人工知能の研究→シュールな4コマ漫画家に ネット作家がプロになるまで

いつの頃からか、4コマ漫画をネットで見かける機会が増えてきた。Twitterに画像が添付されていたり、Tumblrで流れてきたり、あるいはブログで公開されていたり、気軽にシェアできるため、特にSNSとの相性は良さそうだ。

そんなネット発の4コマ漫画で、プロデビューを果たしたのがニャロメロンさん。大分県在住の27歳だ。かわいい絵柄にシュールな作風で人気を得ている。

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そんなニャロメロンさんに、ネットで漫画を描くようになった経緯やプロの漫画家になるに至った道のり、実は理系の大学院生であるという意外なバックグラウンドなどについて聞いた。

どこに住んでも仕事ができる作風

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バランスボールに座って執筆するというニャロメロンさん(大分の自宅で撮影)

ーーそもそも漫画家になったきっかけというのは。

完全にインターネットですね。ウェブ上で自分で4コマ漫画を公開していたら、秋田書店の担当の方からメールで「仕事しませんか」って連絡がきました。本当は持ち込みしようと思って、準備はしてたんですけど。

で、「さあ東京にいくぞ」っていう直前にメールが舞い込んできて、「ちょっと会えませんか」みたいな。そこからとんとん拍子に、新しい連載をしましょうとお仕事をもらいまして、Champion タップ!というウェブ媒体で「ベルリンは鐘」という4コマ漫画を描いています。

ーーまったく東京に行かず、遠隔で仕事をされている。

そうですね。いま連載している作品は、あまり打ち合わせをしなくてもいいようなジャンルなので。現状はメールで原稿を送って、LINEで「確認しました」って返信が来て、必要であれば電話で「このコマはおかしいから直してください」とかやり取りしていますね。

どこに住んでも仕事して、生活できると思います。例えば海外でも。実際は旅行にいく程度ですが、旅行中も一応原稿の確認とかやっていました。

ーーあえて大分を拠点に活動している理由はあるんですか。

特に東京に行くメリットもないですし、実家のほうが漫画に時間を使えるじゃないですか。1人暮らしをしていると料理とか、いろいろ大変ですから。じっくり専念したいなと。

でも東京は東京でやっぱり人の繋がりだとか、交流が生まれやすいので、そういうところにメリットを感じてきたら引っ越してもいいかなって考えています。作風とか仕事の量によっては行かなくちゃいけないかもしれないですね。

ものすごくシリアスなストーリーだったり、込み入った設定の漫画の場合、たぶん東京に行ってちゃんと密に連絡を取らないと齟齬が出ちゃうかもしれません。

高校生の頃、YouTubeでオタク文化に触れた

ーーもともと創作を始められたきっかけは何だったんでしょう。

昔から絵を描くのが好きでした。僕が高校の頃って、一番にわかオタクが増えた時期だったと思うんです(笑) アニメとかゲームとかの文化がYouTubeでちょっとずつ広まり始めてた時期で、自分もそのタイミングでアニメオタクになりました。「ああ、かわいい女の子描きたいなー」みたいな。それで描き始めたのがきっかけです。

いま27歳なので、高校生というと10年前、2006年くらいですね。確かYouTubeが出てきた頃です。『涼宮ハルヒの憂鬱』とかがバッと盛り上がったのも、そのあたりの時期ですね。

ラノベとかアニメとかにハマり出して、最初はこっそりと描いていました。親に隠れながら(笑) まだオタクというものが恥ずかしいものって分類されている時期でもあったんです。

いまはようやく許される空気が出てきて、若者の間でニコニコで流行ったりしていますけど。当時は「2ちゃんねる」を見るのも否定的な雰囲気でしたし、とにかくこっそりとひたすら練習していました。

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秋田書店のマンガサイト「Champion タップ!」で連載中の『ベルリンは鐘』。単行本は2巻まで発売中だ 

研究者の道を歩むつもりが……

ーーシュールな作風からは想像できないのですが、大学は理系に進んだんですよね。

大学では人工知能、いわゆるAIの研究をしていました。いまの漫画とは全然関係ないです(笑) 将来はなんとなくプログラマーになるんだろうって思っていました。パソコンが好きで、そういうオタク文化に染まってたのもあって、「パソコン系の仕事=プログラマー」なのかなって漠然と考えて、そこから工学系に進みました。

でも、そのわりにどの会社に行きたいとか、何かを作りたいとか、あまり具体的には考えていなかったです。自分が大学生を卒業する頃はちょうどリーマンショックがあった時期で、「就職って怖い」みたいな印象があったので……。

