「地味なサイトでどこまでやれるか」BLOGOS編集長に聞くネットメディアの戦い方

政治家や専門家のオピニオンを読み比べできるサイトとして、オープンから6年を迎えた「BLOGOS」。独自の取材やインタビューに加え、950人を超える寄稿者の記事を掲載し、月間ページビューは約3000万に上ります。

創刊時から編集長を務めるのは大谷広太さん。24歳で旧ライブドアに入社し、28歳で編集長に就任。ネットニュース歴10年のキャリアを持つ大谷さんの仕事術に、AOLニュースの恩納力さんが迫りました。(編集:増田覚)

BLOGOS編集長の大谷広太さん

BLOGOS編集長の大谷広太さん

そもそも肩書きとか必要ないですし……

増田
なんか部屋暑くないですか? 脱がせてもウェブ魚拓の新沼さんみたいな筋肉は見せられませんよ。

恩納
すぐに終わりますから。マジックミラー号です。

大谷
(笑)

恩納
24歳でライブドア入って、ネットニュース歴10年ですよ!

大谷
AKB48と共に丸10年ですね。デビューも数日しか違わない。

恩納
しかも、28歳でBLOGOS編集長。キャリア的に早くないですか?

大谷
まあ、ほとんど1人か2人で始めましたからね……。最初はすごいイヤだったんですよ、「編集長」って。キャラじゃないですし、仕事内容も紙の「編集長」と比べるとずいぶん違うしなあと。

恩納
またまたご謙遜を。

大谷
いまでこそいっぱいネットの「編集長」さんがいらっしゃいますし、もちろん、ビジネス目線というか外向けにはそういうのがあったほうが良いとは思いますし、責任者という気持ちは持ってますけれど。編集的な仕事、営業的な仕事、前は簡単なコーディングもしてましたし。ウェブメディアだから、みんな写真も映像も自分で撮って自分で加工もするでしょう? そう考えてくと、そもそも肩書きとか必要ないですしね……。

恩納
ちょっとカッコいいこと言おうとするの止めてもらっていいですか。

大谷
いやいや!本当ですよ!こういう取材も本当はふさわしくないなって。

恩納
バンバン出ちゃってモテましょうよ!チヤホヤされたら飲み会に呼ばれまくるし。いっぱい良い思いしてるヤツとかいるんだから!何で俺達にはそういうのねえんだよ!

「ウェブ編集に終わりはない」という働き方

恩納
大谷さんって新卒から編集だったんですか?

大谷
いえ、2社目のライブドアからです。でも「ウェブディレクター」職で、「編集」の募集ではなかったんですよ。ライブドアニュースに配属されてからも、ウェブディレクター的な仕事と両方ですね。だから今もウェブディレクターなのかなと……。

恩納
前職では何を?

大谷
SEですね。日帰り出張がやたら多くて大変でしたね。

恩納
大丈夫ですか、その話? 日帰り出張でxxxxしたみたいな豪快エピソードとかですか?

大谷
何もしませんよ!

恩納
そもそも編集者になりたかったんですか?

大谷
まあ、ボンヤリとはありましたね。そういうのは好きでしたし。就活では記者職や編集職もいっぱい受けましたよ。でも、教育学部でしたから。先生になるのも良いかなと思ってた時期もありました。

恩納
編集を辞めて「女子校に赴任しろ!」って言われたらどうします?

増田
白石麻衣みたいな子が毎日「先生!」って来るんですよ?

恩納
白石が大谷先生とばっかり話してたら、生田絵梨花みたいな生徒が嫉妬してね。

大谷
制服のマネキンですね。。

増田
おいでシャンプーしちゃいますね。っていうか乃木坂の例えはもういいです。

恩納
コラコラ、増田先生!スカート、ひらりはマズいですよ。

大谷
それはAKBですよね……。まあ、今の仕事がすごく楽しいですからね。


BLOGOSには950人以上がブロガーとして寄稿している

BLOGOSには950人以上がブロガーとして寄稿している


恩納
BLOGOSといえばブロガーの寄稿が多いですけど、どんな視点で発掘してるんですか?

