ハチロク世代エンジニアの挑戦「誰でも洋服を作って売る時代にしたい」

元2ちゃんねる管理人の西村博之氏やmixiの笠原健治氏など、多くの有名なネット起業家やエンジニアを輩出。かつてIT業界を中心に話題となった「ナナロク世代」。

その10年後。比較して呼ばれるようになった「ハチロク世代」とは、1986年生まれ(とその前後)を指す総称。インターネットの普及と共に育ったため、ナナロク世代よりもデジタルに対してネイティブな思考が可能だと言われている。そんなハチロク世代も現在、30歳前後。一般的に社会では役職やポジションについたり、何かしら大きなアクションが期待される年代でもある。

ブロガーのイケダハヤト氏をはじめ、すでに知名度をあげている著名人はたくさんいるが、本記事では今後注目のサービスを手がける1人のエンジニアの挑戦にスポットを当てたい。

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誰でも洋服を作って売れるWebサービスを開発

デザイナーなどのクリエイター職に限らず、誰でも1度や2度ぐらいは自分で洋服を作ってみたいと考えたことがあるのではなかろうか。とはいえ洋服の知識やデザインスキルもなく、たとえ実際に作れても売れなかった場合に在庫を抱えるリスクがコワい。そんな風に考えるのが普通。

では今年3月にローンチされた「STEERS(ステアーズ)」をご存知だろうか?

Web上でTシャツを簡単にデザイン、無在庫で販売できるECサイトだ。専門的なスキルや煩わしい作業は一切不要。利用料もかからず、購入者への発送もすべてステアーズ側がおこなう。一般人はもちろん、プロのイラストレーターや漫画家、モデルやタレント、アパレル関係者などのユーザーも増えてきた。

そんな新サービスを開発したのが今回の主役。株式会社スパイスライフの赤松祐希さん(29歳)。いわゆるハチロク世代のエンジニアだ。

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エンジニアがビジネスのベクトルに向く難しさ

メルカリCTOの柄沢聡太郎氏や、Qiitaの海野弘成氏など、エンジニアの領域からビジネスに寄っていった人たちはすごいと思います。

僕はRubyのプログラマーとしてスタートアップ企業に携わった後、6年ぐらいフリーランスとして活動していました。スパイスライフに入社したのは昨年のことですが、自分が技術畑でやっている間、彼らは開発するだけでなく会社を起業して経営までこなしていった。

フリーランスのときは個人の技術で勝負するだけでしたけど、スパイスライフに入りステアーズのプロジェクトで自分がリーダーのポジションに就いてみて、全体を動かすことの大変さを知りました。

エンジニアがビジネスのほうに目を向けることの難しさと言いますか。パソコンに向かって手を動かすことに集中しすぎると、その先にある本当に大事なことを忘れがちになります。

リーダーとして事業全体を見ること、エンジニアとして手を動かすことのバランスを意識する必要を感じています。

ユーザーがいるうえでの技術と気付いた

エンジニアとして技術的な部分はもちろん大事ですが、実際にユーザー側と触れる機会も増え、技術の先にあるお客様へのサービスが第一なんだと改めて思います。

ステアーズは色々な人に継続して利用してもらいたいと思っています。ユーザーへの価値を第一に考え、技術はあくまでそれを支えるものと考えています。

実店舗のないオンライン上のサービスですので、お問い合わせフォームやTwitterなどのSNSでお客様からフィードバックを得られる機会が多い。そういったユーザー側との密なやりとりを通して、サービスやTシャツの品質を進化させていくことにやりがいを感じています。

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ローンチ直前で方針を変更

じつはローンチ前は、Tシャツの収益を使ってなにかしらの夢や目的を叶えるといったクラウドファンディングに近い形のコンセプトで考えていました。たとえば、クリエイターが個展をひらいたり、個人や団体がなにかの活動費にあてるといったものです。

でも直前で方針を変えた。結果その判断は正しかったと思います。一般のユーザーには少しわかりにくいし、とっつきにくいかなと。

最大の懸念は、ローンチしても誰も利用してくれないこと。

そこで、純粋に「誰でもTシャツを販売できる場所として使い方は自由」という風にしました。実際にローンチ後、すぐにTシャツを作ってくれるユーザーがいて、まずはひと安心。最初のハードルを乗り越えられて非常にうれしかったです。

アパレルやECサイト未経験、エンジニア領域以外で苦労

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ローンチ後、苦労しているのは印刷の品質の向上です。ユーザーから何度かお叱りを受けているので今改善に取り組んでいます。

物を扱うサービスを運営するのはほぼ初めてで、物があるからこその難しさというかプログラミングだけでは解決しない部分があることを実感しています。

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Tシャツを売るというサービスである以上、Tシャツの印刷品質は大前提です。とにかく印刷品質を高められるようにこれからも努力を続けるほかありません。

決済手段についても少々想定外だったことがあります。ステアーズはクレジットカード決済のみでVISAとMasterカードに対応しています。

もちろんクレジットカードを持っていないユーザーや、JCBなど他のカード会社のユーザーがいることは頭にありました。想定外だったのは、思っていたよりそういったユーザーが多かったことです。

対応カード会社を増やすのはすぐには難しいのですが、クレジットカード以外の決済手段として近いうちに代引きでの決済を提供する予定です。

自分が作った洋服を誰かが着る喜び

「オンライン上でTシャツを売る」というサービスとしては、すでに競合もいる世界。そのなかで、ステアーズとしての付加価値や存在感を示していきたいと考えています。

現時点では洋服以外の商品展開は考えていません。いまはTシャツも男女兼用、レディースの2種類だけですが、今後はキッズサイズをはじめ、ボディの生地や長袖も選べるようにするつもりです。決定ではありませんが、秋冬用にはパーカも検討しています。

LINEスタンプぐらい気軽なノリ

サービスの認知度としてはまだまだこれからです。そもそもオンラインで簡単にTシャツが作れることを知らない人たちもまだたくさんいます。今後はそういった人たちに届けていくことが肝心です。

いまだとLINEスタンプなんかは少しデザインの心得があれば割と誰でも挑戦していると思います。自分の作品を誰かが使ってくれていたらうれしいですよね。その喜びをTシャツを通してステアーズが提供できたらいいなと思います。

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世の中の人たちに喜びを提供できる場所に

PhotoshopやIllustratorなどのソフトやデザインスキルがなくても、ステアーズではフォントやイラストの素材を無料で使えます。とはいえ洋服作りに興味があっても実際にデザインするとなれば、そもそもデザインすることが難しいということもよくわかります。

クラウドソーシングにするつもりはありませんが、活躍の場を欲しているプロのイラストレーターやデザイナーなどの「デザインができる人」と「デザインはできないけど洋服を作りたい人」をうまくマッチングさせ、一緒に作れる仕組みも考えている途中です。

現状ステアーズは目立たないサービスではありますが、誰でも気軽に洋服を作って売れる時代にできるよう努力していきます。まだまだ自分自身も成長するつもりです。ぜひ今後にご期待ください。