ガラケーやiOS 7もサポート、忙しすぎる先生を救う「うさぎノート」躍進の秘訣

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「先生が忙しすぎる」問題は、昨今の社会課題として大きく叫ばれるようになりました。勉強を教えるだけでなく、雑務や部活動を含めて、学校の先生の業務は多岐にわたります。毎日、早朝に登校して帰るのは深夜……という方も少なくないでしょう。そんな先生方の負担を軽減するためのサービスが「うさぎノート」です。

2015年6月にリリースされ、現在は全国で3万人以上の保護者が登録。その伸び率は半年で4倍を超えているそう。当初の想定を超えて、学習塾や習い事の教室など、学校以外の場所でも活用されています。

過去に『ゼクシィ』や『Hotpepper』を生み出したことでも知られる、リクルートホールディングスの新規事業提案制度「NewRING‐Recruit Ventures‐」から生まれた、『うさぎノート』。どのようなコンセプトで開発され、ここからどんな世界を目指していくのでしょうか。プロダクトオーナーの平田淳さんにお話を伺いました。

平田淳(ひらた・じゅん)さん。リクルートホールディングス、メディアテクノロジーラボ所属。『うさぎノート』プロダクトオーナー。津田塾大学に在学中、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「未踏IT人材発掘・育成事業」に採択されるほか、リクルートホールディングスの新規事業提案制度「NewRING」ではプレゼント動画を作成できる『MINMOO』を提案してグランプリを受賞。卒業後はウォンテッドリー株式会社に入社し、アプリケーションエンジニアとしてプロダクト開発にかかわる全般の業務に従事。2015年2月にリクルートホールディングス入社。「Recruit Ventures」で初めて事業化が決まった『うさぎノート』の開発チームに配属され、同年12月より現職。

平田淳(ひらた・じゅん)さん。リクルートホールディングス、メディアテクノロジーラボ所属。『うさぎノート』プロダクトオーナー。

先生から家庭への連絡をあえて「一方通行」に

――まずは基本的なところからお伺いさせてください。うさぎノートとは、どのようなサービスなのでしょうか。

簡単に説明すると、先生と保護者をつなぐ連絡サービスです。今はLINEやFacebookなどさまざまな連絡手段がありますが、うさぎノートはそれらと比較して、ある特徴があります。それは、SNSにはあたり前についている返信機能をなくし、連絡経路を「先生から保護者へのみ」の一方通行にしていることです。サービスを使う保護者の方々は、先生の投稿を見ることと「いいね」を押すことのみ可能になっています。今まで先生方が連絡帳に直接書いたり、プリントを配布したりすることで試みていた保護者とのやり取りを、効率化するためにアプリ化した……と捉えていただくと、イメージしやすいかと思います。

――どのような思いやきっかけがあって、うさぎノートは開発されたのですか。

当初は、保護者が抱えている「学校から配られるプリントの量が多くて管理が面倒だ」という問題を解決するために開発が始まった企画でした。ただ、制作中に教育機関や保護者へのヒアリングを重ねていくと、プリントなどの作成に先生たちが苦労していることや、先生にサービスを使ってもらうには学校へのアプローチが重要だということが明確になっていって。

――現場の声によって、ターゲットが変わっていったのですね。

リサーチをしてみると、今の先生って本当に多忙で……公立学校の教師は1日平均で11時間も働いている、なんてデータもありました。授業はもちろん、テストも作るし採点もする。事務連絡のための資料も自分で作成する。部活の顧問をしていれば、土日も出勤する。勉強を教える以外の雑務も日々たくさんあって、疲弊している先生方が大勢いらっしゃるんです。うさぎノートが、そうした先生方の負担を軽減することにつながってくれたらと考えています。

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――サービスが始まったのは、2015年の6月からでしたね。現在、利用者数はどれくらいですか。

