クリエイターは「怖がり過ぎ」ていないか? 突破クリエイティブアワード2016レポート

SNSなどで誰もが簡単に情報発信できる時代では、以前にも増して炎上が発生しやすくなっているのではないだろうか。たとえば、挑発的なコピーを入れたポスター広告を見た一生活者が批判的なコメントを添えてポスター画像をTwitterに投稿すると、またたく間にその声に対する同意や反論が駆け巡り、広告の取り下げや謝罪に追い込まれる企業もある。

しかし、クリエイターやクライアントが炎上を怖がり過ぎて、当たり障りのない表現しかできなくなってしまえば、ユーザーが「面白い」と感じるコンテンツが生まれにくくなる。これはとても残念なことだ。

そんな“怖がり過ぎ”な時代に立ち向かう授賞式『突破クリエイティブアワード』が2016年12月13日、恵比寿ガーデンプレイス内のザ・ガーデンルームで開催された。今年で2回目を迎える同アワードは、クリエイターたちが勇気を持って世に送り出し、見る人が思わず「えっ、その企画って、どうやって通したの!?」と唸るようなクリエイティブを表彰している。

審査基準はただ1点、“突破しているか”。具体的な突破のポイントとしては、以下の2点が問われる。

  • クライアントからの承認、上司の説得、炎上リスク、法律による規制など、さまざまな困難を予想した上で、それらを突破しているか
  • アイデアやクリエイティブが突き抜けているか

主催はユニークなコンテンツ制作のトップランナーとして知られる面白法人カヤックとバーグハンバーグバーグの2社。審査員は2社の代表である柳澤大輔氏(面白法人カヤック)、シモダテツヤ氏(株式会社バーグハンバーグバーグ)に加え、ヤフー株式会社副社長 執行役員 最高執行責任者の川邊健太郎氏、株式会社コルク代表取締役社長の佐渡島庸平氏、株式会社ワトソン・クリックのクリエイティブディレクターの山崎隆明氏の5名が名を連ねた。

世の中の空気を打ち破るような、冒険的で尖ったコンテンツはいかにして生まれたのか。炎上リスクを突破するためのヒントが詰まった授賞式の様子をレポートしよう。

突破の障壁は、ハリウッド女優の承認だった!?

まず、今年ノミネートされた作品の一例を紹介したい。

これまで国内・海外の有名女優が出演してきた女性用シャンプーの宣伝に、なんと二次元の人気キャラクターである“初音ミク”を起用したテレビCM。通例ではサラサラになった女優の髪を(実写で)映すことで商品の効果を伝えるが、今回はそれをCGで表現している。はたして商品の効果は伝えられるのか、CMとしてアリなのか、クライアントならずとも首をひねるかもしれない。

しかし、テレビCM放映初日には、“LUX CM”のキーワードがTwitterトレンド入りに。350媒体以上のメディアに取り上げられ、YouTubeの動画再生回数は1カ月で300万回を超えた。クライアントのユニリーバ・ジャパン担当者は、「予想を上回る販売の好調さで、うれしい悲鳴をあげています」とのコメントを残している。斬新なクリエイティブによって、固定概念を見事に突破した事例だと言えるだろう。

ちなみに、初めてメーカー公認の「初音ミクがツインテールをほどく」許可を得ている。さらに、ハリウッド女優のスカーレット・ヨハンソンに共演を承認してもらったエピソードからも、突破の難易度がかなり高かったことが伺える。

グランプリ受賞は約50万人を動かしたあの……

ここからは、全ノミネート12作品の中から選ばれた受賞作品を紹介していく。

審査員特別賞 僧侶手配サービス 『お坊さん便』

ウェブで“僧侶”を手配できるサービス『お坊さん便』を運営する株式会社みんれびの自主企画。「定額なら他のECサイトでも販売できるのでは」というアイデアから、Amazonマーケットプレイスに『お坊さん便』を出品し、販売を開始した。Amazonへの出品には「本当にそんなことができるのか? と社内がざわついた」(みんれび担当者)が、結果的に問い合わせ数と提携僧侶数がそれぞれ約1.5倍に増えたという。

