生涯の会議時間は8年分!? グダグダ会議を改善するカギ“3つの確認”とは?

生涯の労働時間のなかで、会議に費やす時間はどのくらいだろうか? なんと、約3万時間……つまり累計8年分にも及ぶと語るのは、『世界で一番やさしい会議の教科書』(日経BP社)の著者で、コンサルティングを手掛けるケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズのディレクターである榊巻亮(さかまきりょう)さんだ。

日々の会議が充実した内容であればいいが、ひたすら終わりまで耐えるだけだったり、こっそり別な業務を“内職”してしまったり……徒労感だけが残ることは珍しくないだろう。そこで、多くのビジネスパーソンが苦しめられている“グダグダ会議”改善の初歩をレクチャーしてもらった。3万時間を無駄にしたくない方は、ぜひ読み進めていただきたい。

会議を変える“3つの確認”とは?

――まず、よくあるグダグダ会議のパターンを教えてください。

残念ながら、そのパターン化にはあまり意味がないと思いますよ。

――え、なぜですか?

グダグダ会議には、独演会状態だったり、議論がとっ散らかっていたりといったケースがありますが、実際にその会議がどのパターンかを見極めるのは難しいんです。さらに、見極めたとしても、その原因はさまざまで、うまく対処法を当てはめられないことも多い。パターンを気にするよりも、改善のためにやるべき基本をちゃんと押さえれば、会議は劇的に変わると私は考えています。

――失礼しました。では、会議の基本とは何でしょうか?

まずは、会議の終了時に「決まったこと」と「やるべきこと」を確認するのが最も大切です。そもそも会議って、何かを決めたり何か変えたりすることが目的ですよね。何が決まったのか、誰が何をやるのか、それともみんなの気持ちが変わって、次の状態に移れるようになったのか……何かしらのアウトプットが必ずあるはずなんです。

この確認は、スポーツでいうと、最終的に何点取れたかという試合結果を見ることです。たとえば、サッカーは相手のゴールにボールを蹴り入れて、時間内に相手より多く点数を取るのが目的ですよね。サッカーなら得点掲示板があるので状況が一目でわかりますが、会議にはそれがない。だから、どんなアウトプットがあったのかを最後に確認する必要があるんです。

――会議の時間を使った成果が見えれば、時間を無駄にしたという感覚は和らぎそうですね。

そして、もう一つは確認すべきことは「終了条件」です。議論を始める前に、「どういう状態になれば会議を終えられるのか」を明確に設定して全員で共有することで、不要な話が見えてきます。無駄話はしていないはずなのに会議が長引いてしまうのは、その会議の着地点が見えないから。ゴールを明らかにすれば、その会議で話し合うべきテーマに集中して議論できるようになりますよ。

時間内に収まらなくてもOK!? 時間配分の設定が必要な理由

――榊巻さんは著書で、会議では「決まったこと」「やるべきこと」「終了条件」といった3つの確認とともに、議題ごとの時間配分を決めることが大切だと書かれていましたが、時間の見積もるコツはありますか?

私たちの会議では、いつも事前に「この議論は60分でいけるかな。では、時間内で終わらせるために何ができる?」と、会議の見積もりを立てます。実際にやってみた結果、見積もり通りに終わらないことも結構あるんですよ(笑)。でも、そこで経験値が溜まるんですよね。「こういうタイプのテーマで議論すると、このぐらいかかるな」とか、「今回のケースだと、あの人はいろいろ言いたいことがあるから、きっと揉めるだろうな」とか。その積み重ねで時間の見積もりの精度を上げていくしかありません。

もし、見積もった時間が長すぎるときは、たくさん喋りそうな人から事前に意見を吸い上げて、その場で直接話さなくて済む工夫ができますし、会議時間を延長するのか、日を改めてもう一回話し合うのかといった判断ができます。時間配分の見積をしないと、こういった手が打てません。「長くなるかな? とりあえず、やってみよう」という考え方と、「1時間の会議だけど、どう考えても倍はかかる。じゃあ、事前に工夫しておこう」という考え方では、同じように時間をオーバーする結果でもまったくの別物です。

――なるほど。時間内に収めるためにどんな準備ができるか考える上で、時間配分を見積もっておくべきなんですね。

そうですね。時間配分を決める効果は2種類あって、一つはいま言った「会議の時間を縮める事前準備が必要かの判断材料」。もう一つは、「参加者の意識を『時間内に収めよう』という方向に働かせる」こと。これは心理学の“締め切り効果”で、期限を決めると、人はそこに間に合わせよういう意識が働きます。この2つが達成できていれば、私は会議時間を多少オーバーしてもいいと思います。

――同じ時間の会議でも、ダラダラではなく内容が詰まったものなら、それはかけるべき時間だと?

