南場智子×ベン・ホロウィッツ対談 「アイデアは他人に理解されないところから始まる」

シリコンバレー拠点のベンチャーキャピタル「アンドリーセン・ホロウィッツ」は、FacebookやTwitter、Airbnbをはじめとするテクノロジー企業へ早期に投資し、巨額のリターンを得た実績で知られるが、ジェネラルパートナーのベン・ホロウィッツは「成功の方程式はない」と言い切る。答えがない難問や困難にどう立ち向かうかを綴った『HARD THINGS』の著者でもあるベンが9月8日、日経電子版、日経BP主催の「Startup X Talk」でDeNAファウンダーの南場智子氏と対談し、実体験に基づくアイデアや意思決定の方法について語った。

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自分の失敗を赤裸々に綴る理由

書店では成功した起業家やビジネスマンによるハウツー本が溢れているが、ベンは「成功の方程式はない」と断言する。当然ながら、そんなものがあれば誰もが成功を手にしているはず。にもかかわらず、誰もが成功者になっていないのは、経営は自分が置かれている状況によって全く異なるためだ。

ベンの著書はタイトルからも分かるように、成功体験を書き連ねたものではない。南場氏の著書『不格好経営』でも失敗が赤裸々に綴られており、これについて南場氏も「成功物語は苦手で、読むのも意味がない。起業家に同じ失敗してほしくはないから、自分が陥った失敗を書いた」と言う。

成功に関してベンは、「自分だから出来る、成功すると思い込むことは危険。また過去に成功したから、次も成功すると思ってはいけない」と警鐘を鳴らした。成功するのは自分が特別な人間だからではなく、アイデアやサービスが良いからなのだ。

全員のコンセンサスをとることが正しいわけではない

それでは、優れたアイデアとはどんなものなのか?

よく日本では、世界に通用するスタートアップが生まれないことについて、シリコンバレーとの違いを比較されることがある。「日本は文化的に伝統を重んじるため、過去のやり方で挑もうとする。特にテクノロジー企業では考え方のブレイクスルーが必要」とベンは言う。「自分で考えて、オリジナルなアイデアでないといけない。それは他人には理解されないところから始まるのだ」と続ける。

南場氏も、採用時には「全員が丸をつけた人を採用するのではなく、誰かが三重丸をつけたような人の方が大活躍をする」といい、採用方法を大きく変えたそう。全員のコンセンサスをとる意思決定が正しいわけではなく、ベンのいう他人には理解してもらえないことが大きな成功へ導くこともよくある。

質疑応答の中では、ベンがスタートアップが始めるべきアイデアについて話した。それは、大企業ではなくスタートアップだからこそアグレッシブに攻めることができるアイデアで、一見するとBad Ideaに見えるものだ。いわゆる良いサービスに見えるものは大企業に向いているが、隙間を見つけてBad Ideaに手を加えるべきなのだという。こういった意味でも、固定の概念や過去の手法に囚われることなく、ブレイクスルーが必要となるだろう。

良いストーリーを作って、それを伝える

ブレイクスルーして、良いアイデアが生まれたとしよう。しかしそれは単なる始まりにすぎない。

その次のステップとして、そのアイデアが本当にブレイクスルーであるということを人に伝えなければならない。そして納得させなければならない。自分のアイデアを良いストーリーにして、正確に投資家に伝えて、説得することが必要だ。

こういった過程がうまくいかない時も含めて、すべてを楽しめる人が起業家に向いているのだと南場氏は語る。「洗濯機でもみくちゃにされるような感覚ながらも過程を楽しみながら、自分がDoer(実行家)として大きなサービスを作り、人を喜ばせることが好き」。

もちろん人によって喜びの源泉は異なる。ベンは個人でやるよりも、大きなことができることにやり甲斐を感じると語った。一人ではできないが、人と一緒にすることで達成できることが喜びなのだという。

またベンはシリコンバレーの魅力として、すでに成功事例があること、優秀なエンジニアがいること、ベンチャーキャピタルの資金も圧倒的であることを挙げた。単に日本がシリコンバレーを真似ることは短絡的であるが、南場氏はエコシステムを作るには人口も少ないため厳しいものの、「ヘルスケアなど領域を定めてやってみたい」と語った。