IT芸人が訊く、おっさんエンジニアが“老害”にならないために(後編)

増井さんが「今、気になる人」に直撃する新連載。「スタートアップにベテランエンジニアが加入した影響」をテーマに、Incrementsの海野弘成社長と語った前編の続きです。後編はIncrementsに2016年5月に入社したベテランエンジニア、田中洋一郎さんも交えて、「ベテランと若い会社の上手な付き合い方」について語りました。

IT芸人が訊く、なぜ優秀なおっさんエンジニアを次々と採用できるんですか?(前編)

左からIncrementsの海野弘成さん、トレタの増井雄一郎さん、Incrementsの田中洋一郎さん

左からIncrementsの海野弘成さん、トレタの増井雄一郎さん、Incrementsの田中洋一郎さん

おっさんが“老害”にならないために

(前編からの続き。増井さん、田中さんを連れて会議室に戻ってくる)

増井:洋一郎さん、お仕事中に突然声かけちゃってすみません(笑)

田中:大丈夫だけど、僕なんで呼ばれたの?(笑)

増井:今、海野さんに「若い会社におっさんが入ったことによって、どんな変化が起こったか」という話を伺っていたんですよ。それで、せっかくだから“入社したおっさん側”の話も聞きたいな、ということで。

田中:ああ、なるほど。

増井:僕も今年40歳になって、この先もコードを書き続けていきたいけど、それ以外に自分が提供できる物ってなんなのかなと思っていて。だから、大企業から若いスタートアップに移った洋一郎さんが、どんなことを考えながら仕事をしているのか、ぜひお聞かせ願いたいなと。どうでしょう、ジェネレーションギャップとか感じますか?

田中:僕は今41歳なんですが、自分が40代だとか全然思っていなくて。だから「若い人の会社に飛び込んだ」って意識はあまりないし、仕事をしていて年齢差を感じることも、今のところはないですね。相手は感じてるのかもしれないけど(笑)

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増井:最近の技術に関しては、若い子たちの方が感度は高いですよね。洋一郎さんは、そういうトレンドも敏感にキャッチアップされている印象があります。

田中:そうですね、“老害”とは言われたくないですから(笑)。あと、僕はGoogle Developers Expertの認定を受けていて、流行りのデバイスやテクノロジーをキャッチアップして発信するのも一つの仕事になっています。単純にWebの世界が好きだからやっていることではありますが、「トレンドを追う必要のある状態」に身を置くのは、若い感性をキープするためのコツだと言えるかもしれません。

「誰を見て作っているか」と「誰に向けて作っているか」

増井:今回の転職で、洋一郎さんは数千人規模の大きな会社から、20人程度の小さな会社に移られましたね。どんな基準で会社選びをしたんでしょうか?

田中:「誰を見て、誰に向けてモノを作っているか」が、今回の転職活動の軸でした。僕は今まで、直接一般ユーザー向けの機能を作ったことは少なくて、それよりもSDKやAPIなど、一般ユーザーにモノを作って届けようとしているエンジニアの方々に向けて、サービスを作ってきました。同じ職種の人たちに使われるモノ作りって、奥深くて面白いんですよね。Incrementsの「Qiita」もまさに同じ目線で開発されたものだったので、その方向性に共感して入社を決めました。

増井:それって、結構大事なポイントだなと感じます。「誰を見て作っているか」と「誰に向けて作っているか」がズレている会社って、意外と多いんですよね。よくあるのが、「広告の人を見ながら」「一般ユーザー向けに」アプリを作っているケース。

田中:ありますよね。最初は一般ユーザーを見て丁寧に作っていても、サービスがちょっと当たり出すと、途端にいろんな方々から注目されるようになるじゃないですか。そうなると、ユーザーじゃなくって、注目してくる人たちに目が行きがちになってしまう。僕も、そういうケースは何度か経験してきました。

増井:「昔はあんな奴じゃなかったのに……変わっちまったな、アイツ」パターンですね(笑)。ただ、「誰を見て」と「誰に向けて」が違う方が儲けやすかったりするから、会社の経営判断で考えると、どちらがベストかは見極めが難しいところでもありますね。僕は、一緒じゃないと嫌ですけど。

田中:僕も同じです。

海野:うちの会社は大丈夫、ですよね?(笑)

田中:これからどうなるかわからないけど(笑)、今のところは向くべき方向をしっかり見つめていると思います。

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増井:小規模な会社を選んだのにも、意図はあったんでしょうか?