時間内に収めようとすることそのものに価値はありません。もちろん短いほうがいいんですが、時間ありきは本末転倒です。無理に短縮すると、必要なことまで省いてしまって、せっかく会議したのに参加者みんながモヤモヤしてしまうといった事態を招きかねませんから。

発言しやすくする3つの“ハードルの下げ方”

――10人くらいの会議になると、どうしても発言しない人が必ず出てきます。そういう人の発言を引き出して、全員で議論を活性化させるためにできることはありますか?

たくさんありますよ。参加者から意見を引き出すのにとても重要なのは、会議の導入です。カタい雰囲気で始まる会議って、当然のことながら意見しづらいじゃないですか。でも、ゆるい雰囲気なら発言しやすい。だから、会議の場の雰囲気をコントロールするんです。たとえば、初めて会議に参加する人が緊張してそうだと思ったら、最初に崩しにかかります。

――それは、具体的に言うと、雑談から始めるといったことでしょうか?

はい。我々は「アイスブレイカー」と呼んでいるんですけども、会議が始まる前に雑談しておくんです。あとは、たとえば、会議の冒頭で前に立ってピシャリと「今日の議題は◯◯です!」とかしこまって宣言すると場が固まるので、「今日はこれ決めようと思ってるんですよ~。みなさん、一つよろしくお願いしますね」みたいな、ライトなノリといいますか、ちょっとした言い方にも気を付けています。

さらに、何を喋ってもらいたいかを伝えるときも、かなり気を付けて伝えています。先ほどの「終了条件の確認」にかなり近くて、「どういう観点から意見してほしい」とか「かっこいいことなんて全然言わなくていいので、現場からの考えをそのまま言ってください」とお願いをします。

たとえば、資料をレビューする会議があったとします。そのとき、どういう観点……たとえば、会社から一発で採用されるような質の高い意見なのか、個人ではなく部全体で感じたことなのか、さまざまな観点があるので、どのレベル感のことを言えばいいかわからないと、なかなか声を上げづらくなります。「とりあえず、感じたことでいいから何でも言ってほしい」と最初に発言のハードルを低めに設定してみましょう。あと、会議中にバンバン名指ししするのも一つの手です。

――指名して意見を言ってもらう、と?

「意見を言ってください」っていうよりは、もうちょっとゆるく「何か気になったことはありますか?」「何か思うことあります?」くらいの温度感ですね。

もう少しテクニックの話で言うと、手元に付箋を用意して、発言の代わりに気になったことを全部メモしてもらうんです。「多い少ないは気にしないので、とりあえず書いといてください」と。すると、いきなり振られても意見を出しやすくなります。一回自分の手元に何かしら書いて溜めておけば、急に指名されても発言のハードルは低くなりますよね?

――会議の内容をメモするのではなく、感じたことや疑問を残しておくんですね。これなら、すぐに実践できそうな気がします。

セミナーでは最初に、「私の話を聞いた後で、メモ書きの付箋を1枚もないってことは、私の話をすべて理解できたってことですよね。でも、そんなことありえませんよね? 当然、何らかの疑問は出ますよね?」と、多少のプレッシャーをかけておきます(笑)。そう言うと、みなさん付箋にしっかり書いてくれます。人の話を聞いて何も思わないのは、思考停止ですから。

――それは「なるほど、と思いました」みたい形でも大丈夫ですか……?

全然問題ないですよ。でも、なるほどにもいろんな形があります。何か新しい気付きがあったなら、「この部分がわかった」と書いてくれればいい。やり方はいろいろあるので、そこまで具体的な指示はしませんが。

――発言しやすくする方法をまとめると、「雑談から入る」「ゆるい雰囲気づくりを心がける」「付箋で意見をストックする」の3つということですね。

あと、私がよくやっているのは、会議の終わりで決まったことを確認するときに、しかめ面している人を名指しします。「あなたはどう思ってるの?」と問いかけると、意見が出てくることが結構あるんです。

「こう決まりましたが大丈夫ですか?」って全体に問うと、なかなか個別の意見は言い出しづらい。なので、個人に「何かあるでしょ?」と振って、発言のハードルを下げるんです。もしくは、ラストに会議全体の振り返りの時間を設けて、感想を1人10秒ずつ話してもらうのも効果的ですね。会議の良かったところ・悪かったところ、モヤモヤしているところを聞くと、ポロッと疑問が出てくることもあります。

――著書で紹介されている「黙っている人の5分類」だと、議論に興味がない人もいますよね。こういう場合は、どうしたらよいでしょうか?

