東南アジア5カ国を担当、27歳マルチプルカントリーマネージャーが語る「国籍よりも人種よりも大切なこと」

2011年6月のインドネシア進出を皮切りに、東南アジア市場への開拓を推し進めてきたアドテクノロジー大手のマイクロアド。5月にはマレーシアにも拠点を構える予定で、これでいよいよASEAN諸国すべてをカバーすることになる。

同社の東南アジア進出の中心にいるのが、十河宏輔氏。ベトナム、フィリピン、タイの拠点長を務めるとともに、インドネシア、シンガポールをあわせた5カ国の事業責任を担っている。弱冠27歳のこのマルチプルカントリーマネージャーに、アジアにおける経営の鉄則を聞いた。

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十河宏輔氏。1987年、香川県生まれ。2010年日本大学商学部卒業後、株式会社マイクロアドへ新卒入社。クライアント直接販売部署の立ち上げメンバーとして、新規クライアント開拓、運用、売上拡大を一貫して担当。2012年にベトナムで現地法人「MicroAd Vietnam」の立ち上げと共にCEOに就任、その後シンガポール、フィリピン、タイの現地法人の立ち上げを一手に担う。

 

5カ国を担当 「年600%成長」も

–各拠点とも順調のようですね。

十河:まずベトナムは、まさに「絶好調」です。前期(2014年)は通期の売上で年600%成長。今期も1〜2月は過去最高の月間売上を記録。一昨年末時点で単月黒字化し、前期は通年で黒字化を達成するなど、数字の状況がすごく良い。昨年4月時点で社員数は約15名でしたが、今は28名。この3月と4月に新たに6名の採用も決まっており、オフィスも手狭になってきました。顧客企業に営業に行っても「外資系企業でベトナムでこんなに成功しているところは珍しい」と驚かれます。

問い合わせの参照元として最も多いのは、当社が提供しているディスプレイ広告に書かれている「Ads by MicroAd」という表記を見てご連絡いただくというもの。ベトナム最大手のニュースサイト「VnExpress」を筆頭に、ローカルのウェブサイトの約90%でディスプレイ広告を配信していますので、日に日に当社の認知度が高まり、問い合わせの件数がますます増えるという良い循環が作られています。当地で営業を行っている競合企業を寄せ付けない状況になっていると自負しています。

–そうそうたる企業と取引しているとお伺いしました。

十河:ベトナム1カ国で、現在約300社と取引させていただいています。取引先企業は日系・外資・内資企業問わず、大手バイクメーカー、自動車メーカー、家電メーカー、E−コマース、銀行、FMCGなど幅広く広告主のニーズに対応しています。ベトナム拠点は経営のステージで言うと「0→1」の立ち上げの段階と、「1→10」のローカル人材で構成される基盤作りの段階が終わり、今は「11→1000」の成長段階にあります。

フィリピンも好調で、昨年12月以来、単月黒字を継続しています。PL(損益計算書)を見ていると、ベトナムの過去の状況と似ていて、今は「1→10」の段階。ローカル採用のスタッフに権限を委譲し、自分が他国に飛び回っていても運営できる状況を作らなければなりません。今年はビジネスを大きく拡大させる上で大事な1年になると考えています。

タイの拠点はこの2月に立ち上げたばかりで、これまでは会社設立が主な業務でしたが、すでに営業も開始しています。開始して2週間で、2件の受注が決まりました。

–多忙だと思うのですが、どのようなサイクルで生活されていますか。

十河:メインの3カ国に加え、インドネシア、シンガポールを加えた5カ国を担当しているのですが、どの国も満遍なく、1カ月では約6日ずつ滞在するようにしています。ただし、1カ国に6日連続でいるということはできませんので、月曜日と火曜日はインドネシアのジャカルタ、水曜日と木曜日はタイのバンコク、金曜日から日曜日まではシンガポール、また月曜日と火曜日はジャカルタに戻って、水曜日から金曜日まではフィリピンのマニラといった具合です。

