ロゴやテーマカラーの変更から既読機能の削除まで。変化し続けるトークアプリ「755」のUI戦略

755」は、サイバーエージェントの子会社である株式会社7gogoが2014年2月に提供を開始したトークアプリで2015年3月16日に400万ダウンロードを突破。チャットのように展開される1,150名以上の有名人のトークに対して、ユーザーが無料で自由に閲覧・コメントができる。

リリース当初は、藤田晋氏と堀江貴文氏のトークが公開されていたことを記憶している人もいるだろう。2014年の半ばから、音楽グループのAAAや、ロンドンブーツ1号2号の田村淳氏、AKB48などがオフィシャルトークを開設したことで少しずつユーザー数が増え、昨年末にAKB48とE-girlsを起用してテレビCMを放映したことで大きくユーザー数を伸ばしている。

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ユーザーに新しい体験をもたらし、成長を続ける「755」のUIはどのように開発されているのだろうか。「755」を開発する株式会社7gogoの代表取締役社長である森正樹氏と、プロデューサーの新居朋子氏に話を伺った。

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(写真左)新居朋子氏。青山学院大学法学部卒業後、 2005年3月にサイバーエージェントへ入社。 Amebaブログ、各種スマートフォンサービスなど担当後、 2014年7月株式会社7gogoプロデューサーに就任。(写真右)森正樹氏。京都大学工学部卒業後、2013年4月にサイバーエージェントへ入社。社長室社長アシスタントを経て、2013年6月株式会社7gogo取締役、同9月に代表取締役社長に就任。

 

最初はメッセージアプリとしてスタート

森氏「最初は、とにかくシンプルに作らなくてはいけないと考えていました。『メッセージングアプリ』を開発するということだったので、既存のメッセージングサービスを参考にしながらも、有名人が投稿しているトークを『見る』機能と、自分のコメントを『見られる』ようにするために、1画面の中に2つの層をもたせることを意識しました。これは当時一部サービスに実装されはじめたドロワーを参考にして開発しました。トーク内で横に画面をスワイプすると、ユーザーからのコメントが閲覧できるようにしたんです」

あえて、既存アプリのUIの機能を組み合わせることを意識したと森氏は語る。これは、ユーザーが見慣れているUIを参考にすることで、新しい体験でありながらも、直感的に使ってもらえるようにするためだ。「メッセージングアプリ」として開発がスタートしたという話だが、現在はチームでどのようなアプリと認識して「755」を開発しているのだろうか。

新居氏「メッセージングアプリという認識だと、基本は1対1のクローズドなコミュニケーションという印象が強いかと思います。『755』では、有名人が投稿し、それに対してユーザーが応援コメントを寄せるスタイルで、コミュニケーション内容は公開されることが前提となっています。そのため、メッセージングアプリとは扱わず、私たちは『トークアプリ』と呼ぶようにしています」

テーマカラーとロゴの変更

過去のデザイン

開発当初は黒いカラーをベースにしていた「755」のインターフェースは、赤を基調にしたデザインへと変化する。新居氏が7gogoにジョインしたのは、このタイミングだった。テーマカラーを大きく変更した、その裏側にあるエピソードはどのようなものだったのだろうか。

新居氏「当初のテーマカラーでは、『硬派』、『玄人』といった印象がありました。これをどう転換していくべきか、どのような世界観をユーザーに伝えていくのか、チーム内ですり合わせていきました。その結果、イメージは『メジャー感』や『ポップ』というものになり、ユーザーにとって使いやすく、認知してもらいやすいアプリにすることが決まりました。そこからキーカラーを赤にし、ロゴも『7gogo』という表記から現在の『755」に変更しました。キーカラーとロゴをセットで変更することで、サービスとしての認知度を上げる上でのインパクトを狙いました」

このタイミングで、説明しすぎないことやイラストの使用、ラベルの言い回しをポップにするなどの変更を行った。この工夫がスマホネイティブの世代の支持を集める要因にもなっている。

サービスを展開しながらターゲットをシフト

現在では、ティーンエイジャーからの人気を集めているアプリとのイメージがある「755」だが、カラーを変更したタイミングでは明確なターゲットのセグメントはなかったという。

森氏「アプリをリリースした当初は、堀江さんが関わっていたこともあってか、インターネット色が強いアプリでした。黒を基調としたインターフェースで、ネット掲示板に似た雰囲気があったと思います。このままでは、より多くの人に使ってもらうことは難しいのでは、と考えた結果、テーマカラーの変更に踏み切りました」

テーマカラーを変更してからは、AKB48などアイドルグループが参加したことで、「755」のユーザー属性も変化した。「755」はサービスを展開しながら、少しずつサービスを提供するターゲットを変化させてきたことが伺える。

