Airbnbが日本で成立するには? 自民議員「グレーならガンガンやっちゃえ」

ルームシェア、カーシェア、ナレッジシェア……最近ではさまざまな「シェア」ビジネスが台頭してきている。これは、持てるものを専有するのてはなく、使っていないときには別の人が使えるようにすることで、既にあるリソースを最大限に活用しようという試み的なビジネスだ。

海外のメインプレーヤーとしては宿泊施設をシェアするAirbnb(エアビーアンドビー) 、ライドシェアのLyft(リフト)Uber(ウーバー)の3社を挙げられるだろう。

4月8日に行われた「新経済サミット2015」で、Airbnb CTO兼共同創設者のネイサン・ブレチャージク氏、衆議院議員/自民党IT戦略特命委員会事務局長 ふくだ峰之氏、Lyft 共同創業者兼社長のジョン・ジマー氏が登壇してシェアリングエコノミーの現状、成長させるのに不可欠な要素、また日本で事業を始める際に大きな壁となっている「規制」についてセッションが行われた。

Airbnb CTO兼共同創設者のネイサン・ブレチャージク氏

Airbnb CTO兼共同創設者のネイサン・ブレチャージク氏

「ノーリスクでメリットしかない」

持ち物には使っていない時間がある。その“空き”を有効に使おうというのがシェアビジネスの根底にある考えだ。過去にも同じようなビジネスを考えた人があったかもしれないが、その“空き”は分散してあちこちに偏在していたため、集約するのが難しかった。しかし現在ではITがあり、情報の集約と活用が簡単にできるようになって、まさに「機は熟した」といったところだろう。

Airbnbは部屋を、Lyftは車をシェアすることにどのようなメリットがあると考えているのだろうか。

「部屋は既にあるものです。わざわざ貸すためにお金を出して用意したものではありません。放っておいても家賃が発生するでしょう。それをシェアすることができる。それはホストにとっては大きなメリットになります」とブレチャージク氏。「しかも旅行者にとってはホテルに泊まるのとは違った体験、旅行後にはホストとのコミュニケーションという新たな価値がえられるのです」とそのメリットを強調する。

Lyftのジマー氏も「アメリカでは所有されている車のうち8割が使われていませんでした。しかし、使っていない時間であってもコストは発生します。自分だけで使っていればすべて負担しなければなりませんが、ライドシェアすればその分コストを減らせるのです」と力説する。

「いずれにせよ、もともとあるものを活用するので、どれだけ低価格で提供しようと、ホストにとってはノーリスク。メリットしかないのです」(ブレチャージク氏)。

AirbnbやLyftはどうやって信頼を得たのか

旅行者にとって、安く泊まれ、しかもホストとのコミュニケーションという新しい価値を発見できるAirbnb。時間通りに目的の場所に到着できるうえ、渋滞解消にも一役買っているLyft。

しかし、どちらも「個人対個人」であるがゆえに、開始当初はサービス提供側・利用側の双方に信頼と安全を提供できるかということが大きな課題になったという。

Airbnbのプレチャージク氏は「まず、サービスを始める前は徹底的に準備した。泊まってもらう部屋の写真はプロのカメラマンを使って、質の高いものに。Webシステムの使い方、プロフィールの作成方法、価格設定などについてトレーニングやサポートを行なった」と説明する。

Lyft 共同創業者兼社長ジョン・ジマー氏

Lyft 共同創業者兼社長ジョン・ジマー氏

Lyftのジマー氏も、「既存のタクシーやリムジンより高い安全性を担保できるよう、ドライバーに対しては、犯罪歴のチェックやドライビングレポートの提出、事故などが起きても正確に報告することなどを義務付けてきた」という。

その上で、お互いに評価し合うシステムを作り、Airbnbでは高い確率でレビューが書き込まれ、それを読みたがる人も増え、新たなコミュニティも生まれているという。また、Lyftでは、サービス開始当初は相手にしてもらえなかった保険会社から、保障を引き受けてもらえるようになったとジマー氏は語る。

大切なのは、隠すことではなく、何か問題が生じたらそれを明らかにし、それを解決するため一丸となって取り組むこと。それによりホスト側とゲスト側に信頼と安全を提供できるのだ。

シェアリングエコノミーを日本で成長させる鍵とは

シェアリングが確立されている国から、同様のサービスを日本で始めようとして最初にぶつかるのは「規制の壁」。ユーザーにとってもメリットの大きいシェアリングエコノミーを成長させていくため、企業だけでなくわたしたち利用者側はどのような努力が必要だろうか?

