「◯◯用語で昔話」生みの親に聞く、ヒット企画につながる11の公式(前編)

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ビジネスパーソンにとって、アイデアの発想は欠かせないもの。しかし、画期的なアイデアをひらめくのは困難だと感じている人も多いでしょう。

そこで話をうかがったのが株式会社BASEの代表取締役・西島知宏さん。西島さんは電通に入社後、企画を考える部署へ配属され、数々の賞を獲得したのち独立。その後自ら立ち上げ、編集長を務めるWebメディア「街角クリエイティブ」は『広告用語で「鶴の恩返し」を読んでみた』などの記事がバズり、ローンチから1カ月で月間45万PVを獲得しました。電通時代から培ってきたアイデアの発想法をまとめた『(思考のスイッチ ~人生を切り替える11の公式~』はAmazonビジネス企画ランキングで1位を獲得しました。

多くの人の心を掴むアイデアは、いったいどこから生まれてくるのか。西島さんのこれまでの経歴や、仕事を続けるうえで編み出したアイデアの思考方法について紹介します。

電通時代に学んだ、「クオリティ」ふたつの基準

クリエイティブ業界って「適当な感じで仕事をしてる」というようなイメージをもたれがちです。しかし、電通は100%のクオリティを追求する人が多い会社。みんなとにかく丁寧に仕事し、決して手を抜かない。華やかそうに見えて結構泥臭いことも多いんですよ。

クリエイティブのクオリティにはふたつの基準があります。ひとつは企画の質。今まで誰もやったことのない企画です。もうひとつはプレゼンテーション時の作り込みです。プレゼンで使う資料ひとつとっても、見る人が見たら質の高さはすぐわかります。

この「2つの基準を満たすにはどうすればいいか」を電通ではたたき込まれました。僕自身は割と適当なところもあるんですけど、仕事に関してはストイックに進める。一般常識や丁寧にやること、仕事への熱意など……電通で学んだ「基本的なこと」が、今に繋がっていると実感しています。

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個人の信頼関係によって仕事が生まれると知った独立当初

電通時代に実績を残していたこともあって「すぐに仕事が来るだろう」と楽観的に考えていた独立前。でも独立直後の何カ月かは、あまり仕事が来ませんでした。

そんな苦しい時期になって、ようやく気づけたんです。クライアントが仕事を依頼してくれたのは会社の名前があったからで、自分個人にお願いされていたワケじゃない、と。

人付き合いだって、お互いを深く知るには時間が必要じゃないですか。どれだけ仲良くなってもビジネスという立場で考えると1、2回意気投合しただけじゃダメ。長期的に多くのプロジェクトに携わり成功体験を何度もクライアントと共有すること。会社ではなく個人に仕事を発注するほどの信頼を得ないといけないと感じています。

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アイデアのベースにあるのは「フレーム」と「モチーフ」

とはいえ、なんとか仕事をもらって会社を続けていくなかで、広告業界では「広告もコンテンツとして面白くなければ見てもらえない」という風潮が周知されはじめました。これからの時代に適応するためにも面白いコンテンツを研究・実験しなければならない。そう感じて「街角のクリエイティブ」というWebサイトを立ち上げたんです。

そのサイトで「広告用語で『鶴の恩返し』を読んでみた」という記事を掲載。ネット上で話題になり、出版社の人から書籍化の依頼が届いたことが、思考方法について考え直すきっかけとなりました。

そこで改めて気づいたのは、アイデアは「フレーム」と「モチーフ」で作られているということ。

「フレーム」はお題、「モチーフ」は何かに対しての係数みたいなもののこと。フレームとモチーフを掛け合わせることで、アイデアが生まれます。

たとえば「テレビショッピング」に「チンパンジー」を登場させるアイデアの場合、

  • フレーム……テレビショッピング
  • モチーフ……チンパンジー

となります。

テレビショッピングにいるであろうアナウンサーをチンパンジーに置き換えてみるのです。フレーム自体はありがちなものでも、持ってくるモチーフを変えると全体として面白くなるって話ですね。

既存の企画を分析して見つけた法則

元々ふわっとしたところから「これはこういうことでしょ」っていうのを言い当てるのが得意なんです。電通に入社して間もないときは企画の考え方がわからなかったんですよ。そこで「すごく評価されてる過去の広告などのクリエイティブを見まくって、そこから公式を見い出せばいいんじゃないか」と思いついたんですね。

そこから広告図書館に通い詰めて、ワーッと「公式」を洗い出して、そこに当時自分が抱えてた仕事を当てはめてやってみたらめちゃくちゃうまくいき始めて……っていうのが「公式」の始まりです。

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思考における11の公式とは

これが、その「公式」です。ひとつずつ簡単に説明します。

「常識→非常識」(公式1)
お題の常識について考え、その逆、つまり非常識にをくっつける方法。例:「大人のお菓子」や「立ち食いフレンチ」など。

「ライバル接着術」(公式2)
お題の真逆のモノ・コト・ヒトをくっつける方法。例:犬と猿が仲直りするCMなど。

「付属品接着術」(公式3)
お題に対して、相乗効果を生むような付属品をくっつける方法。例:消しゴム付き鉛筆や洗濯乾燥機など。

「限定術」(公式4)
お題を地域や利用対象者、シチュエーションなどで限定する方法。例:「ご当地キティ」や「朝限定缶コーヒー」など。

「順番入れ替え術」(公式5)
お題について「通常はこうだろう」と誰もが思う「ベタ」な過程や工程の順番を入れ替える方法。例:冒頭から犯人がわかっていてストーリーが進む刑事ドラマ「古畑任三郎」など。

「他者憑依術」(公式6)
他人の目線に立って、こう思うだろうということを予測して、物事の捉え方を変え、他者視点からアプローチしてアイデアを出す方法。例:部長の送別会で「定年退職したあとに部長と一緒にやりたいことをプレゼンする」など。

「鉄板モチーフ術」(公式7)
世の中の多くの人が興味を惹かれる、いわゆる“鉄板モチーフ”とお題を絡める方法。例:動物、赤ちゃん、女子高生、セクシー、恐怖、プロポーズ、結婚式など。

「ワールドレコード術」(公式8)
お題に「世界一●●な」という形容詞をつけて、極端に振り切りアピールする方法。例:「世界一大きい●●」など。

「ニュースコラボ術」(公式9)
流行しているキーワードとお題をコラボさせる方法。例:VR体験カフェ、人工知能を使った女子高生Bot など。

「著名フレーム術」(公式10)
誰もが知っている著名なフレームをお題に当てはめる方法。例:「JK用語で『鶴の恩返し』を読んでみた」など。

「4大欲求満たし術」(公式11)
お題を食欲、睡眠欲、性欲、承認欲と結びつける方法。例:食べられる本、読み始めて1分で寝られる本など。

僕が企画を考えるときは、この公式を活用しています。商品によって状況が違うので、アイデアを考える際はすべての公式に当てはめながら考えてみるのがいいかもしれません。

まとめ

思考の公式について紹介いただいた前編。しかし、これらの公式を使うにあたりっては注意点がある、と西島さん。どういったところに気をつけるべきか。後編にて解説いたします。