新卒ならスタートアップ?それともSIer? 現役CTO6人が語るエンジニアの理想のキャリア

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エンジニアとして、今後どのようにキャリアパスを築いていくべきか。今のまま日々の仕事に追われていて良いものだろうかと、漠然とした不安を抱えている人も多いのではないだろうか。

そんな若手エンジニアにとって注目のイベント「急成長スタートアップ6社のCTOが語る Developers career event〜エンジニアによるエンジニアのためのキャリアを考える〜」が開催された。登壇したのは、Talknoteの藤井拓也氏、カタリズムの江部隼矢氏、スターフェスティバルの加藤彰宏氏、nanapiの和田修一氏、ヒトメディアの井村元宗、BASEの藤川真一氏の6名。モデレーターは株式会社クラウドワークス 取締役執行役員 CTOの大場光一郎氏。

150202_CTOtalk_image2_580写真左から、モデレーターの大場氏、カタリズム江部氏、スターフェスティバル加藤氏

新しいものを作り出したいから、スタートアップへ転身

大場:みなさん、CTOには自らの選択でなったのか、それともやらざるを得なかったのか、教えていただけますか?

江部:SIerにいた頃は、ひたすらコードを書いてテストを繰り返すようなエンジニアでした。ただ、SIerという環境の中で仕事をしているうちに、お客さんのものではなく、自分が考えて作り上げたサービスでビジネスをやってみたいという思いが強くなってきて。そのとき、たまたま同じ思いを持っていた代表の山野が、中学の友達とFacebookで再会してスタートアップを立ち上げたんですよね。最初2人〜3人しかいなかったし、僕しかエンジニアはいなかったので、「まぁCTOだね」っていう話でCTOになりました。消去法的な感じですね。人数が増えてきて、今までリーダーシップを発揮してこなかった人間が、発揮しなければいけない立場になって、困惑しているのが、今です。

藤井:もともとスタートアップに来たのが、SIerだとどうしてもルーティーンになってしまうので、つまらないなと思っていて、新しいものを作り出すところをやりたかったんですよね。トークノートでなぜCTOになったかというのは、部として成熟しないといけないときに、一番古くからいたからというのもあるかもしれませんが、自分がプログラムを書く量を減らしたほうが、全体的に最適化すると思ったからです。別に責任者がやりたかったわけじゃない。むしろ、エンジニアをやってるほうが楽しいと思います。

SIerでの経験は近道か?回り道だったのか?

大場:SIerからCTOになって、良かったと思うことは何ですか?

藤井:SIerとのギャップもあるんですけど、SIerにとってゴールは納品することじゃないですか。作って終わり。でも当然のことながら、ビジネスはそうじゃないので、お客さんに価値を届けることで、フィードバックをもらって回し続けながら、さらにお金までもらわなきゃいけないという、経済感覚に対する自分の感度が上がりました。エンジニアとしての働き方も変わったし、考え方も変わった。好きだから作っちゃおうという、エンジニア的な発想でもの作りをする自分をだいぶ戒めました。そもそも本当にこれが社会に役立つのか、お客さんが喜ぶのかという自問自答をするようになったのが、自分にとってプラスになっていると思うし、価値観を多様化して持つことができるようになったと思っています。

大場:SIerで得た経験は、今もスタートアップで活きていますか?

加藤:1社目のSIerでプログラミングを覚えて、2社目でIDCの運営をしていたんで、ネットワーク周りだとかOSとかミドルウェアのチューニングもわかるし、独りで作ることが多かったので、Googleを調べる能力も上がって、これはこの先も活きるスキルだなと思っています。

井村:僕の経験で言うと、3社目の富士ソフトに入ったときに、29歳で未経験採用で入ったんですけど、そのとき仕事を取り組む上で「いかに自分ができそうに見せるか」、「自分がとにかく担当する、やりたいことを社内の中でつかんでいく」ということをやらないといけなかったので、いわゆるハッタリをした後で、ものすごい調べるっていうことを、最初ひたすらやっていて。それは今でも活きてるのかなと思ってますね。

大場:江部さんもSIerに行ってて良かったですか?

江部:僕の場合、「要件定義をして、仕様をきっちりと固めて、仕様に基づいて作っていく」というウォーターフォール的な動きをするSIerのやり方が、もともと肌に合わないなと感じていたので…。スタートアップの開発でゼロから作るときって、誰かが仕様を決めてくれるわけでもないですからね。僕は割と大ざっぱな性格でもありますし、ある程度決めて、走りだしてから後で考えるみたいな“エイヤー力”が強いと思っているので、そういうところは活きているとは思いますけど。

大場:CTOになるのに、SIerに入るのは時間の無駄であると?

江部:人によって“合う、合わない”があると思うので、そうは言わないですけど、僕の場合は性格的にという感じですね。

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もしキャリアをやり直すなら「やっぱり最初はSIer」

大場:今もし何もしがらみがない状態で、あらためて新しいキャリアを踏み出すとしたらどこに行きますか?

