戦略的キャリア人生のススメ〜私が新卒入社前から2度の転職を計画したワケ

一昔前に比べると転職のハードルが下がりつつある昨今。くわえてフリーランス、副業、リモートワークなど「働き方の選択肢」が増え始めています。新卒採用・終身雇用が一般的だった時代と比べ、個人の実力・強みが求められるようになってきているといえるでしょう。

どうすれば、いつの時代でも求められる人材になれるのか。独自のキャリアを積んでいる方々に、時代を生き延びていくための「戦略」をうかがいます。

京都を活動の拠点にしながら、東京へ月に一度ほど行き、企画やマーケティングのフリーランスをしている小嶌(こじま)久美子です。

東京大学工学部、東京大学大学院工学系研究科を卒業し、株式会社インテリジェンスで人材紹介の営業、その後に外資系リサーチマーケティング会社勤務、株式会社リクルートマーケティングパートナーズの事業戦略や営業兼広告企画を経て、2015年1月末で会社を辞め、いまに至ります。

はじめての就職から2回の転職まで、すべては大学院卒業時の戦略に基づいたもの。戦略に沿ってキャリアを積んだ結果、当初の狙いどおり独立して仕事ができるようになりました。

その戦略を「スキルを得るパート」と「選択肢を拡げるパート」の2回に分けてお話したいと思います。就活前の大学生や就活に失敗したと思っている大学生、もしくは入社する会社を間違えた、転職を考えている……など何かしらキャリアの悩みを持っている社会人の方の参考になれば幸いです。

戦略1:その道のプロのアドバイスは鵜呑みにする

理系卒で帰国子女、英語力に自信あり。しかもリーマンショック前で売り手市場だった就活時期。しかし、あらゆる手を尽くしても就活がうまくいきませんでした。

気の進まない会社の内定を保持したまま、季節は冬を通り過ぎて春先に。大学の先生から「納得いかないのだったら、研究室の広報スタッフしながらもう1年就職活動してみない?」と提案をいただいたとき、ありがたいと思った反面「自分は何がしたかったんだっけ?」と空虚感が襲ってきて目が醒めました。

何がしたいんだろう、と考えたときに思い出したのは、多くの面接官から「君、自分で起業してみれば?」とよく言われていたこと。大手・ベンチャー・中小企業関わらず、です。ある社長からは「君を雇用しているイメージがない、コンサルやれば」と言われたほど。

当時は起業願望が全くなかったので、意表を突かれてきょとんとするばかりでした。それはよくも悪くも「生意気」「雇用しても言うことを聞かなそう」など、いろんな意味を含むのだと思います。

しかし社会人の先輩、しかも幾多の面接をしてきた人事、キャリアのプロである面接官の言葉です。多くの人々のキャリアを見てきた方が言うのなら、自分は会社員よりも起業向きなのではないか……となんとなく思い始めるように。この時の面接官、社会人の先輩のアドバイスが心に引っかかっていたからこそ、「就活がダメでも人生終わりじゃないんだ」「起業すればいいんだ」と思えるようになりました。

戦略2:将来に必要なスキルを明らかにする

「将来起業するにはどういうスキルが必要だろう?」と当時の私が考えたのが、営業力とマーケティング(データ収集分析力)を身につけるために人生で最低でも2回転職するということ。当時の私は、スキルチェンジをするには転職しかないと思っていました。

営業力は早急に身につける必要がありました。入社したい会社の内定がとれなかったのは、自分を売り込む営業力が足りなかったから。それに将来起業するときも、自分のサービスに魅力を感じて人にお金を出してもらうには営業力が欠かせないと感じていたのです。

あわせて、インターネットの急速な普及を体感したこともあって、今後は一層たくさんの情報があふれていくから、事業の見通しや戦略を立てるためのマーケティングスキルを身につけていかなければという意識がありました。

こうして、営業力を身につけるために営業に新卒就職し、3年以内に転職して第二新卒採用で未経験のマーケティングに転向、その後に独立する……というプランができました。

組み立てたキャリアプランを元に、1社目は株式会社インテリジェンスに決定。営業職が多く法人営業をさせてくれそうな会社、というのが第一の理由です。

他にもいくつか理由がありました。

  • 有形商材ではなく無形商材の営業ができるから。無形商材で将来起業する可能性が高そうなので、経験が役に立つだろうと考えた
  • 2回以上転職するつもりだったので、人材業界で転職情報を把握できるから
  • 社員の人数に比べて新卒同期の人数がとても多く、鍛えられそう