受賞理由について、シモダ氏は「初めて(Amazonマーケットプレイスへの出品を)知ったときは、大丈夫なのかな……と心配になりました。かなり賛否が分かれるようなサービスですよね。とはいえ、明らかにこれまでの常識を突き破っている。だから、誰かが表彰しなきゃダメだと思って」と話す。たしかに、Amazonに仏事サービスが出品されることには違和感を覚える人もいるだろう。実際に批判の声はあったのだろうか。

「一部に批判がなかったわけではありませんが、葬儀を手配するサービスをしていると、お客さんがとても困っていることに気がつきます。そのお客さんからたくさんの喜びの声が届いたので、そこは(批判があっても)頑張らなければいけないな、と。決して面白半分でやったことではなく、サービスを広めて困っている人を減らしたいという想いでやっています」(同担当者)

銅賞 別府市震災復興 GoBeppu大分へ行こうキャンペーン!

2016年4月に発生した熊本地震の影響で、別府の旅館やホテルはGW直前に客室稼働率は80~90%もダウンした。早急に対策を立てなければならないが、高速道路は分断され、県外からの誘客は見込めない。そこで、ターゲットを別府の状況をよく知る大分県民に設定。GW中に地元紙に出稿したこの新聞広告が大きな話題になり、宿泊施設の稼働率は夏までに前年と同じ水準まで回復した。

佐渡島氏は受賞理由を次のように語る。「後から“これくらいはできた”というのは簡単なんですけど、これを震災後すぐ、3週間後にやるというのは、なかなかできることじゃないですよね。正直、クリエイティブ自体も魅力的ですが、広告を出す前はさまざまな非難が予想されたはずなので、そこをエイヤッという感じでやりきったのが何よりもすごいと思います」

現地で “史上最大の危機”と言われる中、この案に反対する方も少なくなかったそうだ。それでも実現した背景には、市長の決断があった。「隣の部屋には避難している方がいる状況で、被災者の方々に“元気な広告でないと人は動かない”と言われたんです。“元気がない場所に人が来るわけがない”という広告の原点に、市長や被災者の方々が立っていただいたことで、人に笑いや元気を届けるという広告の役割、大切さを改めて強く感じました」と話すのは、この企画を提案した株式会社西広の担当者だ。

実は、株式会社西広およびCS西広(西広の関連会社)は、昨年“おんせん県おおいた”のPRとして、「温泉でシンクロをする」という温泉入浴のタブーにチャレンジしたWeb動画『シンフロ』を公開している(突破クリエイティブアワード2015金賞受賞)。この実績などにより、クリエイターへの信頼があったこと、そして別府市は大分県の中でも面白い広告やCMを出すことに対して特に理解のある自治体だったことが、今回の企画でも突破の理由になったようだ。

銀賞 石田三成テレビCM

滋賀県は都道府県魅力度ランキングで43位と低迷しており、「琵琶湖のイメージしか持たれていない」というPR上の悩みがあった。そこで、滋賀県にゆかりのある戦国武将の石田三成を“特産品”としてアピールする新しい試みに着手。あえてローカルCMのフォーマットを採用することで、ウェブで拡散されることを狙った。実際の映像は全国各地のローカルCMから要素を抽出し、“見たことないけど見たことある”ような仕上がりになっている。

山崎氏はこのCMを“一種のタレント広告”と指摘する。「(会場でCMが放映されて)みなさんも笑っていらっしゃいましたけど、このCMは完全に石田三成をおちょくっていますよね(笑)。でも、そうすることで、武将・石田三成をみなさんに愛されるキャラクターに仕立てた。愚かさを愛してもらうアプローチ。とにかく自分の好きな世界を突き詰めた制作者の熱量が、観る側を圧倒した作品でした。」

折しも公開時期は、NHKの大河ドラマ「真田丸」ブームの直前。石田三成はその登場人物の1人でもある。しかし、もともと人気のある武将ではなかったこと、このプロモーションは拡散のための予算がなかったことから、話題にならない可能性もあった。万が一に備えて、石田三成を演じる俳優の山本耕史さんの人気にあやかろうと、滋賀県のイベントに山本さんが出演した際、この映像を観てもらったそうだ。