江部:矛盾しているようですけど、やっぱり最初はSIerに行くような気がします。SIerで学んだことは、それなりに大きくて、開発のプロセスの流れが一番よく見えた時期だったんじゃないかなと。そういうベースがあってからのWeb開発や、スタートアップでの事業開発ができて、軸をしっかり持ちつつも、そこを柔軟に崩していくスタイルを確立できたので。SIerを一回経験するのは、悪くないんじゃないかなと思っています。

加藤:そうですね、確かにSIerでしっかり基礎ができたのは良かったんですけど、今の時代は学生でも大学でプログラミングを学べる時代になってきたんで、1社目からスタートアップでいいかなと思っています。自分でサービスを作りたいんだったら、自社でサービスを持っている会社がオススメ。1から10までサービスを全体的に見る経験ができるところがいいと思います。

藤井:やっぱりスタートアップですね。

大場:小説家じゃないんですか?(笑)。

藤井:今でも小説家の夢を、全然あきらめたわけじゃないんですよ。今スタートアップをやっているモチベーションって、自分自身が物語を生きて、それから物語を書こうというところにあって。事業でドラマティックなことをやりたい。人間の形を決めるのは、出会った人と通り過ぎてきた景色だと思うんですけど、スタートアップにいると景色の移り変わりが激しいんですよね。いいことも悪いことも、いろんなことが起こって、ジェットコースターに乗ってるみたいな。そんな環境で早いうちからいろんな景色に囲まれて、ゆくゆくは自分の中で成熟した物語を語れたらいいなと思っているので、何度でもスタートアップしたいと思っています。

和田:昔プロギタリストを目指していたので、ギタリストを目指したいなというのはあるんですけど…それはさておき、もしこの業界で働くとしたら、やっぱり私もスタートアップ。特にnanapiみたいな。なぜかと言うと、働くためのエンジニアのスキルは年を取ってからでもまだつけられるんですけど、若いうちにしか絶対つけられないスキルが、“働き方”なんですね。20代前半で身についてしまった働き方って、なかなかもう変わらないんですよ。大企業で10年くらい居てしまうと、仕事は“自分で作るもの”じゃなくて、“誰かが設計した仕事をやるもの”という感覚に、どうしてもなってしまう。スタートアップでは「任された仕事でも整備されていないからできません」というのは許されません。ゴロゴロ転がっている課題を、自分でどんどん課題を解決していかないと。そういうのを若いうちに経験しておけば、後々どうにでもなるし、そんな経験ができる場に身を置いていたほうがいいと思うので、スタートアップをオススメします。

大場:でも新卒採用していないスタートアップって多いですよね?

和田:うちも新卒採用はやっていないんですけど、中途採用に紛れ込んできた学生を採ることはあるんですよね。いったん行ってみるべき。それくらいアグレッシブに、スタートアップへ自分から食い込んでいくのが大事だと思っています。

加藤:最近「肉リーチ」を使って、意識の高い学生さんと5人くらい会ったんですけど、そういうサービスって今はどんどん出てきているので、いくらでもスタートアップのCTOに直接会える機会はあると思います。そういうサービスを使ってアプローチするのも一つの手かなと。

井村:僕はスタートアップかSIerかという観点ではなく、ある程度トラフィックのあるサービスを持っているところへ行ったほうがいいと思っています。最初からトラフィックもないスタートアップへ行って運用とかやらされても、経験が積めないので。ある程度、トラフィックがあって、毎日ドタバタしているところで経験を積んだほうがいいんじゃないかなと思います。

藤川:インターネットがようやくリアルな社会に対して影響を及ぼせるような時代に入ってきたと思っていて。IoTやガジェット系、製造業の変革、働き方の変革、僕らで言うと商取引のCtoCを実現したECの変革なんかもそうですね。そんな新しい時代の中で、誰が最初にどの業界を変えていくかというゲームが、世界中で始まっている。これからは世界が日本化していくと思っています。今までオーバースペックだと言われていた日本の“おもてなし”みたいなものが、モバイルやインターネットによって、世界でも通用するようになるかもしれない。そういうものが作れる立場や役割を目指すのであれば、スタートアップでも大企業でもいいと思います。

150202_CTOtalk_image4_580写真左からトークノート藤井氏、nanapi和田氏、ヒトメディア井村氏、BASE藤川氏

欲しい人材は「自分より優秀な人」

大場:最後の質問です。こんな人材に来てほしい、こんな人と働きたいという、理想の人物像を教えてください。

藤川:僕らが求めている人材は、新しいものをどんどん作っていきたい「攻めができる人」と、現存するシステムが1から10に成長していく中で、地道なことが大好きで「守りができる人」。守りと言っても、言われたことしかやれませんっていうのは怖いので、「攻めも守りもできる人」が一番理想だと思っています。

