る、熱量の高い「顔出しコミュニティ」の作り方

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10代の若者が、大人には理解ができないようなサービスの使い方をし、その世代特有のインターネット文化として、話題になることが増えてきた。10代がよく利用しているサービスの1つとしてよく取り上げられるのが、Donutsのリリースした「MixChannel」だ。

MixChannelは、スマホから10秒の動画を投稿し、アプリ上でコミュニケーションをとるサービス。現在200万ほどダウンロードされている。10代が熱中するプロダクトとコミュニティを生み出すためにどのようなことに取り組んできたのか。MixChannel プロデューサーの福山誠氏に話を伺った。 

 

10代からネットベンチャーに

福山氏がインターネット業界に関わり始めたのは19歳のとき。当時、まだモバゲーも存在していない時代のDeNAでアルバイトを始めた。

DeNAを辞めた後、福山氏は20名ほどの規模だったGREEに学生インターンとして関わり始め、ベンチャー企業が急成長していく過程を間近で見ることになる。大学院を修了した福山氏は、Googleに入社し2年ほどの月日を過ごす。自分で手を動かし、何かを作るのが好きだという福山氏は、Googleに勤めながら、交流を目的としたビジネスランチのマッチングサービス「ソーシャルランチ」を開発する。

「サービスのテストを始めたのは2011年の春ぐらい。これはいけるな、という手応えを得て、夏に会社を辞めて、会社を設立しました」

ソーシャルランチを約1年間運営した後、Donutsに会社を売却し、同社にジョイン。現在はWeb事業部の副部長を務めている。

 

MixChannelを立ち上げるまで

Donutsで新規事業を担当していた福山氏は、「2年後、どういったサービスが流行るだろうか」と、DeNAでのアルバイト時代から面識のあった社長の西村氏と話をする中でサービスを立ち上げる領域を決めていった。モバイルと動画は当時から注目の領域。当時は「Vine」が北米で流行り始めたタイミングだったこともあり、この領域で福山氏はプロトタイプの制作にとりかかる。

「まずプロトタイプを作ってみるんです。それで、どれくらいの難易度で作れるのかを確認する。そうすると、開発にどれくらいの期間と費用、人手がかかりそうかというのがイメージできる。事業計画作る前に、プロダクトの肌感のようなものを確かめてみて、このスマホで動画という領域にフォーカスしてやってみることを決めました」

 

最初から若者を対象にサービスを設計

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スマホ動画の領域でサービスを開発することに決めた時点で、対象となるユーザーを10代・20代の若者に絞った。

「動画の領域で、40代にフォーカスしたコミュニティサービスってあまりないでしょうね。Vineも、使っているユーザー層が若かったので、若者を対象とすることを決めました。女子高生のようなわかりやすいアイコン、ペルソナみたいなものをうまく設計はしましたね。ヒアリングしたりとか」

当初の想定では、女子高生から女子大生の世代がターゲットとなっていた。サービスをリリースして運用していくと、実際に使用しているユーザーは想定より若くなり、女子中高生世代の15歳〜18歳にまで下がったという。

 

渋谷駅ハチ公前で女子高生30人にヒアリング

女子高生を対象ユーザーと設定し、どのようにニーズを掴んでいったのか。福山氏が実施したのは、渋谷のハチ公前で直接ヒアリングを行うというものだった。

「簡単なヒアリングだったら30人ぐらいに聞いたと思います。渋谷のハチ公前で『すいません! スマホで動画って撮りますか?』とアンケートを採って、『動画? 撮らないよ』みたいな回答をもらって」

そもそもの前提として、女子高生たちは写真を数多く撮影するのはわかっているが、動画も撮影するのかどうかを確認する必要があった。動画を撮るという行為は、そもそも流行るのかどうか。その仮説を検証する必要があった。

「聞いていくと、動画は普段全然撮らないことがわかってきました。撮るとしても、誕生日のときや記念日のときなど限られた場合のみ。余談ですが、10代の子たちって友達を祝うときに顔面ケーキじゃなくて、顔面豆腐ってのをやるんですよ。ケーキじゃお金が足りないから、豆腐なんですけど、豆腐を顔面にドン!」

動画はあまり撮影しないとはいえ、写真の撮影は行っている。画像が数多くあるのであれば、スライドショーは作成できると考え、MixChannelには初期段階からスライドショー的な機能を加えていた。

「MixChannelは、映像を作るための素材は何でもいい、というのがコンセプトなんです。いろんな素材をミックスして、動画作ろうぜ、というのが初めのコンセプトでした」

 

