「タクシーは店舗」「相乗りも必要」日本交通が考える、ITを使った“おもてなし”

トークセッション〜お店もタクシーも大切なことは『People First』〜ITと共に歩む、これからの「おもてなし」登壇者。左からジャーナリスト 林信行氏、リクルートライフスタイル執行役員 大宮英紀氏、日本交通株式会社 代表取締役会長 川鍋一朗氏

トークセッション〜お店もタクシーも大切なことは『People First』〜ITと共に歩む、これからの「おもてなし」登壇者。左からジャーナリスト 林信行氏、リクルートライフスタイル執行役員 大宮英紀氏、日本交通株式会社 代表取締役会長 川鍋一朗氏

会計をiPad上で行える『Airレジ』を提供するリクルートライフスタイルは、12月12日に「Airレジカンファレンス 2016」を東京・国際フォーラムで開催。ジャーナリスト 林信行氏、日本交通 代表取締役会長 川鍋一朗氏、リクルートライフスタイル 執行役員 大宮英紀氏を迎え「〜お店もタクシーも大切なことは『People First』〜ITと共に歩む、これからの『おもてなし』」と題するトークセッションを行った。

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1台1台が“移動する店舗”

「先ほど、『iPhoneの登場から10年』と林さんがお話になってましたが、日本でのタクシーの歴史は105年」と話しはじめた川鍋氏。「1台につき、乗務員が1人。当時から変わらないスタイルを取り続けているんですよ」と説明した。

タクシーと店舗の共通点を語る川鍋氏

タクシーと店舗の共通点を語る川鍋氏

さらに「それぞれの車でサービスし、お金をいただく。まさに1台1台が1つの店舗の役割を果たしているのです」と、タクシーもサービスを提供するという意味では店舗同様であることを強調した。

「変わらないようでいて、時代に合わせた変化もあるんですよ」と川鍋氏。ITを使った分野では『全国タクシー』アプリがそれだという。

『全国タクシー』アプリの概要

『全国タクシー』アプリの概要

「『全国タクシー』は、日本でもっとも広範囲に使えるタクシーの配車アプリ。業界のプラットフォームにもなりました。現在、日本のタクシーの1割、約2万台が対応しています」

このアプリは、People First(同イベント内では、“最優先すべきは人”という意味合いで使用)の理念を達成するのに大いに役立つという。

1つめは、顧客体験の向上。不慣れな場所であっても、アプリを立ち上げてタクシーを呼べるため、無駄に移動せずに済むうえ時間短縮にもつながり、「タクシーを拾えないのではないか」という不安も解消できる。

『全国タクシー』アプリのユーザーだという林氏は、「あるとき徳島県内ででタクシーを呼ぼうとアプリを起動したところ、サービスエリア外との表示。普通ならこれで終わりなんですが、なんと下の方に近くのタクシー会社の電話番号が表示されていてすぐに連絡ができるようになっているんですよね。おまけにGPSで位置情報を取得して付近の住所も表示。安心してタクシーを呼ぶことができました」とエピソードを披露した。

『全国タクシー』配車アプリに助けられたエピソードを語る林氏

『全国タクシー』配車アプリに助けられたエピソードを語る林氏

2つめは、乗務員にとってのもの。『全国タクシー』で配車要請があると、最も近い場所にいるタクシーを優先して向かわせるため、いわゆる“流し”をする必要がなくなり時間の効率利用が可能。またタクシー業界で問題になっている高い離職率問題も解決する。土地勘のない地方からのタクシー乗務員でも、アプリからの要請で乗客を迎えられること、ある特定の時間帯にどの場所からの呼び出しが多いかなどといった膨大なデータに基づき、あらかじめその場所付近に向かうよう指示を受けられることで、“稼げる”ようになったからだ。

“必要の高い人を最優先させる”という考えのもと、4年前からはさらに新しい取り組み「陣痛タクシー」を開始した。

日本交通の取り組み『陣痛タクシー』サービス。救急車要請件数の現象に貢献したことで、東京消防庁から表彰された実績がある

日本交通の取り組み『陣痛タクシー』サービス。救急車要請件数の減少に貢献したことで、東京消防庁から表彰された実績がある

これは、登録制の配車サービスで、出産を控えた妊婦が予定日の前後1カ月間、最優先してタクシーを使えるというもの。あるとき川鍋氏がコールセンターで、陣痛が起きた人へ、緊急に配車手配を行ったスタッフと会話したことがきっかけで生まれたサービスだ。

