奥さまはキャピタリスト!? 起業家とVCの理想の関係についてスペースマーケット重松夫妻に聞いた

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「球場からお寺まで簡単に貸し借り」をキャッチコピーに、スペースを貸したい人と借りたい人のマッチングサービスを提供する株式会社スペースマーケット。現在約1400のスペースが登録されており、一般の会議室だけでなく、お寺などの歴史的建造物や、球場、銭湯など、ユニークなスペースをオンラインで手軽に借りることができる。

このスペースマーケットを創業したのは、重松大輔さん。NTT東日本から、創業間もないフォトクリエイトへ参画した後、2014年1月スペースマーケットを立ち上げ、みずほキャピタルとサイバーエージェントから約1億円の調達に成功した。

重松さんの奥さまは、サイバーエージェント新卒一期生で、現在は株式会社サイバーエージェント・ベンチャーズ(以下、CAV)でベンチャーキャピタリストを務める佐藤真希子さん。

お二人は夫婦でありながら、出資する側とされる側の立場でもあるという、業界でも極めて珍しい関係。よく夫婦に例えられる起業家と投資家だが、重松さんと佐藤さんの関係は、どのようなものだろうか。起業家と投資家の理想の関係について、お二人に話を伺った。

 

出会いのきっかけはiemoの村田マリさん

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—お二人が出会ったきっかけは?

重松:10年位前に、友人同士でバーベキューをした際に、妻が、当時はサイバーエージェントに在籍していた、iemoの村田マリさんに呼ばれて来たのがきっかけです。そのときは、よくしゃべる子だなという印象しかなかったんですけど(笑)。

佐藤:ちょうど重松がNTT東日本からフォトクリエイトへ転職するタイミングだったんです。フォトクリエイトを起業したのは、NTTからサイバーエージェントに移った白砂晃さんで、私にとってはサイバー時代の先輩であると同時に、重松にとってはNTT時代の同期だったこともあり、共通の知り合いも多く、フォトクリエイトのビジネスモデルや営業戦略の話で盛り上がって。ふつうそういう場でビジネスの話で盛り上がることはほとんどないじゃないですか(笑)。でもその感覚が一緒だったので、おもしろい人だなと。それからお付き合いすることになって、2008年に結婚しました。

 

妻から「早く起業しろ」とずっと言われていた

—重松さんが起業を決めたタイミングは?

重松:2010年くらいから「早く起業しなよ」と、妻にずっと言われ続けてました。「いつやるの?」と(笑)。2013年4月にフォトクリエイトが上場したのですが、上場するまでは頑張ろうと思っていたので、それが見えた瞬間に、「じゃ、やるぞ!」と。フォトクリエイトも、参画当初はまだまだビジネスモデルを模索していて、試行錯誤しながら無我夢中で、新しいビジネスを作っていくのが、大変だったし、それがおもしろかったんですけど、だんだんビジネスが確立してきて、優秀な方もどんどん入ってきました。そこで、僕はまた別の新しい仕組みを作りたい(=卒業のタイミング)と思ったんです。白砂社長(現会長)も理解を示してくれたので、2014年1月に起業することを決めて、逆算で準備をした感じです。

佐藤:重松とお互いが将来的にどういう風に働いていたいか、どういう家族になっていきたいか話し合ったときに、それを実現するには、どこかのタイミングかでチャレンジをし、自分の城を持つ必要があると思っていました。いろんな若い人や年上の方が、彼を好んで声をかけてくださるのを見ていて、「この人なら、何か新しいチャレンジで世の中をおもしろく変えられるんじゃないか」と思っていたこともありましたし。あとは、本人も言っているように、フォトクリエイトに入ったばかりの重松は、私から見ていてもすごくおもしろかったんですよ。24時間365日、深夜でも早朝でもビジネスの話ばかり、重松にしかできない仕事をしていたし、まさに熱狂しているという感じでした。それなのに、会社が成長すると共に、どんどんふつうの人になっていってしまって…。

重松:それは、会社がちゃんとアーリーステージから、拡大・成長期に入ったってことで素晴らしいことなんですけどね(苦笑)。

佐藤:私は重松に、常に仕事に熱狂していて、彼にしかできない世界を作っていってほしいんです。なので事あるごとに、「早く起業しなよ」と言っていました。起業してからの重松は、またおもしろくなってきましたね。この間、寝言でも営業していたときにはさすがにちょっと心配しましたが(笑)。仕事を楽しそうにしている姿は子供たちにもいい影響を与えると思っています。

 

投資先の選定のポイントは「この人たちと添い遂げたいと思うか」

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—妻の職業がVCで、良かったことや難しかったことは?

重松:わざわざアポを取らなくても、家でもブレストできるのはいいですね。事業のブラッシュアップや資本政策などの相談にのってもらえるのは、すごくありがたいです。とはいえ、VCは起業家ではないので、違うところはありますよね。僕もVCじゃないので、理解しきれないところもあるし。

佐藤:同じ船には乗ってるんですけど、利害が違うんですよね。VCはキャピタルゲインを出してなんぼですし、起業家は事業を成功させてなんぼ。その辺りが若干違うのでもめることはありますよ。VC側からすると、起業家を評価しながらもゲインを出すために株価にはシビアになるじゃないですか。でも起業家は自分たちを評価してもらいたいので、やっぱり株価は高く言いたい。資金調達のところとかは、結構考えが違うところはありました。

重松:ただ、どんなロジックで自分たちの価値を評価しているのか等、VCの考えを本質的に深くわかるのはメリットですね。

—起業家はどのような観点でVCを選ぶべきなのでしょうか?

