Web業界未経験のママプレナー端羽氏がファイナンスまでたどり着けた理由

ビジネスパーソンであれば、まだ経験したことのない業務に向き合わなければならないことはよくあるもの。経営者や起業家であればなおさらです。しかし、そういったときに予算の折り合いがつかないケースはしばしば起こります。そんなビジネス上の相談を1時間単位のスポットコンサルティングで知見のある人に聞ける日本発のサービス「ビザスク」。

代表の端羽英子さんは、子育てをしながらMITでMBAを取得したほか、ゴールドマン・サックス、日本ロレアル、そしてビザスクの立ち上げと輝かしいキャリアを歩んできたママプレナー。しかし、端羽さんはビザスクを立ち上げるまで、Webサービスの運営は未経験だったといいます。彼女が歩んできたこれまでのキャリア、そして子育てと仕事の両立、Webサービスに感じた可能性について伺いました。

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端羽英子氏。東京大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券投資銀行部門にて企業ファイナンス、日本ロレアルにて化粧品ブランドのヘレナルビンスタインの予算立案・管理を経験し、MIT(マサチューセッツ工科大学)にてMBA(経営学修士)を取得。投資ファンドのユニゾン・キャピタルにて、企業投資を5年間担当した後、ビザスクを運営する株式会社 ビザスク(旧:walkntalk)を設立。USCPA(米国公認会計士)。

 

子供を自分の稼ぎで育てないといけないと感じたとき、ためらいなく仕事に打ち込むことができた

-キャリアのスタートはゴールドマン・サックスからですが、金融の仕事に興味があったのですか?

はい。父が熊本の地銀に勤めていたのですが、彼の仕事の話を聞いてずっと金融に面白さを感じていました。しかし父には都銀にコンプレックスがあったのか、「都銀にはいくな」といわれていて(笑)。そんななか投資銀行が面白いのではないかと思い、ゴールドマン・サックスを受けようと思いました。また当時は、自分自身で本当に何がしたいのかわからず、できるだけ強い企業に入ろうという思いがありました。ゴールドマン・サックスのほかに就活で受けた企業は、トヨタとソニーとNHKなど、大手ばかりでした(笑)。

ゴールドマン・サックスで働いて、1年ほどで子供ができて退職することになりました。そのときは「スーパー派遣社員になりたい」と思い、USCPA(米国公認会計士)の資格を取りました。しかし、その時点で当時の夫と大げんかをしたのがきっかけで、「フルタイムで働いたほうがいい」と思い直し、就職活動をすることになったのです。

「子供を22時までだったら、子供を預かってくれる保育園はある。だったらそれまでは自分もみんなと同じように働ける」と感じていましたし、数字になる前の事業の現場で働いてみたいと考えて日本ロレアルに入社しました。

それから日本ロレアルで1年半ほど務めた頃、夫の留学に付いていくため退職をしました。彼が留学のために勉強していた頃は、彼が家で家事をして私が外で働くという生活でした。結果彼がボストンに留学することになり、そこで私が留学できたのがビジネススクールだったこともあり、MBAを取得しました。

-名だたる企業を渡り歩き、そのうえUSCPA(米国公認会計士)やMBAを取得するなど、誰もがうらやむようなキャリアですね。

日本ロレアル入社への再就職までには、実はとても苦労しました。乳飲み子がいて、なおかつゴールドマン・サックスでも1年しか働いたことがない、ということでいろいろな企業で落とされました。日本ロレアルに入社して、人事担当の方にいわれたのは「退職後にただ主婦をしていた人なら採用するのは怖かった。でも小さい子供がいながらも資格を取得するなど、努力を続けていたので大丈夫だと思った」という言葉でした。ただ当時を思い返すとUSCPA(米国公認会計士)もMBAも「仕事をしていたいのに、子育てをしていなくてはいけない」という欲求不満を勉強にぶつけて取得したようなものでした。

仕事と子育てのバランスで苦労していたのですが、転機が訪れたのは、離婚の経験をしたことですね。彼は自分が初めて付き合った男性でもあったので、離婚が最初の失恋だったんです。人の心は自分の思い通りにならないんだとか、努力してもかなわないこともあるんだと気づかされた、初めての大きな挫折でした。それまではバリバリと働きながらも、どこかで「でも、旦那の稼ぎもあるし」みたいな甘えがあったのですが、自分だけの力で子供を育てていかなくちゃいけないんだと気合が入った瞬間でもありました。

離婚するまでは、妻としてもすてきでいたいし、子供にとっても良いお母さんでいたいし、仕事もしたい。でもあまりにバリバリと働くと、子供との時間を作れず罪悪感が生まれてしまう…という悩みがありました。しかし、自分が稼いで育てないといけないという状況になると、そうした悩みがなくなりました。自分でお金を稼いで生活を守らなきゃいけないと考えると、何が自分にとって大事なのかの取捨選択ができるようになりましたね。娘には、もう私のことはパパだと思ってくれ、という感じで接していましたから(笑)。

-現在、お仕事と育児のバランスはどのように設定しているのでしょうか?

