「クラウドファンディングはプロジェクト開始前から始まっている」1億円超を調達したglafitに学ぶ、成功の秘訣

鳴海禎造さん
和歌山県出身。15歳で服の買付・販売の商売を始めて以来、20年以上経営に従事。現在はglafit株式会社の代表取締役、株式会社FINE TRADING JAPAN代表取締役、和歌山電力の取締役。今回、発表したハイブリットバイクは会社として初のプロダクトとなる。

2016年に最優秀アニメーション作品賞を受賞した、映画『この世界の片隅に』や、Hi-Fiサウンドの完全ワイヤレスイヤホン「Air by crazybaby」など、資金調達の成否を占う上で、クラウドファンディングが存在感を増している。

2017年夏に大きな話題を集めた折りたたみ式電動ハイブリッドバイク「glafitバイク」も、クラウドファンディングを活用した事例の1つだ。クラウドファンディングサービス「Makuake」での募集開始から、たった3時間で目標金額の300万円を調達し、その金額は2カ月後、1億2,800万円にまで膨れ上がり、国内クラウドファンディング資金調達額の最高記録を樹立している(2018年1月現在)。

そんなプロジェクトの発起人である、glafit代表の鳴海禎造さんに、クラウドファンディングにおいて支援者の心を動かすプロジェクトページ制作のポイントや拡散方法、支援者との関係の築き方を伺った。

クラウドファンディングを「テストマーケティング」として活用

――なぜクラウドファンティングで資金調達をしようと考えたのですか?

クラウドファンティングを利用した本当の理由はテストマーケティングです。glafitバイクは2015年前から開発を始め、2016年の夏頃にプロトタイプ1号が完成しました。1ロット1000台単位での生産になるので、「まず市場でどのくらい支持されて、どれほどの人が購入をするのか」を検証しようという話になったんです。

最初は1000人分のモニターアンケートを取ろうかとも話していたのですが、ただアンケートを取るだけでは「いいね」「おもしろいね」という声がたくさん集まっても、その中で何パーセントくらいの人が実際に商品を購入するのかはわかりません。たとえば、友だちに製品を見せて「いいじゃん」と褒めてもらえたとしても、実際に製品化したときに、必ずお金を出して買ってくれるわけではないですよね。

クラウドファンディングなら、本当にお金を出したいと思う人が集まるわけですから、より精度の高い検証ができると考えたんです。

「自転車+バイク=glafitバイク」をコンセプトにした、スマートな折り畳み式電動ハイブリッドバイク。開発は、和歌山市にあるglafit株式会社

――なぜ、ハイブリットバイクだったのですか?

2012年に「100年先まで続く乗り物メーカーになる」という“100年ビジョン”を定めました。具体的には、現在の車のパーツショップという事業形態から将来は自動車メーカーになり、21世紀におけるトヨタやホンダのような立ち位置を目指すと決めたのです。

日本で自動車の歴史が始まった100年前は、「国内で車をつくらなくても、アメリカ車を輸入して乗ればいい」という風潮がありました。これを変えたのがトヨタとホンダです。国産自動車を始めた人たちは当然もう生きていませんが、彼らは当時、国産車がこれだけ普及するというビジョンを描いていたのです。

では「最初にどんな乗り物をつくるか?」を検討した時に、「最初から車をつくるのはハードルが高い」と感じました。そこで、バイク、それも「車しか乗ってこなかった人でバイクも欲しい層」と「免許はあるが、物理的にバイクと車を持てず一切乗ってこなかった層」を狙った製品の開発に決めました。この2つの層の潜在顧客は未知数でしたが、ホンダが1981年に発表した「モトコンポ」という折りたためる原付バイクというのがあり、これを知るファンには受け入れられるだろう、くらいに考えていました。バイク業界や車業界の人には反対されましたが、僕はイケると思った。その確証が欲しくて、クラウドファンディングを利用することにしたんです。

そして、2015年に具体的なプロジェクトをスタート。うちはもともと「スーパーホワイト企業」なんです(笑)。18時きっかりにみんなで退社して残業はなく、土日祝日は完全にお休み。リモートワークを取り入れ多様な働き方を提供。社員の有給消化率も100パーセント。おかげさまで離職率はほぼゼロです。

一方で、だからこそ既存の事業を動かしながら、さらに新製品の開発という大きなチャレンジをするには、社内リソースが足りない。そこで「乗り物づくりサークルみたいな課外活動をやりませんか?」という呼びかけに、手を挙げた社員を巻き込んでいくことから始めました。あくまでやりたい人がいたらやろうぜ、というスタンスの課外活動として、最初は僕も入れて4人でスタートしました。

折り畳むと、こんなにコンパクトになる

重視したのは集客力・ツール機能・実行者サポート

――さまざまなクラウドファンディングサービスがありますが、なぜMakuakeを選んだのですか?

理由は3つあります。1つ目は集客力です。2つ目はプラットフォームとしての機能が充実していること。そして3つ目はサポート体制です。

集客力を見るポイントは、ヘビーユーザーの数と彼らの発信力、新たな価値を生み出す能力。これらを総合して、Makuakeを選びました。実際にうちのプロジェクトページは、アクセスの約半分がMakuakeのトップページからでした。

また、Makuakeはマーケティングツールが優秀です。支援者の属性はもちろん、どういう経路でプロジェクトに申し込んだか、支払い手段は何かなど、さまざまな角度から分析し、より良いアプローチを展開できます。

記者会見時の様子

プロジェクトがスタートすると、「キュレーター」と呼ばれる担当者がさまざまな企業とのマッチングを支援してくれます。メディアや実店舗との連携、流通方法の構築など、プロジェクトを成功させるための支援体制が手厚い印象でした。初めての記者会見を取り仕切ってくれたのもMakuakeの担当者さんでした。Makuakeは単純な資金調達だけでなく、ビジネスとして成功させるために、プロジェクトに合ったPR施策を考え、提案してくれたんです。

クラウドファンディングはアイデアと技術を提供してくれる「仲間」を集める場

――プロジェクトが多くの人に広まった要因はありますか?