井村:フルスタックも厭わないと言うか、できます、できますと「勢い」を持った人で、かつ自分が足りないことを他人から指摘されたときに素直に受け入れられる「素直さ」みたいなのを併せ持つ人を求めています。

和田:「変化できる」人材ですね。3年後には、さらにこの業界は変わっていると思うんですよ。これしかやりたくないって言っちゃうエンジニアは生き残っていけない。「時代の変化がどうなろうと、僕は戦えますよ」と言ってくれる人と、一緒に働きたいなと思っています。

藤井:「自分より優秀な人」ですね。自分のポジションとか全然執着がないので、自分の上司だって採用したいくらい。何かしら「この人、俺よりすごいな」と思える人でないと、自分が尊敬心を持てないので、そこの部分は譲れない。必ず何か一つでも、自分と同格か同等以上だと思った人に来ていただきたいですね。

加藤:「どんどん動いて自分で仕事を作っていく人」。ITの流れはすごく速いんですけど、そういう情報を「キャッチアップできる人」。あとは、お弁当を売っている会社なので「グルメな人」だとより良いですね。

江部:スタートアップにはいろんな困難があるんですけど、その困難を楽しめる人と言うか、壁にぶち当たったときに、「ポジティブに事に当たれる人」がいいですね。それと、これからまだいろんな事業展開を考えているので、ビジネスから考えてシステムに落とせるような「バランスのいい人」。あとは会社の規模が拡大していくにつれて、システム規模も大きくなっていくので、インフラ周りなどの技術に特化した人も求めています。

大場:みなさん、ありがとうございました。それぞれいろいろな道を通って来られていたので、どこかに自分の参考になるところがあったのではないでしょうか。

登壇者の経歴と失敗談

最後にイベントの冒頭で語られた各登壇者のCTOになるまでのキャリアパスを紹介する。

カタリズム株式会社 取締役執行役員CTO/江部 隼矢 氏

経歴:オーストラリアのスインバーン工科大学情報技術学科卒業後、2008年SIerのフューチャーアーキテクト株式会社に入社。そこで4年ほど大規模開発に携わった後、2012年4月に遊びの予約サービス「ASOViEW!(あそびゅー!)」を提供するカタリズム株式会社に参画。

スターフェスティバル株式会社 CTO/加藤 彰宏 氏

経歴:2000年より、SIerにて半導体生産制御システムなどの開発に4年携わった後、IDC運用からインフラを含むWebアプリの提案・設計・構築・運用を4年経験する。2008年に楽天株式会社へ入社。楽天市場のRMS(店舗運営をサポートするアプリケーション群)の開発責任者として従事する。2014年5月、法人・団体向けのお弁当&ケータリングの宅配サービス「ごちクル」を提供するスターフェスティバル株式会社に参画。。

トークノート株式会社 開発責任者/藤井 拓也 氏

経歴:もともとは小説家志望。あちこち転々とした後に、お金に困ってIT企業に行こうと26歳からプログラムの勉強を開始。SIerで8年ほど開発を経験する。それからスタートアップに移り、トークノートはスタートアップ2社目となる。トークノートは、「いい会社」を作る社内SNS。社内のコミュニケーションを最適化すれば、会社はハッピーになるし利益も上がるという理念のもと、サービスを提供している。

 

株式会社nanapi 取締役CTO/和田 修一 氏

経歴:新卒で楽天株式会社に入社。大学時代は文系だったので、楽天で技術系の部署に配属されてから技術を身につけた。4年間ほどインフラ周りの設計・運用担当のほか、台湾版楽天市場の設計・構築・運用などに携わった後、2009年に株式会社nanapiを創業。同社代表の古川健介(けんすう)氏とは、中学・高校の同級生。

株式会社ヒトメディア DeputyCTO/井村 元宗 氏

経歴:新卒で株式会社ミロク情報サービスで品質管理を担当。その後、富士ソフト株式会社、株式会社gloopsを経て、2013年5月ヒトメディアに入社。ヒトメディアは2006年に設立され、今年で10期を迎える。グループ会社の運営する「ラングリッチ」の運営に深く関わったり、「TERIYAKI」に投資したりするなど、“教育で世界をよくする”ビジョンのもと、受託も含め幅広い業務を行っている。

BASE株式会社 取締役CTO/藤川 真一 氏

経歴:大学卒業後は半導体制御装置の設計のエンジニアに就く。その後Web業界に移り、Web制作のベンチャーで受託を4年間ほど経験し、GMOペパボに転職。ECのショッピングモールを担当する傍ら、「モバツイ」を個人で開発・運営をしていたところ、大ヒット。2012年11月に想創社を設立し、モイ株式会社にてチーフアーキテクトを務めた後、BASE株式会社の技術顧問を経て、昨年8月に同社へCTOとしてジョイン。「BASE」は無料ですぐにネットショップが作れるネットショップ構築サービス。