キュレーションメディアの著作権問題、どこから権利侵害? 弁護士に聞く

===お詫びとご報告===

本記事に関しましては、記事公開後に掲載を一時停止しておりました。

本日12月9日、HRナビを運営するリクルートホールディングスにて、一部サービスにおける著作権侵害及びその可能性が確認されたことから、該当コンテンツの非公開化を実施させていただきました。

ご迷惑をおかけしている中、当社として本記事を発信すべきか改めて検討した結果、読者の皆様に必要とされている情報を発信することの重要性を再認識し、再掲載を決定しております。

ご迷惑とご心配をおかけし、大変申し訳ございません。

今後も引き続きよろしくお願いいたします。

リクルートホールディングス 

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著作権を巡る議論が賑やかだ。少し前には連日のようにマスコミに報じられた五輪エンブレム問題があり、最近では大手企業が運営するキュレーションメディアの記事公開停止事件がネット発で大きな議論を巻き起こしている。

もちろん、著作権への意識が高まるのは望ましいことである。しかし、なかには誤解にもとづいて批判をしているケースも散見され、これはまた別の問題を生みかねない。

メンバーの弁護士全員が著作権の専門家という骨董通り法律事務所の弁護士・岡本健太郎さんは、「著作権侵害をしない・させないためには、情報の受け手のリテラシーを高めることも重要」と指摘する。そんな岡本さんに、著作権について「リライトはパクリになるか」「スクショによるシェアは違法か」といったホットな疑問をぶつけ、それぞれについての見解を示してもらった。

デジタル時代においては、メディア運営者だけでなく、一般ユーザーでも知らず知らずのうちにパクリや違法行為をしてしまうことが起こり得る。ぜひ、参考にしてほしい。

「無断転載禁止」に法的効力はない

――現在、ウェブメディアではパクリが横行していて、一次コンテンツの作り手が不利益を被ることが増えてきました。単刀直入にお聞きします。どうすればコンテンツのパクリを防ぐことができますか?

まず、「パクリ」「パクる」という言葉を明確にしましょう。昨今問題になっているような、ネット上のオリジナルコンテンツの盗作ということでいいですか?

――はい、そう理解しています。

インターネット上に限らず、公開されたコンテンツは、いつでも著作権者に無断で転載される可能性があります。この点の理解はいいですか?

――「引用」であれば、著作権法で認められている、ということですよね。

そうです。著作権法上、「引用」は適法な行為とされていて、著作権者の承諾なく行うことが可能です。ただ、「引用」の要件を満たさない転載は著作権(複製権等)侵害となり得ますので、この場合には、コンテンツの利用拒否や(損害があれば)損害賠償請求も可能でしょう。理論的には刑事罰の対象にもなります。

――では、パクリを防ぐために使われることがある「無断転載禁止」という文言には、法的な効力がない?

そうですね。このような一方的表示は、契約関係のない一般の引用者には法的には意味がないとされています。つまり、著作権者の一方的な意思表示では引用を禁止することはできず、コンテンツをネットに公開した時点で、引用される可能性はあるのです。

そもそも引用の条件は?

――ちなみに、「無断引用」って言っている人をたまに見かけますが、そもそも引用は無断で行われるものなので、間違いですよね。

それはそうですね。強いていえば、いわゆる「無断転載」は、1)「引用」の要件を満たした適法なものと、2)「引用」の要件を満たしていない違法なものとに分けられます。ネット上では、2)「引用」の要件を満たしていない違法なものも多い印象ですね。

――あらためて、引用の要件を教えてください。

著作権法32条1項は、“公表された著作物は引用して利用することができる。引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない”と規定しています。その他、著作権法48条1項1号では、著作物の出所の明示も必要とされています。

――よく言われる「引用の要件」というのは?