今のベトナム拠点のようにローカルの人材だけでも円滑に運営できる組織ができれば、リモートでの連携も可能になり、私や組織の機動力も増していくでしょう。フィリピンやタイ、その他の国もそうしていかなくてはいけません。

「ストレス耐性は作れる」

–拠点によって国民性の違いを感じますか。

十河:当社の社員だけに当てはまることかもしれませんが、ベトナムの人たちは真面目で締め切りの意識が強いので時間を守ってくれます。期限までに仕事を終えるために残業してくれることも。

フィリピンの人たちは瞬発力が高く、顧客企業へのプレゼンテーションなど機会を与えるとそれに向けて頑張ってくれます。ただ、その裏返しでサボりぐせもあるので、私がオフィスにいないときに怠けているようなことも。

ですから、私が出張していてフィリピンの事業所にいないときには、必ずSkypeでのミーティングを入れてリモートからコントロールするようにしています。私がいないときに仕切ってくれるローカル人材を採用できれば良いのですが、それがなかなか難しく、話を聞く限り競合の外資系企業も同じところで苦労しているようです。

–十河さんのように複数の国に精通している日本人はまだ少ないように思いますが、アジア圏でビジネスしていく上での鉄則はわかってきましたか?

十河:インターネットの世界では持っている情報の量で差がつく場面がありますから、担当している国の数だけ情報を持っているのは強みだと思っています。また、最初の国であるベトナムだけを見ていたときと今とでは、自分の中で変化を感じます。

1カ国目では、東南アジアでの経営の鉄則を壁にぶつかりながら体で覚えていきました。そうした鉄則が2カ国目、3カ国目でも通用したことで、自分の中で体系を立てられていったように思います。

例えば、組織のマネジメントにおいては、「どの国のどの人種の人たちをマネジメントするとしても、自分の軸やスタッフに求めるゴールのレベルは決してブレさせてはいけない。ただし、人種によってものの伝え方や、ゴールに向かうまでのプロセスは変えてもいい」ということです。

営業においては、「国は違っても、業種によって企業が抱える課題は大きくは変わらない。製品やサービスの実績を伝えることが最も重要であることも同じ。国は違っても、売るという目的は同じなので、営業チームを管理する方法やそのために使用するドキュメントのフォーマットも統一すべき」ということです。

採用においては、「たしかに日本人を採用した方がコミュニケーションが円滑でミスが少ない。しかし、国籍よりも人種よりももっと重要なのは、同じマインドを持っているかということ。面接だけで相手の本音を引き出すことが難しいときは、飲みに行ってそこで最終面接を行うのもいい」などです。

自分なりの鉄則があるので、今後新しい国を担当することになってもおそらく大丈夫だろう、という自信がつきました。

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「これからどの国に行くことになってもおそらく大丈夫ですね」と語る十河氏。

 

–行ったことのない国に物怖じしない人になるにはどうすればいいと思いますか。

十河:行ったことのない国というのは情報もなにもないわけですから、それはもう動くしかありません。頭で考えても分からないのなら行動する方が結果的に早く正解を見つけられることもあります。

私は常にイメージをするタイプです。これをやったらうまくいくんじゃないかとイメージをして、それをひたすらやってみます。しかし、たとえ行動に移したとしても、海外では予想通りに行かないことばかりですから、ストレス耐性はある程度必要だと思います。

しかし、ストレス耐性は作れます。1カ国目のベトナムのときは、自分の思い通りに行かず、オフィスの会議室で一人で叫んだりもしていました。しかし、直面した問題に向き合い、解決策に取り組むうち、ストレス耐性が身についてきました。そうして成功体験を積み重ねるうち、ビジネスの喜びを知り、体力的につらくても根っから仕事が好きで、趣味が仕事のようになっていくのです。

東南アジアのビジネスに挑戦するなら、今が絶対にそのタイミングだと思います。「0→1」の仕事が好きでやめられないので、タイをうまく立ち上げることができたらまた次の国へ挑戦したくなるかもしれません。

(岡徳之)