「完全に大喜利の感覚」ネット発の漫画家ニャロメロンが語る、4コマ漫画の奥深さ

前回に引き続き、ネットを中心に活動する漫画家・ニャロメロンさんのインタビュー。同氏の描く4コマ漫画はタイトルが最後に現れ、大喜利のような展開になっているのがポイント。作品作りの流れや、ネットで漫画家が生きていく方法、紙媒体との違いなどを聞いた。

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4コマ漫画のタイトルは0コマ目? 5コマ目?

ーーニャロメロンさんの4コマ漫画は最後にタイトルがついてるのが特徴的ですね。どことなく大喜利っぽいというか。

タイトルが最後にくるのは自分が初というわけではなく、けっこう前からあったやり方ではあるんです。吉田戦車先生の『殴るぞ』っていう単行本がありまして、これは4コマ漫画の最後にタイトルがつくという形式です。

4コマを描き合う仲間みたいな人たちがいて、彼らから「お前の漫画って、1コマ目でシチュエーションがわかるからタイトルがいらないんだよね。だったらタイトルを最後につけるのどう?」って勧められて、そこから取り入れていまの形になりました。

ーー確かに、4コマ漫画ってタイトルがあってもなくてもいいですね。

特に自分の4コマ漫画だとそうなんですよ。他の人の作品の場合、1コマ目を見ただけだとシチュエーションがわからないから、その前にタイトルをつけています。例えば、桃太郎っていうタイトルをつければ、「桃太郎的な話が始まるぞ」っていう認識がまずできるので、ちょっと展開を飛ばせるんですよね。

だけど、自分の4コマ漫画って、1コマ目でシチュエーションがわかりやすいので、タイトルは下に付けるほうが気持ちいい。タイトルって最初につけると「0コマ目」、最後につけると「5コマ目」としての扱い方になるんです。

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ネット発の4コマ漫画で、プロデビューを果たしたのがニャロメロンさん。大分県在住の27歳だ

ーーニャロメロンさんの場合、4コマ漫画のタイトル、いわゆる“5コマ目”は作品を描いたあとに最後につけるんですか。

そうですね、4コマを描いたあとに、これにふさわしいタイトルはなんだろうってちょっと考えて。完全にネット大喜利の感覚です。単純にシチュエーションを説明すればいいってものじゃなくて、なんだろう、画像大喜利ですよね、要は。

あるいは5コマ目の謎解き。「なぞなぞのようで面白い」っていう意見をもらったりします。その代わり、それなりに苦労してます。 4コマでおもしろい展開で考えて、かつ最後のお題も面白くなるように考えて……大変ですけど楽しい作業です。

1時間で1本描けるか、4コマ仲間と切磋琢磨

ーー最後のタイトルだけ決まらなくて寝かせたりとか。

決まらないときは素直に友達に聞きます。「なんかいいタイトルない?」って。そこはあまりこだわらないようにしてますね。「自分はこういう方向性のタイトルがいいと思うんだけどどう?」って4コマ仲間の友達とかに聞いちゃいます。

ーーそもそも、4コマ仲間っていう人たちがいるんですか。

Pixivを使っていた頃に、「1時間で4コマ漫画を描く会」っていうコミュニティを開いてる人がいて、そこに誘われたんです。お前も描いてみないかって。

その流れでいろいろな4コマ漫画を描く人たちが集まって、「どうすればこの4コマが面白くなるのか」って話し合いながら、「次はこういうことをやってみよう」みたいな実験を繰り返すようになりました。

最初は大変でした。やっぱりお題を決めて1時間で面白いのって難しい。最初の頃は「1時間だからクソみたいな4コマでもしょうがないだろう」みたいな気持ちで、単に楽しむイベントとしてやってましたね。

でも、だんだん続けていくと、みんな1時間で4コマ漫画が書けるようになっていくんですよ。それぞれ漫画を描くための回路が組み上がっていくんですよね。

いまはもう普通に1時間で1本くらいは描いてます。連載中の『ベルリンは鐘』だと、一連のストーリーがあるのでちょっと違いますけど、単品の4コマだと1時間弱で描けますね。

ニャロメロンさんの作画風景

ニャロメロンさんの作画風景

ーーそうすると、1日のお仕事ってどれくらいの量をこなされるんですか。

でも、たいして描いてないです。正直すごいサボりながらやってます(笑) 1日に何本描くとかも決めていないですね。でも締め切りまでになんとなくやらなきゃなぁ、みたいな気持ちで描いてます。

締め切り最終日に全部描くとかはないですが、ばーってまとめて描く日もあれば、まったく描かない日もあったりします。あまり計画立てられないのが課題ですね。

商業的な成功にはキャラクターが不可欠

ーー紙媒体に載るのと、ネットに公開されるのでは作風が変わったりするものですか。

そうですね、ベルリンは鐘に関しては意識的に紙媒体というか、商業的な目線で見た作品作りを心がけていますね。

具体的にいうと、インターネットで人気になるのとは別の方向性の話になるんですけど、やっぱり「キャラクター」が必要になってくるんです。

なんでかっていうと、キャラクターが存在しないと、単純に面白いアイディアを思いついた奴が勝つ世界になっていくんですよ。キャラクターへの愛着とかそういった類のもので勝負できないので、単純にアイデアとセンスの良さとか、そういう筋肉だけで戦い合うみたいな感じです。でもそれって消耗戦でもあるんです。

しかも、特に僕の4コマ漫画とか本当にキャラクターがないので、「構造」だけしかないんですよね。そうなってくると、研究さえすれば、ああいうタイプの漫画って誰でも描けるんですよ。理論の構築が可能なんです。

