脳内SEOの1位を狙え ーー エンジニア採用担当者に求められる素養とは?

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「エンジニアが足りない……」
「優秀なエンジニアを採用したい……」

多くの採用担当者が、こんな言葉を嘆いている。それもそのはず、2016年6月10日に経済産業省が発表した情報によると、エンジニアの獲得は今後ますます難しくなっていくという。現在、エンジニアの不足は約17万人にとどまっているが 、2020年には2倍強の約37万人になり、2030年にはさらにその2倍強の約79万人に増加する、というのだ。

多くの企業にとって、優秀なエンジニアを採用することは急務といえる。しかし、優秀なエンジニアを採用するためのベストプラクティスはブラックボックス化されており、エンジニアの採用は困難を極めている。

そんな状況を少しでも変えるべく、短期集中プログラミング教育スクールを運営するTECH::CAMP主催のイベント「Engineer Recruting – エンジニア採用の最前線」が9月17日に開かれた。

登壇したのは、株式会社モンスター・ラボの村上有基氏、株式会社MOLTSの寺倉そめひこ氏、株式会社アカツキの大日方誠氏、株式会社ユーザベースの大川知氏。各社が実践してきた、エンジニアの採用方法についてまとめた。

チュートリアルに徹底的に従う。大切なことはすべてWantedlyが教えてくれる

株式会社モンスター・ラボ 村上有基氏

株式会社モンスター・ラボ 村上有基氏

「テクノロジーで世界を変える」という思いのもと、グローバルソーシング事業・音楽事業など多岐にわたって事業を展開している株式会社モンスター・ラボ。同社は、エンジニア・クリエイターを中心に、社員のほとんどはWantely経由で採用したという。

利用企業数が1万5000社を超え、ベンチャー・スタートアップ界隈では当たり前のように使われているWantedly。各社、工夫を凝らしたキャッチコピーや写真を使って求人情報を掲載しているが、転職希望者の目に留まらないケースもしばしばある。

そんな中、衆議院議員秘書からモンスター・ラボにジョイン。ITや人事のバックグラウンドもなかった村上氏はどのようにして、Wantedly経由での採用を増やしたのだろうか。村上氏の口から出た言葉は、ものすごくシンプルなものだった。

「Wantedlyのサイトに書いてあるとおりにやる。これが一番大事なことです。Wantedlyにはチュートリアルというものがあって、ここに”応募数を集めるために何をすればいいのか”がすごく詳しく書かれている。最初は書いてあるとおりに募集要項を作ったり、内容の見直しなをしたりしていました」(村上氏)

Wantedlyのチュートリアル

Wantedlyのチュートリアル

具体的には、会社フィードを活用して会社の雰囲気を伝える、社員インタビューをして入社の具体的なイメージを醸成させるといったことを実施。「とにかく会社について知ってもらいたい」その一心でWantedlyを活用していったという。

Wantedlyを使うにあたって、いかに魅力的な求人情報を作り、社内の人を巻き込めるかが大事になってくるが、それだけで採用が終わるわけではない。応募してきた人を採用につなげるためには、どれだけ会社のファンにすることができるか。これが重要になってくる。

「応募していただいた方とは、基本的に”会う”スタンスをとっていました。プロフィール欄が薄くても、何かしら可能性がありそうな内容があればひとまず連絡してましたし、”まずは話を聞いてみたい”といったステータスも気にしていませんでしたね。採用することをゴールにせず、会社のファンを一人でも多く増やしたかったので、即レスを心がけ、来社していただいた人には基本、社内を案内していました」(村上氏)

ただし、優秀なエンジニアは数多の企業からアプローチがかかってしまうため、「このエンジニアを採用したい」と思った場合は、スカウトオプションを使って、アプローチしていったそうだ。Wantedlyにはいくつかのオプションが用意されているので、それらを活用するのも一つの手ということだ。

