Twitterのフォロワー13万人超! “役に立たない英文”はどのように生まれるのか?

日常生活で役立つ例文や単語を投稿する、英語学習お役立ちTwitterアカウント。『ゴガクル英語』や『TOEIC』、『楽しい会話』など、英語力に磨きをかけたい人なら、一度はタイムラインで目にしたことがあるのではないだろうか?

こうしたアカウントが大多数を占めるなか、ひときわ異彩を放っているのが『出ない順TOEIC英単語』だ。

一般的に英語の例文や単語は、英検やTOEICの試験に出やすそうなものが投稿されるなか、同アカウントは真逆をいく。英検やTOEICに“出ない順”と銘打った例文を投稿しているのだ。

実際にアカウントを覗いてみると、試験に出ないどころか、日常生活でも絶対に使わないような例文がずらりと並ぶ。

まったくと言っていいほど英語学習には役立たないアカウントだが、この独特のおもしろさがユーザーの心をつかんで離さない。2011年のアカウント開設から約6年で、現在のフォロワー数は13万人を突破した(2017年4月現在)。2012年に初めて書籍化された同シリーズは、4月に発売予定の最新刊を加えて計7冊。2016年には、「ボイメンの試験に出ない英単語」というバラエティ番組で、「役に立たない英文」が映像化されている。

一体、このアカウントはどんな経緯で生まれたのか。日々のネタはどのように考えているのか。今回、中の人である中山さんに話を伺った。

きっかけは「何かおもしろい投稿がしたい」という思い

――いつも楽しく投稿を拝見しております! 中山さんの素性は謎に包まれていますが、普段はどのようなお仕事をされているんですか?

本業は映像制作で、このアカウントは完全に個人的な趣味ですね。

――なぜ「出ない順TOEIC英単語」というアカウントを作ろうと思ったのでしょうか?

そもそもの話をすると、2011年あたりにTwitterを始めようとふと思いたちました。ただ普通のことを投稿してもおもしろくない。せっかくなら何か愉快なことがしたかったので、試験に出ない英単語というコンセプトで、日本語と英語の例文を投稿してみることにしたんです。

――もともと英語が好きだったんですか?

いえ、決して好きだったというわけではなくて……(笑)。社会人になってから、何か長く続けられる趣味が欲しくて、英語であれば長く続けられそうだなと勉強を始めたんです。たぶん、当時で100冊くらいの参考書は使ったと思います。今では、気がついたら天井の高さに届くんじゃないかというくらい本棚が積み上がってしまい、その中に参考書がびっしり詰まっています。

実際、参考書を使って勉強を進めていたのですが、ふと参考書に出てくる例文って絶対に日常生活で使わないな、と。「This is a pen.」や「He is Micheal.」といった例文って、実践的なものではなく、あくまで基礎的な文法を覚えさせるための文章ですよね。そこで、「参考書に到底出てこない、役に立たなそうな英文をつぶやいてみたら、おもしろいんじゃないか?」と。ほんと、最初は単なる思いつきでした。

ネタの基準は、自分が「おもしろい」と思えるかどうか

――投稿内容がとてもユニークですが、例文のネタはどうやって考えられているのでしょうか?

アカウントを開設したばかりの頃は、自分が勉強に使用した参考書の例文の雰囲気に似せつつ、英語教育の中では絶対に使わないような日本語を組み合わせて考えていました。そうして、毎日ネタを考えては投稿して、考えては投稿して……を繰り返していたら、少しずつパターン化されていって。

現在の投稿は、主に会話系と説明系の2つに分類していますね。そこを軸にして、自分がおもしろいと思った単語を使って日本語の例文を作り、それを英語に訳すような形に落ち着いています。

最初から趣味の延長だったこともあり、個人的にはこれといって特に難しいことをやっている感覚はまったくありません。ただただ、自分の気になったものをキーワードにして文章を組み立てているだけなんですよね。気になる言葉はメモしていて、最近だとたとえば……「地デジカ」とか「ヒアルロン酸」「ブルペン」といった単語とかありますね。

――確かに「ヒアルロン酸」って英語で何て表現するのか想像できませんね。

――投稿内容を見ていると、時事ネタも多く含まれています。Twitterのトレンドはチェックされているんですか?