重松:各VCにも特徴やステージがありますが、やっぱり相性はあると思います。資本政策は後戻りできないこともありますし。
現在スペースマーケットに投資いただいているのは、サイバーエージェント・キャピタルとみずほキャピタルの2社です。みずほキャピタルの担当者さんには、創業当初から事業への共感だけでなく、銀行の担当者のネットワークを駆使してシナジーのありそうな企業を紹介いただいており、資金調達をする際には、まっさきに顔が浮かびました。また、銀行系のVCは大手企業との提携に関しての契約スキーム等でも、銀行ならではの有効なアプローチの仕方を教えていただけるのでありがたいです。

—口を出されているという感覚はないですか?

重松:それはないですね。まぁ、口を出さないとしょうがないときも、あるでしょうしね。

佐藤:サイバーエージェーント・ベンチャーズは、シード期から支援していることもあり、起業家と一緒に事業を作っていくスタンスなので、どちらかというと口を出すほうのVCだと思うんですよ。なので、スペースマーケットにとって、最初の資金調達の際に強みが違う2社のVCが入ったのはとても良かったと思っています。

重松:本気でやってるから、叱りとばすこともあるんでしょ。

佐藤:叱るっていうと上からっぽいですけど、違うなと思ったら全力でぶつかっていきます。私とか特に、結構ガチで言いますし、お互いに、そうやってぶつけあってこそ、何かが生まれていくと信じているので。

重松:会社が立ち行かなくなるところも、散々見ていますからね。

佐藤:なので、重松のことも起業家として見たときに、「こういうところの意識を変えるべきじゃないか?」とか、「ここが弱いとわかっているんだったら、ちゃんとやらないと逃げてたらダメ!」っていうのを、しつこく言います。FacebookとかLINEとか…家に帰ってからも言うぐらい(笑)。

重松:(苦笑)。VCには、いい伴走者であってほしい。経営者だからこそ見えなくなっていることもあるじゃないですか。今後、顕在化してくるリスクみたいなのを先回りしてアドバイスしてもらったりとか、社内では補えないリソースをサポートしてもらえるとありがたいですね。相性もあるけど、どれだけ本気でビジネスに共感して、一緒に世の中に生み出していってくれるかってところが、僕は一番大切だと思っています。

—佐藤さんがVCとして起業家・スタートアップを選ぶポイントは?

佐藤:マーケット規模やどうやって戦っていくかみたいな話もありますが、最後は経営者と経営チーム。“この人たちと、添い遂げたいと思うか”っていうところだと思います。そのためにも、先方にもパートナーとして見てくれることを求めていますね。

重松:担当者によっても個性があるよね?

佐藤:そうだね。CAVは個性や強みが違うキャピタリストが多いので、1人だけでなく複数のキャピタリストに会ってみるのも良いかと思います。

「奥さんは必ず堅い職業に就いている人のほうがいい!」

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—「ご夫婦で一緒に起業しよう」という話にはならなかったんですか?

重松:それはなかったですね。起業や契約に関する知見はかなりもらってるんで、一緒にやってるようなものではありますが。夫婦で経営者としてやるのは、なかなか大変かなと思って。子供も3人いますし。

佐藤:今は私が支える側という感じですね。

重松:お財布はいくつかあったほうリスクマネジメント的に安心ですから。経営者志望の方にも「起業したいなら奥さんは絶対、堅い仕事に就いている人にしたほうがいいよ!」って。独身であればどんなに苦労しても平気ですが、家族がいるとなるとやっぱりスタートアップは経済的に大変ですからね。

佐藤:うちは子供が3人いて、3人目は産まれたばっかりなのですが、重松は平日は深夜まで働いていて、週末も朝6時半に出て行ったりして、ほぼいないも同然。出産前にはよくお友達や後輩から、「子供が2人いて、仕事をフルタイムでするだけでも大変なのに、3人目も産むなんてすごい」と言われていたのですが、大変だと言ってしまえばそれは正直大変ですよね。ですが幸いにも両家両親にも頻繁に助けてもらってますし、新生児って本当にかわいいし、家族が増えるのは幸せです。だから「大変だからやらない」より「大変だけど楽しい!」方を選んでいきたいんです。それは重松も一緒の考えですね。

—家庭も事業も、2人で同じ船に乗って、同じ方向を向いていらっしゃるんですね。

佐藤:そうですね、本当に必死ですけど。重松家は、いつも走ってる!って言われてます。

重松:毎日溺れながらも、なんとか遥か彼方にある岸辺に向かって泳いでる感じだよね。

佐藤:でも、楽しいからいっか!みたいな(笑)。

重松大輔1976年千葉県生まれ。千葉東高校、早稲田大学法学部卒。 2000年NTT東日本入社。主に法人営業企画、プロモーション(PR誌編集長)等を担当。 2006年、当時10数名の株式会社フォトクリエイトに参画。 一貫して新規事業、広報、採用に従事。国内外企業とのアライアンス実績多数。 ゼロから立ち上げたウエディング事業は現在、全国で年間約3万組の結婚披露宴で 導入されるサービスまでに育つ。2013年7月東証マザーズ上場を経験。2014年1月、株式会社スペースマーケットを創業。
佐藤真希子サイバーエージェント入社後、インターネット広告事業本部のアカウントプランナーとして企業のネットマーケティングの戦略立案、実行支援に携わる。大手人材企業や大手ECクライアントを主に担当し、MVPを受賞。営業マネージャーとして、サイバーエージェント広告部門の成長に大きく貢献した。2005年4月より、子会社であるウエディングパークの事業立ち上げに参画後、2006年10月より、サイバーエージェント・ベンチャーズにて、日本を中心としたベンチャー企業への投資活動及び経営支援業務に従事している。プライベートでは3児の母。清泉女子大学文学部卒。