亡くなった人の「故人サイト」との付き合い方、生前にできる備えは?

ブログ、Twitter、Facebookなどのネットサービスは、書き手が亡くなった後、どうなるのだろうか? 生前にできる備えに何があるだろうか?

それらの点にスポットを当てるべく、2月11日、埼玉・川口市立映像・情報メディアセンター「メディアセブン」で、『故人サイト』(社会評論社)の著者・古田雄介氏によるトークイベントが開催された。その模様をリポートする。

『故人サイト』著者・古田雄介氏

『故人サイト』著者・古田雄介氏

放置されたブログやSNSは消滅する?

亡くなってしまったユーザーのブログはどのような道をたどるのだろうか。

古田氏によれば、大きく分けて、1)誰にも介入されない場合、2)誰かの介入があった場合の2つに分けられるという。

故人のサイトやSNSアカウントは、放置されていれば遅かれ早かれ消滅する

故人のサイトやSNSアカウントは、放置されていれば遅かれ早かれ消滅する

「介入されない」というのは、残された誰かがそのアカウントでログインできない、もしくは意図的にしない場合のことを指す。つまり放置される状態だが、「ほとんどの場合、消滅します」と古田氏は語る。

「消滅の仕方も2種類ある。1つはサービス提供側がブログスペースを閉鎖するなどしてサービスを終了してしまう場合、もう1つは有料サービスを利用していたが、支払いがなされないため、規約に基づいて一定期間経過後に契約解除のためブログを削除する場合。」

どちらの場合も前もって予告されるが、本人が亡くなってしまったいるので何もできない。3カ月後、あるいは3年後になるか分からないが、そのように自然消滅してしまうのが一般的だという。

消滅までの過程には、「放置期間」というものがある。長期間放置されれば、コメントにスパム業者の書き込みがあり、「荒らしに遭う可能性が高い」と古田氏。「2008年4月に作者が亡くなったあるブログには、『ご冥福をお祈りします』というコメントが寄せられてる中で、スパム業者による書き込みが見られます。本人が亡くなってしまっているため、削除もできない状態で荒らされています」。

ごくまれに、「モニュメント化」することもある。

著名人によるブログであることがほとんどだが、一般人によるものもあり、例として挙げられたのが「ぐぅぅたらな日々」。宮城県在住だったユーザー「田舎っぺ」さんは、2011年3月11日に生じた東日本大震災の津波で、避難の警告をし続け、逃げ遅れて亡くなった。それに気づいた読者たちが、今でも訪れては書き込みをしている、というわけだ。

誰かが引き継げば、「荒らし」や消滅のリスクは減る

誰かが引き継げば、「荒らし」や消滅のリスクは減る

「誰かの介入、つまり継承ですが、それがあった場合でも、たどる道は先に述べたものとあまり変わりはありません。でも、管理されている分、荒らしリスクが減り健全な状態で保たれます。」

故人サイトを見るのは不謹慎?

長野のバス事故で被害者の顔写真がFacebookから拝借され、ちょっとした炎上騒ぎになったのは記憶に新しい。では、故人のサイトを見るのはいけないことなんだろうか?

そう自問することもあるという古田氏は、不謹慎とされる理由について、「ウェブ上にあるからには誰でも閲覧できるが、書いた本人は誰でもが見ていると想定していない、いわば『半パブリック状態』にあるため」と分析する。しかし、「マナーを守れば、倫理に反しないばかりか、学べることが多いのもまた故人サイト」と力説する。

例えば、闘病記を綴った書籍は「公共のものとして、多くの人が読むことを前提にしていて、編集というフィルターもかけられている」。その一方、ブログは公共を意識していないからこそ、口が滑ってしまったり、辛さを綴ったりというリアリティがある。こうしたことを踏まえても、「その人の生きていた証を無視せず学ばせてもらったほうがいい」と古田氏は持論を展開する。

「死の宣告をされてから亡くなるまで、その人がどのような死生観を抱いていたか、どのような変化があったかも追体験できる。現実社会で人の死に接することが少なくなった分、ネットにある故人のサイトを教材にして、自分や身近な人の死について学べるのではないでしょうか。」

古田氏が、故人のサイトを閲覧する際葛藤する理由

古田氏が、故人のサイトを閲覧する際葛藤する理由

故人サイトから学べる生前準備法

わたしたちが故人サイトから学べることは心構えだけではない。自分の所有しているブログやSNSなどのアカウント、つまりネット上の遺品となるものの「生前準備法」についても学べるのだ。

古田氏は「二人称」と「一人称」に分けて説明する。

「通常であれば、他人のIDやパスワードを使ってログインすることはよろしくない。でも亡くなってしまった場合、サービス提供側でも黙認することがほとんど。なので、『二人称の備え』として、親しい人からあらかじめIDとパスワード、その人の死後、どのように扱って欲しいかも教えてもらっておくことで迅速な対応ができる。」

「一人称の備え」としては、あらかじめ公開範囲を設定しておくことで、荒らされるリスクを低減させたり、「ネット上の持ち物」であるアカウントやパスワード、さらに死後どのようにしてほしいかといったこともリスト化して把握することを推奨。「書き残しておくだけでなく、自分が死んだ後、どうして欲しいかを話し合っておくことも大切」と付け加えた。

「故人を大切にすること=タブー視すること」ではない

60代後半以上のインターネット利用率が約半数であるとはいえ、7割程度が利用している世代が「超高齢世代」にシフトしていけば、ネット上にアカウントを残したまま亡くなっていく人たちが増えていくだろう、と古田氏は予測。

そのことを踏まえてサービス提供側の規約が、アカウントの一身専属性から承継可能な方向へと動いてきているが、個人個人が備えをしておくに越したことはない。

徐々にだが、サービス提供側の意識も変わりつつある

徐々にだが、サービス提供側の意識も変わりつつある

ここで古田氏は、「生前準備」に対応している、あるいはユーザーが故人となった場合の対応をしているウェブサービスとして、以下の事例を紹介した。

・Facebook(追悼アカウントのリクエスト):利用者が亡くなった場合、家族や友人からのリクエストに応じて、故人のアカウントを追悼アカウントに変更できる。

・Google(アカウント無効化管理ツール):ユーザーが、任意の期間ログインしなかった場合、そのアカウントをどのようにするかを前もって設定できるツール。データを親しい人と共有あるいは削除したり、アカウント自体を削除したりできる。

・Yahoo! JAPAN(Yahoo!エンディング
利用者が亡くなった場合、Yahoo!ボックス(クラウドストレージサービス)内のデータを削除したり、Yahoo!ウォレットを使用した課金サービスを自動的に停止する。死亡確認には公的証明書が必要。オンラインのみならず、葬儀手配、遺言などオフラインサービスも含まれるのが特徴的。

・So-net(承継、譲渡手続き
故人の家族がそのアカウントを承継する方法を説明している。ただし、インターネット回線、ひかりTV for So-net、モバイルなどは別途手続きが必要。

・ビッグローブ(承継の手続きまたは代理退会の手続き
亡くなったユーザーの二親等内の法定相続人が手続き可能。ブログは引き継げるが、その中でやり取りしたメッセージや、プロバイダメールは削除される。

これらの具体的な生前準備法を挙げた古田氏は、次のような言葉で締めくくった。

「今後も何が不謹慎で非礼に当たるのか、といった線は揺れ続けると思います。でも、これだけはお伝えしておきたいのです。大切にすること、これは決してタブー視することと同じではないのです。残してくれた“生きていた証”、その情報は非常に貴重なわけですから、無視することなく、わたしたちはそれを見つめていく、そんな意識が必要なんじゃないかなと思います。」

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