最高裁の判断も揺らぎつつあり、引用の要件は一義的に決まっていません。さまざまな要素の総合考慮ともなりますが、1)自分の著作物と他人の著作物が明瞭に区別されていること(明瞭区別性)と、2)自分の著作物が主であり、引用する他人の著作物が従であること(主従関係)が重視されてきました。その他に、3)引用するための相当の理由があること(必然性)や、4)出所の明示を要件とする見解もあります。

――ウェブメディアについて言えば、コンテンツを引用した部分はダブルクォーテーション(“”)でくくったり、ウェブサイトであればそれとわかるようにデザインしたりしつつ、ちゃんと出典元の名称、タイトル、リンク等を掲載し、自分のオリジナルコンテンツがメインであくまでも他人のコンテンツは紹介程度に留め、かつ紹介しなきゃいけないような理由がなければいけない、という理解で問題ないでしょうか。

ケースバイケースですが、ざっくりまとめると、そうですかね。しかし、そもそも「引用」とは、報道、批評、研究その他の目的で、自分の著作物に他人の著作物の一部を取り入れることですが、最近のウェブメディアには、単なるイメージ画像として他人の著作物を使用するなど、「引用」とは異なる場合も多い気がします。

――たしかに、そもそも報道や批評、研究といった目的とは思えない形式での無断転載が多いですよね。でも、「公正な慣行」とか「正当な範囲内」とか、ふわっとした言葉が多いのも、正しい引用になっていない原因の1つなのではないかと思うのですが……。

著作権法の解釈は、事例の積み重ねで出来ていますが、適法と違法の明確な線引きができない場合もあり、そこから先はマナーの問題とも言い得ます。「グレーゾーンだからやらない」「グレーゾーンだからやる」といった判断はそれぞれだとも思いますが、最近のキュレーションメディアの記事公開停止のように、行き過ぎた行為には社会的な歯止めがかかる場合もありますね。

「リライト」はどこまで許容されるのか

――なるほど……ではさっそく、いくつかの事例について見解を伺いたいのですが、ちょうどキュレーションメディアの話題になったので。「リライト」って、どこまでが著作権的に許容されるものなんですか?

これも、まず「リライト」の意味を明確にしましょう。

――あちこちから文章をコピペしてきて、ちょっと書き直しをして、別の文章に整形すること、という意味で使用しています。

元の記事や文章が著作物である場合には、それをコピーや書き直しすることは著作権(複製権、翻案権、同一性保持権等)侵害となり得ます。細かくなりますが、少し補足すると、複製権と翻案権のいずれの侵害になるか(また、そもそも侵害にならないか)は書き直しの程度にもよります。また、書き直し(改変や同一性保持権侵害の有無)については、厳格に判断する判例もありますね。

リライト後の記事がこれらの権利の侵害となる場合、その記事についての利用の差止請求や(損害がある場合には)損害賠償請求も可能ですし、先ほどと同様、理論的には刑事罰の対象にもなります。

ただ、先ほど「元の記事や文章が著作物である場合には」といいましたが、著作権法上、「保護されるもの」と「保護されないもの」があります。保護されるものは「著作物」であり、保護されないものには「アイデア」や「事実」などがあります。

――「アイデア」や「事実」は著作物ではない、ということですか?

そのとおりです。著作権法上、著作物とは「思想又は感情」を「創作的に」「表現したもの」であって、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」とされています。つまり、「表現したもの」ではないアイデアは著作物ではありません。また、事実それ自体は客観的な存在であって、著作物でないとされています。

例えば、料理のレシピ、すなわち料理の手順や材料は、アイデアに近く、「思想又は感情の創作的な表現」ではないなどとして、一般的には著作物ではないとされています。また、「洋梨は果物の一種です」といった内容は事実であって、著作物ではありません。このため、これと同じ表現を使用したとしても、著作権侵害にはなりません。

――レシピはちょっと受け入れ難い部分がありますが、たしかに「洋梨は果物の一種です」を他にどう書くかと言われたら、ちょっと思いつきませんね……。

そうですね。アイデアや事実に創作性を加えて、表現として外部に現われて、初めて著作物として著作権が発生するのです。アイデアや事実を著作物として保護しないのは、これらの独占を制限して広く使用を認めるといった配慮もあります。つまりは、アイデアや事実に留まるものであれば、それを転用したとしても、著作権侵害にはなりません。

――なるほど……。

ただ、「著作物」と「アイデア」や「事実」との線引きは必ずしも容易ではありませんので、コンテンツの利用者としては、よほどシンプルな文章でない限り、文章には著作権が認められるという前提で対応しておくのが無難とは思います。

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――私は過去に、とあるウェブメディアで東京都内のすべてのラブホテルの件数と部屋数をカウントして記事にしたことがあるのですが、それをただ事実として記載していたら、いくら無断転載をされてもパクリにはならない、ということですか?

