マッチングアプリ「Pairs」で結婚した俺が聞く! 機械学習を活用した相性診断の仕組みと安全性へのこだわり

恋愛・婚活マッチングサービス「Pairs(ペアーズ)」は、日本・台湾を合わせて累計会員数570万人、累計マッチング数4000万組を誇る国内最大級のマッチングアプリだ(2017年7月現在)。婚活や出会いを求める“恋活(こいかつ)”のために、「Pairs」はいったいどのように相性の算出を行っているのか? そして、真剣にパートナーを探す人のために、どのようにサービスの安全性を担保しているのか?

今回は、ユーザーとして「Pairs」を利用し、晴れて結婚に至った筆者が、仲人(?)である運営会社のエウレカを直撃。相性診断の仕組みやこだわりポイント、同社のマッチング哲学について話を伺った。

相性はどのように決まる? マッチングのための工夫

インタビュアー 仁田坂 淳史(にたさか あつし、写真左)
編集者。出版社やmixiを経て独立し、出版ベンチャー株式会社ZINEを設立。仕事が忙しく時短のため、これまで様々なサービスでマッチングしてきた。2017年5月末に結婚。 お相手は「Pairs」で出会った女性。

――「Pairs」の特徴として、ユーザー同士の相性をパーセンテージで表示する仕組みがあります。僕は妻とのマッチング率が92%だったのですが、この相性の算出には機械学習やアルゴリズムを活用されているのでしょうか?

金子 お相手との相性を示すパーセンテージは、趣味や嗜好性など、共通点が多いユーザーほど高くなるように設定しています。ユーザーの登録情報をはじめ、喫煙の有無や居住地の近さ、ログイン時間から割り出される生活スタイル等々……。さまざまな要素から似た部分があるユーザーを抽出し、検索結果画面の上位に表示されるようアルゴリズムを組んでいます。

――相性の算出には、ログイン時間も関わっているのですね! 僕は編集者で会社を経営しており、妻は助産師。どちらも不規則な生活をしています。僕が仕事を終えて「Pairs」を開く 時間帯はだいたい午前2時くらいでしたが、妻も夜メッセージをチェックすることが多かったようです。付き合い始めてから、やり取りのスピード感やお互いの生活リズムがぴったり合っていると感じていましたが、これもすべて「Pairs」のアルゴリズムのおかげだったんですね。

金子 そうですね。加えて、「いいね!」をもとにした協調フィルタリング【※2】によるレコメンドも行っています。たとえば、AさんがBさんに「いいね!」を送り、CさんもBさんに「いいね!」を送ったとします。すると、Cさんがこれまで「いいね!」したユーザーをAさんにレコメンドする。これは、同じユーザーを「いいね!」したAさんとCさんの好みが似ていると考えられるためです。
※2 協調フィルタリング……多くのユーザーの嗜好情報を蓄積し、あるユーザーの嗜好と類似する別のユーザーの情報を用いて、自動的にレコメンドする手法。現在、多くのECサイトのシステムで活用されている。

金子慎太郎(かねこ しんたろう)さん
株式会社エウレカ執行役員CTO。2010年、東京理科大学理学部を卒業後、組込系企業に入社し品質保証に従事。2011年にカナダ留学。帰国後、東京理科大学の研究室OBとして最適化理論の研究に携わる。2012年、エウレカに入社。「Pairs」および「Couples」の立ち上げメンバーとして開発に参画。2016年10月、執行役員CTOに。

――実は、妻には「顔が全然タイプじゃないから2回スルーしたけど、相性92%だったから、3度目の正直で一応『いいね!』した」って言われたんですよね……(笑)。でも、実際に会ってみたら仕事に対する考え方や価値観がぴったりで、結婚までスムーズに進んだ実感があります。

仁田坂淳史とその妻の「Pairs」プロフィール。妻曰く、「顔が全然タイプじゃないから2回スルーした」

金子 価値観が合うことは大切ですよね。今後はさらに機械学習を活用して、プロフィール情報や自己紹介文、ログイン時間、画像といったデータからのマッチング精度を高めたいと考えています。

たとえば、相手の自己紹介欄に仕事に対する姿勢が書かれていて、価値観が合うか自動で判別される、といった具合です。「いいね!」から割り出す好みの傾向以外のデータからも、価値観の合う人をレコメンドしていけるのではないかな、と。