Wantedlyを上手く活用して、採用活動を行うと聞くと、小難しいことを考えてしまいがちだが、そうではない。当たり前のことを当たり前にやる。これがWantedlyの最も効果的な活用法なのかもしれない。

脳内SEOで1位を狙え!ターゲットにすべきは、社員の周りにいる人

株式会社MOLTS 寺倉そめひこ氏

株式会社MOLTS 寺倉そめひこ氏


ユニークな人材が数多く在籍している、上野のウェブ制作会社LIG。同社の人事部長兼メディア事業部長として、約9カ月間で50名程の採用実績を作ったのが寺倉そめひこ氏だ。2016年3月に立ち上げた、株式会社MOLTSでもすでに4名の採用が決まっているという。

自社の採用だけでなく、他社の採用コンサルティングとしても活動している、そめひこ氏が大事にしているのは「採用広報力(※)」。

(※)採用広報力・・・採用力を強化するために、自社情報を発信し、様々な採用手法を強化する広報活動のこと

「企業の採用コンサルティングをするにあたって、『採用広報力に力をいれていきましょう』と言っているのですが、多くは時間がない、記事が書けない、投資している場合ではないといった回答が返ってくる。それを聞くたび、すごくナンセンスだなと思うんです」(そめひこ氏)

そめひこ氏が企業のそういった考えをナンセンスと言い切れる理由は、自社の採用経験に裏付けされている。株式会社MOLTSのメンバーを採用するにあたって、実施したのはWantedlyの求人を一つ作成したのみ。それ以外は何もやっていないという。

「よくWantedlyには『◯◯な人、WANTED』という募集を目にすると思いますが、自分の場合は『編集者の方にメッセージがあります』というようにお手紙みたいな求人にしました。結果的に公開初日でWantedlyランキング1位になり、約2万PVを獲得。エントリー数は累計で70名を突破することができた」(そめひこ氏)

Wantedlyでの応募者数を獲得することに成功したが、実はMOLTSにはWantedly経由で入社した人はいない。リファラルでの採用のみになっているという。そめひこ氏曰く、この求人は応募者数を獲得するために出したものではなく、社員の周りにいる転職希望者をターゲットにし、脳内SEO(※)で1位を獲得するために出したとのこと。

(※)脳内SEO・・・何か課題が生まれた時 に、「パッ」と思いつく脳内検索エンジンのこと。

「転職したいなーと思っている人の頭の中に、自社のことを想起させることができたら勝ちなので、新規ユーザーではなく社員の周りにいるユーザーをきちんと見込み客にしていくことが大切。知り合いが多そうな人を写真で出すなど、拡散が狙えそうな記事を作っていくことで社員の周囲にいるユーザーに自社の情報を届けることができるようになります(そめひこ氏)

そうしたコンテンツを出し続けていくことで、脳内SEOで1位を獲得することができるようになっていくという。その結果、1つの記事から採用者が生まれることもあるそうだ。最後はそめひこ氏の口から、「1求人、1名の名もない会社でも採用できたのだから、他の企業にもできるはず。みなさん、採用広報力を持ちましょう!」とアツい言葉が投げかけられた。

人が集まる企業とは?リファラル採用って何をすればいい?

株式会社アカツキ 大日方誠氏

株式会社アカツキ 大日方誠氏


2016年3月に東証マザーズに上場、そして6月には株式会社そとあそびを子会社化した株式会社アカツキ。モバイルゲームだけでなくライブエクスペリエンスにまで事業の裾野を拡大している。同社の組織・人事グループのマネジャーを務める大日方誠氏の口からは「人が集まる企業の定義」について語られた。

ここ数年の間に、採用手法のひとつとして定着した「リファラルリクルーティング」。社員のつながりを使い、転職候補者にアプローチをかける手法だ。アカツキも中途入社の30%強がリファラルリクルーティングによるものだという。