そんなことしたんですか!? でも、事実の転用が著作権侵害にならない点はそうです。

――この場合、それを調べた人、書いた人の労力というのはどうなるんでしょう。一生懸命、制作した一次コンテンツを自由に持っていかれてしまうと、二次コンテンツを作る方が楽だし儲かるしで、結果的に一次コンテンツがなくなってしまうのでは……?

著作権法には、「額に汗理論」という考え方があり、額に汗をかいて、つまり苦労して作ったコンテンツでも、そこに創作性がなければ著作物として保護されないと考えられています。著作物性と労力の多寡とは原則無関係なのです。調べた結果をいかに表現するかがポイントで、そこに創作性が認められれば、その表現自体は著作物として保護されます。ですので、価値のある事実を見つけた場合に、著作権で保護したいのであれば、完全ではありませんが、それが著作物になるように創作的な表現を加えるのが対策の1つではないでしょうか。

――病気などの医療情報もそうですよね。信頼性の高い公的なサイトほど、事実ベースの記載が多く、そうすると無断転載し放題になってしまうのではないでしょうか。

各情報の選択、配列、体系的な構成等に創作性があれば、「編集著作物」や「データベース」として著作権法上保護される可能性はあります。また、これは著作権からは外れますが、創作性がなくても、多大な労力・時間・資金が投じられたデータは財産権等として保護される可能性があり、これを無断で利用した場合には不法行為(民法709条)になり得ます。

「著作権ロンダリング」でウェブメディアの責任は

――ここのところ、「著作権ロンダリング」という行為も批判されています。例えば、あるウェブメディアがマンガの1コマや、ある番組に出演中の芸能人の画像を記事に使用したいとして、そのまま自分のサーバーにアップ(ロード)したら、それは著作権侵害の可能性がある。だから、TwitterやInstagram、Pinterestなどのサービスから、一般ユーザーが狙い通りの画像をアップしているのを見つけてきて、それをサービスが公式に提供するAPIの仕様にもとづいて記事に埋め込む、というものです。

画像に著作物性がある想定と思われますが、ウェブメディアは、画像の著作権者に訴えられても、著作権侵害をしているのは画像をアップロードした一般ユーザーであって、ウェブメディアは公式APIを使用しているだけだから責任はないと主張する。この点を捉えて「著作権ロンダリング」と言うのですね。

――一般の人はともかく、ウェブメディアに関わる人であれば、著作権侵害が親告罪であること、つまり作者に告訴されない限りは罪に問われないと知っているはずです。それを逆手に取って、「わざわざ作者も一般の人のTwitterなんて探し出して訴えないだろう」と思っているフシもありますね。

でも、2014年の「ハイスコアガール」事件のように、著作物の利用が刑事事件に発展する場合もあります。また、今年(2016年9月)には、Twitterアカウントの開示を求める発信者情報開示請求事件もありました。この判例では、第三者の写真を無断利用等したアカウント情報の開示が認められています。ちなみに、この判例では、第三者の写真を含むツイート(投稿)をリツイートした場合、このリツイートはその写真に関する公衆送信権や複製権の侵害にはならないなどとしています。侵害行為を行ったのはもともと写真をアップロード等したユーザーであって、リツイートは、リンク先URLへのインラインリンクを設定する行為であること等が理由です。

――リツイートがOKとは……。まずは、一般の人も著作権への理解を深めないといけませんね。でも、これってメディア側には何も問題がない行為なのでしょうか。わかった上でやっているのであれば、よくない気がしてしまいますが。

まず、他人の著作物を無断でアップロード等した本人は、著作権侵害となります。それを利用するウェブメディアが著作権侵害となるか否かについてはケースバイケースでしょうが、その画像を公式のAPIを利用して埋め込んでいるのであれば、著作権侵害とならない場合もありそうです。ただ、違法コンテンツであることを知って行っているとすれば、違法行為の助長とは言えるかもしれません。先ほどグレーゾーンについて言及したように、明確に違法とは言えない行為でも、マナーの悪い行為には社会的な歯止めがかかる可能性はありますね。

――ウェブメディアでよくあるのが、合間に「イメージ画像」のように写真を挟む記事のスタイルです。(あるキュレーションメディアを岡本さんに見せながら)このように、出典元のリンクなどはある無断転載だとして、これは引用の要件を満たしますか?

