人を納得させるアイデアにするためにはどうすればいいの?街角クリエイティブ編集長・西島知宏の思考術(後編)

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前編では、株式会社BASEの代表取締役・西島さんの経歴や、アイデアの思考方法について説明しました。後半では企画を作るときの注意点から、アイデアを生み出すときの心がけまで西島さんの考えを追います。

「◯◯用語で昔話」生みの親に聞く、ヒット企画につながる11の公式(前編)
ビジネスパーソンにとって、アイデアの発想は欠かせないもの。しかし、画期的なアイデアをひらめくのは...

思考11の公式おさらい

前編で紹介した西島さんがアイデアを考える際に使用している11の公式をおさらいします。

「常識→非常識」(公式1)
お題の常識について考え、その逆、つまり非常識にをくっつける方法。例:「大人のお菓子」や「立ち食いフレンチ」など。「ライバル接着術」(公式2)
お題の真逆のモノ・コト・ヒトをくっつける方法。例:犬と猿が仲直りするCMなど。「付属品接着術」(公式3)
お題に対して、相乗効果を生むような付属品をくっつける方法。例:消しゴム付き鉛筆や洗濯乾燥機など。「限定術」(公式4)
お題を地域や利用対象者、シチュエーションなどで限定する方法。例:「ご当地キティ」や「朝限定缶コーヒー」など。「順番入れ替え術」(公式5)
お題について「通常はこうだろう」と誰もが思う「ベタ」な過程や工程の順番を入れ替える方法。例:冒頭から犯人がわかっていてストーリーが進む刑事ドラマ「古畑任三郎」など。

「他者憑依術」(公式6)
他人の目線に立って、こう思うだろうということを予測して、物事の捉え方を変え、他者視点からアプローチしてアイデアを出す方法。例:部長の送別会で「定年退職したあとに部長と一緒にやりたいことをプレゼンする」など。

「鉄板モチーフ術」(公式7)
世の中の多くの人が興味を惹かれる、いわゆる“鉄板モチーフ”とお題を絡める方法。例:動物、赤ちゃん、女子高生、セクシー、恐怖、プロポーズ、結婚式など。

「ワールドレコード術」(公式8)
お題に「世界一●●な」という形容詞をつけて、極端に振り切りアピールする方法。例:「世界一大きい●●」など。

「ニュースコラボ術」(公式9)
流行しているキーワードとお題をコラボさせる方法。例:VR体験カフェ、人工知能を使った女子高生Bot など。

「著名フレーム術」(公式10)
誰もが知っている著名なフレームをお題に当てはめる方法。例:「JK用語で『鶴の恩返し』を読んでみた」など。

「4大欲求満たし術」(公式11)
お題を食欲、睡眠欲、性欲、承認欲と結びつける方法。例:食べられる本、読み始めて1分で寝られる本など。

初心者は「それっぽい企画」に注意

公式を使うにあたって、初心者が陥りやすいのはそれっぽい企画で満足してしまうこと。

前半で説明した、流行しているキーワードとお題をコラボさせる「ニュースコラボ術」を例にとると、旬の芸人のギャグを使って商品をアピールするというのがあります。ただ、コラボするだけではオリジナルより確実に面白くならない

必要なのは「妥当性」というか、見ている人がそのギャグを使う納得感を感じられることです。納得感が感じられれば「うまいことを言った」と賞賛を贈ってくれます。

「それっぽい」だけのものにならないためには、目的を見失わないことが大切です。アイデアを考えるときに何をアピールしたいのか、誰にアピールしたいのか、などの根本的なものを見失わないようにすれば、それっぽい企画に満足することもないのかなと思います。

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第三者目線での検証を欠かさない

面白い企画を生むためには、「この商品を伝えるのに適切な対象だろうか?」という第三者的検証が不可欠。検証は、ひらいめいたあとに一度寝かせ、冷静になって再考することが大事です。

僕も1回考えた企画を翌日や翌々日まで寝かすようにしています。そうすると第三者視点でアイデアを考えなおせる。「コラボしてるけど、これは商品とあんまり関係ないこと言ってるな」といったことに気づけるんですよ。