「年末や天気の悪い場合など、一般の人も妊婦さんもタクシーを捕まえるのは大変。切羽詰まっているため、当人は焦りますし、実はお乗せする乗務員も緊張してしまい、普段行き先を間違えないような病院でも遠回りしてしまうことも。でも、陣痛タクシーを設けたことにより、妊婦さんにとっては『必ず来てくれる』という安心感が、乗務員にとっては『これから乗せるのは陣痛中の妊婦さんだ』という心構えができ、お互い安心感が生まれているのです」

日本交通ではもう一歩踏み込み、陣痛タクシーの乗務員に助産師講習を受けさせているという。これにより、たとえ車内で出産が始まってしまったとしても、妊婦、乗務員双方が落ち着いて対応できるように。“移動する店舗”として最高の顧客体験を得てほしい――日本交通の想いがよく現れているサービスといえよう。

AirレジがiOSのみに対応する理由――“ヒト”を優先させたらそうなった

「変わらないようでいて、タクシー業界も変化している。POSシステムのAirレジも同じようでいて、関連サービスの増加という変化が見られていますよね」と林氏が話題を振った。

大宮氏

『Airレジ』だけで終わらないAirシステムについて説明する大宮氏

「POSは後ほど追加するさまざまなサービスの取っかかりに過ぎなかった」と答える大宮氏。「“Air”シリーズは操作に戸惑わないようUIを統一しています。オペレーションが統一されていることも大切。そのため、iOS版のみをリリースしているんです」。

林氏も「Apple製品のOSも優れているが、Airシリーズではボタンの色から配置まで優れたUIで統一されているから操作ミスが少ない印象。店員の体験が良いからこそ顧客体験も上がるという良い循環を生んでいるのではないでしょうか」と付け加えた。

途中、隣のスペースで実施されている「Airシリーズが体験できる、1日限定ストア」から、顧客に無駄な待ち時間を作らせない『AirWait』、1つの端末でクレジットカードでも電子マネーでも決済できる『AirPay』を使ったデモを中継。「端末が1つでいいということは、覚える操作も少なくて済むのでしょう? 乗務員には中高年が多いので、スマホさえ使えれば問題ない、という簡単な仕組みをタクシー向けにも作ってほしい。納品されたシステムが複数社からに及ぶため、覚えて使いこなせるようになるまでが大変なので」と川鍋氏が感想を述べた。

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大宮氏は「できるだけ端末は少ない方がいいし、Airシリーズが目指したのはコントロールタワー、ハブとなって発展していけるプロダクト。お店のあらゆる課題を解決したいと考えたときに、機能を追加するごとに新しい端末を購入し、それが負担になってしまっては使い続けられない。わかりやすい操作体系を目指していてもそれでは意味がなくなってしまいます。Airシリーズは使い続けることで今までになかったユーザー(店員)体験という価値を生み出すのですから」とプロダクトに込めた想いを解説した。

最後に林氏から「People Firstな“おもてなし”とこれからの展望について考えを教えてください」と言われ、川鍋氏は「顧客のことを考えれば、国土交通省にかけあって相乗りできる環境整備づくりなどやりたいことはたくさんある。現在できることとしては、全車に積んでいるタブレットを使った、チェックイン・チェックアウト、ネット決済、2020年に向けた多言語化に向けた開発を進めています」と答えていた。

大宮氏は、「AIは人の仕事を奪う、と言われている。でもそうではなく“教育不要”で直感的に操作できるように、UI設計だけでなくサジェストするところでそれを可能にしていくと思う。このような細やかな操作体系を積み重ねていき、われわれにできる店員にとっての最高の体験、そして最高の顧客体験へとつなげていきたい」と考えを述べた。

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顧客に最高の体験を得てもらうためにはまずスタッフにとって心地よい環境でなければならない――改めて「People=ヒト全体」のことを考えたモノづくりの重要性を、認識させられるセッションであった。