動画撮影アプリではなく、動画作成アプリに

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MixChannelは、実際に調査を行いながら、少しずつサービスを変えていった。対象となるユーザーは動画撮影をあまりしないことがわかり、優秀な動画撮影アプリを作るのではなく、楽しめる動画を作れる優秀な作成メーカーの方向を強めていった。撮影機能よりも、画像をどんどんインポートするような機能を追加していったという。この点が撮影を前提とするVineとの違いだ。

画像などいろいろな素材をつなぎあわせて映像を作成するといえば、他のスライドショーアプリなどを思い浮かべる。MixChannelはこうしたサービスとはどういった点が異なるのだろうか。

「スライドショーを作成するアプリって、画像を選んでいくと自動でエフェクトがかかったりしますよね。MixChannelにはそういった機能はつけてないんです。動画の時間の尺やアニメーションやエフェクトがあらかじめ決まっていたら、オリジナリティのあるものは作れないだろうな、と考えていました。時間の長さもユーザーが自由に選べるようにしました」

MixChannelでスライドショーを作ろうとすると、ただ画像が切り替わるだけの映像が出来上がる。だが、この特性を活用して、紙芝居のような映像を作成するユーザーも出てきたという。この他にも、ビフォーアフターを表示する映像や、映像と画像が交互に流れるような映像などいろいろなパターンが生まれている。これは作成できる映像に自由度をもたらしたからこそ生まれたものだ。

 

人気者になりたい欲求に応えるコミュニティ

MixChannelが注目されるポイントの1つが、熱量のあるコミュニティだ。福山氏は、開発し始めたころから、コミュニティが重要だと考えていたという。

「対象となるユーザーが若者だと、大人向けに開発するアプリよりもなおさらコミュニティが必要だなぁ、とは思っていました。若者はすでにTwitterなど他のサービス上でもかなりのコミュニティがありますが、それとは違う軸で、コミュニティを作ることの価値があるなぁと思っています。なぜなら、彼らは常に人気者になりたいから。人気者になりたいというわかりやすい欲求がある一方で、それを今からTwitterのソーシャルグラフで達成するのは難しい」

一旦、完成してしまったコミュニティにおいて、有名になることは難しい。ただ、新しいコミュニティの中では、小さい規模であってもトップになることはできる。MixChannelでは、こうした若者の人気者になりたい、という欲求に応えていくことを大事にしている。

「アプリの中でどれだけ目立てるか、ということに多くのユーザーがチャレンジしていて、このアプリの中が学校のような感じになっています。若者たちで巨大なオンラインの文化祭を開催しちゃっているイメージですね」

MixChannelには、ユーザー同士で盛り上がれるよう、「Likeを連打できる機能」や「映像同士をリンクする機能」などを設けている。リンク機能は投稿者と閲覧者だけのコミュニケーションではなく、投稿者同士のコミュニケーションを生み出そうという狙いで追加された機能だ。誰かが投稿した動画からインスピレーションを受けて、真似した動画を投稿するユーザーが複数登場し、1つの動画から30件以上の動画がリンクされることもあるという。

 

顔出ししてくれるかがサービスのKPI

MixChannelには、LOVE、おもしろ、カップル、顔出し、メイクなど、独自のカテゴリが並んでいる。ランキングの上位に入っている映像は、投稿者が自分の顔を出しているものがほとんどだ。

「投稿者が顔を出してくれるかどうか、というのは1つのKPIのようなものでした。映像のコミュニティサービスを運営していると、犬や風景の動画が投稿されやすい。しかし、それではおもしろくないなと。やっぱり人間が何かをしている映像というのが、一番人間の興味を引きます」

Vineにもセルフィというチャンネルがあり、そういった文化を踏襲した側面もあるという。MixChannelには「顔出し」というカテゴリが設けられているが、それ以外のカテゴリに投稿される映像も、基本的に顔出ししている。

MixChannelは「人気者になりたい」という、人間の根源的な欲求を考えながら開発していると福山氏は語る。こうした欲求を理解して機能を追加するのと、数字を見ながら改善することの両輪で開発を進めているそうだ。

最近は、中高生へのヒアリングはあまり行っていないそうだが、ユーザーたちから問い合わせ窓口に膨大な数のフィードバックが送られてくるため、それを参考にしながら開発を進めているという。

「今は、200万ダウンロードほど。イケてる若者が集まるコミュニティを目指しつつ、ダウンロード数は今年で400万ほどを目標にしています。また、今年は広告を中心とした収益化に取り組んでいきたいです」

ユーザーヒアリングと数字の分析、そして人間の行動心理への理解があれば、「文化が違う」と考えてしまいがちな10代に対しても、熱狂してもらえるサービスを開発できることを福山氏は教えてくれた。MixChannelのプロダクト作りは、10代の若者を対象にサービスを作っている人以外にも参考になるはずだ。