「あなたは人からどう見られたいか」SNS時代の人付き合いをエンジニア視点で考える

変化の激しいエンジニアの世界で、どうすれば成長し続けられるのか。そのヒントを、飲食店向け予約台帳アプリを手がける「トレタ」の増井雄一郎さんが解説します。勉強方法を紹介した第1回、勉強するための時間と場所をテーマにした第2回に続き、今回は「人との付き合い方」について。

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「IT芸人」や「風呂グラマー」の異名でも知られる増井雄一郎さん

「自分がどう見られたいか」は演出できる

ここ数年、人付き合いで変わったことは、「継続して接触する人数」が劇的に増えたことにあると思います。仕事やプライベートで会った人達と、FacebookやTwitterなどのSNSで繋がることによって一度会っただけでも継続して個人的な情報が入ってくるようになりました。

ここで面白いなと思うのは「一次情報」、要するに本人からの情報が主だということです。これまで、しばらく会わない人の近況は共通の友人を介して得ていましたが、今は直接SNS経由で入手できます。そのため、間違った近況が伝わることは少なくなりました。

自分に関する情報を自分でコントロールできるようになったのも大きな違いと言えます。自分がSNSに書き込む内容やアップする写真などで、他者から見た自分を作ることができるからです。そのためにはまず、「自分は他者からどのように見られたいのか」ということを考える必要があります。

私の場合、積極的に「どこでもパソコンを開いてコードを書いている」という写真を上げています。前回書いたように、お風呂だけでなく喫茶店やクラブでもコードを書いている写真を公開しているので、「増井は非常にコードを書くのが好き」「仕事時間外でも仕事をしている」というイメージが作られます。そしてそれは、自分にとってプラスになると思っています。もしかしたら写真を撮るためだけにパソコンを開いて実際は何もしていないかもしれません。

本当に仕事をしているところです

本当に仕事をしているところです

クローズドなチャットの投稿も晒される意識

ソーシャルに書き込む内容で、もう2つほど気をつけていることがあります。それは「他人への皮肉は書かない」、「すべては公開される」ということです。

ネットに皮肉を書きたくなるのは、誰かを攻撃したいと思うときです。でも攻撃をすると大抵自分の評判を落とすことになるだけなので、なにか批判を書くときは皮肉っぽくかくのではなく、しっかりと筋道を立てて書くようにしています。

またFacebookのプライベートグループや知り合いだけが参加するチャットなどクローズドな場所では、知り合いしかいない安心感から普段外では書かないようなことを書いたりすることがありますが、私はネットに書いた以上は全て公開される可能性があると思っています(参考)。なのでクローズドなグループでも、一般に公開されてもあまり問題にならないように気をつけています。

これは確実に写真を撮るためだけにパソコンを開きました……。

これは確実に写真を撮るためだけにパソコンを開きました……。

最近でこそ、知らない人から話しかけられるほど「気さくな人」と認知されているようですが、昔は会う人によく「もっと怖い人だと思っていました。会うと気さくでビックリしました」と言われていました。SNS上であまりキツい発言や高圧的な言い回しはしていないと思うのですが、なぜかそう思われていたようです(いまでも何故だかホントにわからないです)。なので、道ばたで話しかけられて仲良くなった話などを積極的にネット上に投稿することで、「怖い人」のイメージを払拭するように心がけました。

とはいえ、仕事に関することや、相手のあることはSNSに書けないことが多くあります。私もSNSにはトレタの業務内容について書くことはありませんし、打ち合わせ先の近くで美味しいご飯を食べても写真をアップしません。そのため、仕事をしているイメージが薄くなるため、HRナビで記事を書いたりして、自分から情報発信を行うようにしています。しかし最近、友人には「会社ではリラックマと遊んでいて、家の風呂で仕事しているイメージ」と言われるようになってしまいました。

複数のキャラクターを演じる難しさ

もう一つSNS時代で変わったと思うのは、複数のキャラクターを運用することが難しくなりました。昔は、会社としての自分と趣味の自分、家庭の中での自分、友達から見た自分など、分断された関係の中で複数のペルソナを持っていました。

人との接触が継続的、長期的に行われることにより、複数のペルソナを維持することが難しくなりました。Twitterなどで複数アカウントを運用している人もいますが、多分長期的に運用できるのは2つまででしょう。なので「見られたい自分」というキャラクタは1〜2種類しか運用が難しく、どこで見られても大丈夫という風にしておく必要があります。

SNSのおかげで継続して接触する人が増えた一方で、実は私が人付き合いする上でとても困っていることが1つあります。全くといっていいほど人の名前を覚えられないのです。イベントなどで多くの人と会うのですが、顔と名前を本当に覚えていないことが多く、話しかけられてもきちんと対応できないことがよくあります。