先ほどお伝えしたように、「引用」の要件は一義的ではありません。「必然性」を要求する見解もそうでない見解もありますが、単なるイメージ画像としての利用は、記事と写真との関連性も高くなく、報道、批評、研究といった目的でもないため、「引用」には当たり難いように思われます。著作権者の許諾を取っていなければ、著作権侵害となり得ます。

――今思ったんですけど、許諾を取ればいいんですよね。

はい、許諾を取ればいいです。

――なんで取らないんだろう……。

そのための手間や費用もかかるからでしょうか。もともとの共有サイトでは、この写真は非営利であれれば改変や再配布が可能とされていますが、原作者のクレジット(氏名、作品タイトルなど)表示が必要です(CC BY-NC)。でも、このウェブメディアにはクレジット表示がありませんし、営利目的ですので、厳密にはCCライセンス※違反のようですね。

※CC(クリエイティブ・コモンズ)ライセンスとは
インターネット時代の新しい著作権のルール。作者がコンテンツを公開する際に「この条件のもとであれば自分のコンテンツを自由に使用してOK」と意思表示をする。CCライセンスを利用することで、作者は著作権を保持したままコンテンツを自由に流通させること、ユーザーはCCライセンスの条件の範囲で再配布やリミックスなどをすることができる。

――あ、CCライセンスの違反という観点もありそうですね。では、記事のテーマに合った写真だったらどうでしょうか。例えば、「横浜グルメ10選」といった記事で、横浜各所の写真が出典元リンク付きで無断転載されている。

仮想事例ですね。ケースバイケースの判断になりますが、記事のテーマに合っていたとしても、やはり写真をイメージ画像として利用するのであれば、出典元のリンク付きでも「引用」とは言い難そうですね。

――ずっと気になっていたことがあるのですが、画像の情報量というのは、著作権法上はどう定義されるのでしょうか。というのも、画像に含まれる情報を、もしテキストで表現しようとしたら膨大な量になる気がするんです。画像を使ってしまうと、主従が逆転しやすいのでは?

引用の要件の「主従関係」は分量だけではなく、引用される著作物の性質、引用の目的、態様等も踏まえて判断されます。分量的には引用される著作物の方が多くても、適法な引用とされる場合もあると思います。

若年世代のキャプチャ文化と著作権の今後

――実は、若年世代には、おもしろい記事をスクショ(スクリーンショット)で撮影してシェアする、という文化が一般的になっているようなのですが、把握されていますか?

いえ、(もはや若年世代ではないので)把握していませんでした。スクリーンショットしてSNS等にアップしてしまうんですね。

――おもしろいところだけ抜き出されて文脈がなくなってしまうのと、出典元などを明記してくれない場合がほとんどなので、ウェブメディア側の収益にはつながらず、どんなにバズっても逆に機会損失になってしまうのではないか、と危惧されています。

スクリーンショットした画像をSNSにアップロードした場合には、著作権(複製権、公衆送信権等)侵害となり得ます。問題はやはり、情報の受け手のリテラシーが低いことにありそうですね。

――しかし、自戒を込めて言いますが、どっちもどっちですよね。著作権ロンダリングなどをとっても、情報の送り手側のリテラシーは決して高くない。

そうですね。著作権法を文言どおり解釈すると、日常生活の多くが著作権侵害となってしまいます。会社内で書籍をコピー/PDF化して回覧することも、厳密には著作権侵害となり得ます。また、日ごろ作成する電子メールやプレゼン資料も著作物となり得、その一部を無断で利用する場合も、著作権侵害となってしまうのです。

現実の社会では、著作物の中にも、保護する必要性の高い著作物とそうではない著作物があり、また、行為の中にも、規制する必要性の高い行為とそうでない行為があります。著作権法上はその区別はありませんので、バランスを取りつつ著作権法を適用するのが重要だと思います。また、後追いの感はありますが、著作権法自体も時代とともに変化していきます。デジタルメディアの進展にあわせて権利制限規定が加えられていますし、日本版フェアユースともいうべき「柔軟な権利制限規定」の導入についても改めて議論されています。

キュレーションメディアやスクリーンショットの問題も、結局は「どのようなコンテンツ社会を受け入れ、また、望むのか」という問題と言えるかもしれません。先ほどお話したように、それぞれ著作権侵害が疑われる点はありますが、社会が受け入れ、望むようであれば容認され、また、逆に規制が強化されることもあるのではないでしょうか。

――そのためには、まずは著作権に関する正確な知識と理解が必要ですね。今回はそのきっかけを提供していただき、ありがとうございました。