183個の撤退サービスを出した「しくじり社長」、過去の失敗と教訓を語る

仕事の成功者は「打席」に立つ回数が多いと言われるが、面白法人カヤックも「とにかく数を打つこと」をテーマに数々の事業を生み出してきた。

その中には、アイデアが斬新すぎてユーザーが集まらなかったり、収益面で苦戦を強いられたりで、撤退を余儀なくされた事業もある。その数、183個

カヤックが5月21日に開催した「1社だけの合同説明会」の1コーナー「しくじり社員セミナー」で、柳澤大輔社長が過去の失敗と、そこから得た教訓を語った。

カヤックのサイトには撤退事業の一覧があり、そこには183個の撤退サービスの概要やビジネスモデル、撤退理由がえらく丁寧に書かれている。

カヤックのサイトには撤退事業の一覧があり、そこには183個の撤退サービスの概要やビジネスモデル、撤退理由がえらく丁寧に書かれている。

企画は「間口」を広く

ボディビル専用の動画プレイヤー「マッスルプレイヤー」は、アイデア自体は斬新でも、対象がニッチ過ぎて撤退したサービスだ。

ユーザーが投稿したボディビルディングの動画に投票を受け付け、人気のボディビルダーに優勝賞品・プロテイン1年分をプレゼントする企画。「月刊ボディビル」、略して「ゲツボ」の協賛で実現した。

動画を見ながら「ナイッスポーズ」「切れてるヨッ!」「大ッきい!」「黒いよォ〜!」といった、ボディビルのコンテストでお馴染みの声援を飛ばせる機能も入れた。

動画を見ながら「ナイッスポーズ」「切れてるヨッ!」「大ッきい!」「黒いよォ〜!」といった、ボディビルのコンテストでお馴染みの声援を飛ばせる機能も入れた。

リリースした2005年、肉体改造に興味を持っていたという柳澤さん。「ゴールドジム」に通ううちにボディビルディングの世界に注目し、「マッスルプレイヤー」を立ち上げたが「本当に流行らなかった」。当時を振り返り、「興味の間口が狭いジャンルは厳しかった」と反省する。

「せめてプレゼントが『車1台』だったら多少は興味を持ってもらえたかもしれないが、プロテイン1年分といっても……。企画は最初の入り口が重要ということを学んだ。」

いくらコンセプトが良くても……

コンセプトが崇高でも、事業として成立するとは限らない。食材廃棄の機会を減らして、エコロジーな環境づくりを目指すことをうたった「ZANG PANG」もそんなサービスだ。カヤックが主催するイベントで、参加した学生とコラボして生まれたという。

残飯の写真を公開して食べに来てもらう、「残りメシのソーシャルシェアリング」アプリ。お腹が減っている人はアプリを立ち上げて、近くにシェアしている人を探し、参加表明が承認されたら食事を楽しめるというものだ。

そもそも事業化する気があったのかという気もするが、「食べ残しの写真はどうがんばっても美味しそうに撮れなかった」と柳澤さん。その結果、投稿者のほとんどはカヤック社員だった。ただ、エコなコンセプトを評価したというWWF(世界自然保護基金)がキャンペーンとして採用したため、「ムダにはならなかった」。

居酒屋で余った食べ物を投稿すると、近所の貧乏学生が食べに来てくれたそうだ

居酒屋で余った食べ物を投稿すると、近所の貧乏学生が食べに来てくれたそうだ

テクノロジー台頭期はビジネスチャンス

サイバーエージェントに事業売却した音声投稿コミュニティ「koebu(こえ部)」。その二匹目のドジョウを狙ったのが、におい専門のコミュニティサイト「nioibu(におい部)」だ。

こえ部は2007年にサービスを開始。事業売却した2014年9月時点で会員数が83万人に上るヒットサービスだった(現在はサービス終了)。こえ部のヒットについて柳澤さんは、こう分析する。

「新しい技術が出た時は、新しいサービスが生まれるチャンス。こえ部をリリースした当時は、音声投稿が簡単になったInternet Explorer 4.0が出たばかり。その技術から逆算してサービスを作った。」

一方のにおい部は、「この場所に行けば、こういうにおいが嗅げる」という情報を投稿できるサービス。匂いフェチを集める試みだったが、ボディビルのサービスと同様、「そもそもの市場規模がなかった」と反省する。

やっぱりタイミングは重要

夏休みの読書感想文を自動作成する「DEKI NOTE」は、リリース時期の重要性を感じさせられるサービスだ。

Amazonのレビューを引っ張ってきて、読んでもない本の感想文を「それらしく」成形するジェネレーター。ユーザーの学年に応じて、漢字とひらがなを使い分ける機能を盛り込んだりしているうちに、「開発が終わったのが9月1日だった」。夏休みが終わってしまったため流行ることはなく、結局は15万円で売却したそう。

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カヤック柳澤大輔社長

撤退寸前サービスが復活することも

撤退寸前のサービスで復活を遂げたのが、有料の算数学習アプリ「うんこ演算」。「うんこ」と聞くだけでテンションがあがる子どもの特性を生かし、うんこで算数を楽しく学べるようにしたものだ。

例えば、こんな問題を出題する。「たろう君は1日に1回150gのうんこをします。1kgの小麦粉10袋分と同じ重さのうんこをするには何日かかりますか?」

リリース当初は話題となったが、「そのうちに飽きられた」と柳澤さん。しかし、auスマートパスで取り扱うようになって復活したそう。「当たったものを出し続けていたら、1年後に知らないユーザーが入ってくることもある」。

失敗を繰り返せば「打率」は上がるか

これまでに失敗を繰り返したことで、事業の「打率」は上がったのだろうか。そう柳澤さんに聞くと、こんな答えが返ってきた。

「個人に限って言えば、当たった人は、また当たる。言い換えれば、当たってるやつしか当たらない。だからこそ、当たるまで失敗しないといけない。一回当たれば、当たりやすい体質になるので。」