記者会見の様子が当日中に記事になり、その後も多数のメディアに取り上げられたのが大きいですね。これはクラウドファンディングサービス側と、事前にしっかり相談するのがいいと思います。また、私個人として、Facebookを通じ、多くの人とつながっていたこともあるでしょう。プロジェクト起案者の影響力は成否に大きく関わってくると思います。

僕個人のFacebook友達数は、プロジェクトスタート時点で1000人。知らない人とはあまりつながらないため、基本的に直接会ったことがある人だけです。こうした「友達」はすぐに増やすことはできないので、人と会っていくことは大切ですね。とはいえ、人との出会いで「自分のビジネスに生かせそうかどうか?」は考えません。むしろ、地元や進学先が同じで自然に仲良くなった人たちと、偶然ビジネスでもつながっていっています。

――glafitバイクプロジェクトも、社外メンバーの協力があったと伺っています。

そうですね。手伝ってくれる社員が3人いたものの、既存事業もあるため「ちょっと手が足りない」と感じることが多くありました。そのため、積極的にプロジェクトに関わってくれる社外メンバーが必要になったのです。

そこで、人材探しのために東京へ行き、ライティングやウェブデザイン、動画制作ができる人をどんどん紹介してもらいました。彼らに僕のビジョンをひたすら伝えていったところ、1人が賛同し、仲間になってくれました。結果的にウェブデザイン担当やディレクション担当、ライティング担当、動画撮影担当、SNS担当と、クラウドファンディングに必要な要素すべてに対応できるだけのメンバーが集まったので、約1年かけてMakuakeのページ構成を検討し、作成しました。

「Makuake Award 2017」でのゴールド賞受賞時の様子。鳴海さんに賛同し、集まったメンバーと一緒に

――プロジェクトページには動画やイラストが多いですね。

特に力を入れたのは動画です。というのも、プロジェクトページで訴求したかったのは、機能ではなく利用シーンだからです。「glafitバイクが生活に“何かいいこと”をもたらしてくれるかもしれない」というイメージを多くの人に持ってほしい。このようなイメージを訴求する上で、勝負になるのは動画です。だから、動画の打ち合わせにはかなり時間をかけました。

製品開発で重要なのは、もちろん技術です。しかし、これだけバイクが乗り物として完成している現代では、技術だけで競合他社に差をつけるのは、これから先は難しくなると感じています。ユーザー目線のコンセプトをしっかりと持って、それをしっかりと伝え、利用シーンに寄り添った製品をいかに提供できるかがカギになるのではないでしょうか。

クラウドファンディングは、プロジェクトをオープンする前から始まっている

――目標金額達成まで、どの程度時間がかかると想定していましたか?

もともと目標だった1000台は、うまくいっても2カ月はかかると思っていました。しかし実際は、300台が2日で、目標の400台は3日で達成。1台約12万円という価格は、衝動買いする金額ではないと考えていたので、驚きました。

実は、僕は一度Makuakeのプロジェクト内容の審査で落ちてしまいました。理由は、目標金額の高さと、折り畳みバイクの需要が見えず、実現性が低いという点だったようです。僕はもともと「目標金額3,000万円、目標台数1000台」で挑戦したかったので。どうしても諦めきれず、キュレーターと直接会ってビジョンと事業計画を語った結果、最終的には「300万、405台」でプロジェクトを開始することで折り合いました。

プロジェクト公開後は3時間で目標金額を達成し、3日目に募集を停止。そこでMakuakeさんや社内、工場の現場と調整し、その結果、約1週間後に595台の追加を行うことになりました。

僕はキュレーターもクラウドファンディングで得た仲間だと考えています。クラウドファンディング実行者の中には「掲載したけれど、プラットフォーム側が何もしてくれない」と嘆いている方もいますが、それは間違い。実行者はプラットフォームに任せきりではなく、キュレーターも巻き込み、ファンになってもらえるように働きかけることが大切です。

――そうして、プロジェクトが大成功したのですね。集まったお金は何に使いますか?

最初から決めていたとおり、集まったお金はみんなに還元しました。だから、もう残っていません。

今回のプロジェクトを公開するまでに、社内外の有志メンバーが、持ち出しでアイデアや技術を提供してくれました。私はこれも「クラウドファンディング」だと思います。クラウドファンディングを成功させるために、仲間たちから形のない支援をしてもらっていた。だから、そんな仲間たちへも還元が必要です。それを実現させてくれた感謝とともに、開発した製品で支援者のみなさまにも還元できたのかな、と。

ちなみに、今回のプロジェクトに参画しなかった和歌山にいる社員全員にも還元させてもらいました。サークルに入って直接助けてくれるか、その間、会社を守って間接的に助けてくれたかの差で、どちらも同じですよね。

――これからプロジェクトに挑戦する人に、メッセージをお願いします。

クラウドファンディングは、プロジェクト掲載がスタートする前から始まっています。これからクラウドファンディングに挑戦する人は、やれることはやり尽くして、考えられることは考え尽くしてから臨みましょう。

僕は準備に100年ビジョンの計画から数えて5年間の時間をかけました。このような結果を出せたのは、それが理由だと思っています。やりすぎることはありません。私たちは乗り物を通じて、世界中の人々に驚きと感動と笑顔をお届けする存在でありたい。これからもクラウドファンディングなどの方法を取り入れながら、100年先まで続く乗り物メーカーになろうと考えています。

編集:ノオト