大谷
“専門性”です。国会議員、地方議員はもちろんのこと、中東なら中東、医療なら医療という具合に、多くの専門家、研究者の方々が実はネットで情報発信をされているので。その上で、どこかに、なるほど一理あるな、という発見を読者に提供できると良いなと。

恩納
ブロガーとの接し方で意識していることは?

大谷
メールやお電話ばかりになってしまいがちなので、直接お会いしてもっとご意見など伺いたいなと。

恩納
1日の生活ってどんな感じですか?

大谷
基本は朝6時起きですね。夜は7、8時頃に会社を出ますけど、家でも寝るまでは色々見てますね。

恩納
編集って実務だけじゃないんすからね。永遠に終わんねえ。

大谷
それ、僕も「ウェブに終わりはねえ」ってのを先輩社員に言われたことがあって、まさにその通りだなと。サイト改善はもうどこまでもできますし、記事にしても、良くも悪くも校了みたいなのがないので、ずっとアップデートできますでしょ。

テレビ・新聞・雑誌は「発見の連続」

恩納
必ずチェックしてるメディアは?

大谷
仕事柄、各新聞社のサイトもバーっと見るので、ニュースアプリなんかは全く見ません。ネットだとTwitterが一番多い気がします。BLOGOS参加ブロガーの方々のTweetが実は最強だと思っています。みなさんそれぞれの道の専門家なので、海外のことも含めて、各ジャンルの最新情報をどんどん発信なさっていますから。それとBBCとかCNNとかのツイッターアカウントを見ていれば、ニュースに関しては相当早くキャッチアップできるんじゃないかと思います。それから、テレビ、新聞、雑誌もかなり見てると思いますよ。

恩納
実話、大衆、アサ芸とか?

大谷
もちろん。先日、某紙の方から伺った「エロからテロまで」っていうキャッチコピーに大変感銘を受けました。いろいろなジャンルに目配りするのが大事です。引き出しが作られていく。こないだ、秋元康先生の講演を聞いてましたら「心の中に、頭の中に、何がプールされているか」が大事で、「フォーチュンクッキー」という単語もそうやって出てきたんだと。まさにそうだなと。

恩納
ネット以外が大事だと。

大谷
ネット以外を見るのは本当に大事。こういう報じ方、切り口、組み合わせがあるのかって発見の連続ですよ。本屋も週に1、2回は必ず行きますね。意識的にっていうか、好きだからというのもありますけど。習慣になっちゃってます。これは他のメンバーもそう。

恩納
じゃあ深夜に一番見る動画サイトはなんですか?

大谷
なんで深夜と動画限定なんですか(笑)

恩納
編集部の会議って多いですか?

大谷
やらなきゃいけないんですけどね。今日明日のことはその場でババっと話せちゃうからいいんですけど、もう少し、1月先、半年先の話も定期的にしないといけないんですけどね、なかなかこのバランスが難しい。

恩納
珍しい!最近「会議ウザい」「会議短い方がカッコいい」ムーブメントあるじゃないですか。

増田
チャットだけでやりとりする編集部もありますもんね。

恩納
目の前とか隣にいる女子に話しかけないであえてのチャットとかね。

増田
「髪型変えたの?ネイルもキレイだね」とか。

恩納
怖ッ!!オレなんてチャットも会議も雑談と悪口しかありませんよ。「お前、話しかけんなよ」って雰囲気とか出さないんですか?

大谷
NSFW(職場閲覧不適切)なページなんかはね、もちろんチャットですよね。あと言葉に出せないこととかはチャットでやったり。それこそ「伝えきれない想い」とかあるじゃないですか。

恩納
あれ?エモいですね……気づいたら?

大谷
片想い

恩納
今、話したい?

大谷
誰かがいる

恩納
何度目の?