インタビュアーの入っていたコミュニティ(右上)と妻の入っていたコミュニティ一覧(左上)。笑顔や趣味といった共通点のほか、「自然が好き」コミュニティやプロフィール文章の書き方など、さまざまな要素が組み合わさって相性92%となっていた

金子 ちなみに、90%超の相性となるのは、30組に1組程度のレアケースです。今回のマッチングケースでは主にコミュニティによるものが大きいと考えられます。お二人の入っているコミュニティを見てみると、いくつか関連するポイントがあり、その一例として奥さまが「笑わせてくれる人がすき」というコミュニティに入っていますね。仁田坂さんのプロフィールのサブ写真はほとんどが笑顔の写真なので、画像を用いた機械学習によって、AIはお二人の相性がマッチしていると判断します。

さらに、奥さまが「筋トレで美BODY目指してます」というコミュニティにも入っているので、仁田坂さんの「ゴールドジム」やヨガなどのコミュニティとも関連性がありますね。今回のマッチング例とは違いますが、ほかにもたとえば「星野源が好き」というコミュニティと「逃げ恥が好き」というコミュニティに共通する要素を抜き出し、機械学習の精度を上げるなど、マッチング改善に努めています。

――システムによって、その人自身が気づいていない価値にまで技術で歩み寄れるとしたら、ますます結婚相手として最適な人が見つけやすくなりそうですね。

金田 私たちは「Pairs」ユーザーにとってのゴールが、必ずしも「結婚」に限られているわけではないと思っています。社内では「long-term relationship(ロング ターム リレーションシップ)」と呼んでいるのですが、ありのままの自分をさらけ出してマッチングし、メッセージのやりとりを経て、「結婚」という形式にこだわることなく長期的な恋愛関係を築くお相手と出会えること。それこそが、さまざまなユーザーがいるインターネットのマッチングサービスの強みだと考えています。

つまり、ユーザー同士が世の中の一般的な価値観に縛られずに、自分の求めるお相手とめぐり会えること自体が大切なのです。結婚願望の有無にかかわらず、多様な出会いとその先の長期的な恋愛関係を求める人たちの想いに寄り添うサービスを目指しています。

金田悠希(かなだ ゆうき)さん
Pairs JPプロダクト責任者。2012年4月、新卒でモバイル系のベンチャー企業に入社し、複数の新規ゲーム立ち上げに従事。マネージャーとして事業および組織設計に携わる。2016年4月、より多くの人の人生にプラスの影響を与えられるサービスを手がけたいという想いから、エウレカに入社。「Pairs」の国内プロダクト責任者を務める。

安心して恋人・結婚相手を探せるマッチングサービスを目指して

――僕がこれまで利用したマッチングサービスと比べて、「Pairs」は強い信念を持って運営されているな、と感じました。

金子 ありがとうございます。「Pairs」をローンチした4年半前、日本ではまだ「オンラインデーティングサービス【※1】」や「マッチングサービス」という言葉が浸透していませんでした。いわゆる“出会い系”というネガティブイメージを持たれがちな状況だったんです。そこで私たちが掲げたコンセプトは「出会い系ではなく、真剣に恋人や結婚相手を探せるサービス」でした。
※1 オンラインデーティングサービス……海外での恋愛・婚活マッチングサービスの呼称。アメリカでは結婚する3人に1人がアプリなどのオンラインデーティングサービスで出会い、実際に結婚している

金田 私たちは、「インターネットで男女が出会うこと」につきまとう、ネガティブなイメージを払拭したいと考えています。そのなかでも一番大事にしたいのは、お客様が安心して恋人や結婚相手を出会える環境づくり。プロダクトとしての使いやすさはもちろん、お相手ときちんとコミュニケーションが取れること、ユーザーにとっての危険や不安をゼロにすることといった、サービス品質の向上が重要です。

――サービスの品質を高めるというのは、つまりユーザーが安心して出会えたり、マッチングの精度が向上したりする仕組みを作るということでしょうか?