変化するユーザー層に対応するために

より多くの人たちに使ってもらうための変更を施した際に「755」の開発チームが意識したことがパフォーマンスの改善だ。

新居氏「テーマカラーやロゴマークの変更にともない、UIが変更されると、ユーザーはそれに慣れるのに苦労します。少しでもユーザーの負担を減らすため、スクロールをしやすくするなど、裏側のパフォーマンスの改善に力を入れました。操作感を改善したことで、インターネットに精通していない一般のユーザーでも直感的に使いやすいアプリとなるよう意識しました」

よりメジャー感を出し、一般ユーザーにも使ってもらうようにしたことで、新しく対応する必要が生じたこともある。

新居氏「有名人のユーザーが一気に増えたことで、有名人のトークルームのウォッチ数が大きく伸びました。ユーザーが見たいトークルームをフォローしやすいように、画面遷移の方法を変更するなど、フォロー機能に接触する機会を増やしました」

森氏「個人的に印象に残っているのは、ウォッチ数が大きく伸びて、1万ウォッチを超えるトークが増えてきたときにウォッチ数のカウントが読みづらくなったので、コロンを付けるなどの仕様変更を変更を実行したことです。サービス規模が大きくなっていることを実感したタイミングでしたね」

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「年内1000万ダウンロード」の目標に向けて一般ユーザーをいかに盛り上げるか

「755」は今年中に、1000万ダウンロードを目標としている。この数字を達成していくために、どのようなアプローチを考えているのだろうか。

新居氏「一般ユーザーたちのトークも独自の盛り上がりを見せていて、こちらへの対応にも力を入れていきます。例えば、トークのカテゴリ分けを行うなど、自分の趣味嗜好に近いトークに接触するための機能を考えたりしています。1000万ダウンロードを目指すためにも、一般ユーザーがより楽しんで使ってもらえることは何かを考え続けていきます」

森氏「今年1年で、『有名人が使っているサービス』から『自分自身もトークを開設しているサービス』へと一皮むけるために、一般ユーザーに楽しんでもらうための機能を探し続けていきます。あとは、ユーザーが出会いたいと考えているコンテンツにすぐ出会える状態を創出していきたいと考えています。この2つが1000万ダウンロードを超える規模のアプリになるためには重要です」

今後は、アルファブロガーのように、「755」の一般ユーザーの中から有名人が誕生することも想定しているという。

新たなUIパターンの開発

「755」には、トークルームに上から落ちてくるコメントの機能など、他のアプリではなかなか見られない機能も実装されている。

現在のトーク画面

森氏「コメントが落ちてくる機能は、初期から用意されていた機能です。最初はニコニコ動画のようにコメントが流れてくる状態なども検討していたのですが、スマホ的ではなかったので、どのようにすれば、ひとつの画面内に、リアルタイムにコメントが付いている様子を表現できるか? と考えた結果、あの機能が生まれました」

開発当初、メッセージアプリやソーシャルメディア等のUIを参考にしていたとのことだったが、最初に実装されたコメントの落下機能のように、チャレンジングな機能もある。「755」は新しい体験を生み出しているアプリとして、これから先は参考にされるようなUIの事例を作っていかなくてはいけないタイミングに差し掛かっているとも言える。

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メッセージアプリの肝とも言うべき「既読」機能をなくした理由は

冒頭の発言からも感じられるように、彼らが開発において大切にしているのは「シンプルさ」だ。そんなことはどのアプリも同じだ、と言われるかもしれないが、彼らはひとつの機能を追加するなら、どれかひとつ削れる機能はないかを考えるという。

森氏「最初はメッセージアプリだったので『既読』機能が付いていましたが、別の機能が追加されるタイミングで、新居とかなり激しい議論をした末、なくすことにしました」

この「既読」機能撤廃はエンジニアから提案されたそうだ。チーム全体でサービスを根本から考えているのには驚かされる。メッセージアプリとしてスタートしたアプリから、「既読」の機能をなくすというのは、たったひとつの機能削減かもしれないが、開発チームにとっては大きな決断だ。

「755」はサービスの提供開始から1年ほどで、ロゴの変更、テーマカラーの変更、サービスとして重要だった機能の削減など、サービスの根幹に関わる部分に手を加えてきた。サービスを提供し、ユーザーの反応を見ながら、自分たちが提供すべきこと、目指すべきところは何なのか、根本に立ち戻って考え続けてきたからこそ今の「755」の姿がある。

1年で大きくサービスを成長させてきたこのチームが、今後「755」というサービスをどのように変化させていくのか楽しみだ。

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(モリ ジュンヤ)