「“山本さん失笑”って感じで、ニュースにならないかな、と。狙い通り、ニュースでもそういった取り上げられ方をしたのでよかったです。とは言え、山本さんは、石田三成をバカにしてるんじゃないかって、ちょっと怒っていましたね(苦笑)。まあでも、最後には『三成が思い描いていたのは戦がない平和な世の中なので、それが叶ってあのCMになったんだと思う。三成本人もよろこんでいるんじゃないか』とありがたいコメントをいただきました」(電通関西支社担当者 藤井・小堀)

金賞 ひらかたパークロシアン観覧車

関西の老舗遊園地『ひらかたパーク』に来場者を誘致するきっかけを作りたいが、新アトラクションを建設する予算はない。そこで、定番アトラクションである観覧車のゴンドラのうち10台に1台を、外がまったく見えない“ハズレ”にして人を呼ぶ企画を打ち立てた。めでたく外れに当たった(?)人には、「見えていたはずの風景の写真集」と「スペシャル音声ガイダンス」が用意されるなど、その“からかいぶり”は徹底されている。

景色を楽しむための乗り物の窓を完全に覆う――お金を払う乗客からはブーイング覚悟のこの企画に、川邊氏はこうコメントした。「受賞理由は、とにかくよく思いついたなってこと、よく通したなってことに尽きます。“制約は新たにアイデアを生み出す”と言いますが、よくここまでの企画ができたな、と。本当に尊敬します」

このような飛び抜けたアイデアは、いかにして生み出されたのか。クリエイターを代表して登場したのは、博報堂関西支社担当者の田中さん(写真左)。今回の授賞式のために上京した際、現金3万円を落としたが、「これでプラスマイナスゼロになった」と笑顔を見せながら、アイデアに至るまでのプロセスを振り返ってくれた。

「アイデアは、千本ノックのように出し続けました。『会議はゲラゲラ笑いながらやる』『クライアントに企画を持っていくか持っていかないかは、アドレナリンが出るかどうかだけで決める』がうちのルール。もともとテレビCMを多く手がけていましたが、昨年くらいから時代のニーズに合わせてこのような企画をすることが多くなってきましたね」

グランプリ KING OF PRISM by PrettyRhythm(キンプリ)

グランプリに輝いたのは、女児向けテレビアニメ『プリティーリズム・レインボーライブ』に登場したボーイズユニット『Over The Rainbow』を中心に描いたスピンオフ劇場作品だ。登場人物のイケメンたちがしばしば全裸になる演出や、コスプレOKの応援上映などのプロモーションを踏まえると、本作のターゲットは女児ではなく大人である。現在もなお1年を超える異例のロングラン上映中で、動員数は48万人に上ったという。

グランプリの受賞理由について、柳澤氏は「非常に接戦だった」としながらも、「最後の決め手はあの(上演の模様を収録した)動画だったんですよね。この応援上映の様子は、そこに行っていない人が見ても非常におもしろいな、と。クリエイティブを伝えたり広げたりするには、やっぱり動画が有効だよねと再確認しました。満場一致です」と説明した。

エイベックス・ピクチャーズの制作プロデューサーは、この自社企画について「1700人が10回観たくなる作品を作ります」と社内で宣言したそうだ。その自信は、クリエイティブの実績とそれを制作してきたクリエイターへの信頼から来ている。

「この作品は演出が非常に飛び抜けているというか、今まで見たことがないとよく仰っていただきます(苦笑)。例えば、応援上映の“アフレコ”(の演出)は、キャラクターのセリフの声が抜けてテロップだけ表示されていて、お客さんが声を入れられるんです。これは菱田正和監督が考えたのですが、最初に見た私たちは実際どういう風になるのかよくわからなかったんです。でも、監督がしたり顔で“これは流行るよ”と言うので、ならお任せします、と」

トップランナーが解説する「突破」テクニック

表彰後は、審査員による対談が行われた。来場者に対してあらかじめ実施されたアンケートのテーマは、“突破したいけどできなくて悩んだこと”。多く寄せられた意見を分類してまとめた4つのポイントについて、経験豊富な先人たちが意見を交わした。

