休めない日本人のための「正しいサボり方研修」に参加してきた

「いや…でも…忙しいんすよ」って言っちゃう人に読んで欲しい。

2015年12月に社員のストレスチェックが義務化されました。それにあたり、従業員の健康に投資することを重要な経営戦略の一環としてとらえる「健康経営」が注目を集めています。

その流れを汲んでか、面白法人カヤックによる自社の健康経営第一弾として、スタンフォード大学医学部睡眠・生体リズム研究所の客員講師・西多昌規氏を迎え、休めない日本人のための「正しいサボり方研修」を開催しました。そのレポートをお届けします。

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「日本人の有休消化率はまだまだ低い」と語るスタンフォード客員講師の西多昌規さん

「サボる」はフランス語のサボタージュ(sabotage)が語源ですが、意味としては、「過失に見せかけて機械を破壊する」「仕事を停滞させる」「経営者に対し損害を与え、事態の解決を促進しようとする労働争議の一種」などがあります。

あまり良い意味で捉えられない「サボる」ですが、「過重労働のわりに効率がさっぱり上がらない日本の労働環境をサバイバルするため、有志が独自に編み出した生存戦略」と西多氏。そして、これは今後生きていく上で大切なことであると訴えます。

休んだほうが仕事が捗る根拠、知ってますか?

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脳が短時間で情報を保持しながら、同時に処理する能力を「ワーキングメモリー」といいます。これは、会話や読み書き、計算などの基礎となり、日常生活や仕事・学習を支える重要な能力。このワーキングメモリーは、休息や睡眠を取らないと能力が落ちてしまうと研究で明らかになっているそうです。

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話はワーキングメモリーと実験データの関連性へ

これは休息の実験のグラフ。通常のクリップの使い方とは違う、全く新しい用途をいくつ考えだせるかということを、以下4つの干渉条件を挟んで2回行ったものです。

・休息中に軽いメールを打つなど、どうでもいい作業をする
・難しいエクセル書類を読む
・何もせず座るだけの休息をする
・だらだら作業を続ける

1番アイデアが出たのが「どうでもよい軽い作業」をした場合。1番だめなのが休息なし。西多氏は「やはりこういった人間のパフォーマンスに関しても休憩を入れた方がよいということが分かる」といいます。

人間の短期記憶は海馬というところにあり、そこで短期記憶を復習をしたり、前頭葉に移動して長期記憶となります。休息や睡眠が不足すると、記憶の定着にも悪影響があるそうです。

元素の周期律もDNAの二重螺旋も睡眠がきっかけで生まれた

睡眠中に今まで考えつかなかったアイデアが思いつくことがあるそうです。西多氏によれば、元素の周期律やベンゼン環のテトリス、DNAの二重螺旋も、発見者の夢に出たことがきっかけで生み出されたとといます。

「起きていると論理的になりがちで、脳の縛りが強くなってしまう。それが緩んでふっとアイデアが湧いて出てくるのが、ぼーっとしているときであったり睡眠中。だから睡眠は脳の休息を与えるだけではなく、どうしても結びつけられなかったものを突然結びつけたりすることもある。」

こういったアイデアと脳の関係はブレインハックに近いですよね。確かに、昨日までは答えが結びつかなかったことが、今日になって急に閃くこともあります。まさに脳科学ですねぇ。

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西多氏はさらに、フロー状態という「最高に集中してハイテンションな状態」についてもと警鐘を鳴らします。

「好きなことをやっていたら時間を忘れるのは、ドーパミンと呼ばれる物質の仕業。脳が喜びを感じて活性化するが、これは依存に関係する。あんまりやりすぎると、精神資源枯渇になってしまう。過重労働でうつ病になる人もこれに近い。」

人はストレスの元でもあり癒やしてくれる存在

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これは大阪経済大の田中健吾先生が作った、いわゆるコンピュータ関係者に特化して考えられたストレスチェック表。数あるなかで心のストレスと関係あるもの15問を選定していて、「まったく当てはまらない」場合は1点、「かなり当てはまる」場合は5点を加算します。

西多氏によると、70点以上が危険、50~60点も結構危ないそう。その一方で、19点以下だと危機意識がなさ過ぎるそうで、適度なストレスも大事なようです。

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話題は日本の有給消化率へ

有給休暇の国際比較調査を見ると、日本で1人あたりに支給された有給数は平均13日、実際に使用された有給は平均5日。支給・使用された有給が、ともに30日のスペインやブラジルと比べると、その差は歴然です。とはいえ、国の文化や社風の違いがあるため、できることからやるべきと西多氏は言います。

運動面では、旧石器時代に比べて日本人は体重あたりのエネルギー消費が1/3しかなく、これからますます落ちてくるそうです。しかし、体を動かすというのは脳にもよく、「疲労因子と疲労回復因子」が生成されます。適度に体を動かすと「疲労回復因子」のほうが多く生成されるということも証明されているそうです。

そして計画的に休暇取得を考えるべきだと話が進みます。忙しすぎて平日に休みのことを考えられなくなってしまいますが、そうするとだらだらと休日を迎えてしまいがち。次の休暇を前向きに考えるスタンスでいるのが大事だと、西多さんは言います。

「時間がないながらも休日を有効活用する意欲を持つ。そして食事・睡眠・運動という生活習慣の地道な維持管理が基本。さらに大切なのは人との関わり。人はストレスの元でもあるが、癒してくれる薬でもある。休む勇気を持ちつつ、いざ休むというときは他人に迷惑を掛けないようにきちんと最低限の配慮を。」