もちろん、単純にアプローチをかけただけで採用できるほどリファラルリクルーティングは甘くない。いかに自社が魅力的であると伝え、入社したいと思わせるかが大切だ。大日方氏は次のように語る。

「企業の採用力は”採用活動力”と”企業価値”の掛け合わせだと思っています。企業価値はそう簡単に上げられるものではないですが、採用活動力はすぐにでも上げられることができる。実際、アカツキでは新規入社者へのリファラル採用の斡旋、ランチや飲み会の経費補助制度、インセンティブ制度(旅行のプレゼント、アカツキ限定のスニーカー)を含む社内広報をすることによって、リファラルリクルーティングに成功しています」(大日方氏)

働いている社員が幸せそう、そして自らが幸せに仕事ができている。アカツキでは、これこそが「人が集まる企業の必須条件」と考えているため、福利厚生の充実化を図るなどして、いま働いている社員たち周りの人にも自慢したくなる環境を築き上げていっている。

「僕が好きな言葉に、『先従隗始(先づ隗より始めよ)』というものがあって。意味は”大きなことをなすには小さいことから始めよ”といったものなんですけど、この言葉は、優秀な人材を集め、定着させていくための本質をついているなと思います。まずは社内にいる人を幸せにする。それによって人が集まるような企業になっていくんじゃないかな、と。」(大日方氏)

働く人が幸せだと思える環境を整えることで、リファラルリクルーティングで入社してきた人も幸せになる。そうして、またリファラルリクルーティングで新しい人が入ってくる。社内の人たちが友人を呼びたくなるような企業にする。これこそが、リファラルリクルーティングの好循環を生む条件といえるだろう。

エージェントを活用したエンジニア採用。気をつけるべきポイントは?

株式会社ユーザベース 大川知氏

株式会社ユーザベース 大川知氏


9月15日に日、東証マザーズへの上場が承認された株式会社ユーザベース。企業・業界分析ツール「SPEEDA」、ソーシャル経済ニュースアプリ「NewsPicks」の開発・運営を行う同社は、エンジニアの採用に強くこだわりを持っているという。一体、どこにこだわっているのか。そのポイントが採用担当の大川知氏から語られた。

応募、書類選考、一次面接、課題の提出……一般的なエンジニアの採用フローはこの通りだ。株式会社ユーザベースもそのフローに変わりはないが、「応募」、「課題」の部分にはこだわっている。

「エンジニアの採用をするにあたって、人材エージェントからの紹介も行っているのですが、紹介の精度を高めるために、とにかくエージェントと密にコミュニケーションをとっています。何より重要なのが、フィードバック。自社にマッチしていた点、マッチしなかった点をきちんと伝えること。マッチしなかった点は現場のエンジニアが書くのが理想ですね。これを継続的にやっていくことで、紹介の精度を高めることができます」(大川氏)

また、エンジニアの採用ではスキルを判断するために、課題の提出を設けることが一般的だが、ユーザベースではどのような課題を作っているのだろうか? 大川氏によると、良い課題は採用後に起こる「こんなはずではなかった」を最小限にでき、 面接では明らかにしにくい点を評価できるものという。

例えば、実際にソフトウェアを設計する力を問う課題や文章にまとめて相手に伝える能力を問う課題が役に立ったという。一方で、基礎的なアルゴリズムなどの知識を問う問題は役に立たなかったそうだ。

フィードバック、良い課題づくりを徹底した採用活動を行うことで見えてきたものがあるという。それは「必要な人は具体的にどういう人か明確にすることが採用で一番大切」というもの。

「欲しい人物像が明確になっていないと、短所の少ない人を採用しようとする。でも、それは組織を弱くしてしまうダメな採用方法で、短所の少ない人が活躍するわけではないことはきちんと認識しておいた方がいいと思います。自社に欲しい人は、どんな人か。その条件を明確化していくことがエンジニアの採用を成功させるポイントになると思います」(大川氏)