「ベルリンは鐘」を連載するにあたっては、商業誌を意識したキャラクター作りに力を入れたという

ベルリンは鐘』を連載するにあたっては、商業誌を意識したキャラクター作りに力を入れたという

boketeの画像大喜利ってあるじゃないですか。あれって、「特定の誰かが考えた答えだからおもしろい」っていうものがないじゃないですか。基本的に匿名なので。

でも本来であれば、「この人が言うからおもしろい」っていう要素があるはずなんですよ。こち亀の両津勘吉なんかわかりやすいですよね、常にお金に貪欲な行動を取ってるだけで面白いんです。吉本新喜劇に登場する芸人とかもそうですね。

LINEスタンプにnote……ネットでお金を得る仕組みが広がる

ーー文脈をみんなで共有し始めるんですね。

そう。そのキャラクターをみんながわかってると一気に面白くなる。なので連載を始める際には、まずはキャラクターを作りましょう、キャラクターを作らないと売れないですよね、という話になりました。これが紙媒体で、商業的に売れるにはっていう考え方なんだと。

そこにキャラクターがついてくると、このキャラクターをもう一度見返したいっていう気持ちになるので、単行本を買いやすくなる。長期的に売れている作品は、キャラクターを追いかけたくなるような作品じゃないといけないっていうのがあると思います。

ーーそこがネットでヒットする、シェアされるものと、商業媒体で成功するものの違いになる。

そうですね。ただ、いまはインターネット上でお金を払えるような仕組みが少しずつでき始めてるじゃないですか。これがもう少し進むと、そういう純粋に自分のエゴを追求した漫画が売れるような環境ができるかもしれないなと期待しています。

例えば、ネットでシュール系の4コマ漫画を描いて、そのシュールなキャラクターをLINEスタンプで売って、LINEのほうで儲けを出すとか。実はメロンコリニスタもスタンプを販売しているんですけど、定期的に売れていますしね。漫画家がネットでお金を得る方法っていうのは、いまはいろいろあるんでしょうね。

週刊メロンコリニスタのLINEスタンプ

週刊メロンコリニスタのLINEスタンプ

ーー最近だと「note」のような課金サービスも人気のようです。

近いものだと海外に「Patreon」っていうサイトがあります。定期的にお金を払うと、いままで描いたイラストが見れるよ、とか。日本でもPatreonと似たようなサイトがいくつかできてきました。

さっき話した商業的な目線って、濃いファンじゃなくて一般の層に買ってもらうときに必要な要素なんですよね。でもインターネット上で稼いで生きていくのであれば、別に広い層に受けなくてよくて、数人の濃いファンにお金を払ってもらう方向性も全然ありだと思うんです。

もともとインターネットって狭くて濃いコミュニティに細分化されていくものじゃないですか。なので、そういう細分化の先端のところで、一部からカリスマ的な人気を得るのもありですよね。

いいものが人の目に触れる機会が増えている

ーーいまは昔に比べて、漫画家にはなりやすくなってるんですか。

そうだと思います。まずインターネット上でそういう仲間同士で集まって話し合えるじゃないですか。かつ環境を揃えやすい。デジタルであれば、もうソフトウェアを購入するだけでいいとか、あと東京に持ち込みに行かなくていいとか。だっていまは「ネット持ち込み」とかもできますから。いいものが人の目に触れる機会が増えてるというのも、もちろんありますね。

常に環境は変わってきていると思います。自分のときはPixivもTwitterも、Tumblr経由での漫画投稿も、いまに比べると広がっていなかったので、黎明期の波に乗ってうまくいっただけかもしれないです。

だから例えばいまから「Pixivで名を馳せるぞ」っていうのは難しいと思うんです。だってもう円熟してるし、すごく大きなコミュニティになってるから。そこの中でちょっと光るものを見せたところでどうにかなるものでもないような気がしています。

一方で、いまだと「comico」とかの漫画サイトで有名になってる人ももちろん出てきてますよね。自分たちの世代ではスマホで読む漫画というジャンルってよくわかっていなかった。

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ーー今後の目標としては引き続き、4コマ漫画のプロとして生きていく?

そうですね、いまのところはそういう気持ちで。

ちょうど10年前に絵を描き始めた頃はこんなことになるとは想像してませんでした。漫画家になるにしても、もっとうまい絵を描くようなタイプの……。どちらかというと、そんな期待をしていましたけどね。

努力はするけど、辛くなくてもいいんじゃないか

ーーでも、いまのような作風に落ち着いた。

それは自分の飽きっぽさ、そして努力のしたくなさと、「でもこれぐらいの努力だったら、それなりにうまい絵が描けるぞ」っていう絵柄のバランスを取った結果というか(笑)

自分が本当に楽に上手い絵を描けるようなラインを探すようにしています。クリエイティブな志向というよりも、いかに自分が楽をできるかっていうのが基準になってますね。

辛いことってしたくないじゃないですか。例えば自分は運動が嫌いなのでひたすら素振り1億回しないと漫画が上手くならないんだったら、僕は漫画家を目指してなかったですね。だから本当に、低いところに流れていったというか、自分がすごく気持ちよく寝っ転がれる居場所を見つけるために、技術を磨いたり、逆に何かを避けていたりします。

ーーそれは仕事論としてとてもおもしろいですね。

もちろん苦労はしてると思います。してるんですけど、その苦労だって、別に辛くなくたっていいじゃないですか。辛くない程度に抑えて、邪魔なものは払いのけて、最低限の力でやれたらいいと思うんです。