まず、ふくだ氏は「シェアリングエコノミーは日本でも成長する」と断言した上で、そのための条件を挙げていった。

「これまで、日本では免許制度や細かい規制を敷くことにより、公の機関が信頼を担保してきた。そのため、なにか問題が起きると――例えば、公園のブランコでケガをした、などという時に、利用者は公の機関にクレームを入れていた。しかし、インターネットが普及し、それぞれ個人で信頼しながらさまざまなことを起こせるようになった現在では、信頼の担保は民間に移ってきているといえる。

「規制がなぜあるかというと、縛るためではなく利用者を守るため。嫌な思いをしたり、ましてや犯罪に巻き込まれたりしないよう、国が守っているというのが根底にある考えだ。しかし、きちんとした評価の仕組みを作り、信頼のベースを国ではなく個人が持ち、ある程度自己責任である、という意識改革が利用者側でも持てるようになれば、その必要はなくなってくる」(ふくだ氏)

特にオリンピックが開催される2020年に向けて、この分野での新規参入が必要とされるという。

「確かに、既存の旅館経営者にとって、厳しい訓練を受けた従業員もいないような民間宿泊施設ができるのは面白い話ではないかもしれない。しかし、オリンピックの2020年やそれ以外のスポーツの祭典に対応しきれるほどの宿泊施設がないのも事実だ。排除しようと考えるのではなく、部屋をシェアするという新しい事業のあり方を受け入れ調和よく組み合わさることによって、お互いにメリットを享受できるようにしていってほしい」(ふくだ氏)

自民・ふくだ議員「グレーならガンガンやっちゃえばいい」

しかし、それでもなお、新規参入に二の足を踏む人も多い。その理由はやはり「規制」だ。事業を起こしたは良いが、規制にかかりそれまでの投資が無駄になる、ということは起業家にとって避けたいものだろう。

どうすれば、ほかの国で生じているようなシェアリングエコノミーの潮流に乗れるのだろうか。

これにもふくだ氏は「グレーならガンガンやっちゃえばいい」と提案する。

「そもそも日本人には“お上”に従わないといけない、というマインドがある。そのため規制があると、その枠内でだけ動こうとする。ほかの国の人からすれば理解できないから、自国で成功したモデルを日本に持ち込もうとしてもこの壁にぶち当たり、成長できないのが現状だ。しかし、規制の枠の中で小さく動きまわるのではなく、『ここはどうだろう? はっきり規制されているわけではないんだけど』というようなグレーの部分であれば果敢にチャレンジするというマインドを持って、スタートしてもらいたい。」

衆議院議員/自民党IT戦略特命委員会事務局長 ふくだ峰之氏

衆議院議員/自民党IT戦略特命委員会事務局長 ふくだ峰之氏

それに対し、ブレチャージク氏も「197カ国で事業を行なっており、それぞれの国でルールが違う。その国のルールを変えるのではなく、事業モデルを証明し、提示するのが大切だと感じている」とこれまでの経験を説明。ジマー氏の場合、カリフォルニアで始めた時「州から『やめろ』と言われた」という。「でも、わたしたちがしたかったのはルールを変えるよう政府に提案することではなく、渋滞を解消したい、利用者を快適かつ安全に目的地に届けたいということ。そのようなビジョンに対する情熱があったからグレーと思えた部分に果敢に踏み込んで行けたと思っている」とアントレプレナーにメッセージを送った。

ふくだ氏は「ブラックゾーンには決して入っていってはいけないけれど、グレーゾーンであればアクションを起こしていく価値は十分にある。決断がつかないのであれば――そういう人は起業家にならず、就職した方がいい」とはっぱをかけた。また、「起業して、失敗したとしても、そこは政府がセーフティネットで“担保”しているから信頼してチャレンジしてほしい。ぜひともシェアリング事業を成功させ、新しい経済活動でもうけ、税金をたくさん払える企業になってほしい」とジョークも交えながら締めくくった。