教育機関の登録数が300以上あり、保護者の利用者数で言うと3万人ほどです。学校だけでなく、塾や習い事の教室などでもご利用いただいています。当初の見込みでは小学校での導入が多いと想定していたのですが、ふたを開けてみると中学高校からのニーズが高いんですよ。問い合わせの数も、中高からの方が断然多いですね。

――確かに、担任がクラスの面倒をつきっきりで見ている小学校の方が、うさぎノートの需要があるのかなと思っていました。なぜ、中高での導入事例が多いのでしょうか。

これも営業する中でわかったことなのですが、小学校だと「子どもが保護者にプリントを渡すのも教育の一環」と捉えている学校さんが多いんですよ。一方で、中高では私立を中心に「業務の効率化を図りたい」「保護者の満足度を上げたい」と考えている学校さんが多いため、結果的に登録数が増えています。

離れていても、学校での子どもの様子がわかる喜び

――「教師から保護者への一方通行のやり取りに限定する」というのがこのサービスのポイントなのかなと感じましたが、これは開発段階から固まっていた方針だったのですか。

そうですね。やり取りする余地を与えてしまうと、先生方がその対応に追われることになります。業務の効率化を目的としているのに、負担を増やしてしまっては元も子もないですから、最初から「返信できないようにする」というのは決めていました。それに対して先生と保護者の双方から不満が上がってくることは、今のところありませんね。

――実際にうさぎノートを使っている利用者の反応はいかがでしょうか。

「負担が減った」「情報が管理しやすくなった」との声は多数いただいています。また、先生によっては事務連絡の用途のほかにも、さまざまな活用をしてくれていて。

――たとえば、どんな活用方法がありますか。

黒板に書いてある「今週のクラス目標」や、授業で生徒たちが発表している様子を写真に撮ってうさぎノートにアップしていたりするのは、よく見受けられますね。修学旅行などのイベントの時は、リアルタイムで写真をアップしてくれる先生も多いです。ネット環境さえあれば、単身赴任のお父さんや、海外に在住しているおじいちゃんもチェックできるので、「離れていても子どもの様子がわかる」と喜ばれています。

――プリントでのコミュニケーションでは生まれなかった、ウェブサービスならではのメリットですね。

保護者の皆さんが学校での子どもたちの様子を知れるのって、今まで授業参観くらいしか機会がなかったんですよね。私も「クラスの様子を写真で伝えられる」という単純なことが、ここまで喜ばれるとは想像していませんでした。事務連絡の効率化のためのツールとして開発したうさぎノートですが、ユーザーの試行錯誤によって新たな付加価値が育ってくれて、つくり手として非常にうれしく感じています。

ガラケーやiOS 7にも対応する理由

――開発の段階で苦労した点はありますか。

先生と保護者の中でひとりでも使えない人がいると導入が難しくなってしまうので、アンドロイドやiOSのアプリ以外でも、あらゆる形態に対応しなければなりません。私たちもある程度は覚悟していたのですが、営業していて「ガラケーに対応してない」ということで断られることが多かったのは衝撃でした。

――現在ではガラケーもサポートしていますね。

エンジニアは「できればやりたくない」と言っていたのですが(笑)、それがないとサービスと成立しないとなれば、やるしかないので。昨年の6月にリリースした時には入れてなかったのですが、ガラケーもサポート対象に組みこみました。iOSも7までサポートしているのですが、これも現場で「7がないと厳しいかな」との声が多かったので、後から対応したんです。

「ガラケーに対応しなければサービスとして成立しなかった」と平田さんは語る

「ガラケーに対応しなければサービスとして成立しなかった」と平田さんは語る

――現場の声を大事にして、柔軟に対応されているのが印象的です。

今年の9月には今のメインの利用者層に合わせて、デザインも含めて大きくバージョンアップをする予定です。うさぎノートのターゲットって、保育園から小学校、小学校から中高と、少しずつ上にシフトしているんですよ。現状のデザインは可愛らしい感じなんですが、これをもう少し大人っぽく雰囲気を洗練させていこうと検討しています。私立校などに持っていくと、「ちょっとこれはウチの学校の雰囲気に合わないかな」と言われてしまうこともあって。