イベントなどで私に話しかけて挙動が変だった場合は「前回どこで会ったか」を言って頂けると非常に助かります。できるだけ聞くようにしているのですが、タイミングを逃して結局誰と話をしていたのか分からないということも……。もし顔を見ると、名前とアイコンが出るスカウターのようなデバイスが出たら、100万円までは払いますw

ネット経由でのやりとりは、相手を認識しないで行っていることがよくあります。Twitterで誰かに返信しているときは、返信先の個人に対して返事をしているというより、「Twitterという人」に対して話しかけているイメージです。どうやら私は、個人と話しているというより文脈だけで話しているようで、「何>誰」というタイプなので、話をしている人への興味が薄いのかもしません。

勉強会などでは、その分野の人を引き合いに出し「○○さんって知ってます?」と聞かれることがあるのですが、先ほどのように名前を覚えていないので、ほとんど反応できませんw

連絡くれた人には時間を割く

同じ仲間と長く付き合うより、多くの人と話をしたいと思っています。色々な人と話をするには、興味のあるテーマの勉強会に出るなどの方法があります。私はスピーカーとして勉強会に出ることが多く、聞くだけで参加することは少ないのですが、出るときは懇親会が一番楽しみです。

勉強会などで会って話す以外には、Twitterなどで個別に連絡を下さった人とは、できるだけ会うようにしてます(注: なんか上から目線っぽい言い方ですみません)

個別に連絡をいただく方の多くはエンジニアか起業予備軍で、エンジニアの場合は最近の技術やキャリアの話をしながらご飯を食べたり、起業を考えている人とはアイディアや会社設立について話すことが多いです(実例)。

誰かの話を聞いたり相談に乗ることで、自分の立ち位置や意見が整理されることも多く非常に自分にもプラスになっています。その時はついでに、「自分のアイディア」を話して意見を聞いたりします。多くの人に自分のアイディアを話すメリットは「目玉を増やす」ことになります。

オープンソースについて書かれた「伽藍とバザール」というエッセイで、「目玉の数さえ十分あれば、どんなバグも深刻ではない」と話が出てきます。私はアイディアも同じで、「多くの目玉」を通ることで洗練されていく部分があると思います。そのため、アイディアリストを作り、人と会うたびにこの話をしています。

ここ数年は、街を歩いていて見知らぬ人に突然話しかけることがたまにあります。本記事のような連載や勉強会などで顔バレしているので、ホントに突然話しかけられます。そこでFacebookなどで繋がって仲良くなり、後日トレタの社員になった人もいます(参考)。 このように人の縁はどこから来るのか分からないので、なるべく色々な人とプラスの関係でいるように気をつけています。

英語での人とのつきあい方

SNSといえば、海外とも簡単にやりとりできるメリットがあります。しかし、これはSNSというよりネットの特性で、一番長い海外の友達は2000年にICQで知りあったファミコン好きのブラジル人のデザイナーの人です。その頃、「これからは英語でしょ」と思ったことがあり、海外の人に積極的に話しかけていました。でもマイブームは一瞬で去り、英語を話せるようにはなりませんでした。そもそも海外旅行したこともなかったですしw

それからしばらく経って2008年にひょんな事からアメリカで起業する事になり、ほとんど英語が話せないまま渡米することになりました。シアトルに暮らしていたのですが、シリコンバレーではないので日本人のエンジニアはあまり多くありませんし、そもそも一人も友達がいませんでした。幸い、シアトルもIT業界の盛んな所なので、meetup.comという勉強会を告知するサイトに行き、「Ruby」「iOS」「Javascript」「Android」などのキーワードで開催されている勉強会に色々参加してみました。

シアトルにはSeattle.rbという非常に有名なRubyコミュニティがあり、カフェで毎週「Weekly Nerd Party」という名前の交流会が開かれていました。Rubyは日本発の言語のため、ユーザーの中には日本に親近感を持っている人も多く、「日本から来たんだ」と言って突然参加してみたら暖かく迎えいれてもらえ、そこでアメリカでの暮らしや英語を学ぶことができました。

結局、英語力が乏しいのでそれ以外の部分で「コイツは面白そうだ」とか「役に立ちそうだ」と思ってもらえるポイントを作り、その部分だけ英語で話せるようになっておくと、海外でも友達を作りやすくなります。国内でも海外でも、SNSによって一生の間に接触する人の数が劇的に増えているので、自分のキャラクターや技術の評価される部分を延ばして行くと、この時代を泳いで行きやすいのではないかと思います