田中:大企業で経験を積んできて、気づけばそれなりに裁量権のあるポジションになっていました。それはそれでやりがいがあるんですが、自分が手を動かせないジレンマがあって。「これを作りましょう」と決めることはできても、自分はプロジェクトを管理する側だから、なかなか実作業を担うことが難しい。日夜コードを書いている人たちが、ちょっとうらやましかったんです。

増井:そしたら、今はガンガン書いていると。

田中:はい、毎日ガンガン楽しく書いています(笑)

増井:Increments入ってみて、うまくフィットできていますか? 純粋にエンジニアとして、大きいコードをキャッチアップするのって、結構久しぶりですよね。

田中:そこは上手くタスクを振ってくれたのかな。順番にやっていけば全体像を把握できるように仕事を用意してくれたので、ありがたかったです。

増井:入る前と入った後で、印象が大きく変わったことってありますか?

田中:いえ、そんなにはないです。会社としてのビジョンが「ソフトウェア開発がよくなれば、世界がよくなる」「エンジニアのために、僕らは何ができるか」とシンプルにまとまっているから、やることにブレがない。そのビジョンから導き出せるアプローチや製品って、いろいろ考えられますよね。そこに向かって「皆でいいもの作っていこうぜ」と、さまざまなディスカッションがフラットにできる環境なので、とても居心地の良さを感じています。

増井:そこには年齢も関係ない?

田中:だったらいいな(笑)

いい人が良縁を呼ぶ採用サイクル

増井:Incrementsは、どんなルートで採用することが多いんですか?

海野:社員の知り合いを中心に、人づてのケースがほとんどです。創業時にすごく優秀な人たちを採用できたおかげで、その人たちがさらにいい人を引き寄せてくれていて。積極的な採用活動はしていませんが、いいサイクルが築けているなと感じます。

増井:「エンジニアのために」という明確な事業の方向性が、人を引きつけている部分もありますよね。エンジニアたるもの、どこかに「もっと開発環境を改善したい」「もっとエンジニアの可能性を広げたい」という思いは、少なからず持ってますから。

田中:僕もまさに、そこで捕まったようなもので。今年の正月に「Qiitaにこんな機能あったらいいのに」ってFacebookで言ったら、及川さんから「You来ちゃいなよ」って(笑)。ここを受けようと思ったのは、それがきっかけになりましたしね。

増井:Incrementsって「エンジニア主体の組織」じゃないですか。営業や企画が別にいて、彼らが主導権を持っているようなことがない。トップが技術的な判断ができるからこそ、技術的に上級の人材が入ってくる余地が生まれる。それは、採用面での大きな強みだと言えると思います。

田中:いちエンジニアとしては、 非常にありがたい職場ですね。

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増井:最後に、もうひとつ質問を。僕らはユーザーとして「Qiita」をよく使うんですけど、それを作っているIncrementsが何を目指しているのか、案外知らないんですよね。今後、会社としてどんな未来を目指していますか?

海野:僕らがミッションとしているのは「ソフトウェア開発をよくすること」です。時代の流れに合った開発のあり方を常に模索し続けて、エンジニアがいつでも最高のパフォーマンスができるよう、自社のプロダクトを成長させていきます。

増井:これからエンジニアの働き方が変わっていったら、「Qiita」からスピンアウトした別のサービスが生まれたりする可能性もありますか? たとえば、ノマドワークに最適化したツールだとか。

海野:十分にあると思います。「Qiita」は、ユーザーのニーズありきで改善を続けています。「Qiita」で拾いきれないニーズが増えてきたら、それをフォローための新しいサービスを考えるのは、自然な流れかなと思っています。

増井:これからが楽しみですね。海野さん、田中さん、ありがとうございました。

(構成:西山武志)