エンジニアがハッカソンで得られる4つメリットと参加のコツ

変化の激しいエンジニアの世界で、どうすれば成長し続けられるのか。そのヒントを、飲食店向け予約台帳アプリを手がける「トレタ」の増井雄一郎さんが解説します。

今回のテーマは「ハッカソンのススメ」です。ハッカソンで審査員を務めたり、実際にプログラマーとして参加することもある増井さん。「ハッカソンは成長したいエンジニアにとって良い機会」と語ります。

そこで今回は、エンジニアがハッカソンで得られる4つメリットを解説します。「ハッカソン、気になってるけどなんかハードルが高そう……」。そう感じるエンジニアもいるかと思いますが、参加のコツについても語ってもらいました。

ハッカソンで黙々と作業を続ける増井さん(写真右手前)

ハッカソンで黙々と作業を続ける増井さん(写真右手前)

「ハッカソン(hackathon)」は、1990年代後半からアメリカで使われ始めました。「ハック(hack)」と「マラソン(marathon)」を合わせた混成語で、主にエンジニアを対象とした短期集中の開発イベントのことを指します。日本では2010年ごろからよく見かけるようになりましたね。

ハッカソンの認知度は十分に高まったと思いますが、実際に参加したことのある人はまだまだ少ないように感じます。周りから「なんで休みの日に、わざわざ仕事と同じようなことするの?」と言われることもありますね(笑)。

メリットその1
ゼロからプロダクトを作り上げる経験が得られる

ハッカソンの大きな特長は「少人数でひとつのものを作りきれること」です。イベントの趣旨にもよりますが、多くのハッカソンでは「定められた期間中に、お題に沿ったプログラムやアプリケーションを仕上げる」ところまでがゴールとして設定されていて、チームの人数は1人から6人くらいまでが一般的です。

普段のエンジニアリングの仕事で、ひとつのものをゼロから完成まで作りきることは、なかなか経験できないもの。規模が大きくて部分的な作業しかできていなかったり、そもそも新規案件ではなくて既存のプログラムの修正や改良だったりすることが大半です。

参加したメンバー全員が「自分の手でゼロから作り上げたぞ!」という達成感を味わえるのは、ハッカソンの醍醐味ですね。「これは僕が作りました」と言えるポートフォリオ(制作実績)を作れる点でも、エンジニアにとって貴重な機会だと思います。

増井さんは昨年11月のTechCrunchハッカソンで、チーム「風呂グラマーズ」を結成。オフィス向け受付アプリ「→Kitayon(キタヨン)」(http://kitayon.co)を開発し、現在も継続開発中。リリース前にもかかわらず、多くの企業からのオファーも相次いでいるという。

増井さんは昨年11月のTechCrunchハッカソンで、チーム「風呂グラマーズ」を結成。オフィス向け受付アプリ「→Kitayon(キタヨン)」を開発し、現在も継続開発中。リリース前にもかかわらず、多くの企業からのオファーが相次いでいるという。

メリットその2
仕事仲間に優しくなれる

一般的なハッカソンでは、プログラミング以外の企画・デザイン・プレゼンなど、ものづくりに必要な一連のフローについて、自分たちで一つひとつ考えなければなりません。そうすると、自分が仕事でやっているのは開発のどの部分なのか、自分の周りの人たちはどんな仕事をしているのか、俯瞰的に理解することができます。

たとえば、日ごろからデザイナーと一緒に仕事していても、彼らが具体的にどんな手順を踏んでイラストを描いているのか、見る機会ってほとんどないですよね。ハッカソンでは全員がひとつの机に集まって作業をするので、ほかのポジションの人たちの技術力を間近で感じられます。時には自分の専門外のことをやってみて「プレスリリースって短いのに、意外と書くの難しいんだな……」と打ちひしがれたりすることも(笑)。

周辺の仕事の仕方を理解することは、普段の仕事でも大いに役立つはずです。同僚に何か作業をお願いする際に、相手がやりやすいような要件の伝え方ができるようになれば、作業効率が上がります。

また、苦労を知れば「適当にこのロゴ作っといて」「できるだけたくさんコピー案よろしく」などと投げやりなタスクの振り方は、恐れ多くてできなくなりますよ(笑)。自分の専門外のポジションに敬意を持つことも、間接的ながらコミュニケーションの質の向上につながります。

メリットその3
レアな最新技術に触れられる

最近だと人工知能やIoT、フィンテック(情報技術を駆使した金融サービスの開発)など、テーマごとに細分化されたハッカソンが増えていますね。特化型のハッカソンでは、その分野の専門家がメンターについて、いろいろとレクチャーをしてくれるので、勉強になります。