大谷
青空か

増田
乃木坂メドレーはもういいです。

BLOGOSのメンバー(当時)で撮影したOASISのファーストアルバムのジャケットっぽい写真(出典:Blog@narumi)

BLOGOSのメンバー(当時)で撮影したOASISのファーストアルバムのジャケットっぽい写真(出典:Blog@narumi

増田
BLOGOS編集部って仲良さそうですよね。昼休みにオアシスのアルバムっぽい写真を撮りに行ったり。

恩納
狂犬2人(※BLOGOS編集部の永田正行さん・村上隆則さん)も大谷さんリスペクトしてますもんね。

増田
過去には鳴海(淳義)さん、田野(幸伸)さんもいました。

恩納
やばすぎるでしょ(笑)ただの特攻野郎Aチームじゃないですか。会社的にヤバいのが集められたんですよね? 表じゃできない秘密ミッション遂行しろ!みたいな。

大谷
メンバーは本当にスゴかったですね。

恩納
そんな狂犬軍団をまとめるの大変すぎますよね(笑)

大谷
基本的な方向性は一致していますので。あと、お互いにリスペクトがありますよね。それぞれ興味のある分野、詳しい分野も違うので、何かをやるときも、あまりそれぞれが“独断”ってのはなくて、話し合いながら進めてますかね。

恩納
殴り合いながら。

大谷
インタビューするときにも、切り口、質問案は皆で出し合って。でも、お互い、納得できねー!!みたいなのは無いですね。「こういう風にした方が良くないですか?」「確かに、それ良いですね」「こういうのもありますよ」みたいな感じです。でも、決めたらあとはそれぞれにお任せですね。

動物まとめはやりたくない–地味なサイトでどこまでやれるか

恩納
ページビューはどう考えてますか?どこからが多いんですか?

大谷
検索からの流入は多いですね。ロングテールでも記事が見られますね。独自記事を作るときには、時事性も大事だけれど、なるべく賞味期限が切れにくい、後から参照されるような資料性みたいなものも大事にしたいと思ってますね。

恩納
デカいトラフィックのサイトを狙ったりは?

大谷
いや、外には向かないですね。誘導とか、どこに載せようにとか、もちろん分かるんですけどBLOGOSは違いますね。シンプルですけどとにかく読者を向いて、良い記事を作ってページビューを上げたいですね。オリジナル記事増やすだけでも変わってくると思います……まあ、まだまだ模索中ですけどね

恩納
ソーシャルに当たりそうなネタを作るとかは?

大谷
ページビューを取るのはある意味簡単で。でもバズるのだけを狙った動物まとめとか画像集みたいなのはできたらやりたくない。あと、純粋なエンタメとか。そういうのもやって、真面目なのもやる、みたいな生き方もあると思うけど、そういうの無しで地味なサイトがどこまでやれるのか?っていうので始めて、今までやってきたので。

恩納
でも、予算問題とかも出てきませんか? そんな取材とかバンバン行けねえよ!みたいな。

大谷
ウェブメディア全体に言えることだと思いますけど、取材するにしても手が届きやすい範囲しかやってないから、もっとできることはあると思っています。以前、ライフネットの岩瀬大輔さんにお話を伺ったときに、「他がやっていないことは何かを考える」というようなことを聞いて。あとは味付けとかタイミングとか見出しとか、そういうテクニック的なところがキチンとはまれば、PVって付いてくると思いますよね。

AOLニュースの恩納力さん

AOLニュースの恩納力さん

意識高いだけじゃダメ

恩納
他には真似できない、絶対に負けないテクニックとかありますか?

大谷
編集部一同の情報収集の速さでしょうか。これは負けないと思いますね。

恩納
見出しとかはどうしてますか? こだわりとかあります?

大谷
トップページのトピックスの見出しは2年前から20文字にしましたね。ヤフー・トピックスは13.5文字、ライブドア・ニュースは15文字なので、ウチは長いですよ。でも、内容が内容なので、何の話について、誰が、何をというのを上手く盛り込まないといけないですからね。専門用語も多いので、文字数が無いと困る。

恩納
バイトの見出しが採用とかもあるんですか?