私は仕事が大好きなので、油断すると仕事だけになってしまうんです。だから子供のことを忘れないようにしよう、と注意していますね。気がつくと「あっ、もうこんな時間。帰らなきゃ」みたいな。だから普段考えているのは8割仕事のことで、子供のことは2割くらいです。でも、最後の最後で代わりがきかないのは育児だと思っています。

「Web業界未経験」の私を助けてくれた2人のエンジニア

-ほかのクラウドソーシングとは少し毛色が違いますが、ビザスクのアイデアはどこから出てきたのでしょうか?

起業をするのにはお金も必要なので、初めはフリーランスで少し稼げればと思っていました。そのころ「ランサーズ」を見て、土日の2日間だけの稼働でも、エンジニアやデザイナーはこんなに稼げるものなのかとビックリしたのですが、私にできる仕事は何もなかったんです。「こんなにいっぱい働いてきたのにおかしい」と思い、文系ビジネスマンにも適用される「個人の知見」というものに興味がでてきました。その興味のもと、起業のためのビジネスモデルを企画するなかで、個人の知見を活かしたキュレーションによる物販のECプラットフォームを考えました。

当時の同僚から「これまでWebサービスを作ったことがないんだから、詳しい人にアドバイスもらった方が良い」と金融からwebサービスを立ち上げた起業家を紹介してもらいました。その後、プレミアムECサイトの責任者の一人にお目にかかったのですが、実体験からのアドバイスによると私のアイデアも事業計画も穴ばかりで、「成功確率0%だ」と1時間ダメ出しの嵐をくらってしまいました。

しかし私はそこで「新しいことを始めるにあたって人の知見を教えてもらうこと」の重要性を痛感して、今のビザスクのような知見のマッチングサービスを思いつきました。この新しいアイデアについて再びその責任者の方に相談をして、教えてもらったのがアメリカのGLGというサービスです。これを日本に合った形にして提供したいと思ったのです。

-Web業界での経験がないなか、エンジニアなどのスタッフ集めはどのように行ったのでしょうか?

まだビザスクではなくECサイトを立ち上げようとしていたころ、まず目利きの人を探しました。その人に紹介してもらったエンジニア2人に私のプランを聞いてもらったのですが「そんな漠然とした状態では外注には頼めない」とモックを無償で作ってくれたのです。それが今の共同創業者である2人です。

ファイナンスで得た「コミットメントの強さ」を軸に、海外、そして日本の地方へ

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-昨年ベンチャーユナイテッド、サイバーエージェント・ベンチャーズなどから7000万円の出資を受けられました。ママプレナーでファイナンスまでこぎつける会社は少ないと思うのですが、経営者として家庭と子育てを両立できた理由についてどのように思いますか?

たしかにママプレナーでファイナンスをするのは珍しいようです。実際に、ファイナンスにあたって複数社から「また子供を産んだりしませんよね?」と間接的に聞かれ、とても驚きました。しかし、投資したからといってすべてがうまくいくわけがない。そんなときに投資家の方々が投資先に求めるのは、コミットメントの強さです。アイデアにお金を投資するのには、それくらいのことを聞いて当然だとも思います。そこで、私個人の意識改革も含め、社内の体制作りを行ってメンバー全員のコミットメントを強めることで、その姿勢を見せるようにしました。

-子どもがいても働きやすくする工夫は何かされていますか?

IT業界で珍しいことではないですが、リモートでの仕事は積極的にOKにしています。朝10時にみんなで「今日はこの仕事をします」というリストをチャットで提出しあえば、あとは自由な場所で仕事をして構わないという形ですね。私のほかにもう1人、子供を持つスタッフがいるのですが、場所にとらわれないというだけで、子供がいてもかなり働きやすくなるんです。

-今後の事業の構想について教えてください。これからサービスをどのように成長させていきたいとお考えでしょうか?

今年はファイナンスで得たお金を使って、海外にサービスを広げたいと考えています。

近くにいない人に知見を聞けるというところに、Webサービスとしてやっている意義や醍醐味があると思っています。だから日本のことを調べたい海外のお客さんや、その逆に海外のことを知りたいと思っている日本のお客さんを早く獲得していきたいです。

ほかには、地方との連携もしたいと考えています。地方にはすごく良いものがあるのに、情報が足りていない、人が足りていないという理由で、芽が出ないことが少なくありません。ですので、地銀や地方自治体と組むなどの企画も動かしています。

-IT業界のワーキングマザーや、ママプレナーに対して、アドバイスやメッセージがありましたら、教えてください。

IT業界で働くお母さんは本当に元気で、私が刺激をもらっているくらいです。私は子供をほとんどベビーシッターさんに預けていましたが、愛情は時間の問題ではなく、子供が愛情を確認できるポイントをちゃんと作っているかどうかだと思います。だから上手にアウトソーシングして「仕事をしてるママが好き」といってもらえるように頑張ってほしいなとも思います。

ママプレナーに関しては、ファイナンスをぜひ検討してみていただきたいです。自分たちに投資して一緒に考えてくれるVCさんの存在はとてもありがたいですし、ファイナンスをすることで世間の見る目も変わります。ですので、ひとつの選択肢としておすすめします。

(照沼健太)