会議中に参加者を見ていると、「あの人たぶん興味ないだろうな」ってわかるんです。そんなときは「この議論に興味ないですよね」って振ります。

――そんなに直球で聞くんですか!? 目上の人にはできない気も……。

いえ、発言者は勇気がいるかもしれないけど、私の経験上、目上の方は「聞いてなかった」みたいにちゃんと答えてくれますよ。

会議はコミュニケーションの場なので、そっぽ向いてるってことは、それなりに理由がある。それを無視したまま、こっちが言いたいことを言って進めてしまうからダメなんです。会議は一方通行ではなく、双方向のコミュニケーションが前提のはず。回りくどい言い方だと時間ばかりかかってしまうので、とにかくストレートにスパッと話す。そっぽ向いてる人に「何かありますか?」って聞いても何もないに決まっているので、そういうときは「ここについて懸念はありませんか?」と聞く。すると、「あるかないか判断がつかない」といった答えが返ってくるんです。

アイデア出し会議が長引いてしまう原因は?

――もう一つお聞きしたかったのが、ブレインストーミングのようなアイデア出しの会議の場合です。このタイプの会議は終了条件の設定が難しいと感じたのですが、どうすればいいのでしょうか?

アイデア出し会議でもやることはすごく単純です。今日はブレストだけなのか、その後絞り込むのか、あやふやにしていませんか? アイデアが出てこなくなるまで発散しきればいいのか、その中から使える案を絞り込むところまでやるのかがあやふやなまま意見収集したりブレストしたりすると、着地点を見失いがちです。ここを整理していないケースが多いと感じています。

――確かに、やっていませんね……。

ただ、アイデア出しだけと決めても、「どうなったらブレスト完了か」を判断するのはちょっと難しいと思います。会議の終了条件としては、「みんなの意見がだいたい出たなと思ったら」が多いでしょうね。

大小合わせてとにかく吐き出しきるのか、部門として取り上げなきゃいけない課題を出すなのか。アイデアのレベル感もあるじゃないですか。突飛な案も含めてブレストするのか、わりと現実的な範囲でブレストするのか。ですので、終了条件というよりは「会議の枠組み」を設定するほうが効果的かと思います。

――「会議の枠組み」ですか。

枠組みは3つの要素で決まります。「範囲」「粒度」「観点」です。

範囲は、たとえば「会社全体なのか自部門だけなのか、それとも個人の話なのか」あるいは「システムだけなのか、業務全体か」などですね。粒度の例としては、「毎日ハンコを押すのが面倒なんです」とか、「俺が使ってる朱肉のインクが出づらい」とか、そういう課題レベルの細かさを指します。施策でいうと、会社全体でペーパーレス化を進めるのか、交通費の申請をペーパーレス化するのか、抽象度がまったく違いますよね。

最後の観点は、いま気になっていることなのか、それとも会社の将来像や先々まで考えた上での問題点なのか、といった違いが挙げられます。担当者目線なのか、経営視点なのか、顧客の立場なのか、コストから考えるのか、あるいは時間軸なのか。

ただ、こういった考え方はやや高度なので、まずやるべきは、“3つの確認”と時間配分の決定です。これはグダグダ会議を避ける上での最優先事項といえるでしょう。

それができたら、次は書いて議論を可視化するステップへ。「意見」「論点」「決定事項」を意識して発言をまとめていくと、議論の流れがはっきりと見えてきます。意見は発言そのままの内容、論点は質問や議題などの問い、決定事項は「やるべきこと」「決まったこと」「終了条件」という“3つの確認”と、各議題の時間配分です。

議論内容のまとめ方の例

議論は、問い(論点)に対する回答(意見)が積み重なって成立しています。しかし、複数の問いを同時に議論はできません。いま話し合っている問いを明示することで、議論がグッと噛み合うようになるはずです。いきなりホワイトボードで板書する勇気が出ないときは、まずはA3用紙くらいの大きめの紙に殴り書きから始めるといいでしょう。

ここまでお話したことに、高度な技術や才能は要りませんよね。これらの基礎を押さえるだけで、グダグダ会議は確実に変えられる。ぜひ実践してみてください。