左からシモダ氏、柳澤氏、山崎氏、川邊氏、佐渡島氏

クライアントの言うことは「あまり聞きすぎない」

シモダ:「それ効果あるの?」と言われてしまったときは、やっぱりある程度、筋の通った説明や根拠が必要だと思います。加えて、それを通そうとする熱意ですね。

例えば、『初音ミク×LUX』なら「新商品だから固定概念に囚われない企画にする必要がある」というロジックがある。グランプリの『キンプリ』も、「1700人が10回観たくなる作品を作ります」と宣言するまでには、事前にファン向けに行われたイベントを調べ上げて、その様子を決裁者に見せて、いかにファンが意識高く集まっているかを説明している。

山崎:説明や根拠については、ちょっと極端に言えば、多少強引でも、後付けでいいんじゃないかと僕は思っています。アウトプット至上主義というか、結局、説得力というのは、成功事例を作ることで増すんですよね。だから、まず具体的なアウトプットで成功しなければいけない。上司なんて、ヒットした瞬間に「これは絶対ヒットすると思っていた」なんて言い出すもんなんです(笑)。だから、とにかくまず、まぐれでもなんでもヒットさせるのが重要で。

その意味では、時にクライアントの言うことをあまり聞きすぎない、ということも大事だったりします。広告はどんなにクライアントの言いたいことを言っても、世の中で話題にならなければ失敗なんです。色々モメたとしても、結果広告が世の中にウケれば、クライアントのためになるので。

シモダ:たしかに、バーグハンバーグバーグにも“威嚇案”という文化がありますね。先に絶対に無理そうな、尖り過ぎの提案をする。そうすると、次に出す、本当にやりたい尖った提案が通りやすいんです。ただ、威嚇案が予想外に通ってしまったときが大変で、「マジかよ」と頭を抱えることもあります(苦笑)。

佐渡島:マンガを作る時は先に、だいたい3話ぐらいまで作っちゃうんですよね。企画段階で判断するということはしません。作ってみて面白ければやるし、面白くなければやらない。友人ですごいなと思う広告クリエイターは、プレゼンの時点でかなり作り込んでいるものを見せちゃって、提案を通りやすくしているという印象がありますね。

川邊:上司やクライアントも分かれますよね。「俺が気に入るか」という自分主体でジャッジしている人か、「ターゲットが気に入るか」で冷静にジャッジする人か。前者の場合は、残念ながら、その人に向けた個別の対策をある程度するしかありません。後者の場合は口説き文句があって、「あなたにはわからないかもしれないけど、ターゲットには響くのです」と自信を持って言う。これはかなり効果があります。

突破クリエイティブは、低予算ほど生まれやすい

シモダ:「アイデアを全然理解してもらえない」という声も多かったですね。

山崎:クライアントに関して言うと、CMでは理解できないというよりも、前例がないとか会社のトーンに合わないと言われて却下される場合が多い。要するに、そこまでする勇気がない、という。その場合は、安全パイのタイプを含めて複数案制作するというアプローチをとったりもします。

また、上司などに「企画が面白いのに理解されない」という場合は、自分の経験上、「そもそもその企画がそんなに面白くない」ということもあるのかなと。

柳澤:お金がたくさんあるところって、わざわざチャレンジをして失敗したくないから、あまり尖ったことをやりたがらない印象はあります。だから、突破クリエイティブは低予算のときほど生まれやすい。

あと、チャレンジしたい気持ちは応援しますが、理解してもらえないときに黙ってやってしまうのは止めた方がいいですね。どんなに成功しても後で必ず怒られるので、そこはしっかり突破しましょう。

一番ツラいのは「批判されること」ではなく「無視されること」

シモダ:「クレームが来たらどうするの」と言われることは、最近すごく多いと思うんです。昨年の突破クリエイティブアワードでも言われていたことですが、そういうときはクライアントと“共犯関係”を作ることが、物事を進める上で大事です。

佐渡島:僕の場合は広告じゃないので、実はクレームはあまり気にしてないんです。クレームがあるぐらいがむしろいい。

とはいえ、不用意に人を傷つけることは避けるべきです。過去に編集者として担当していたマンガ『ドラゴン桜』で、当初は“東大は誰でも入れる”だったコピーを“東大は簡単だ”に変えたことがあります。“誰でも入れる”って言葉は、不用意に傷つける対象がいるかも、と思って。

川邊:本質は“悪名は無名に勝る”。この世の中で一番辛いのは、批判されることじゃなくて、無視されることです。クライアントが「こうなったらどうする」と聞いてくるのは、実は知的な格闘なんですよね。クライアントが心配することを一つひとつ解消していく。万が一、それでも何か起こるかもしれないけれど、悪名は無名に勝る。それだけです。

シモダ:たまに重箱の隅を突くように炎上リスクを挙げる人がいますが、そういう人にはどう対処したらいいですか?