そうですね、チェックするようにしています。ただ、それを始めたのも最近の話です。実は最近までトレンド機能の存在すら知らなかったし、ハッシュタグも知りませんでした(笑)。自分が楽しいと思うものを投稿して、それを見た人が喜んでくれればいい。それくらいの気持ちでやっています。

――『出ない順TOEIC英単語』は、ユニークなイラストも重要な要素ですよね。中山さんの本業は映像制作ですが、絵から文章を組み立てることもあるのでしょうか?

今でこそイラストがついていますが、最初は例文だけだったんですよ。ずっと文章だけで投稿し続けた結果、少しずつフォロワーが増えてきて、書籍化が決まったときに、例文だけだと味気ないということで、千野エーさんにイラストをお願いすることになりました。

それからですね、例文とイラストがセットの現在の形になったのは。基本的に自分が考えた文章に合わせてイラストを描いていただいていますが、時々、千野さんから、「こんなイラスト描いたんだけど、どう?」と絵が送られてくることがあって、それをもとに例文を考えることもあります。

例えば、この投稿は『スターウォーズ』の内容を全然知らないまま作っています。

――てっきりスターウォーズファンなんだと思っていました。

実はまったく観たことありません(笑)。スターウォーズは千野さんの趣味です。普通、自分があまり知らないことには手を出したくない人が多いと思うんですけど、自分の場合はよく知らないからこそ、予想外のおもしろいことが言えるのかなと思っています。

だって、愛着があったら、「このキャラクターはこんなこと言わない」とか余計な知識が邪魔をして、きっと普通のことしか言えなくなってしまう。あまり情報を入れないほうが自由にできるんですよね。だからこそ、あえてよく知らないジャンルは知らないままつぶやくようにしています。

心のこもっていない文章がおもしろい? ウケる例文作りのポイント

――読み手にインパクトを与える文章の作り方として、中山さんが何か意識されていることはありますか?

いろんなやり方を試してきての経験則なんですが、文章を何度も精査しないようにしています。

――え、そうなんですか!?

個人的には心がこもっていない文章のほうがおもしろいと思っていて。だからこそ、下手に文章をこねくりまわさず、肩の力を抜いて、その場でパッと思いついたことを投稿するようにしています。

あと、Twitterは140文字以内で投稿しなければならないので、いかに短い文章でおもしろさを伝えられるかは意識しつつ、特定の何かを侮辱しないように気をつけていますね。ひどいときは炎上してしまいますし、基本的に人を傷つけるようなおもしろさは本意ではないので。幸い、これまで炎上騒ぎになったことはありませんが、この点についてはいつも気をつけています。

――毎日と言っていいくらい、定期的に例文を投稿されていますが。ネタはストックされているんですか?

最初は例文を蓄積することもあったのですが、ストックしたものを時間になったらツイートする作業に、途中から自分の中に「楽しんでやれてないな」という思いが芽生えてきて……そういうのって伝わるのか、フォロワーさんからの反応も悪かったんですよね。それからはストックはやめて、仕事から帰ってきた後に例文を考えて、できるだけ早く投稿するようにしています。熱量が高い状態で投稿したほうが、自分もおもしろいし、読み手にも楽しんでもらえるみたいです。

――最後になりますが、今後取り組んでみたい分野などはありますか?

今後も『出ない順TOEIC英単語』の投稿は続けつつ、個人的には好きな歴史の領域にも力を入れていきたいですね。すでに『出ない順 中山の日本史C』という本も出版していますので。

――ありがとうございます! これからもおもしろい投稿を楽しみにしています!