金子 そうですね。安心して「Pairs」を使っていただけるよう、さまざまな工夫を凝らしています。現在、利用者の「安心・安全」を第一に考え、他サイトへ誘導しようとする悪徳業者・不正ユーザーやナンパ目的の不誠実なユーザーなどを24時間体制で厳重に監視しています。多くの方に安心して使ってもらうためにも、不正ユーザー探しは特に力を入れている部分ですね。

代表的なケースとしては、「Pairs」に登録するために複数のFacebookアカウントを作っているユーザーのアカウント停止を行っています。さらに、そのアカウントの友だちになっている場合も悪徳業者である可能性があることから、アカウント登録の段階で入会をお断りすることもあります。

安信 ユーザー同士のトラブル解決のために、違反報告という仕組みも設けています。その報告の内容はすべてカスタマーケアチームのスタッフが目を通し、「事実にもとづくプロフィールかどうか」「過去に同じような報告を受けていないか」などをチェックして対応を判断します。場合によっては、警告や強制退会をとるケースもありますね。

安信竜馬(やすのぶ りょうま)さん
Pairsカスタマーケア統括マネージャー。テレマーケティング会社を経て、主に外資系メーカーや小売業にてCS部門の立ち上げ・インハウス化・アウトソーシング化のマネジメントに携わる。2016年2月、エウレカに入社。「Pairs」CS部門責任者として、チームの立ち上げ・育成に従事している。

金子 詳しくはお伝えできませんが、違反報告されるようなアカウントには共通の特徴があります。つまり、行動パターンから不正ユーザーだと判断できるんです。現在、機械学習で不正ユーザーを事前にブロックできる仕組みの構築を進めています。

そういったシステム面だけでなくデザインにもこだわって、従来の“出会い系サービス”とは一線を画すべく、やわらかい印象を目指しています。たとえば、サービス提供開始直後のキーカラーははっきりとしたグリーンでしたが、その後、穏やかなペアーズブルーと呼ばれる、信頼を表す青色に変更しました。

現在のロゴ。やわらかい印象を目指している

金子 また、全体的に角張ったデザインは避け、丸みをもたせて設計しています。マッチング相手の検索画面のプロフィール画像は丸アイコン、「いいね!」ボタンなども長方形ではなく楕円形です。真剣に相手を探す場所にふさわしいブランディングを細部まで心がけています

よりユーザーに寄り添ったサービスとなるために、カスタマーサポートを強化

――ここまで「Pairs」のさまざまな工夫について伺いましたが、今後の改善点や課題はありますか?

金子 人間の感情は、数字や機械的なアルゴリズムだけでは対応しきれません。ユーザーの満足度をより高めるには、エンジニアリングだけではなくカスタマーケアでサポートしていくことが必要だと考えています。

安信 そこで現在、カスタマーケアチームの内製化を進めています。オペレーターの人的コストがかかるため、顧客対応の窓口を外注する企業も少なくない中、弊社では約30人のオペレーターを自社で抱えています。ユーザーから寄せられた生の声をスピーディーに社内共有することで、エンジニアやデザイナーたちにリアルな温度感を伝えられ、サービスの改善に繋げられるのは大きなメリットですね。

また、今年の6月からは従来のメールでのサポートに加え、「チャットサポート」を開始し、「気軽にちょっと聞きたい」というニーズにも応えています。

チャットサポートの様子。プロフィールの書き方やメッセージのやりとりの仕方まで、カスタマーケアチームがアドバイスをしている

安信 以前からユーザーが困ったときに、素早く的確に応対できる場が必要だと感じていました。サービス内容や決済方法といった問い合わせのほか、プロフィールの書き方やメッセージのやりとりの仕方までアドバイスをしています。将来的には「どのタイミングでデートに誘えばよいか」といった、恋愛相談までサポートしたいですね。

――プロフィールの書き方は僕も悩んだポイントだったので、サポートがあると大変うれしいです。まさにテクノロジーだけではカバーできない、気持ちの部分ですね。

安信 カスタマーケアチームはユーザーに一番近い存在です。カスタマーケアが業界最高水準のサービスを提供することで、安心・安全な「Pairs」の利用環境を保ち、ひいては業界全体を活性化していきたいですね。

金田 「『Pairs』を使って実際に恋人ができました」という人を増やすには、運営が真面目に、誠実であることが非常に重要だと思っています。カスタマーケアや不正ユーザー対策のパトロールなど、ユーザーに対して真摯に向き合い、より多くのカップルやペアを生み出し続けたいな、と。

金子 エウレカのビジョンは「世界中の人々の人生を豊かにするものを自分たちの手でつくり出す」こと。たとえば、仕事や家庭環境などの理由によって、婚活や恋人探しが思うようにできない人も少なからずいます。「Pairs」はあらゆる人たちの出会いを支援するサービスでありたいと考えています。

――ありがとうございました。今後、日本でもアメリカのように、マッチングサービスでパートナーを見つける方がどんどん増えてくると思います。僕も「Pairs」で結婚させていただいた身として素晴らしさを伝えていきたいです。