川邊:組織の中では、そういう人はそういう役割をしてくれていると考えます。だから、それ以上その人を説得しようとしても意味がない。そうじゃなくて、「リスクはわかったけど、これでやろうよ」と言える人、つまり決裁者に潤んだ瞳で「お願いします」って言う(笑)。説得する人を変えるといいのではないでしょうか。

柳澤:そういう人って、「クレームが来るぞ!」と言いたいだけのことがあるので、先出しして、「こういうクレームが来る可能性があります」と言っておきます。その上で「他に何か予想できますか?」と聞いてあげると、相手のプライドも保たれて、さらに協力もしてくれるので、この方法はいいですよ。

誰かと一緒にいると、アイデアが出やすい

シモダ:最後。尖った企画が思いつかないという人に、何かアドバイスをお願いします。

佐渡島:僕、メモをしないんです。メモをしておいて見直すと、くだらない企画をまた考え始めちゃうから。一方、記憶できるということは、それなりに頭の中に引っかかる何かがあるからで。自分のアイデアでも忘れてしまいがちだからこそ、あえてメモをしないで思考し続けるのはおすすめです。

川邊:例えば、全員が少しお酒を飲んでからブレストするとか(笑)。環境設定を変更すると言いますか……。あと、僕の場合は会話しながらの方が、アイデアは思い浮かびます。

山崎:佐渡島さんと同じで、書き出すとかはあまりしませんね。何かを書くだけでアイデアを考えている気になってしまうので。アイデアの形に囚われず、ひたすらアイデアのとっかかりを探すのが基本だと思います。とにかくまずぼやっと考えて、ひたすら考え続けて、とっかかりを思いつくのを待つ感じです。

柳澤:僕自身は、簡単に説明できるもの以外はやりたくないと思っています。パッと伝わるもの以外は弾いてしまいますね。ここ最近、自分の中で変化したのは、細かいアイデアには興味がなくて、ゴール設定を最初からデカくするようになったこと。ゴールがデカいと、結果として尖れることが多いです。

シモダ:僕も川邊さんみたいに、誰かと一緒にいるとアイデアが出やすいです。周りに面白い人を置いておけば、その人が笑うか笑わないかでジャッジできる。自然と「笑わせよう」「驚かせよう」という気持ちが働くので。あとは、面白くなくてもゲラの(よく笑う)人を置いておくのもいいと思います。笑ってくれると、自然と口数が増えるから。

周りに置くのを自分が緊張する人にするか、リラックスする人にするか。作るものに対して変えていくイメージです。

「一番苦しい時代」でも、突破クリエイティブを生み出すために

シモダ氏が昨年に続いて繰り返し述べたのは、「こういう賞がある、あれなら取れるかもしれない。だから尖ろうよ、攻めようよ。そういう言い訳になる賞になってくれれば」だった。トップランナーたちが危惧するのは、やはりクリエイティブを取り巻く現在の雰囲気だ。約30年、この業界で先端を走り続ける山崎氏は、「今が一番苦しい時代」という。

「炎上リスクもそうですが、例えばコンプライアンス。それはつまり、表現にリミッターがかかっているような状態なんです。だからこそ、それを上手に突破したときはどんどんほめる。そうやって生み出されたクリエイティブは、いつの時代も輝きを失わないものになるでしょう。これからも、この賞がもっと盛り上がっていくことを期待しています」(山崎氏)

広告は決して邪魔なだけのものではなく、面白いもの、必要なもの。もう一度それを思い出させてくれるのが、この突破クリエイティブアワードなのではないだろうか。「怖がり過ぎ」の時代でも、長く記憶に残り続けるようなコンテンツが新しく生まれるように、今年も数多くの“突破”が達成されることを期待したい。

(朽木誠一郎/ノオト)