ここまで考えて入社すると、最初は気乗りのしなかった内定も、心を決めて腹落ちした状態で仕事に臨むことができました。

戦略3:とりあえずやってみる。やってみたら細かなノウハウや原理がわかる

インテリジェンス入社後には希望通り、人材紹介の法人営業に配属されました。実際の業務では言葉遣いや仕事そのものだけなく、営業の細かなノウハウやコツを短期間で習得できるよう、先輩や同期、クライアントの反応も観察していました。

「とりあえずお色気作戦」ではないですが、営業に女性らしい柔らかさを加えるためにスカートしか履かなくなりました。パンツよりもスカート姿のほうが、クライアントも話しやすく感じてくれていそうだったからです。

しばらくすると、相性の良いクライアントとそうでもないクライアントがいることも意識するようになりました。外資系企業の拠点長や人事部長をされているようなおじ様方には、本当によく可愛がっていただきました(念を押しますが、お色気営業はしていませんよ)。意思決定がはっきりしている外資系やベンチャーの方ともウマが合うことが多かったように思います。

他方で、中小企業の人事担当者やご年配の女性とは話が合わないことが多いため、意識して茶飲み話を用意していくなど、クライアントの傾向を把握し対策しておくことも学びました。

学んだのはノウハウだけではありません。かわいくて人当たりのよい同期がぐんぐん成績を伸ばしていくのを見て、理論で説得するだけでなく、人情やホスピタリティもビジネスには大事なことだと実感しました。恩を売ったり売られたりも数字の裏に隠れていて、それは不正とかではなく、温かな気持ちの交換でもあるのです。

営業の仕事を通じて「ひとの感情も考えるべき」というアンテナが立ったように思います。インテリジェンスでの2年間は、営業の仕事を実際に経験することで色んなノウハウや原理を教えていただいた貴重な時間でした。

私はたまたま自分が希望した仕事でスキルを重ねました。しかし会社にいると、いまいち気が進まない仕事をふられる場合もあるでしょう。そんなときでも、心を決めてとりあえずやってみることをお勧めします。

会社員は道徳に反したことや大きな失敗をしなければ解雇されることはありません。未経験の仕事でも、お給料を貰いながら挑戦するチャンスがあるのは会社員の特権。やってみる機会がもらえるのなら、心を据えてやってみる。そうしたら、沢山の発見があり、ノウハウも得られ、将来の仕事の創意工夫にもつながると思います。

戦略4:自分の強みを活かした仕事を自分でつくる

入社して1年半経った頃、2社目への転職を見据えるようになりました。2009年当時は前年のリーマンショックの影響を受け、中途採用ニーズが激減。採用の厳しさを身に沁みて実感していたため、長期戦を覚悟しつつ自分の市場価値を上げることを意識し始めました。

そして”帰国子女”という自分の強みを活かした仕事の実績を少しでも残そうと、英語力を活かした仕事ができないかと考えます。

最初はテレアポの新規開拓営業から布石を打ちました。新規開拓先リストの中から、外資系企業を意識して抽出。重点的に外資系企業に電話をかけてアポイントをお願いし続けました。時には、英語でしか用意していない採用募集要項を日本語訳し、クライアントに確認をとって取引を開始したり、海外にいる人事担当者に英語で連絡をとってニーズを聞き出したりするなど、徐々に外資系採用案件を獲得。

くわえて転職志望者側のサポートにも手をのばし、英語レジュメの添削や、希望によっては電話や対面で1時間ほどの英語面接のリハーサルや対策を相談する時間を設けました。

いつのまにか、新規お取引先の外資系企業の採用サポートで営業目標数字を大きく上回る実績を積み重ねていくことになりました。中途採用ニーズの冷え込みが激しい中で、です。

その流れで転職紹介事業部全体の英語担当を申し出ることに。転職紹介の事業部では特定の英語担当者をおいておらず、英語しか通じないところの取引開拓はほとんどしていませんでした。

英語での仕事実績を積み重ねた結果、外資系企業への転職の際、英語力を懸念されることはないくらいに英語での仕事の実績を語れました。

以上がスキルを得るための戦略、前半戦です。次回はスキルを持って、フリーランスになる前にどのように世の中を泳いでいったか、の「選択肢を拡げる」ための戦略、後半戦をお話します。