創業時はマネジメントよりコードを書け。元nanapi CTO和田修一氏に聞く、技術で経営に貢献する方法

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「小規模スタートアップの技術的な方々の壁打ち相手的なことをやります」元nanapiのCTO、和田修一さんがそんなタイトルの記事をブログにポストしたのは今年3月のこと。それから瞬く間に60人近くの人から相談が寄せられ、話題になりました。

今回はたくさんの人の「壁打ち相手」になってきた和田さんに、CTOの方々が抱える悩みについて伺いました。

OSSみたいに経験・知恵を共有したかった

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ブログにも書いたのですが、少しでも自分の知識を活かしたいという思いがありました。
というのも、自分がスタートアップをはじめたときに相談できる人がいなかったんです。CTOと呼ばれるポジションの人は今ほどたくさんいませんでしたし、自分がロールモデルにしていた人は雲の上のような存在。とてもじゃないけど声をかけにくかった。

創業した株式会社nanapiの取締役CTOを昨年11月に退任したのも壁打ちを始めたきっかけのひとつ。環境がずいぶん変わったので、いろいろな人から話を聞いてみたくなりました。

自分のCTO経験はもちろん活かしたいし、他の方の知識もみんなで共有しあいたい。オープンソースソフトウェアみたいなものがやりたかったんです。

一番多かった質問は「CTOって何をする人なの?」

(3月に始めてから)この2カ月半で、60人近くの方とお会いしました。本当にいろいろな方とお話ししましたね。だいたい全体の4分の3は実際のCTO、またはCTO的な役割を果たしている人です。メンバーが10人くらいまでの立ち上げ直後のスタートアップを中心に、上場しているような大企業のマネージャーの方とお会いすることも。少数派ですがCTO以外の方、なかにはエンジニアですらない人生相談の方もいました。年齢もバラバラで、一番若い方は今CTOをやっていますという20歳くらいの学生。上は40歳を超える人までいました。

これだけ多様な人がいると、その人の素質や抱えている問題はさまざま。僕も全ての問いに答えを持っているわけではありません。だから一緒に考えていくというスタンスをとっています。

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とはいえよく聞かれる質問はだいたい決まっていました。一番多かった悩みは「CTOって何をする人なんですか?」というものです。その次は採用や組織作りの方法。ほとんどこの3つでしたね。

会社を成長させるなら何をしてもいい

まずは普通のエンジニアとCTOの違いは何かを考えなくてはいけないと思うんです。エンジニアが出世するとCTOになると思われているのですが、実は全然目指しているゴールが違う。

エンジニアの仕事は自分の持っている技術を使って課題を解決すること。だから技術的な領域で成果を出すことが求められます。でもCTOはそれだけじゃダメ。会社としての成長にどこまで寄与できるかが、CTOの勝負どころです。

それではCTOが経営にコミットするためには何が必要なのでしょうか。これは人によって違うし、変えるべきなんです。自分でガンガンコードを書いて、トップのリードエンジニアとして貢献するもよし、どんどんエンジニアを採用してチームを作って貢献するもよし。やりたいことは人によってさまざまです。だから「CTOは何をしたらいいんですか?」と相談されたときは「何がやりたいの?」ということを聞くようにしています。もちろんやりたいことを突き詰めるあまりエゴイスティックになってはいけないので、自分のやりたいことをどう経営に活かせるかは考えないといけません。

マネジメントに悩むよりコードを書け

経営に貢献するというと「マネジメントしないといけない、どうしたらいいですか」って聞いてくる人もいます。そういうときは「マネジメントってなんだと思いますか?」と逆に聞き返します。するとだいたいリソースを管理することだと思われているんですね。それは確かにマネジメントの一端ではあるのですが、リソースを管理するだけなら必ずしもCTOがやらなくてもいい。マネジメントと言っても、いろいろあります。それに5、6人くらいの組織だったらマネジメントなんて考えている場合じゃないはずなんです。

だいたいどんなに慎重にやったって必ず失敗するんですよ。だからやるしかない。創業期のCTOはマネジメントのことをあれこれ考えるより、コードをバリバリ書いた方が経営に貢献できるケースがほとんどです。

特に共同創業者に近い立ち位置のCTOに求められるのは「プロダクトがどういう方向に行くのか」というビジョンを語れるようになることです。会社のビジョンを語るのはCEOですよね。CTOはそれを理解した上で、プロダクトのレイヤーで何を目指すのかを語る。これも立派なマネジメントです。

どうにもならない悩みにも、めちゃくちゃおもしろいビジネスにも出会えた

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マネジメントや経営を学ぶのは難しい。経営の本はたくさん出ていますけど最終的には経験するしかないんです。そのときに相談できる仲間やメンターがいるといいんですが、エンジニアはうちにこもってしまいがちなんです。やっぱりプロダクトを作らないといけませんし、そもそも仲間を見つけている暇がない。だからこういった相談が多かったことは本当によかった。

先ほどの組織作りの話のように、そんなに悩まなくてもいいんじゃない?という相談もあったのですが、突き詰めていくとどうにもならない悩みもいくつかあった。表面化している問題が似通っていても、紐解いていくと根底は違っていたりする。今までは「CTOはそんなこと言っちゃダメだ」みたいなことをブログやツイッターで発言していたりしたんですが、「みんな悩んでいるんだから、もっと優しくなろう」と思うようになりました(笑)

それに同じような悩みを聞いていたといえどいろいろな会社や人と会えたことは本当によかった。観測範囲が大幅に広がりました。私が最初にCTOになってから7年ほど経ちますが、当時に比べてハードウェアなどのIoT領域や、ビックデータ解析などビジネスの領域が広がっています。BtoCのソフトウェアひとすじだった自分にとって、異なる分野のエンジニアと出会えたことは良い刺激になりました。いろいろなビジネスがあって、めちゃくちゃ面白いんですよ。

最強のCTOは存在しない

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僕がはじめてCTOになったのは2009年でした。当時も悩んではいたんですが、今ほどCTOと呼ばれる人もいなかったし情報も少なかった。だから自分の中で「こんなもんかな?」と手探りでやっていた。今は情報が溢れていますよね。だから「あのCTOはこう言っていた」「このCTOはこう言っている」と気にしすぎてしまうのかな。

最強のCTOなんてものは存在しないんです。重要なのはCEOとの相性だと思います。相談に来てくれた人の中には、正直「合っていないな」と思う組み合わせもいくつかありました。いい組み合わせがちゃんとできれば、相性がよくないばかりにお互いの才能を潰しあってしまうような悲劇が起きなくなる。

今後は壁打ち相談を通じて出会った人同士のコミュニティを作っていきたいですね。僕とだけ話すよりも、横のつながりを作ってほしい。例えばヴォーカルならヴォーカル、ギターならギターとパートごとに採用してからバンドを組ませるような音楽事務所がありますよね。それと同じように、エンジニアやデザイナーなどいろいろな人が組んで会社を作ってもらいたい、なんてことを思っています。