フリーランスエンジニアが求めるもの・求められるものは? 3000社以上のマッチング実績を持つギークスに聞く

 

いま、多くの企業から聞こえてくるのは“エンジニア不足”の声だ。経済産業省が発表した調査結果によると、現在におけるIT人材の不足数は約17万人。この数字が2020年には約37万人、2030年には4倍強の約79万人に増加する見通しだという。政府が推し進める「働き方改革」では、経済産業省が「雇用関係によらない働き方に関する研究会」を発足するなど、フリーランス人材の活用を推進している。

こうした時代の流れを先読みし、ITフリーランス支援を展開するギークスはフリーランスエンジニアと企業のマッチングを行っている。同社は2002年からサービスを展開し、これまで3000社以上の取引実績を持つ。

今後ますますエンジニアにとって一般的になるであろう、“フリーランス”という働き方。しかし一方で、案件のミスマッチをはじめ、フリーランスエンジニアが抱える課題は少なくない。そこで今回、ギークスの執行役員で IT人材事業本部長の小幡千尋さんに、エンジニアと企業、それぞれが重視していることについて話を伺った。

なぜフリーランスが求められるようになったのか

――まず単刀直入にお伺いしたいのですが、フリーランスエンジニアの数って増えているんでしょうか?

人口は確実に増えています。現在、弊社への登録者数は1万2000人を超えました。フリーランスエンジニアが大きく増えた時期は3回あり、最初のタイミングは2008年頃ですね。

――2008年といえば、リーマンショックがあった年ですよね。

そうです。リーマンショックで大手IT企業が大変な状況に陥ってしまい、40代~50代のエンジニアが退職を余儀なくされました。時代も時代なので、再就職は難しく、仕方なくフリーランスになるしかなかった……。どちらかといえば、当時は“フリーランスになる”ことはネガティブな選択肢だったんです。

そして、次が2011年~2012年頃。 “ノマドワーカー”や“クラウドソーシング”が流行り始めたこともあり、フリーランス人口が増えました。その結果、2008年頃に比べてフリーランスの年齢層は、少しずつ下がってきましたね。現在、ギークスに登録しているフリーランスエンジニアも30代半ばが中心になっています。

――そういった時代の変化を経て、現在、3回目の人気が高まってきていると。

そうですね。政府が「働き方改革」を提唱し、“フリーランス”という働き方に注目が集まるようになりました。エンジニアもその例外ではないどころか、むしろこれからフリーランス化がどんどん進む職種だと感じています。

――今でこそ「働き方改革」が叫ばれ、フリーランスは一般的になっていますが、事業を始められた2001年頃はまだエンジニアのニーズは少なかったのではないでしょうか?

その頃、私はまだギークスにジョインしていなかったのですが、大変なことも多かったみたいですよ。フリーランスという働き方の認知度はほとんどゼロに近い状態だったので、弊社代表の曽根原が、フリーランスとはどんな働き方なのかを説明しながら企業に提案していました。事業を立ち上げたばかりの頃は、地道に泥臭くやっていたと聞いています。

――そもそも、ギークスが経験豊富なフリーランスエンジニアと技術者を求めている企業のマッチングを手がけようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

立ち上げのきっかけは、時代の変化によるところが大きいですね。2001年当時、インターネットが少しずつ普及し、企業のシステム化が進み始めていたんです。ただ、システム化に対応できるエンジニアが企業内に不足していた。そうした状況を踏まえて、曽根原が「そういった企業に、問題解決に向けた何らかのサービスを提供できないものか」と立ち上げたのが、IT人材マッチングサービス、現在の「geechs job(ギークスジョブ)」です。

当時は、フリーランスエンジニア自ら営業活動を行なうケースが多くありませんでした。そこで我々が営業活動を代行し、技術力を求めている企業とマッチングする。そこに事業の可能性があると考えたのです。

――フリーランスの仕事は、友人や知人づての紹介が案件獲得の一般的な手段だというイメージがあります。

そうなんです。もちろん紹介経由で仕事を獲得することにもメリットはありますが、途中で案件が終わってしまったり安く請け負ったりしてしまうなど、フリーランスは契約周りが弱くなってしまう傾向があります。そこに我々が介在し、案件の紹介、さらに紹介後もサポートすることで、フリーランスエンジニアにとって働きやすい環境をつくっていくことにしました。

ギークスの使命は、「フリーランス」という働き方の啓蒙

――もう少しサービスについて詳しくお伺いしたいです。御社は業務委託という形で「準委任契約」を結ばれていますよね。派遣契約や請負契約とは具体的にどういった違いがあるのでしょうか?