エンジニアにとって、ハッカソンは最新の機材やサービスに触れられる絶好の機会でもあります。昨年、まだPepperがリリースされて間もないころから、Pepperのアプリを開発するハッカソンがいくつか開催されていました。当時、個人はおろか会社単位でもなかなか手に入らなかったPepperでしたから、先物好きなエンジニア界隈では大きな話題になっていましたね。

僕は出たことがありませんが、3Dプリンタなどを活用した“ものづくり”っぽいハッカソンも、これから増えてきそうです。単純にプログラミングに頼らないハッカソンが増えてくると、エンジニア以外の人も参加しやすくなるので、面白い流れになるのでは……と思っています。

メリットその4
業務外の“濃い”つながりができる

普段の業務上で出会う人って、顔見知りにはなっても、友人として密に付き合える関係になるか……というのは、また別の話ですよね。正直に言って、単純に飲み会をやっても、その場だけで急激に仲良くなれることって、ほとんどないじゃないですか(笑)。

これは持論ですが、1年だらだらとつかず離れずの付き合いを続けるよりも、一緒に1泊2日のハッカソンに参加した方が、絶対に仲良くなれると思います。

共同でものを作るとなると、どうしても密度の濃いやり取りをする必要が出てきて、激しく意見が衝突することもあります。それでも、期限とゴールが明確に設定されているので、お互いに譲歩しながらスピーディーに意思決定を進めていかなきゃいけません。そのぶつかり合いと譲り合いを通して、相手のキャラクターがよく理解できるようになるんです。

僕は審査員やゲストとしてハッカソンに参加する機会が多いのですが、途中でケンカして解散するチームも結構あるんですよ。「意見の衝突からチームが二分してしまい完成できなかった」とか、「メインでコーディングをするはずだったメンバーが『コンビニに行ってくる』と出て行ったきり帰ってこなかった」とか(笑)。そんなアクシデントも含め、ハッカソンは“人間を知る機会”として見ても、とても面白い場だと感じます。

社内外から集まったメンバーで、TechCrunchハッカソンに向けた開発会議をしている風景

社内外から集まったメンバーで、TechCrunchハッカソンに向けた開発会議をしている風景

ハッカソン参加の心得

ハッカソンに参加する際には、何かしらの目的意識を持つとよいでしょう。「ひとりで作りきる」「賞を獲る」「会場で新しく出会える人たちとの制作を楽しむ」など、何でもいいんです。楽しみ方は人それぞれですから。

ただし、掲げる目的によっては相応の準備や心構えが必要です。「賞を獲る」ことを目指すならば、自分が作りたいものよりも時流に合ったウケのよさそうなものを作る方が、有効かもしれません。デザインやプレゼンなどが結果に大きくかかわってくるので、初めからチームにデザイナーを巻き込んでおいたり、プレゼンを練る時間を十分に確保したりするなど、戦略も大事になってきます。

一方で「会場で新しく出会える人たちとの制作を楽しむ」ことを目的とするならば、エントリー時点でチームが固定されているタイプではなく、当日になって初めてチーム編成が発表されるタイプのハッカソンに参加した方がいいですね。ものによっては小学生からお年寄りまで、いつもの生活圏では出会えないような人とも交流が持てるのも、ハッカソンの魅力です。

小学生からお年寄りまで、普段は出会えない人と交流できるのもハッカソンの魅力だ

小学生からお年寄りまで、普段は出会えない人と交流できるのもハッカソンの魅力だ

「ぼっちソン」でも大丈夫!

「ハッカソン、気になってるけどなんかハードルが高くて……」と思っている方、結構いらっしゃいますよね。僕もたまに行ったことのない人に声をかけて一緒に参加するのですが、ほとんどの人が「面白かった、参加してよかった」と言ってくれます。

大抵のハッカソンは、1人でもエントリー可能です。仲の良い友だちと一緒にチームで参加するのもひとつの手ですが、チームを作るのが面倒であれば、まずは1人で参加してみるのがいいと思います。僕らは「ぼっちソン」って呼んでます。最初は戸惑うことも多いかもしれませんが、慣れてしまえばどうってことありませんよ。「ハッカソンで出会った人とチームを組んで仲良くなり、その後も別のハッカソンに参加した」って話もよく聞きますね。

ハッカソンを探す際には、イベントコミュニティのプラットフォーム「Doorkeeper」にハッカソンの情報がまとまっているページがあるので、そこを利用するといいかもしれません。「Mashup Awards」関連のハッカソンは数が多く全国各地で行われているので、参加しやすいと思います。少し社会貢献寄りのテーマが好きならば、「Code for Japan」が主催するハッカソンは相性がいいでしょう。

きっと皆さんが思っている以上に、今のハッカソンにはバリエーションがあります。まだ行ったことのない方、ぜひ一度探してみて、興味のあるものがあったら参加してみてください。思わぬ方向に可能性が開けるきっかけとなるはずです。

(聞き手:西山武志)