大谷
もちろん。バイトの方が良い見出しの時もありますし。そういうのはフラット。こういう記事作ったら良いと思う、みたいな意見も募ったり。いい意味で読者に近いし、最前線でユーザと向き合ってるわけで、ニュースジャンキーになってる僕ら社員だけじゃ思いつかない、良いアイデアがほんとに出てくるんですよ。日中SNSに貼り付いているような層ではない方々にどうやって届けていけるかが問題ですからね。

恩納
今も採用募集中みたいですけど、BLOGOSは意識が高い人からの応募が多そうですよね。

大谷
そうですねえ。意識が高いのは良いんですけど、それだけじゃダメですね。そういう人は、つい同業者にどう見られるかっていうのばかりを気にしてしまう。たまにいるじゃないですか。“俺こんなのやりました〜。割と最先端っす。あー今日もFacebookでイイねいっぱい付いたわ〜」みたいな人。まあそれもビジネス上は大事だけれど、そうじゃなくて、とにかく読者がどう見るかを第一に考えられる人ですかね。あと、とにかくニュースサイトは数字見て改善しながら365日運用し続けることが基本なんで、地味なことをコツコツできる人。それと、ちゃんと挨拶できるひと。華々しいことしかしたくねーみたいな人が居がちじゃないですか。

恩納
この編集者はスゴイな、とかありますか?

大谷
“ネットメディア業界”だけで人材がぐるぐる回っている感じがして良くないなあと。もっと若い人が出て来ても良い気がしますし、最近はネットメディアに紙媒体も経験された、名実ともに大変優秀な方々が入って来てますよね。そこにはやはり危機感もありますよ。でもそういう方々が現れることで、ネットメディア全体の地位もどんどん上がって行くんじゃないですか。

恩納
でも、「第2の佐藤慶一」は防がないとダメですよ!

増田
優秀な若手は誰かっていう話になると、よく名前が挙がりますよね。

恩納
才能ありすぎる若い芽は摘まなきゃ!オレなんて「メディアの輪郭」(※佐藤さんのブログ)に書いてある内容そのまま言ってますからね。

増田
妙にバズフィードについて詳しいと思ったら、そういうことか……。

恩納
86世代とかデジタルネイティブって言うんですか? あのあたりに一発カマしとくかな。「先輩に挨拶がねえな!誰のおかげで飯食えてんだよ!」って。

増田
老害すぎる。

雑誌や新聞こそ競合

恩納
意識してる競合媒体とかあるんですか?

大谷
よく競合媒体=どこのウェブメディアですかって言われるんですけど、モデルが違うから何をもって競合かっていうのはありますし、ビジネス面では確かにそうなんですけど、内容面では、週刊誌や月刊誌、新聞だと思っていますよ。さっきも言いましたが、まだ僕らも含めて、手が届く範囲に留まってるので、記事がかぶる。何かにつけて人選にしてもそう。いつも紙媒体見てて、こんな人のコメント取ったり、インタビューできるんだって、話してます。それは我々の発想とか企画力、ブランド力の問題でも、ネットメディア自体がまだまだのところがあるから。

恩納
ネットメディアに競合はないと。

大谷
ただ、ハフィントン・ポストさんが上陸するって聞いた時は本当にヤバいなと思いましたし、今もビビってますよね。バズフィードさんかも来春ですか?凄い人材がどんどん入っているようなので、とても気になりますよね。まあ、毎日不安ですし、危機感ありますよ。でも、そういうところがどんどん出てくれば、ネットメディアの活動の場は広がると思う。取材させてもらいやすくなったりとか。軽減税率の対象にしていただけるまでがんばらなくちゃ(笑)

恩納
野望とかあるんですか?

大谷
別にテレビ出たいとか出世したいとか全然ないんですよ。そういう仕事してるわけじゃないし。PRのためには必要かもしれないですがね。あと、文字通り管理職になっちゃうと、少し退屈かなあと……とにかく現場見たり人に会うのが好きですよね、やっぱり。そのためにやることも毎日いっぱいありますから。