指揮命令者から現場で指示を受けて業務を遂行するのが、派遣契約におけるエンジニアの一般的な仕事の進め方です。一方で、準委任契約の場合、雇用関係は結んでいないため、誰の管理下にも置かれません。エンジニア側の裁量が大きいので、その人自身の技術や考え方で仕事を進めていくことができる。ここが大きな違いです。

業務委託契約と派遣契約の違い 画像提供:ギークス

どちらが良い・悪いということはありませんが、我々が対象としている個人事業主は高い技術力を持ち、プロフェッショナルな意識を持った方々です。だからこそ、裁量が大きくプロフェッショナルとして働く自覚が必要になる準委任契約という方式を採用しています。

また、企業とエンジニアのマッチングだけでなく、「フリーランス」という働き方を世の中に啓蒙していくことも我々の役割だと思っています。

――企業側から「派遣だったらな……」と言われることはありませんか?

ありますね。その場合は、派遣契約と準委任契約の違いを細かく説明し、理解してもらうようにしています。また、「フリーランス=クラウドソーシング」というイメージをお持ちの企業も多いのですが、それは違いますよ、と。「フリーランスとはこういった働き方を選択している方たちで、企業側にはこのようなメリットがある」と説明しています。

働き手の環境が変わりつつあると同時に、実は企業を取り巻く環境も大きく変化しています。昔はフリーランスのエンジニアを企業は“労働力”として捉えていたのですが、最近は社内の雰囲気を変える存在として注目が集まり、積極的に活用するようになっています。

たとえば、社内の新規プロジェクトを推進していく原動力として、あるいは若手エンジニアの教育係として、フリーランスのエンジニアを登用する動きが増えてきていると感じています。これまでは人材を社内に囲い込むのが当たり前とされていましたが、外部の人を積極的に受け入れ、社内に知見を溜める動きに変わってきているのではないでしょうか。

――15年、フリーランスのエンジニアと企業のマッチング・働き方支援を手がけてきた御社から見て、フリーランスとして働くメリットはどこにあると思いますか?

最も大きなメリットの一つが収入です。エンジニアの場合はなおさらその報酬に現れますね。現在、弊社のサービスに登録しているエンジニアの平均年収は780万円で、なかには年収1,500万円を超えている方もいらっしゃいます。報酬が高いこと自体はもちろんメリットですが、この報酬は自分で選んだ案件で相当の評価をされて得るもの。納得感を持って報酬を得られることが、より大きなメリットになっています。

――夢がありますね……。

そうですよね。他には、習得したい技術が習得できる、ワークライフバランスを意識した働き方ができるといったことも、フリーランスとして働くメリットですね。

フリーランスエンジニアの価値は“労働力”にあらず

――御社のサービスの登録者数は1万2000人を超えていますが、これまで企業に属していたエンジニアがフリーランスを選ぶきっかけとして、どのような声が多いですか?

企業に長く所属していると、会社からマネジメント業務を期待されることも増えてきます。フリーランスを選択する方は「マネージャーとしてのキャリアでなく、現場で技術のプロフェッショナルでいたい」と、自分のキャリアを自分で選び築くことを求める声が多いですね。あとは、新しい言語を学ぶ目的を持った方や、自分でサービスを立ち上げるまでの準備期間としてフリーランスになる方もいます。

フリーランスエンジニアは企業に対して、自分のスキルを発揮できる環境を求めている一方で、安心して働けることも重視しています。実際にギークスに登録している方々からは「保障がないことが不安だ」という相談を受けてきました。そこで、2017年1月にフリーランス向け福利厚生プログラム「フリノベ」をリリースしました。これは、人間ドックや会計ソフトの割引、英語学習支援などが無償で受けられるサービスです。なかなか反響が大きく、半年間で1700人のフリーランスエンジニアが利用しています。

「フリノベ」のサービスとして開催している交流会の様子 画像提供:ギークス

一方で、企業は当然、技術力を求めていますが、それだけでなく自社にいないタイプの人材を求めています。ですから、「若手のエンジニアを教育してほしい」「プロフェッショナルとしての意見が欲しい」という企業が多いですね。フリーランスは「労働力」という捉え方から大きく考えが変わっていると感じています。

――ちなみに、エンジニアにはどのようなスキルが求められていますか?

言語でいうと、いまは「Ruby」が求められていますね。そもそも、Ruby使いの人口が少ないこともあり、「1年くらいの実務経験でもぜひ」という企業は多いです。あとは、CやC++など、基礎技術があっての「PHP」も根強い引き合いがあります。

もちろん技術力は大切です。ただ、それに加えて、柔軟性やコミュニケーション能力に長けているかどうかを重視する企業は増えてきています。

――最後に、エンジニアの働き方は今後どうなっていくのか、小幡さんの考えをお聞かせください。

いま以上にエンジニアの働き方は柔軟になっていくのではないでしょうか。技術力のあるエンジニアの需要がますます高まっていくからこそ、さまざまな選択ができる。企業に属してもいいですし、フリーランスになってもいい。自分が置かれている立場によって働き方をシームレスに変えられるようになっていくと思います。