「断られても粘る」を学んだ営業

――平田さんはもともとプログラマとして、こちらの開発を担当されていたんですよね。

はい。2015年の12月に前任者から引き継いで、うさぎノートのプロダクトオーナーになりました。それからは開発だけでなく、営業やカスタマーサポートなどのディレクションもしています。

――サービス周りのことはすべてやられているのですね。開発一筋の環境からステータスが大きく変化したことに、抵抗はありませんでしたか。

そこまではなかったですね。実際に自分で営業をやってみると「ここって意外と響かないんだ」とか「この機能つけたら、この企業でも使ってもらえるかもしれない」など、今まで見えていなかった世界が見えるようになって、とてもやりがいを感じています。

――メディアテクノロジーラボに所属されている方々は、ほとんどが開発者ですよね。周りに営業がいない中で、どうやって営業のスキルを磨かれたのでしょうか。

営業のコンサルをしてくれる人を1人つけていて、その人から色々教わっています。電話営業のトークスクリプトの作り方や、営業成績の数字の見方、それに対してどのような改善策を考えていくのかなど、本当に基礎的な部分から勉強させてもらいました。

――教わった中で印象に残っていることはありますか。

「断られても粘る」というマインドでしょうか。最初の頃は、営業先にサービスをひと通り説明して断られたら、そこですぐ次に切り替えていたんです。でも、そのコンサルの方から「今の断られ方なら、こういう風に粘ったらもっと検討してもらえるはず」と都度フィードバックをもらって、実際に再提案をしたら契約が取れることもあって。

――粘り方のコツなどはあるのでしょうか。

先方が断った理由を分析して、それに対してすぐにソリューションを用意して提案します。「粘る」というと泥臭いイメージが強いですが、やっていることは合理的な判断に基づいていますね。地道な営業努力のかいもあって、私が引き継いだ時には4500人ほどだったユーザーが、今では3万を超えるまでになりました。結果が数字に表れてくるのは、やっぱりうれしいですね。

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校内の口頭コミュニケーションをデジタルに

――今後うさぎノートをどのように改良していくか、具体的なビジョンはありますか。

学校の先生方の連絡方法って、いまだにアナログなところが多いんです。教職員の朝礼を見ていても、毎日のスケジュールのようなものを小さな紙を配ってみんなで共有して、さらにそれを職員室の黒板に書く……みたいなことがあたり前で。うさぎノートをきっかけに、学校内の連絡を全体的にデジタル化する方法にもっていけたらなと考えています。

――デジタル化することで、先生方の業務の無駄って削減できるポイントは、たくさんあるのではないかなと。

絶対にあると思います。それをいきなり変えてしまうのではなく、まずは少しずつデジタルに慣れていってもらうことも重要だなと感じていて。営業の中で普段からいろいろな学校の先生とやり取りをしているのですが、PCのメールアドレスを持っていない先生って結構多いんですよ。

――それは「普段の業務でメールを使っていない」ということにもなりますね。

そうなんです。だから、うさぎノートはメールアドレスとパスワードではなく、IDとパスワードでログインする形に統一しています。メールを使っていないところだと、連絡手段ってほぼ口頭しかないんです。だから今でも、伝達しなければならないことがある度に、校内放送で呼び出しがかかったりする。それってすごく非効率的だなと思うんです。

――でも、デジタルに対する食わず嫌いがあるから、なかなか状況が変わらないんですね。

うさぎノートは極力シンプルに、誰でも使いやすいようなインターフェースを追求しています。これを入り口にデジタルコミュニケーションの便利さを感じてもらって、最終的に学校全体で「口頭でしているやり取りをデジタルに移行しよう」という流れが生まれてくれたらうれしいですね。

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