Slushがアジア初上陸、日本と海外を繋ぐ国際的スタートアップイベント

フィンランドのスタートアップカンファレンス「Slush(スラッシュ)」が、初のアジア開催イベントとして「Slush Asia」を4月24日にお台場で開催した。Slushはヨーロッパのスタートアップが投資家やメディアとの出会える場として、7年前にフィンランドで始まったイベント。開催当初は200名規模のイベントであったが、2013年のSlushには約7000名が集まり、2014年には1万3000名が参加。スタートアップのためのカンファレンスとしては世界有数の規模のものとなっている。

会場には即席のテントがいくつか設営された

会場には即席のテントがいくつか設営された

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約3000名が集結するイベントとなった (c)集合写真家 武市真拓

 

Slushは単なるミートアップにとどまらず、独特な世界観を持つエンターテイメント性が特徴だ。Slushが参加者を惹きつける魅力のひとつに、独特でスタイリッシュな会場の雰囲気がある。Slushの会場はコンサート会場のような、未来的で洗練されたデザインで来る人々を楽しませている。

Slush Asiaには日本国内外から起業家、投資家、学生、ジャーナリストなど、約3000名が集結した。

リラックスしながら登壇者のセッションを楽しめるSlush Cafe

海が目の前に広がるSlush Asiaの会場には、セッションステージの他に、デモ体験スペース、Slush Cafe、フードスペースといった様々なスペースが設けられた。各スペースはドームの建物の中にあり、ドームの中はミュージアムやプラネタリムのような雰囲気であり、コンサート会場のようでもあった。Slush AsiaでもSlush独特のエンターテイメント性が観客を魅了した。

テントではトークセッションやプレゼン大会が実施

テントではトークセッションやプレゼン大会が実施。テントの中は人だかり

数あるスペースの中でも、Slushならではのコーナーとして中央のオープンエリアに設置されたSlush Cafeは、リラックスしながらトークを交わせるミニセッションエリアとして来訪者を楽しませた。スピーカーと観客の距離が非常に近く、始終なごやかな雰囲気で登壇者に質問できるのが特徴だ。Slush Asiaはスタートアップの祭典であるが、Slush CafeではITやスタートアップという枠にとらわれず、様々な分野で活躍している著名人がスピーカーとして登壇した。

より多くのひとにプログラミングを伝えるーHello Ruby著者のリンダ・リューカス氏

Slush Cafeに登壇した、リンダ・リューカス(Linda Liukas)氏は女性がRailsを学ぶのを支援する非営利団体、Rails Girlsの創設者として世界中で知られる女性である。

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これまで女性がプログラミングを利用して創造の幅を広げられるようにと支援してきた同氏の、次なる取り組みとして出版された著書『Hello Ruby』は、子どもにプログラミングについて伝える絵本。少女の冒険ストーリーを通じて子どもにテクノロジーについて伝える『Hello Ruby』は、Kickstarterを通じて世界中の9000人ものサポーターから、38万700ドルの資金を集めた。同氏が女性や子どもに対してプログラミングの教育を行うようになったのは、自分で作りたいと思ったサイトのためにプログラミングを始めたことがきっかけだったと語り、より多くの子どもが創造の手段としてプログラミングを学べることを目指したという。プログラミングの絵本は子どもがターゲットではあるが、それと同時にその子どもの両親が顧客であり、子どもとその両親にとって良い内容になるようにと意識しているという。

世界中にファンを持つ同氏はそれぞれの国の子どもの特徴をとらえ、子どものそれぞれの答えを尊重できるような教育を目指している。

「日本とフィンランドの子どもはシャイという点でよく似ています。しかし日本の子どもたちはフィンランドの子どもに比べて、興味の幅は広いけれど、背中を押してもらわないとなかなか踏み出せないという性質があると思います」(リンダ・リューカス氏)

プログラミングに限らず、起業家という視点でもフィンランドの「シャイ」な性質はフィンランドのスタートアップシーンに大きな影響があったと同氏は考えている。Nokia(ノキア)が国の根幹の握っていた時には、フィンランドの人々は挑戦しようとしなかったが、その後Nokiaが転覆しかけたことがSlushが始まったきっかけになったという。近年ではフィンランドにおいても、起業家を応援しようとするマインドが育ってきているという。同氏は「一度何かプロジェクトに興味が湧いたら、とことんコミットするようにしている」と語り、日本の起業家教育においてもチャレンジする精神とそれを支える周囲が重要だと語った。

ピッチではトライアルプレー型広告のAdplayが優勝

ピッチの決勝では各地域のピッチイベントを勝ち抜いた、Alphaka DB(画像や動画のディープラーニング)、Bento Bioworks(個人向けの小型DNA解析機器)、Fastmedia(ネイティブアプリ作成サービス)らがDave Mcclure氏ら投資家と会場のに向けてピッチを行った。優勝は、モバイルゲームのためのトライアルプレイ型広告Adplayを提供する台湾のVMFive。ユーザーがなかなか自分の好みのゲームを見つけられないという現状と、ゲーム会社はより熱心に遊んでくれるユーザーを求めているという双方のニーズがあるという。課金はトライアルプレーごとに行うとのこと。

日本と海外のスタートアップをつなぎたいーSlush Asia仕掛け人の想い

Slush Asiaの仕掛け人、アンティ・ソンニネン(Antti Sonninen)氏は、Rovio社元日本ディレクターとして活躍した同氏は自身の経験から、海外のスタートアップが日本に進出することの難しさを実感した。日本のスタートアップにとっても、海外とつながりを持つことはまだまだ難しいのが現状だ。こうした日本と海外とのつながりの希薄さに対し、海外に進出したい日本のスタートアップと海外をつなげたい、日本に進出したい海外スタートアップと日本をつなげたい、という運営者の想いがSlush Asiaを成功へと導いた。アジア初上陸のSlushは参加者人数という点で当初目標として掲げていた1000人参加を大幅に上回る結果となった。

ハードウェアスタートアップの展示も多かった

ハードウェアスタートアップの展示も多かった

「私にとって、このイベントを通して一番大きな経験となったのは、300人を超えるボランティアの協力があったということです。スタートアップに対して非常に熱心な若い方々がこんなにも大勢いるというのには本当に驚かされました。そして何より、こういった若い人たちがいることが日本のスタートアップの未来を明るくするのだと思います」(アンティ・ソンニネン氏)

同氏は次の取り組みとして、日本のスタートアップと海外のつながりを強化するためのアイデアがあるという。