20代で十数億円の借金を背負った男が気づいた「本当に怖い失敗」

「失敗の中で一番怖いのは失敗を認識しないこと。」

東京・渋谷で12月15日、失敗から学びを得ることにフォーカスした「失敗力カンファレンス」が開催。日本における元祖・シリアルアントレプレナー(連続起業家)とも言われるKLab社長の真田哲弥氏が、自らの失敗を振り返った。

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連続起業家つうこんの失敗

真田氏は1987年、19歳で合宿運転免許の斡旋を手掛ける学生ベンチャーを設立。その2年後にはダイヤルQ2を利用したコンテンツプロバイダを設立し、年商40億円の会社にまで急成長させたが、十数億円の借金を背負う。その後、個人破産せずに負債を返済し、サイバードやKLabといった会社を立ち上げたシリアルアントレプレナーだ。

そんな真田氏が体験した数々の失敗の中で、「いまだにリカバリーできていない」と語るのが、モバイルゲーム事業を手がけるKLab(当時はケイ・ラボラトリー)設立時の資本政策だという。

ケイ・ラボラトリーは2000年、サイバードのR&D部門として設立された子会社。真田氏はサイバード退職後にケイ・ラボラトリーの社長に就任し、個人資産で自社株を買い増したが、「すでにそれなりに黒字が出ていたので、自分が会社を大きくしようと努力するほど持ち株比率を上げられない状況でした」と後悔をにじませる。

「10代から会社を設立していると、他人が所有する会社でビジネスをするのはモチベーションがわかないんですね。その前にサイバードを上場させていて、個人資産はあるので仕事をしなくても生きていける状況でしたが、モチベーションが上がらない時期が何年かありました……。」

当時を「人生を無駄にした中だるみの時期」と省みる真田氏。モデレーターを務めたクラウドワークス社長の吉田浩一郎氏から、「上場前だったらゼロから(別会社を作って)やり直す手段もあったのでは」と問われると、仲間や出資者の恩義に報いるためにも上場させることを選んだと話した。

KLab設立時の資本政策はいまだにリカバリーできていない失敗と語る真田さん

KLab設立時の資本政策はいまだにリカバリーできていない失敗と語る真田さん

現状維持で失敗に気づかないことが一番怖い

ケイ・ラボラトリー設立当初は、ビジネスモデルで失敗していた時期でもあったという。「2001年ぐらいからスマートフォンが来ると思っていたんですが、2007年ぐらいまで来やしない。時代を読み間違えていました」。そうは言っても、会社を存続させなければならない。そこで注力したのが、法人向けの受託開発事業だった。

その結果、前年度比110〜120%の成長を続けたが、受託で稼げば稼ぐほど、受託から離れられなくなる。「これはこれで悪くないが、この状態こそが一番怖い失敗だった」と真田氏はいう。

sanada04「失敗って、計画との差異が大きいと大失敗という認識ができて、『じゃあ、やり方を変えよう』と気づくもの。ところが受託開発で事業を拡張しても、前年比で110〜120%が限界。そこそこは行くけど、そこそこしか行かない。その成長率で計画の線を引いても、(失敗しても)大きなブレはないので、なかなか失敗を認識できない。」

真田氏は、そんな状態で何年間も過ごす「ゆでガエル」的な状況こそが怖かったと語る。

「成長も衰退もなだらかな曲線ではなくて、伸びるときはカーンと行くし、ガーンと下がったりします。いい時も悪い時もスパイラル。マイナスな時はマイナスを呼ぶもので、赤字を止めるために人を削減すると、それで余計に売上が一気に落ちるものなんです。常に挑戦することで企業は初めて成長できるし、現状維持だと一気に奈落に落ちる。」

死ぬ手前までは失敗していい

失敗を失敗と認識しないままに歳を食っていくーー。そんな危機感を抱いた真田氏に、失敗を気づかせたのは周囲の状況だった。

「自分がサイバードを上場させた当時は30代。若手でそこそこやっていたつもりが、気づくと周りの経営者がどんどん追い越していく。『もう一回勝負しないといけない』と思っていたタイミングでソーシャルゲームが来て、この勝負に貼りに行こうと決心しました。受託型からの脱却をしないかぎり年率200%とか300%の成長はないなと。」

現在はモバイルゲーム事業を中核とするKLab。今年8月には、イベント事業を手がける子会社のKLab Entertainmentを設立した。最近では、12月に同社が企画したアリアナ・グランデの日本公演が急きょ中止になったことが報じられたが、真田氏は「リアルな体験に価値があると思いライブをやろうと思いましたが、そんなに簡単じゃないですね。一発目に洗礼を受けました」とコメントした。

シリアルアントレプレナーとして数々の会社を立ち上げる中、20代で十数億円の借金を背負ったり、痛恨の資本政策ミスを経験してきた真田氏。失敗から学びを得ようと詰めかけた来場者に対して、最後にかけたメッセージは、失敗に対する前向きな発言だった。

「僕は若い社員に『失敗権』を与える考え方を持っています。やってみて失敗できる人は幸せだと。これ以上の失敗だと死ぬ、これ以上やると会社は倒産するという、ギリギリの限度を認識したうえで、それよりも手前の範囲で失敗したら失敗したでいいじゃんってやってみないと前に進めないですよね。特に若い人たちには大事かなと。自分自身も、死ぬ手前の範囲まででは失敗覚悟でやってみないことには次に進めないですよね。」

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