自分のやりたいことを表現するという意味で言えば、わりと研究自体は嫌いじゃなかったんです。でもちょうどその頃、大学で研究を続けつつも「漫画家の道はないものか」と探ってたら、出版社から仕事が舞い込んできたっていう感じなんですよね。

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シュールな作風からは想像できないが、もともとは研究者の道に進むつもりだった。後述するが、ネットの一部で流行っている「このあと滅茶苦茶セックスした」はニャロメロンさんのTwitterが発祥だったりする

ーーAIの研究と漫画家となると、もう180度違うじゃないですか。周りの反応はどうなんですか。

そうですね……。まあ、「え、お前どうしたの?」みたいなのはありました(笑) 「そんな話、初めて聞いたんだけど」みたいな。あまり人には言ってなかったんです。

漫画と研究の似ているところ

ーー研究と漫画には何か共通点はあるんですか。

アイデアを探すのが好きだったんです。大学生の頃に研究してたものがけっこうちゃんとしたアイデアで、いまある課題を解決できるものだったんです。

そういうアイデアを考えるのが好きでハマっていったんですけど、4コマ漫画もだいぶそういう気持ちでやっていたんですよね。新しいアイデアというか、「こういう方向性だと人は驚くぞ」とか、「こういう方向性の緩急のつけ方だと人は笑うんじゃないのか」みたいな、そういう感覚はけっこう似ているところがありましたね。

というか漫画のほうが始めたのは先なので、むしろ漫画でやってるような頭の使い方を研究でもやっていた感じですね。

ーー理系ですと、例えばプログラマーとしてGoogleに入社するとか、そっちのほうが憧れじゃないんですか。給料よさそうですし。

そうですね、なんかいいとこにいければいいなーとは思っていましたが、やっぱりプログラマーになりたいっていうのは漠然とした夢だったので、強くやりたいと思うことがなかったんですよね。強いて言えば「好きなゲームを作れたらいいな」ぐらいの気持ちでしたね。

漫画に関しては、「人に見られたい。そのためにはどうしよう」っていつも考えていたので、それがやっぱりモチベーションの違いというか、こっちのほうがいいかなって決めた理由になったんだと思います。

TumblrとTwitterで4コマ漫画を見せる

ーーネットでは主にどのように活動されていたんですか。

Tumblrをメインで使っています。僕はちょうど4コマ漫画を毎日更新し始めてた時期だったので、Tumblrに漫画をぽんぽん投げて新しい記事が作れるのが気に入りました。4コマだけに特化したTumblrを作って、とにかく惰性でどんどん4コマ漫画を見られるサイトにしたかった。

そのちょっと前くらいにTwitterも少しずつ盛り上がってきたので、Twitter経由で「4コマ描いたよ」って告知して、Tumblrに見に来てもらっていました。3年前くらい前ですかね。

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商業誌デビューのきっかけとなった作品『週刊メロンコリニスタ』もシュールさが人気だ

ーーそれが「週刊メロンコリニスタ」なんですね。

はい、たぶん自分のサイトを持ち始めた頃から露出が一気に広がったというか、見てくれる人が増えたんですよね。「オモコロ」というサイトでの連載も、たぶんその頃にお声がけいただいて始まりました。

昔はTwitterに画像を投稿する機能ってなかったですけど、いまだと漫画をそのままTwitterに載せちゃう人も多いですよね。やっぱりできるだけ手軽なほうがいいですよ。SNSを使うときはワンクリックだって煩わしいはずなので、最近はTwitterで告知するときは直接4コマ漫画の画像を貼り付けるようにしています。そっちのほうが絶対見てもらえる。

とにかくユーザーにとって楽なほうがいいですから。

ーー自分のサイトに来てもらう必要もなくて、ただ作品を見てもらえさえすれば。

そうですね、はい。「こっちのサイトだと作品の一覧がバッと見れるから便利だよ」ぐらいの気持ちでやってますね。 

「このあと滅茶苦茶セックスした」の生みの親

――Twitterをフル活用していますが、このネットの一部で流行っている「このあと滅茶苦茶セックスした」というネットミームは、ニャロメロンさんが生みの親と言われています。

エロをギャグ要素にする漫画っていいよなーと思いながらTwitter上でつぶいたネタなんですけど、フォロワーの方が素材として作ってくださって、その素材を見たエロ漫画家クラスタの方から一気に広まったという感じです。

――その後、シュールな用法や派生系の「このあとめちゃくちゃ……」も生まれていますよね。

いまはもう、自分の知らないところで発展し続けている言葉になっているので、第三者のネタを見てるような気持ちで眺めています(笑)

(後編に続く)