もしくは、実際に第三者に聞いてみるのも有効です。ただ、同業でない人に聞いても、消費者の立場の意見でしかないからあまりうまくいきません。できれば同じような仕事をしている優秀な人からのほうが、役立つアドバイスをもらえると思います。

広告の目的は、クライアント目線での問題解決

アイデアの思考といっても、広告は少し毛色が違うように思います。

広告には必ず出稿元のクライアントがいます。つまり広告には「表現として面白い」と「ものを売らないといけない」という2つのミッションがある。ですから「面白い」に全振りして広告の商品の魅力が伝わらないようではダメだし、商品PRの比重を大きくしすぎて面白さが全くなくなり、消費者に刺さるものがなくなるのもダメなんですよね。

自分も昔そうだったんですけれど「賞を取りたい」とか「バズりたい」とか考えると広告表現が自己満足に走ってしまいがちです。しかし、自己満足だとクライアントの信用が得られないのですよね。

広告はクリエイティブとしての表現が面白いということ以上に、物を売ることが目的です。クライアント目線に立って商品や広告の課題を発見し、クリエイティブを通して解決する。そのプロセスが信用につながると考えています。

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意識するのはプラスワンの提案

僕の会社の社員と共有しているマインドがあります。それは「プラスワンで言われたこと以上のことを付け足して返す」ということ。言われたことだけやってるだけじゃ印象にも残りません。

たとえば「コンテや企画書だけ持ってきてください」と言われてるプレゼンにも、プロダクトサンプルや映像を作って持って行くようにしています。きちんと頭を使って、ホスピタリティを感じてもらえることをおこなう。それがクライアントとの信頼につながるのかなとも思っています。

自分らしい面白いスタイルを確立させる

企画を考えるうえで、面白さを追求する人は多いと思います。しかし、面白いと感じるポイントは人によって違います。芸能と一緒です。同じ漫才を観て腹を抱えて笑ってる人がいる一方で、全然面白くないっていう人もいる。

万人に面白いといわせるのは多分無理です。何が正解かはわかりません。インターネットの世界には体で笑わせる人も、ロジックで笑わせる人もいる。

どっちがいいとかは別にないので、自分が一番得意なスタイルを確立して、面白いと思ってもらえる人が多いところで頑張ればいいっていうだけだと思います。自分が一番得意な分野、得意なスタイルを早く見つけて、それで一番になることを目指したほうがいいと思いますね。

ものづくりのために大切なのは温故知新

アイデアを作る人に伝えたいのは、昔のものをいっぱい勉強したほうがいいということ。「新しい」という価値観は、時代に対する相対的なものです。絶対的に新しいっていうものはありません。今まで世に出た作品や事例を全部を知ることで、自分の考えたアイデアが「新しい」と判断できるようになります。過去のものとの関係性なしに、絶対的に「新しい」なんて言えないと思うんです。

そうすると今までのものをどれだけ知ってるかってことが結構重要になります。「昔のCMなんて今のデジタル時代に必要ないっしょ」みたいに思う人がいるかもしれないけど、結局そこを知ってないと、浅いものしかできないのではないでしょうか。

たとえばヒットした映画「君の名は。」の脳が入れ替わるって設定は、今まで何回も繰り返されてたパターンですよね。それを新しいと思って出しちゃうと多分コケてしまう。先人たちのやってきたネタをどう自分らしく調理するか、という観点が抜けてしまうからです。

流れを知ってて出すのと、知らないで出すのとでは全然違います。僕も新入社員だったときには、あらゆる資料を漁り、それまで世に出たあらゆるコピーや広告などを詰め込んでいました。

優秀と言われる人の企画書もチェックしましたね。そこから「こうやってプレゼン資料作るんだ」と学びを得るようにしていたんです。

先人に学ぶという方法は、他の分野でも応用できると考えています。企画の仕事でもいいし、商品開発でもいい。編集やものづくりにも役立つのではないでしょうか。

世界中にどういうものがあるかを知り、今自分が作ろうとしてるものに落とし込む。それが良いクリエイティブを作るためのコツなんじゃないかと思っています。